チュートリアルが終わって一通りの操作を覚えた。
走ったり殴ったり物を拾ったり投げたり。あとキャラのスキルの使い方とかも。いっぺんに覚えることが多すぎる。詰め込み教育良くない。操作キーが多すぎて手がバグりそうになる。もう一本腕が生えそう。生えろ。
「それじゃあ、そろそろこの場所ともおさらばするか」
名残惜しい
とうとう出陣じゃああ!
戦じゃ!戦じゃ!
「さよなら私たちのマサラタウン!」
こうして射撃練習場を抜け出ると、カジュアルマッチとかいう初心者でも気軽にできそうなモードで遊ぶことにした。モードは他にもランクマッチと呼ばれるものがあるが、視聴者さんが言うにはとりあえずカジュアルをやってみるのが良いらしい。
画面が切り替わった。
「ああそっか、最初はキャラ選択か」
選択可能なキャラの顔を映したパネルがいくつか並んで表示されている。この中からキャラクターを選択するのである。私は始めたばかりなので選べるキャラクターは限られている。といっても、少ないわけでは無い。むしろバラエティーに富んでいる。
忍者みたいな風貌の女性、ガスマスク付けたおじさん、明らかに機械のメカメカしぃキャラクターなど。
「どれにしようかな・・・」
制限時間があるのであまり悠長にはしていられない。視聴者さんがオススメするキャラクターを教えてくれる。目を向ける。
ライライちゃんは回復キャラだからおすすめよー
レイズはスキルが優秀だぞ
ブラッディハウンドかなーやっぱww(聞いてない)
「じゃあこの人にするわ」
そう言って選んだのはパーマが似合う戦闘服の女だった。視聴者ガン無視ですまんな。
姓は知らん名はガンバロール。武器のスペシャリストらしい。かっけえ。
「この女、強そうだから好き」
ガンバロール!?
渋いね~
確かに好きそうだなw
強者は惹かれ合うのか
ガンバロールを選択すれば「敵はすべて潰すわよ」とかいう勇ましいキャラクターボイスが流れた。よし、潰そう。一緒に世界の覇者となろう。
私の次には、私とチームを組む二人の野良の人がキャラクターを選択する。
BPEXは3人一組で戦うチーム戦の仕組みを取っている。私以外の二人はレイズとゴースティンを選択していた。ジャパニーズ忍者とガスじじい。これで準備は完了である。
再び画面が切り替わって、画面いっぱいに戦場の景色が広がっていた。
それは一言で言えば大自然であった。たくさんの木々がジャングルのように生い茂っており、かと思えば噴火している山々も見えた。それらをミニチュア模型に感じさせるほどの巨大な恐竜も歩いていた。これがBPEXの魅力の一つ、SFチックな世界観である。流行りの異世界転生の如くゲームの中に全く知らない世界が、それでいてどこかにあるんじゃないかと思わせるようなリアルなつくり込みの自然がここに存在している。散歩してるだけでも十分に楽しそうだ。
「それじゃあしゅっぱーつ」
スタート地点は飛行船。そこからプレイヤー達は落下をして各々チームで降りたい場所に自由に向かっていく。
場所を選択する権限はジャンプマスターに委ねられている。
私である。
「地球の彼方へさあ行くぞ!」
早速イきってて草
赤い光線みたいのが伸びてるところは絶対行くなよ!絶対だぞ!
他チームと被らないように気を付けて
嫌な予感しかしない
「あ~あそこにするか」
私が目を付けたのはいくつかの民家?と謎のコンテナが積まれている場所。特に家の中はアイテムが転がっていることが多いので(と、他の配信で見たので)よさそうに思えた。
他チームを来ていないようだったし。
この私の考え。結論から言えば、まあ合っていた。家の中には確かにアイテムが落ちていた。だがそれよりも私の目を引いてしまったものがあった。
「ぐえええええええぇぇぇぇ」
獣型の恐竜である。巨大でかっこいい狼みたいな虎みたいなのが檻付きのコンテナに閉じ込められていた。なぜ閉じ込められているのか、理由は分からない。コンテナが辺りに散乱していて船なんかも陸に転がってるから、きっとどこかに輸出する途中だったんじゃないかなぁ・・・。などと妄想を膨らませて勝手に楽しくなる。画面右下の私がまるで宝物を見つけた子供のように目を輝かせているのが自分でも分かる。こういう架空生物とか大好きなんです、たまらんです。
獣は口を歪ませて鋭利な犬歯を覗かせて、ガンバロールを睨みつける。そして咆哮する。
「ぐええええええぇぇぇぇ」
「ぐえええええ!!!」
私も真似をしてみた。
「「ぐえええええええぇぇぇぇ」」
共鳴するの草
なんでぇwww
相変らず声真似が上手い
ニッチ過ぎるってw
可愛い
束の間のデュエットを楽しんでいると、突然に横から銃声が3発ほど聞こえた。直後に銃弾のエフェクトが獣を捉えた。
「ぐえっ!?!?」
「けものおおおおおお!?!?」
獣は倒れた。
可哀想だ・・・
無慈悲なり
弱 肉 強 食
誰だこんなひどいことをする奴は今夜のおかずにして食っちまうぞとばかりに憤って銃声がした方向を向けば、仲間の一人であるレイズが立っていた。
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、マップに位置表示のためのピンを連続で指している。
“とっとと漁れ”という意味である
「叱られた・・・」
そりゃそうよw
恐竜見るゲームじゃないからなぁ
ゲームでも働かなきゃいかんのか・・・
のんびりしてる暇なんてないんじゃよぉ!
