駿河武士は台風と呼ぶにふさわしい男で、番組に一瞬の衝撃を巻き起こしたかと思えばあっけなくその場から立ち去った。後に残るのは静けさと謎の達成感で、スタジオは訳もなく妙に浮ついた空気に包まれているし、その衝撃がいまだに後を引いている雫とリオは既にいない武士の話を未だにしている。
「びっくり箱みたいな人でしたね」
「あいつ声がくそでかいからみんな驚くんですよ」
「とにかく元気な方でしたね」
「あいつ馬鹿だから風邪ひかないんですよ」
犬猿の仲
※武士と雫ちゃんがリオの同期です
キャラ濃っっww
リオは武士が好きでも嫌いでもない。ので、こういう褒めてるのか貶しているのか微妙な言葉が出てくる。
そうして和やかにプライベートな感じで立ち話をする二人。口ノ助はそれを見て空気を切り替えるために、ぱんぱんっと手を叩いた。
「はいはい まだ前半戦ですからねぇ 後半戦が始まるんで席についてくださいねぇ!」
「あ、はい」
「すみません」
学校の先生が諭すような口調に促され、二人は大人しく席に着いた。口ノ助はそれを確認すると口を開く。
「ふーうむっ それじゃあ後半戦の説明をしちゃおうかあ!」
口ノ助は司会者らしく説明を始める。
「まあ説明って言ってもただのクイズなんだけどさ! 今から二人にまつわるクイズを出すからそれに対して早押しで答えてもらうってわけなんよ!めちゃんこ簡単だろ?」
「おおーシンプルで良いですね」
「了解です」
口ノ助が同意を求めるような笑みを二人に向け、二人はそれに返事で返した。口ノ助はそれにうんうんと満足気に頷いていると、”あっ”と何かを思い出したように口を丸く開いた。
「そういえば前半戦だとリオちゃんが2ポイントリードみたいだぜ~ 雫ちゃんも頑張れよ~~??」
前半戦の”箱の中身は・・・”が終わった時点では、リオが酒缶を無意識で開けたり、ウナギを握りつぶそうとしたり、野生の武士が飛び出して来たりで、気付けばリオが2ポイントリードする展開となっていた。
雫は口ノ助の間延びした声に”頑張りますっ!”と胸の前でぎゅっと小さくファイティングポーズを決めながら気合を入れた。そしてその横では百人一首に臨むかの如く腕をシュッシュと滑らせて、口元で”シュッシュ”と呟きながら、せっせとボタンを押すイメトレをしているリオがいる。
その姿はもはやアスリート。圧倒的な集中力。
彼 女 は 勝 つ こ と に 余 念 が 無 い。
せっせと素振りすんなwww
カルタ強そう(小並感)
ガ チ ガ チ ゴ リ ラ
「あはあっ 二人とも準備万端みたいだし早速始めちゃおうかな!!」
そう言った口ノ助の言葉に続いて、黒子衣装を着たスタッフが軽くて簡易的なプラスチックの机と赤い半円型の早押しボタンを持ってきた。そうしてそれらは、椅子から立ち上がったリオと雫それぞれの正面へと設置された。
これから始まるのは早押しクイズ。相手より早くボタンを押した方に回答権が与えられ、チャンスは一問につき一度っきり。
「負けませんよ!リオさん!」
「シュッシュー!(こちらこそ!)」
二人は互いに顔を見合わせて健闘を誓い合う。両者ともやる気は十分である。
ドキドキ・・・うほうほ・・・
楽しみ
ご褒美ほちい
「それっじゃあいくぜえええ一問目えええええ」
\デレンっ/
どこからともなく聞こえてきた効果音に反応して、リオは手をちょいと浮かせながら指先をぴんと伸ばして、いつでもボタンを斜めから流し手で叩ける姿勢を取り、一方で雫はボタンにそっと指を重ねた。
「リオちゃんが初回の放送でドラミングをした回数とは!?」
むっず
うほおおおwww
分かるかwwww
リオはカルタのように素早くボタンを叩く気満々だったのだが、その指はぴたりと止まっていた。
リオは初回の放送で確かにゴリラの真似をして確かにドラミングを披露したがその際の回数など、覚えていよう筈がない。何故ならリオはゴリラの真似をしている間、その身にゴリラそのものを降ろして本能のままにゴリゴリしているのだから!
\ぴこんっ/
リオが素早く顔を横に向けた。ボタンを押したのはもちろん雫である。
「ドラミングタイムは4度あって、合計で41回ドラミングしてました!」
「あはあああーーー正解!!」
「やりました!!」
「うっそお!」
何で分かるのwwwww
マジかよwww
雫ちゃんヤバすぎwww
雫の満面の笑みに視聴者とリオは困惑を隠せない。
「何で分かったんですか!?」
「勘です♪」
「数まで分かるタイプの勘とか初耳なんですけど」
ともあれまずは雫が1ポイント先取することになった。それでもまだリオには1ポイント分のリードがあり、余裕がある。願わくば次の問題で雫を突き放したいリオである。
リオは再び戦闘態勢となった。
「第二問んんんんっっ!! 雫ちゃんがフィットネスゲームVIIにおいて初めて明らかにした体重とは!?」
「おらああっっ!!」
リオは気迫の声と共に手を振り下ろした。
\ばしい/
\ピコんっ/
今度はリオが回答権を獲得。その答えは、、
「422kg!!」
「正解いいいいい!!!」
「やったああーーー」
規格外のデブで草
地面に刺さってそう
どすこいっ雫ちゃん!
