Bチームの生き残り   作:いさな

15 / 25
第5節 変化

目を覚ますとベッドの上

 

「ここは――」

 

段々と何が起こったのかを思い出す

 

「大丈夫」

 

そう、大丈夫

気分は大分落ち着いた

あの感情は一時の気の迷い……

いや、あの女神が私の中身を変えたに違いない

そうだ、そうとしか思えない

 

「ぁ」

 

周囲の状況を見渡すと傍らには眠っているジュリオの姿

 

――ずっと、付き添ってくれていた

 

■されている

私だ、今私だけが彼に■されている

 

自然と顔に笑みがこぼれる

 

「――ッ!」

 

駄目だ、まだ冷静になってない

 

「――こんばんは」

 

「ひっ」

 

あの、女神だ

 

「そんなに怖がらなくてもいいじゃない」

 

「やだ、やめて もう私を変えないで…!」

 

もうこれ以上はおかしくなる

 

「――あぁ、なるほど」

「別に中身を変えてはいないわよ? ただ、私は自覚させてあげてるだけ」

「だって、その方が面白くなりそうなんですもの」

 

これが私の本心……?

そんなわけない、こんな汚い感情は私のものじゃない!

 

「私の魅了にも一瞬耐えるほどの一途な愛、いいわよねぇ」

「まるで物語の勇者とお姫様みたい」

 

そう、綺麗な 私の好きな物語のようにとてもきれいな愛

 

「そんな風に愛されてみたい」

「そう思うのは別に悪いことじゃないわ」

 

――私だってそんな風に愛されてみたい

――そうだ、だって所長という人は死んでいる だから今なら私だって

 

「――それは、駄目」

 

だって、だって

 

「何で?」

 

「ワルキューレにそんな感情は――」

 

「じゃあ、私が許可してあげる」

 

「――え?」

 

「ええ、女神である私が許可してあげる」

 

その許可は大神とは関係のないただの言葉

それでもその言葉をきっかけに私の中の感情が暴れ出す

 

――私も愛されたい、一途な愛を捧げられたい

 

「どうせ結ばれることはない運命ですもの」

「なら貴方と結ばれた方が彼も幸せでしょう?」

 

――そう、かもしれない

 

「だから、取っちゃえばいいのよ」

「そしたら彼の愛はあなたが一人占め、あの愛があなただけのものになるの」

 

――あの愛が、私だけの……

 

「ねえ今貴方は何を考えてるの? ほら、私に教えて?」

 

「どう、すれば」

 

「ん?」

 

「どうすれば、(あの愛)を手に入れることができるんですか」

 

「――ふふっ、じゃあ、レッスンと行きましょうか」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「――起きてください」

 

あれ、俺いつの間にベッドで……

 

「レッスン1、良妻アピール、です」

 

「は?」

 

……何言ってんだ?

 

「ジュリオ、おはようございます」

 

「お、おはよう」

 

何か雰囲気が変わった、か?

 

「朝食も用意してあります」

 

「いや、なんというか えらい豪華だな……」

 

普通の朝食の範囲内ではある

だがレイシフト先で食べるのは携帯食料くらいだと考えていた

 

「カルデアからのバックアップの試験でもあるとのことです」

「さらに精神的な安定を図るためともロマニが言っていました」

 

「ああ、なるほどな」

 

相変わらずの過保護だな……

 

「それに、初めての朝でもあります」

「士気を高めるために特別感を表す演出は必要でしょう」

「そういえば好物を聞いていませんでしたね」

「この機会に相互理解を深めるのも――」

 

やはり何かがおかしい

 

「なあ」

 

「何ですか?」

 

「急にどうした やっぱり昨日の影響が――」

 

「ふふっ、問題ありませんよ」

「ええ、今後のために必要と感じただけです」

 

そういうとスルーズは笑みを浮かべる

今まで見てきた微笑みとは違う、満面の笑み

 

「あ、ああ そうか、それなら……いいんだが」

 

別に反抗的になったってわけじゃない、が気になる

絶対何か変わったよな……

 

そんなことを思いながら料理に口を付ける

 

「――どうですか?」

 

「……美味い」

 

「それは、良かったです」

 

なんだこれは

一晩の間に何があった

明らかにおかしい

 

「……令呪を持って命じる、正直に話せ 何が起こった」

 

こんなことに使うのは馬鹿らしい

ただ、どうしても気になる

 

「あのおかげで少しだけ感情というものが分かっただけです」

「私は貴方に好感を持っている」

「それを表してみたのですが、不快でしたか?」

 

余りにも一直線にぶつけてくる好意に思わず黙ってしまう

 

「不快でしたら、やめます」

 

分かりにくいが悲しそうな顔

令呪まで使ったんだ、それに抵抗したかの素振りもない

多分だが嘘は言ってないだろう

なら今のところは別にそこまで気にする必要はない、か?

 

「それなら、別にいい」

 

「――はい!」

 

一瞬にして顔に笑みが戻る

 

人間味の薄い方が付き合いやすかった、それは俺の都合だ

変わっちまったのなら仕方がない

どっちみち上手く付き合っていくしかない

 

「じゃあ次は残りのセイバーとライダーに会いに行くぞ」

 

「はい、では片づけをしますので…… 後から合流します」

 

「あー、そうか すまん任せた」

 

こちらとしても急な変化に戸惑っている

頭の中を整理するために一人になれる時間が欲しかった

 

逃げるようにドアから出ていく

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ドアから出ていくジュリオを見送る

 

「少し、焦りすぎましたかね」

 

あまり警戒されてもよくない

ただステンノ様は最初は露骨に攻めろと仰っていました

 

「……難しいですね」

 

始めてだ

このもやもやする気持ち

意識せずに顔に笑みが浮かぶこの感情

 

「そうです、矛盾はしていない……」

「私には彼を勇士へと育て上げる義務がある」

「そのためには――」

 

『監視して』

『指示して』

『矯正して』

 

――最後は、全てを私に委ねる

 

「――素晴らしい」

 

そんな未来を想像するだけで胸が燃えるように熱い

 

「でも駄目 そう、焦らないのが大事」

 

今彼の胸の中にいるのは所長という人物

だから今は何をやっても無駄

 

「未練がなくなった状態で生を終わらせる」

 

それが今の私の目的

もしかしたら所長という人物と結ばれるかもしれない

それはしょうがない

想像するだけでどうしようもなく胸が痛いが、一生心の中にいることのほうが嫌だ

 

「でも大丈夫」

 

――最後に彼のそばにいられるのは私だから

 

「ふふっ」

 

勇士に対して奉仕するのは私の義務

そのための能力があり熱意もある

 

「お互いに損をしない合理的でとても素晴らしい計画」

 

ああ、待ち遠しい

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。