私は死んだ獣の無念を思い若干の抵抗とばかりに唇を尖らせるが、
ばん! ばん!
「すいません、、働きますぅ。。」
すぐに瓦解した。
私は了承を示すようにガンバロールの視点を上下に振って頭を縦に振ると、急いで民家の中へと移動した。レイズはそれを後ろで見届けていた。これは現場監督レイズ。
家中にはいくつかアイテムが落ちていた。青い円柱状のものはキャラを守ってくれるシールドの回復アイテム。体力を回復するための医療箱や注射器。銃弾。銃。これらも落ちてた。私が拾えたのはモダンピークという名前のショットガン。
ショットガンって強いんじゃなかったっけ?
「モダンピークどう?」
ワクワクさんも作れる
百円ショップで買える
ショットガンの恥さらし
土に還せ
「えぇ・・・」
予想以上にフルボッコだった。どうやらあまり性能がよろしくないらしい。と言ってもそれ以外銃は見当たらないし、丁度ショットガンの弾も落ちてたので持っておくことにする。
その後も目についたアイテムを手あたり次第拾い続け、気付けばアイテムポーチがパンパンになってしまっていた。
何でも拾うの草
ハムスターじゃんw
スコープとかいらないもんは捨てとけ
スナイパー用の銃弾いらんくね
目の前には回復用の注射器がある。敵に見つかったら被弾しない訳がない、ハチの巣になる自信があるので、回復アイテムは少しでも多く持っておきたい。そのため敵の来ない今のうちにアイテム欄を整理しておくことにした。
「これはいらない」
「これもいらない」
「あ、でもこれいる」
「と思わせていらない」
「からのいらない」
「しかしいる」
お ば あ ち ゃ ん
急げ―
謎のフェイント入ってくんの草
初心者の頃は整理も大変よな
「えーっと、これはいらな・・・い?けど、後で使えるかも知れないしなぁ なんか黄色く光っててレアそうだしなぁ・・・」
その場に立ち止まってしばらく慣れない操作に悪戦苦闘していた。だがここは戦場。そんな悠長を易々見逃してくれるほど敵は甘くなかった。
タッタッタッタッ
階下で聞こえる足音。
「ん!?」
来てる来てる来てる!
臨戦態勢とって!
リオちゃん出番よ~
出撃準備いいいいい!
マップを見れば仲間の位置は少し遠い。つまり近づいてきているのは味方ではない。
敵である。
タットッタットッタッ
「やばいやばいやばいやばい!!!!」
昇ってくる足音!私は滅茶苦茶慌てた!慌てふためいた!見よ私の顔を!瞳孔が開きっぱなしである!
「アイテムウィンドウ仕舞えないんですけどもぉ!!閉じろ閉じろ閉じろエヴァに乗れエヴァに乗れエヴァに乗れ!!いあああああ無理無理カタツムリ!!」
情緒狂ってるwww
アイテム欄出すときとおんなじボタン押せばいいのよ
Iキーとかじゃねえの?
いまの初期設定ってどれだっけー?
「消えろおおお」
アイテム欄出すときどのボタン押したか忘れたのと、敵がすぐ近くに迫ってるので、もう滅茶苦茶になりキーボードのそれっぽいキーを片っ端から押してった。するとやがてアイテム欄は消えたのだが次にはBPEXの画面がタスクバーに引っ込んだ。
「ふぁ!?」
あっ
やばい
BPEXさん!?
