Bチームの生き残り   作:いさな

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第8節 黒い聖女

「あら、思ったより早かったですね」

「しかも消耗もしていない、あの男は何をしているんだか」

 

十字架に吊るされたジャンヌが目に入る

 

「ジャンヌ!」

 

呼びかけるも意識を失っているようで反応はない

 

「はい、なんでしょう?」

 

「……違う、お前のことじゃない」

 

黒のジャンヌ

相当の激戦だったようでボロボロだ

あちらの消耗は激しい

 

「――アッハッハ! そうね、私はジャンヌ・ダルク(それ)じゃないわ」

「でも、知ってる? 貴方達が倒して来たヴラド三世、ドラキュラですって!」

「作家が勝手にモデルにしただけで座にまで影響するなんて、もうおかしくっておかしくって」

 

「………。」

 

「ああ、ごめんなさいね」

「話を戻すと、違う存在だなんてことは分かってるわ でもそんなのは関係ない」

「私が勝ったの」

「――だから私が、ジャンヌ・ダルクよ」

 

やりたいことは分かる

アイデンティティの確立、自分という存在の証明

分かるからこそ彼女の製作者に腹が立つ

 

「貴方達のことなんてどうでもいいの」

「ほら、早く帰りなさい? 見逃してあげるわ?」

 

「それは出来ない、聖杯は奪わせてもらう」

「――ランサー」

 

「はい、かの勇士の魂を汚した罪…… 償いなさい!」

 

そう宣言すると同時にスルーズが黒のジャンヌへと突っ込む

 

「……そう」

「じゃあ、死になさい」

 

無尽蔵にどこからか生み出されるシャドウサーヴァント

スルーズ単騎で聖杯とまともにやり合って勝てるとはもちろん思っていない

命令は『こちらに注意を向けさせる』、それだけだ

 

――白のジャンヌから意識を逸らす

 

まだか……

合図は宝具の解放

 

「――偽・大神宣言(グングニル)

 

来た、タイミングは今!

 

「令呪を持って命ず! 敵を打ち取れ ――ジャンヌ!」

 

カルデアの令呪と言っても少しは強制力がある

ジャンヌの意識を無理矢理に覚醒させる

 

「ハァ――!」

 

意識の外からの攻撃が黒のジャンヌへと突き刺さる

 

「――ッ!」

 

戦闘でボロボロになっていた黒のジャンヌにその一撃を耐える術はない

それと同時に作り出されたシャドウサーヴァント達も消滅が始まる

 

「許……さない、私は決して…… 許さない…ッ!!」

 

……これは無理矢理作り出された人形だ

過去の記憶などない、ただ理由のない憎しみを詰め込まれ、胸を焦がす

例えフランス全土を燃やし尽くしたとしても、全ての目的を達成したとしても一生消えない憎しみの炎

 

「――安らぎを」

 

無機物相手にしか効果はない感情を付与する魔術

もちろんサーヴァント相手になんて少しの効果も起きない

これはただの足掻きだ

せめて、せめて最後の瞬間だけは安らぎを、そんな気持ちを込めて

 

「―――」

 

消滅する間際の最後の顔が穏やかであったのは気のせいだろうか

そんなことを考えている間にジャンヌオルタが完全に消滅する

ルーラーとしてのジャンヌオルタはもうどこにもいない

 

「――マスター」

 

スルーズが声をかけてくる

その声はこちらを心配するかのような響き

 

「まだ終わってない」

 

「倒されてしまいましたか」

 

姿を隠していたサーヴァントが一騎、目の前に現れる

 

「……ジル・ド・レェ」

 

あれはお前の憎しみだ

何故この人形に背負わせた

 

「しかし問題ありません、聖杯があればまたジャンヌは蘇る! ああ、私のジャンヌ!」

 

聖杯は黒のジャンヌの中にはなかった

そうなると残る可能性はキャスターの手の中のみ

 

「ランサー、聖杯の回収だ」

 

「――了解です」

 

スルーズは生み出された海魔を薙ぎ払いながら進もうとしているが、倒した側からまた新しく生み出されている

 

「私は誓った! 必ずや全てを裏切ったこの国を滅ぼそうと!」

「ええ、あなたがそれを望まないことは分かっている」

「だが私は決して赦さない!」

 

「ジル……」

 

「ジャンヌ、私は今だけは貴方の敵だ」

「聖杯よ、我に力を――!」

 

キャスターの魔力が膨れ上がる

 

「ランサー、令呪を持って――」

 

「いえ、もう 大丈夫です」

 

「……ジャンヌ?」

 

「カルデアのマスター、いえ ジュリオ・ピオッジャ」

「貴方には伝えておかなければいけないことがあります」

 

これで最後、そんな覚悟の入った目がこちらを射抜く

 

「――ああ」

 

「貴方は理由のない救済などおかしい、そう言いましたね」

 

助けるのに理由はいらない、そんなことをジャンヌが言った時に確かに口が滑った

 

「――でも、理由がない救済は決して間違ったものではない」

「私は私の行いに後悔はありません」

 

「貴方は自分の道が正しいか悩んでいるのでしょう?」

「だから救国の聖女として、助言しておきます」

「――救いたいと思ったのなら迷わず救いなさい」

 

「……救国の聖女がそう言うなら、その通りなんだろうな」

 

「ふふっ、どうやら貴方は素直じゃないようので、こうでも言わないと聞かないでしょう? では、伝えましたからね?」

「これでさよならです」

「主よ、この身を委ねます ――紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)

 

全てを燃やし尽くす炎がキャスターとジャンヌを包み込む

 

「それは、それだけは いけません、ジャンヌ」

 

しかし直後にキャスターの持つ聖杯が光り輝く

そしてそれと同時にジャンヌをまとう炎が消え去っていく

 

「――ジル、これじゃあかっこつかないじゃないですか」

 

ジャンヌがジルに向かって拗ねたように視線を移す

 

「ははっ、すいません ――ただ、私は満足です」

「あの時救えなかったあなたを、そうまるでその夢が叶ったかのようで」

 

キャスターの狂気に包まれていた目が少し和らいでいる

 

「――さよなら、ジル」

 

「ええ、では またどこかで――」

 

キャスターが消滅する

 

「さて、えーっと じゃあ私もそろそろ座に帰るんですが」

「ちゃんと、伝えましたからね?」

 

ジャンヌが拾った聖杯を手渡しながら確認してくる

それと同時に特異点が崩壊していき強制送還が始まる

 

「ああ、分かってる もう迷わない」

 

そしてカルデアへと戻る間際、何かが視界に入る

これは黒い、羽――?

 

まあ、いいか

これで聖杯を勝ち取ったんだ

特異点Fでは回収したのは俺ではなく実質サーヴァントだけの力だった

確かな達成感を感じながら身をゆだねる




これで第一特異点終了です
お気に入りや高評価などありがとうございます
UA含め大変励みにさせていただいています

この後も同じように幕間を数話投稿した後に第二特異点となりますのでよろしくお願いします
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