ゴリラじゃないからっ!   作:もぐら王国

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四分音符ちゃんだ!

私は会社の方に来ていた。

マネージャーと配信の打ち合わせがあるためだ。

というかわざわざ会社まで来る必要あるのか、めんどい。

流行りのZOONじゃだめか?だめか。

私はマネージャーから言われていた通り、会議室3と呼ばれる小さい小部屋を訪れる。

入った。

誰もいなかった。

あるのは部屋の真ん中に設置された空っぽの椅子と机だけ。

ありゃ?

首をかしげる。

もう誰かいると思っていたけど、、

腕時計で時間を見る。

針は予定時刻の15分前を指していた。

私は集合時間にはある程度余裕をもって来るタイプだ。

圧倒的社会人魂。遅刻駄目絶対。

棒棒鶏。回鍋肉。油淋鶏。

謝謝。

ただそれはマネージャーも同じこと。

なんなら30分前くらいから大抵いる。

A:暇なのか、B:時計が壊れているのか、C:物好きなのか。

Dの仕事ができる人が正解だね。えらい。

でも今はいない。

なんでだろ。

もう実はいるのかな?たまに透明になるタイプのマネージャーだったっかな?ジャパニーズニンジャ?

・・・多分トイレだな。

座って待っとこ。

 

・・・

・・・

・・・ポ

 

こねぇ。

全然こねぇ。

このままじゃ椅子と合体しちゃうよ。椅子ケンタウロスになっちゃうよ。

ああ、こない。

いま10分前。

んー、、明らかにおかしいよな・・・。

もしかして私が間違えてるのか。

記憶改ざんされてたかこれ。

あるなそれ。

電話で口伝えに聞いただけだし、もしかしたら勝手にここだと思い込んでいただけかも。実は別の部屋だったりするかも。

まずいかも。

とりあえずマネージャーに電話しよ。

電池切れてた。

ふぁっ〇。

くそ!道中見た夢野雫のライブ配信が罠だったなんてくそ!

ふぁっ〇。

秘技ふぁっ〇サンドイッチ。

いあ、どうしよ。

会社は無駄に部屋が多いしなぁ。

あ、あそこかなあ。

配信部屋3。

前に配信で使ったことがある。

会社はこの手の部屋が複数ある。最初の方は機材揃えたりするの大変だし、社員さんもいるから高度な事もできるしね。

いってみよ。

 

 

扉の前に立つ。

防音室だから中の音とかまるで分からない。

ま、基本誰も使ってないんだけどね。大体1と2だよ使われてるのは。かわいそうな三男。

喜べ、いまから私が使うぞ。

 

「失礼します」

 

部屋がきいーと無機質な音と共に開く。

マネージャーさん、超人的な推理でやってきましたよ。私が。私が来た!!

果たして、マネージャーはいなかった。

代わりにどなたかがPCの前に向かい合っていました。

配信をされていました。

ハイシン=シトルヤン(1965年)

 

「あっ」

「う゛ぇ゛っ?」

 

わあ、だみ声。でも可愛い顔。新人さんかなー。知らんなー。

・・・逃げねば!

 

「失礼しました!」

「ま゛っ゛て゛く゛た゛さ゛い゛!」

「はう!?」

 

扉を閉めようとしたら唐突に呼び止められた。

声の圧がすごい。必死さがやばい。漂流者が見つけた船呼び止めてるみたいこわい。

 

「あの、ごめんなさいほんと、命だけはほんと」

「私゛を゛助゛け゛て゛く゛た゛さ゛い゛」

「ガチ漂流者!?」

 

 

 

 

 

私は彼女のPC前に座っていた。

どうしてこうなった。

訊けばやはり配信中だったらしい。彼女はゲームの実況をやっていて、そのゲームと言うのが

『跳べ!四分音符ちゃん!』

このゲームは横スクロールのゲームで、四分音符に顔が付いたキャラクターが障害物を避けてゴールを目指すというものである。

特徴としてはその操作方法にある。

声に反応してキャラクターが動くのである。

だから「ああ~」とか言えば、四分音符ちゃんが跳ねる。

それでこの新人さん、 ”海原なまこ” と言うらしいが、この子はゴールを目指して声を出しまくってたばかりに、とうとう声が枯れ果てていたらしい。

 

「お゛願゛い゛し゛ま゛す゛!゛あ゛と゛ち゛ょ゛っ゛と゛な゛ん゛て゛す゛ぅ゛」

 

助けてあげてください

救世主来たあああああ

嗚呼メシア

解放される~

天からの恵み!

