ゲームには流行がある。数あるゲームの中でも大衆に愛された稀有なタイトルは、人々の間で一大ムーブメントを巻き起こし、そのジャンルの代名詞のように扱われ、NowTubeには実況動画やプレイ動画が山のように上がる。
BPEXも、これに該当する。
一人称視点のfpsゲームと言えば沢山あるが、その派手なエフェクトと多様なキャラによる無限の戦略性は、人々を魅了した。私も魅せられた。うわ何このゲームかっけええ!!ってなった。しゅぴいいん!!ばばばばばああぁ!!うほおおおっやりてえぇぇっ!!ってなった。
でもやってない。
BPEXを私が初めて知ったとき、丁度長編RPGの実況を始めたばかりだった為である。私はいわゆるマルチタスク出来ないマンであり、同時並行で物事に取り組むと、どこか気持ち悪いというか罪悪感があるというか、一つの事に集中したいというか何というか…はいこれでも元社会人ですどうもぉ^^
で、今までは他の配信者さん達が、同期が、後輩が、楽しそうにやってるのを羨望の視線で見てたのだけれど、数日前にようやくRPGの長き旅が終わりを迎えた。いやー、こっちもこっちでファイナルにファンタジーしてて最高だった!数ヶ月掛かったけど無駄じゃなかった!
じゃあね。それならね。私もね、BPEXをね、いよいよね・・・満を持してね・・・やろうかなってね・・・。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
・・・旬を逃したんよ。
「ということで今更やるのもどうかなーって思ったりしました」
「いいえ、やりましょう」
「むーん・・・」
椅子に座った私はマネージャーさんと電話していた。つい先ほど向こうから掛かってきて何だろうと思ったら、「今お土産ショップいるんですけど何が欲しいですか?ゴリラのストラップですか?」などと遠出をしていたらしいマネージャーさんが開口一番に仰りやがったので、「ゴリラをください」と粋に返してやった。その話のついでにBPEXについても相談してみたのだが、それに対する返答がさっきの言葉である。やりましょう、とマネージャーさんは言う。私は唸った。
「何に迷っているんですか?」
「いやぁ・・・今頃になってBPEXをやると、流行に便乗して視聴者数増やそうとしてんだろって、皆が見るからやるんだろって思われそうでダサいなーって」
「はあ、何かと思えばそんな理由ですか・・・ らしくないですねぇリオさん、いつも配信ではあんなにイキり散らかしてるのに」
「配信中は無敵になるので」
「いいですか? 私が思うに、これはマネージャーとしてであり一視聴者の意見でもありますが、リオさんの良いところは、周りの目を気にしないところです
その神を畏れぬ傍若無人っぷりが、人目を憚らない気ままっぷりが、社会という監視の目に囲まれた中で生きる人々にとって興味深く見えるわけです」
「感動しそうです」
「ですから視聴者からどう見られてるかとかあまり気にする必要が無いんですよ 勿論、他人を傷つける可能性のある発言とかコンプラとかには十分に注意していただきたいですが、そうでもなければ好き勝手やりゃいいんですよ そもそも、他人に見られていることを気にしてたら配信中にゴリラの鳴き真似とかしませんよね?」
「うほぉ・・・」
「だから遠慮なくBPEXしましょう 新規獲得のチャンスです」
「あ、でも、今はみんな目が肥えちゃってるから、私のくそ雑魚プレー興味ある人はあんまりいないかもですよね~」
「逆です みんな上手いプレーに見慣れてるからこそ、リオさんみたいな初心者のくそ雑魚ナメクジ底辺プレーが輝くわけです」
「なんか増えたな」
「ナメクジ」
ナメクジ、出撃します。
「やあみんなウホウホ〜、時雨リオの0から始めるBPEX 1日目にようこそ〜」
うほおおおおおおっっ(歓喜の叫び)
リオのBPEXきたあああああ!
