「とりあえず、これでいいか」
「――ベースキャンプの設置を確認したよ、無事で何よりだジュリオ君」
設置が完了すると同時にドクターから通信が入ってくる
よし、これでカルデアからのバックアップが受けれるようになった
まずはサーヴァント達とパスを繋げるために仮契約を行うか
「はい、今のところは問題ありません」
「では現地のサーヴァントとの仮契約を行うのでサポートをお願いします」
「うん、分かった じゃあちょっと待ってね」
その後いくつかの作業を行い仮契約が完了する
あくまで中継地点の役割だけだ、体の負荷はあまりない
問題は一気に宝具を使った時にどれだけパイプが破裂しないように制御できるか……
まあこれは、実際その時にならねえとこれはわかんねえな
「では、少し移動するので通信を切ります」
「絶対に、無理はしないようにね」
「いつだってカルデアに戻ってきてもいいんだ」
――それは、出来ない
「……はい」
返事だけはして通信を切る
「アーチャー、ライダー達が守ってるっていう街まで案内してくれ」
「ああ」
それだけ言うとエミヤが先を歩き始める
ジャンヌが何かを聞きたそうにしているが、無視してそれに続く
――――――――――――――――――――
エミヤの案内により街へと到着する
「ここだ、ライダーとセイバーはあちらの詰め所にいる」
「アサシンはあそこの部屋だ」
「そうか、じゃあまずはアサシンのほうに顔を出してくる」
「いくら戦えないって言ってもパスは繋いでおいた方がいい」
「では私は先に詰め所のほうに行ってますね」
スルーズだけ連れてアサシンがいるという部屋にたどり着く
「どうぞ」
あっちもサーヴァントだ
ノックするまでもなく部屋の中から入室の許可が下りる
そして扉を開くとそこには「美しい」そうとしか表現できない女性がいた
「……あ、いや ジュリオ・ピオッジャ、カルデアのマスターだ」
「戦わないとは聞いてるが、一応パスを繋げに来た」
エミヤはアサシンって言ってたな、てことはこれはステンノか
これは、すげえな
「そう、あなたが」
「私は女神ステンノ、聞いてる通り戦いたくないの」
「今回私は見に来ただけ、あなたも分かってくれるわよね?」
そう言うと最後に笑いかけてくる
その顔に視線が吸い込まれ、頭にもやがかかったかのように気分が浮つく
――美しい笑顔、守らなければ
違う、本当に守らなければいけないものは、これじゃない
これは何だ…? 頭が割れるように――
――美しい笑顔、守らなければ
ああ、そうだ
この笑顔を守らないとな
「………。」
無言でスルーズが俺の目の前に立ち視線を遮る
そして視界が遮られたことで正気に戻る
……あぶねえ、これが「女神」か
一瞬で意識を持っていかれた
「――あら? へぇ~、なるほどねぇ」
ステンノが興味深そうにスルーズを見つめる
「何がですか」
「別に?」
「……彼には既に『愛』があります」
「その感情を理解するために、邪魔させたくないというだけです」
「私は別に何も言ってないのだけど?」
「表情や言動から理由が聞きたいのだと判断しました」
「――ふふっ、面白いからちょっと付き合ってあげる」
「邪魔、そういったわよね?」
「そもそも、あなたの目的が一番その『愛』を邪魔してるんじゃなくて?」
「それは……」
「ほら、行動原理と矛盾してるわ? 何故なんでしょうね?」
「何故……?」
「よく考えて? あなたは自覚してるはずよ、今自分が何を思って何を考えているか」
「私は…… いや…… ちが……」
無理矢理な感情の自覚、アイデンティティの崩壊
この女神が何をしたいかは知らんがこれ以上はまずい
いきなり意志を持ったらどうなるか
――心が形成される前に壊れる
「パスは必要ないってことでいいんだな、失礼させてもらう」
無抵抗のスルーズを引っ張って部屋を後にする
「あら、残念 もう少しで面白いことになりそうだったのに」
――――――――――――――――――――
部屋から出てしばらく立ったがスルーズがまだ錯乱している状態から戻らない
「おい、大丈夫か」
「違う、私は、違うんです」
何かに怯えたようにそれだけを繰り返す
「分かってる、そうだ お前が正しい」
「あの女神の言うことなんて気にするな」
何が違うのかは知らねえ
だがとりあえず、無理矢理にでも自己を肯定しないと壊れる
「違う、違う、違う」
クソ、あの女神余計なことしやがって!
関わるべきじゃなかった、味方だと思って油断した
そうだ、そういう存在もいる、最初から分かってたじゃねえか
とりあえず部屋を用意してもらったのでスルーズをベッドに無理矢理押し込む
後はもう適当に相槌を打ちながら落ち着くまで近くにいてやることしかできない
しばらく、時間はかかりそうだな
ステンノ様のかわいいイタズラ