「うう・・・間に合いませんでした」
しょげる雫に喜ぶリオ。そして正解を知らなかった視聴者からは驚きのコメントが流れる。
ちなみにこの体重422kgという数字は実際に雫がゲーム内において体重を求められ、入力した数字である。これには当時の視聴者たちは驚愕をすると同時に、雫42.2kg説や雫422g説、はたまた夢野雫=ラクダ説(ラクダはそのくらいある)までもが囁かれるようになるが真相は未だ謎である。
尚、ゲーム内において200kgの減量に成功した。
現在リオが再び2ポイントリードとなり、雫は依然追いかける展開である。
「じゃあ3問目ええええ リオちゃんが珍しく寝落ちしてしまった配信の際に寝言で呟いた願い事とは!?」
リオ沈黙。
\ぴこん/
またしても雫。
「もぐらになりたい!」
「はいいい!正解!!」
「やりましたああ!」
「私そんなこと言ってたのか!!!」
あったなそんなのww
ニッチ過ぎて草
雫ちゃんすげえ
当時何故ゴリラじゃないのかと視聴者の間で論争が起きたが、既にゴリラだからという結論で幕を閉じたというのは全くの余談。
「さて残すところあと二問となりましたあ! リオちゃん逃げ切れるかあ!?」
「絶対逃げます」
「追いつきます♪」
ゲームは白熱していく。
「はいい次の問題!雫ちゃんが初めて視聴者に読み聞かせた自作本のタイトルとは!?」
「いただきまああああす!!」
リオが喜びの声を上げながらボタンへと手を伸ばした。
伸びる腕。
これで回答権を手にして正解すれば実質リオの勝利が決まる大事な問題。
ボタンに触れる腕。
\ぴこんっ/
回答権を手にしたのはしかし雫であった。
「なっ!?」
リオが驚いた声と共に雫を見る。
雫の方が僅差でボタンを押すのが早かったのだ。
雫が回答をする。
「100億回死にそうなワニです」
「・・・・正解!!!」
「またやりましたあ!」
「くそおおお」
どんなタイトルだww
これは迷作でしたねえ・・・
最後に死んでしまうワニが泣ける
とうとうリオと雫の点数が並んだ。
リオは負けるわけにはいかないと、今一度気合を入れなおす。
「絶対勝つ!」
リオはそうして再び手を宙に浮かせ、いつでもボタンを叩きに行ける戦闘態勢をとろうとして、ふとあることに気が付いてしまった。
こ の 体 勢 弱 く ね
先ほどはほんのちょっとのタッチの差だったが、それを生み出したのはこのかっこつけたかっこいい体勢である。ということに気が付いたリオである。
リオはボタンに手を被せると、丁度ボタンの真上に手の平の下側の固くなっている部分、掌底が来るように位置を調整した。
気付いちゃったんだなww
がんばえー
どっちもがんば
「これで勝った!」
フラグも立てた。準備万端。
「最終問題ですう!!」
リオは緊張を感じていた。
「リオちゃんの好きな動物はg」
!?
リオは一瞬腕をぴくりと動かしたが止めた。それが引っ掛けであることを即座に見抜いたのだ。
更なる緊張で手に力が入る。
「ゴリラですが、リオちゃんのすk」
その瞬間リオは耳を研ぎ澄ました。意識を集中させて集中させて次の言葉を待った。さらに手に力が篭った。
「好きなお酒は」
「でやあああああ」
リオがその言葉を聞いた瞬間、雄たけびと共に手の平にぐっと力を込めた。ボタンを押そうとした。しかしあまりに気合が入り過ぎて体重が乗った。
\びきびきびきびき!!!/
ボ タ ン を 乗 せ る 台 ご と 破 壊 し て し ま っ た。
パワープレイ来たあああwww
草
ゴリオさんちーすwww
台はリオの手の平が触れた部分から真っ二つに割れてしまった。しかしリオは回答権を手にした。
破壊の代償に手にした権利!
自信満々に言い放つ!
「ハイボールです!」
「・・・残念!」
「・・・え」
「問題は最後まで聞きましょう!!!」
引 っ 掛 け に 引 っ か か っ た 。
「う゛は゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
い つ も の
台も回答権も失った女
負けゴリラ
様 式 美
「さてリオちゃんが間違えてしまったので、雫ちゃんは最後まで問題をじっくり聞くことが出来ます!」
「え、あ、ありがとうございます!」
「く゛そお・・・」
間違えたリオに回答権は無くなり、ただ雫が答えるのを待つ事しか出来ないのである。
「ええ~ 好きなお酒はハイボールですが、好きな言葉は!?」
「オノマトペ!!」
「あはあああああ正解!!! 雫ちゃんの勝利い!!!」
「うわああ!! 勝ちましたああ!!
「うわああああ!!!! 負けた嗚呼あああ!!」
轟く断末魔!
リオ敗北!
実家のような安心感
敗北の女王
ざ こ
「では優勝した雫ちゃんにはご褒美をあげちゃうよお よかったねえ雫ちゃん おめっとさん雫ちゃん!」
「ありがとうございます!」
「敗北の味いいい美味しいい・・・敗北ぺろぺろ・・・美味しい・・・」
リオはまた負けた。
ちなみに番組としてはどうやっても夢野雫を勝たせる予定だったようです。