シンプルに楽しみ
待 っ て た
マネージャさんと通話した後にはすっかり迷いもなくなって、翌日の夜になると早速一回目のBPEX配信を行なっていた。今はBPEXのホーム画面を開いていて、わたし―黒髪短髪イケメン少女の時雨リオ―は、配信画面右下にひょっこり顔を見せている。
笑っとこ。おら八重歯見ろ八重歯。
「私の配信を見てくれてる人はまさか私がペックスすると思ってなかったでしょー 無論私も思ってなかった!ノーペックスで生きていくと思ってた!」
これは嬉しい想定外!
ゲーム下手だけど果たして…?
姉御応援するで
ペックスって響きなんかえr…
初見です
「でもね誘惑には抗えなかったよ… あ、初見さんは初めまして 名前と声と顔だけでも覚えて帰ってなー」
たくましいw
挨拶も忘れないゴリラの鑑
媚びるな、攻め続けろ
ア タ ッ ク フ ェ イ ズ
挨拶は大事だからね。視聴者さんもいつもより数百人くらい多い気がする。さすが人気タイトルだ。普段私の配信を見ない人も見にきてくれているらしい。かっこいい所を魅せねば!
「そんじゃ早速戦場の方に行っちゃいますかぁ!」
意気込み、よし!
気が早くて草
殺る気満々だねえ^^
練習大事
「…チュートリアルの方行っちゃいますかぁ!」
忘れてたわけではない。断じて。
チュートリアルは射撃訓練場と呼ばれるマップで行われるらしかった。人の配信でも見た。岩に囲まれた空間に砂地が広がっていて、人型の的や円状の丸い的があちこちにある。
「カーソル操作で照準を合わせ、左クリックで撃つことができます」
画面下の青枠に字幕が表示されると共に、案内役らしい滑らかな女性の声が聞こえた。とりあえず無視して辺りをキョロキョロしていたらアナウンスが繰り返された。やってみろという事らしい。おk、やってやろうじゃないですかええ。
私は指示に従い、人型の的に照準を合わせた。
「ふんっ」
数発の発砲音。
右下の私は自信に満ちた余裕の笑み。
肝心の銃弾は…虚空目掛けて一直線に飛んで行った。
「あれえ?」
隊長、全弾ハズレです!
リオちゃん青空撃つのうまいねえ^^
鮮やかすぎるww
口開いてるの可愛い
ちょっとズレちゃったね
どうやら撃つ瞬間にマウスを動かしてしまったのが原因らしい。ふう、私としたことが油断したぜ。しかし二度は喰らわん。私は口を閉じるとキリッと真剣な表情をする。そして素早く照準を的に合わせ、二度目の発砲を行った。
「へぃ!」
副隊長、全弾ハズレです!
「なんでえぇ??」
さ っ き 見 た
癖になってんだ、弾外すの
手癖だなw
頑張って治そうねー
「ぐぬぬ…」
しかめっ面を浮かべる。結局この後3回ほどトライしてようやく当てることが出来た。
止まってる的に。
…貴様から当たりに来てくださいません?。
「色々な銃を使ってみましょう」
再びの女性の声。従うように色々な銃を試し撃ちしてみた。
ドォンッ! ドォンッ!
「これがショットガンかぁ〜」
散弾が間隔をあけて重たく発射される。
当たれば最強!
当たらないからゴミ!
まだむずいかも
慣れが必要
「むっずー」
バババババババ馬場ッッ!!
「マシンガンきたああっー!!気持ちえええ!!」
激しく連射される銃弾。
頭溶けりゅうううう
弾の連射速度なら一番だっけ
ちなみに鬼のリコイルが必要
リオなら腕力で楽勝よ
「ああああああ照準が定まらんんんん゛ん゛ん゛」
ビイイイーーー! ビイイイーーーー!
「おおおおビーム出てるんだが!!」
真っ直ぐに光線が伸びていく。
害 悪 武 器
こいつ嫌い
反対派湧いてんの草
被害者があまりに多すぎる・・・
「かっけえええええええーーーー!!!」
戦場に出るのが楽しみである。