第1節 破壊された世界
「じゃあ以上でブリーフィングは終了だ」
「準備は大丈夫かい?」
「はい」
「目標のためには残り一つ、でも――」
「無理はしない、ちゃんと分かってますよ」
いつも通りのドクターの忠告
「じゃあ次は装備の確認を――」
「礼装含め装備も問題ありません」
相も変わらず心配性なドクターに思わず笑みが浮かぶ
「この私が腕によりをかけて整備したんだ、問題ないとも」
「うん、それならいい」
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
……そういえば前は返してなかったな
「――行ってきます」
レイシフトが始まる
――――――――――――――――――――
目を開けると視界一面が破壊で埋め尽くされている
――何もない
建物も、自然も、全てが破壊されている
レイシフトは何の問題もなく無事に完了した
ここは西暦60年の古代ローマ帝国なはずだ
でも目に映る光景からはあの繁栄を連想できない
『ここは本当にローマなのか?』
そんな疑問で頭が埋め尽くされる
一面全てが破壊されつくした世界
「――目標発見」
振り返ると褐色の肌の女性
そしてその手に持つ剣は三色に輝いている
……アルテラ?
「これは、姉妹の気配?」
この特異点にいるのは分かっていたが登場が早すぎる
原作通りに聖杯で生み出された個体だとしたら単騎では勝ち目がない
何とかして逃げ出さなければ
「破壊する」
そう宣言すると同時にスルーズに対してアルテラが切りかかってくる
だがその動きは俺にも何が起こったかが分かるほどに遅い
そして一瞬で剣を弾き飛ばされ、体が槍で貫かれたアルテラは消滅する
「……脆い」
聖杯の力にしては、いやそれを抜きにしてもあまりにも弱すぎる
……サーヴァントではないのか?
「これはいったい――」
「目標発見、破壊する」
「なっ!?」
倒したはずのアルテラがもう一人
いや一人どころじゃない、これは何人いるんだ
周辺にある数えきれない魔力反応も全てこちらに集まってくる
「――ジュリオ」
スルーズが呆然としていた俺に声を掛けてくる
「ああ、分かってる!」
「クソ、とりあえず一点に集中して突破する」
「了解しました」
一体一体の強さは弱い、ある程度は囲まれても問題ないだろう
ここはごり押しで突破する
しばらくそのように移動しているとスルーズから報告が入る
「――戦闘が行われているようです」
「サーヴァントか?」
「……おそらくはサーヴァントかと」
「申し訳ありません その、感知能力の調子が悪いらしく」
ワルキューレとアルテラは大本を考えると似たような存在だ
だからこの無数にいるアルテラに対して戸惑っているんだろうな
だが感知能力は信頼しても問題ないはずだ
「今は少しでも情報が欲しい、合流するぞ」
「はい」
『
そんなワードが頭に浮かぶ
いや、そんなのありえない
それはこんな所に居ていい存在じゃない
そんな最悪の予想を頭から振り払いながらも合流を急ぐ
――――――――――――――――――――
戦闘が起こっている地帯にたどり着く
戦っているアルテラ軍団とローマ兵
いや見た目は兵だが中身は魔力で作られた使い魔か?
そんな戦い方をするのは――
「目標発見」
ローマ兵と戦っているアルテラが全てこちらに注目する
「破壊する」
「なんでだよ!」
目の前のローマ兵からの攻撃を気にせずこちらに向かってくる
何故こちらが優先されているかはわからない
それはともかく量が多すぎる、ここは一気に殲滅するべきか
「ランサー!」
「はい、宝具展開します」
「――
光の槍が着弾と同時に魔力の爆発を引き起こす
兵も巻き込んだがあれはただの使い魔だ
……まあ、問題ないよな?
「派手にやるではないか」
アルテラ軍団と戦っていたであろうサーヴァントがこちらに声を掛けてくる
赤い衣に月桂樹の被り物、そして何より太った姿
『ガイウス・ユリウス・カエサル』だ
「ふぅ、ともかくようやく一息つけるな」
「さてでは自己紹介をしておこう」
「サーヴァントセイバー、真名はガイウス・ユリウス・カエサルだ」
真名まで明かすということは仲間ということか……?
確かにこの特異点で起こっている現象はもう既に原作とはかけ離れている
カエサルがローマを守るために召喚されたというのは別におかしくない
「ジュリオ・ピオッジャ、この事態を解決するためにここに来ました」
「ふむ……」
何かを考えこむかのように一瞬言葉が止まる
「そしてその隣にいるのはワルキューレ、か なるほどな」
「……」
こちらから名乗っていないにも関わらず当てられる
見た目がそれらしいし宝具もオーディン関係ということでか?
「――はぁ、仕方あるまい」
何かを諦めたかのように深いため息を吐く
「……何かありましたか?」
「いや、なんでもない 何を言っても既に手遅れだ」
「では私たちの拠点まで案内しよう」
「手遅れ、とは?」
「言ってもどうしようもあるまい」
「私は無駄なことはしない主義なのでね」
それだけ言うと先を歩きだす
不穏だが無理に聞き出せるとは思えない
大人しくついていくしかないか