カエサルに案内された場所は一つの街だった
破壊の跡が全くない、それに――
「――これは」
凄まじい神秘が込められた結界だ
これがこの時代の魔術なのか?
現代とは比べ物にならない
「神祖と宮廷魔術師が作り出した結界だ」
『神祖ロムルス』
なるほどこれがあの国造りの槍の能力
正確には違うが『神』と呼ぶに相応しい桁外れの力だ
「一時的にではあるがこれで奴らの侵攻を防いでいる」
「では、迎えが来るまで少し待て」
「はい」
そりゃそうだ、こんな結界破って入ることなどまず出来ない
だがこれでも一時的なのか
敵はどれだけの力を……
いや、そんなことよりもまずはこの特異点で何が起こっているのかを聞いておかなければ
「それで、あの戦っていた相手は?」
「ふむ、そうだな」
「あれが何なのかは私にも分からん、だが目的は分かった」
あれがアルテラだとするならば『文明の破壊』
行動からしてもそう間違ってはいないはずだが――
「貴様だ」
俺が、目的?
「今まではあの巨神、そう本体が中々出てこなかったのが厄介だった」
「だがこれで材料は全て揃った」
「――それならばあとは勝つだけだ」
軍略に関してはトップクラスの実力を持つサーヴァントだ
そこは信頼しても問題ないだろう
ただ気になるのは『巨神』というキーワード
「巨神……」
「――こうなった元凶だ」
「あれこの大地に降り立って全てが始まった」
「何が起こったかは最初からそれを見ていたこの代の皇帝に聞くがよい」
この代の皇帝って言うとネロ・クラウディスか
ローマ帝国第五代皇帝、この世界だと男装の麗人
「無数の使い魔に対しての対応はカリギュラが…… バーサーカーがどうにかできる」
「そしてあの巨神は神祖がどうにかする」
どうにかするってそんな無茶苦茶な、とは一瞬思ったが
よくよく考えたら何とかするよなって感じのサーヴァントだな
原作では敵だっただけに味方であることが心強い
「で、貴様は『囮』だ」
「囮?」
「ああ、何故かは知らんが……」
「いや理由は大体の想像が付くが、そんなことはどうでもいい」
「奴らに最優先で狙われる貴様が来た、それが重要だ」
確かに目の前で攻撃してくるカエサルを無視してこちらに向かって来ていた
あれは単純に脅威度という意味ではなく何か理由があるのか?
「巨神本体を叩かねばいつまでもあれらも増え続けるだけだ」
「はい、時間もかけてはいられません」
「あれらは周囲の魔力を吸収し、徐々に強くなっていっています」
ふっと目の前にローブを着た男が現れる
「……えっと、どなたで?」
「ああ、自己紹介が遅れました」
「宮廷魔術師のシモン・マグスです」
「よろしくどうぞ」
そうか、ネロの時代の宮廷魔術師
確か描写はあったな……
神秘が濃い時代の魔術師、すごい気になる
「しかし素晴らしいですね、サーヴァントというのは」
「英霊をそのままではなくこのような形で呼び出すとは……」
「まさか神祖などという規格外の存在と実際会うことができる、まるで夢のようです!」
過去も今も魔術師は変わらないな
ああクソ、こんな時じゃなければ色々話したいことはあるんだが
「……それで、時間を掛けられないってことは」
「ああ、準備を整え次第、直ちに向かう」
「まずはこの代の皇帝に会え 私にはやることが出来た」
「一体何を……?」
「
それだけ言うとカエサルは去っていく
「は、はぁ?」
『ローマ』
その一言に何が詰まっているのかは分からない
というか万能すぎんだよその言葉……
「では私も失礼します」
「街に入れるようにはしておきましたのでこれにて」
そう言うとシモン・マグスは現れた時と同じように消えていく
まあいい大まかな作戦は確認できた
あのカエサルが自信をもっている作戦だ
その通りに進めればまず問題はないだろう
「ジュリオ、『ローマ』とは?」
「……俺に聞かれても分かんねえよ」
「とりあえず最初にベースキャンプの設置だ」
「その次は指示通りにまずは皇帝に会いに行く」
考え込んでいるスルーズを連れて目的地へと向かう
◆◇◆◇
ベースキャンプの設置が終わり、今代の皇帝に会うために玉座へと案内される
「歓迎しよう、異国からの来訪者よ」
目の前の玉座には赤いドレスを身にまとった女性が座っている
いや、これでも男装してたんだっけ……?
「素性を訪ねる前に、まずは余からだ」
「余こそローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディスである!」
「存分に驚き、そして見ほれるが良い」
「特別に許そう! んー……」
「其方ら、名は?」
「ジュリオ・ピオッジャです」
「そしてこちらが――」
「ワルキューレ、スルーズです」
「ほう!これがワルキューレ!」
「神が作りし戦乙女、美しい 良いぞ、実に良い!」
「しかしなんともまあ……」
スルーズとこちらを見比べるように視線が動く
「相手の全てを奪わねば成り立たぬ愛、か」
その言葉にスルーズの肩がビクリと震える
一体何を――
「巨神について、ご説明を」
スルーズが先ほどの言葉を無視するかのように強引に話を進める
……確かに時間がないとは言っていた
余計なことを聞く暇はないか
「む、そうだな」
「あの巨神についてか……」
「始まりは数日前」
「天から白い巨神がローマに舞い降りた所から始まる」
『白い巨神』『アルテラ』
最悪のキーワードが並んでいく
「始めは美の女神が我につられて現界でもしたかと思ったが……」
「――ローマは一瞬にして壊滅した」
「ローマの全てはあの巨神に飲み込まれ、生み出された使い魔どもは破壊の限りを尽くした」
燃え盛るような瞳、握りしめられた拳
暴君と呼ばれてはいるが、それでも領民を愛した皇帝だ
表にはあまり出していないが動作の節々から怒りを感じる
「そこからは生き残りを連れ出し、神祖たちと出会い」
「で、今に至るというわけだ」
「……なるほど」
「神祖は何やらあの巨神について心当たりがあるようでな」
「なにやら神代が衰退した原因、それの欠片であるとか」
『
神代が終わるきっかけとなった異星からの侵略者
本当にそんなものが、敵に……?
……勝てる可能性なんてあるのか?
「欠片、ですか」
スルーズがそう問いかける
欠片……
そうだ、本体は既に死んでいる
考えられるのは聖杯を使ったただの再現、セファールそのものというわけではないはずだ
――でも誰が何のために?
再現だとしてもその作り出した本人はセファールを知っている……
色々と考えるが答えは出ない
「――
突然後ろから声を掛けられる
この独特な一人称は、神祖ロムルスか
……そういえば、カエサルがあの巨神は神祖が対応すると言っていたな
「恐れるな、我が子よ」
我が子……?
「確かに軍神たる我が父はあれに敗れた」
「だが、案ずるな」
「ローマの全てがお前に味方をしている」
「我が槍、我が力、我が偉業の全てを以て、あの巨神を打ち砕くと誓おう」
その言葉には絶対的な自信を感じる
ただそれだけで先ほどの不安など全て消し飛ばされる
「――はい」
「うむ、