 

すごい!コメントの悲壮感がすごい!私に対しての敵意が一切ない!

突然配信に乱入しちゃったのにこの歓迎っぷり。何時間やってたんだこの子。

まあ、よろしい。

お望みとあらば私が救済執行してあげましょう。

ちなみにナマコちゃんが言うように、ゲーム画面ではもはやゴール地点は見えている。目前である。

ただゴール前に大きな穴が開いている。

四分音符ちゃんはそれを飛び越えなければ、ゴールにたどり着けないようだ。

 

おk楽勝

 

「叫べばいいのよな」

「は゛い゛」

 

せーの

 

「酒ええええええええ!!!」

 

四分音符ちゃん落ちた。

GAME OVER

 

「むっず」

 

 

 

私はこの後予想以上の苦戦を強いられる。

 

「ビール!」

 

GAME OVER

 

「筋肉!」

 

GAME OVER

 

「バイク!」

 

GAME OVER

 

好きなもの責めを仕掛けてみたが、ひたすら四分音符ちゃんを奈落に突き落とす鬼畜の所業を行ってしまった。

悪気はないんだ。途中から落ちるのが見たかっただなんて、全然全く微塵もかなり思ってましたごめんなさい。

困ったね。

もうなにを叫べばいいのか分からないよ。

そうだな~

 

「なまこちゃん、好きな生き物いる?」

「ナ゛マ゛コ゛て゛す゛」

 

「ナ゛マ゛コ゛ォ゛ォ゛!゛!゛」

 

GAME OVER

 

駄目だな~。もっとインパクトが強い言葉の方が欲しいなあ。

 

「なまこちゃん、好きな食べ物ある?」

「ナ゛マ゛コ゛て゛す゛」

 

「ナ゛マ゛コ゛ォ゛ォ゛!゛!゛!゛」

 

GAME OVER

 

駄目だな~。もっと勢いのある言葉が欲しいなあ。

 

 

「なまこちゃん転生したら何になりt」

「ナ゛マ゛コ゛て゛す゛」

 

「ナ゛マ゛コ゛ォ゛ォ゛!゛!゛!゛!゛」

 

GAME OVER

 

苦しい・・・

楽にしてくれ。。

助けてくれええええ

もう無理だあ~

 

頭がナマコになっちゃうよ~^^

これなんか攻略法とかないのかな。

このままじゃ四分音符ちゃんに呪われそうだよ。朝起きて四分音符になってたらどうしよ。かわいい。

 

「ねえなまこちゃん、これいい感じの方法とかある感じ?」

「言゛葉゛尻゛を゛伸゛は゛す゛と゛い゛い゛感゛し゛て゛す゛」

「ほう」

「私゛は゛肺゛活゛量゛が゛足゛ら゛な゛い゛の゛で゛す゛」

「なるほどね」

 

それならば良いのがあるじゃないか。

 

万物はゴリラに帰着し、ゴリラより始まる。

全ての始祖。

森羅万象、その頂。

湯屋一同!心を揃えて!

 

「うっほおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

轟けゴリラ!

四分音符ちゃん飛んだ!

届いた!

 

GAME CLEAR!

 

「「や゛っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」

 

やったああああああ

きたああああああ

よしゃあああああああ

喜びが深い

感 無 量

 

私となまこちゃんは抱き合った。

なまこちゃんは泣いていた。

おおーよしよしよし良かったね良かったねよしよしよし

 

「失礼します!」

 

突然扉が開いた。

私は弾かれたように顔を向ける。

立っていたのはマネージャーだった。

 

「マネージャー!」

「やっぱりいましたか」

「なぜここが」

「ゴリラの鳴き声を上げるのはリオさんぐらいしかいないでしょ」

「私の声は防音室を貫通したのか!?」

「さ、いきますよ~」

 

そうして私は連行されていった。

 

「さよならなまこちゃん!手紙も書くからね!引っ越してもずっ友だよ!」

「あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛し゛た゛」

 

ずっ友って死語じゃね。

 

 

 

 

 

 

後日、切り抜きを見つけた。

 

『朗報 海原なまこの配信に迷子のゴリラが乱入するも、無事飼育員に捕獲される』

 

いや草。

 

 

 

 

 

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