デスクトップのゴリラちゃんうほうほ~^^
定期的に公開していくスタイル
無論、急いで再表示。
目の前には近くに来ていた敵がいた。マスクを被ったガスじじい。どうやら銃を持っていないらしい、素手でめっちゃ殴りかかってきている。
「やめろぉ! 暴力は何も生まない!!」
私は叫びながら逃亡を開始した。距離が近すぎて銃撃つってレベルじゃねえぞ。とにかく外を目指した。
追っかけてきてるやんけ。
「くそ、拳が可哀想だと思わないのか! 親が泣くぞ!」
拳が可哀想って何w
逃げろー
相手もよく殴りかかって来るねえ
ずっと追ってきてて草
「なんかしたのか私があ!?」
私は総合プレイ時間1時間の持てる限りのプレイスキルでひたすら部屋の外へと走った。入り口の扉の開け方で多少詰まったが、何とか外へ。しかしまだ追ってくる。殴られるとゴンッ!という鈍い音がして体力が減るので、後ろを見なくても分かる。もうすぐ体力がなくなりそうなのも分かる。
「どうやったら逃げれるんだこれ!」
私は逃げながらも視聴者に助けを求めた。何かスキルとかの概念があった気がするんですがいかがでしょうか大将!私は画面とコメント欄を右に左にすごい早さで交互に見る。首が取れちゃいますよ大将!
Qキー
Q押せ
Zも押しとけ
煙を出すのだ
「Qだぁ?」
私は藁にも縋る思いでQキーを押した。
するとあら不思議!
キュポンっ
と気持ちのいい音がすると共に、正面にスモークがもくもく焚かれたではありませんか。
「おお!」
これで勝ったな
※煙を焚いただけです※
ゴキブリみたいな相手だしこれで効くやろ
リオちゃんモクモクで草
私はその中に突っ込むと、そのまま走って、スモークの向こう側へと抜けた。
しばらく走った後で立ち止まる。気づけば殴られる音が止んでいた。振り返ると、敵のガスじじいは追ってきていなかった。どうやら煙で流石に諦めたらしい。
「助かったあ」
回復アイテム巻いて
回復回復!
その前に隠れないか?
「ああ、そっか」
敵がいなくなったことで一瞬満足してしまったが、次が来ないとも限らない。忘れてた。初心者の私は歩きながら回復とかいう芸当は出来ないので、とりあえずその場に立ち止まって回復アイテムを使い始めた。回復アイテムは効果が発揮されるまでには一定の秒数を必要とする。私はその間、何の気も無しに煙を画面に映し出していた。
「そういえば、私がこんなにピンチだって言うのに仲間はどこで何をしてるんだろ」
のろのろしてるのが悪い
素手相手に負けそうになってた銃持ちがいるらしい
アイテム漁ってるよー^^
回復アイテムが効力を発揮するのを待っていると、やがてスモークが無くなった。
予想通りというか、ガスじじいはいなくなっていた。
「良かったあ」
体力も回復したのでこれで一安心。と、安堵の息を漏らしたのだが・・・
ドゥっ!
再び殴られた。
「ふぇ!?」
!?!?
また来たあww
第二ラウンド開始ぃぃ!
背後。振り返るとさっきのガスじじいがいた。
「うわあああまたお前かぁ!!!」
音もなく背後に回り込んでいたとは、本当にゴキブリじゃないですかやだ。懲りずに殴りかかってくる。私は流石にやられっぱなしも癪であったために拾った銃で、モダピで、応戦することにした。
バン! バン!
「当たるかこんなもん!!!」
弾は敵の横を華麗に抜けていく。
こちとら止まってる的にすら当たんないんじゃ!動く的に当たるわけないだろ!!!
綺麗に外れんの草
美しい・・・
これは・・・駄目ですね~
^^;
私が銃弾を外している間にもどんどんと殴られ、体力がゴリゴリ減っていく。
もう2発くらい貰ったら死ぬ。
ドゥっ! ドゥっ!
「も゛う゛や゛め゛て゛く゛れ゛え゛」
私が命乞いに全力を向けるのと、それはほぼ同時であった。
バババババババッッッ!!!
「!?」
どこからともなく聞こえてくる銃声。無限に連なる重低音。
これは・・・マシンガン!
バババババババッッ!!バババババババッッ!!
私に今まさに迫ってきていた敵はたくさんの被弾をして、あっという間にキルされた。横から銃弾が飛んできていた。私は左に視点を向ける。
そこに立っていたのは、先ほど私を叱ったあのレイズ。
「現場監督ううぅぅ!!!!」
私は安心と喜びでつい叫んでしまった。
謎の感動シーンで草
ほら泣けよ、クライマックスだぞ
何だこれw
右には仲間のゴースティンも立っていた。
戦場は、
あったけえなぁ。。
りお。