気が付くと見渡すと荒廃した街、元の場所に戻っている
そして周囲には戦闘の気配はない
戦いは既に終わった、のか?
じゃあ後は聖杯の回収だけか
「――ハッハッハッハ!!! そうか!倒せるか!」
「ここまでになってるとはちょっと予想外だが…… いいじゃねえか!」
全ては終わったはずだった
なのに何で俺の目の前に――
「ジュリオ!」
俺に向かって飛んできた魔弾をスルーズが弾く
「あぁ? 何のつもりだ、スルーズ」
「まさかとは思うが ――逆らうのか?」
杖を持ちフードで顔を隠し、傍らには二匹の狼
少し雰囲気は違うが、特異点Fで味方だったあの男だ
「まだ! まだあと少しだけ時間を!」
「いい戦士を育てた功績に免じて今の言葉は聞かなかったことにしてやる」
「――そこをどけ」
「駄目、駄目です! せめて、あと少しだけは…!」
「あ…あぁ! アアアアアァ!!」
絶望の涙を流しながらの突進
「またエラーか あらかじめ他とのリンクを切っておいて正解だったな」
腕を軽く振る、それだけで遥か彼方へとスルーズが吹っ飛ぶ
「スルーズ!」
「さて、久しぶりだな 坊主」
……まだパスはつながってる、良かった消えてはない
緊急脱出のための時間を稼げば――
「何かしようとしてんな?」
「―――ッ!」
単純な魔力放出で上から押さえつけられる
「ガアァアアアアッ!」
這いつくばった状態から手を無理矢理動かし、魔術を発動させる
数本の手の形をした使い魔がキャスターに向かって襲い掛かるが全て届く前に霧散する
「おお、これでもまだ抵抗できるか!」
「ここまで育っているとはなぁ いい魂だ、意志が強い」
「そうだ、俺がここにいる理由を言ってなかったな」
更に抵抗しようとすると傍らにいた二匹の狼に押さえつけられる
「簡単に言うと侵略者に対してのリベンジマッチ、その準備だ」
「人理修復、そう言っていたよな?」
「じゃあそれに合わせて定義するとしたらそうだな ――『神理修復』」
「――我々は神の世を取り戻す、死んでもらうぞ勇士よ」
口調が変わる
それと共にキャスターから圧倒的な存在を感じる
――世界が悲鳴を上げる
特異点、そんなちっぽけな世界ではこの存在を受け入れきれない
「ワルキューレを付かせてまで育てたかいがあったというもの」
「ただの予行演習でしかないがまさか退けるとは予想以上の結果だ」
「まだ」
「ん?」
「まだ、終われねえ……ッ!」
「――いい! とてもいいぞ! ……ただ、もう終わりだ」
視界が白く染まる
「――」
衝撃を覚悟していたが何も起こらない
ああ、痛みもなく死んだのか
あっけなかったな
「何を呆けている」
俺を固定していた二匹の狼が吹きとばされる
「――え?」
「あまり時間は持たせられんぞ ――会うだけだ」
狼を吹き飛ばした人物から聖杯を手渡される
赤い衣に頭には月桂樹の被り物
そう、カエサルが目の前にいる
だがその姿は太っている姿ではなく彫像の通りの痩せた姿
「――降霊儀式・英霊召喚」
サーヴァント召喚のオリジナル
今目の前にいるのは「格落ち」したサーヴァントなどという存在ではない
ありのままの英霊としての姿
「システムを少し騙して無理をな」
「貴様、こんなことの為に英霊を捨てるか」
「ああ、こんな勝手などしたら座から消えてしまうだろうな」
「もちろん聖杯に夢を叶える機会がなくなるのは惜しい」
「だがしかし、ここで見捨てるような男になってしまったら、我が妻たちから嫌われてしまう」
「――下らん」
「貴様にとってはそうかもしれんが、私にとってはそれが一番大事なことだ」
「さてでは」
「――愛と美の女神ヴィヌスが子孫、ガイウス・ユリウス・カエサル」
「我が子孫の逢瀬の時間、少しばかり稼がせてもらおう」
神と神、権能と権能のぶつかり合いが始まる
もちろん押されてるのはカエサル側だ
会うだけ、それだけの時間は作ってもらった
――じゃあ、後は伝えるだけだ
「聖杯よ!オルガマリー・アニムスフィアの蘇生を!」
三つの聖杯が光り輝く
万能の願望機、それを三つ使った『奇跡』
膨大な魔力が大気を包み込む
「―――」
蘇生できた、のか?
「――所長」
声を、掛ける
「――ジュリオ」
やった、出来たんだ
本当に生き返った
「痛かった、自分の存在が消えてしまうじゃないかって…!恐かった!」
「……でもそれでも見てた、全部カルデアスの中から見てたの」
「何で、私なんかのために――」
「助けてくれって、言っただろ?」
「ぇ?」
「だから、助けなきゃって思ったんだ」
「……実は俺、爆発が起こってカルデアがああなること知ってたんだ」
「貴方一体何を――」
「死んだ一般職員も所長も俺は見捨てたんだよ」
「それで世界が救えたはずだから、犠牲にしたんだ」
「でもいざ目の前で所長が死んで、助けを求められて……」
「しかも思い描いていた結果とは全然違うものになっちまってる」
所長を生き返らせたことで
自分が必死になっていた理由が今ようやく分かった
「今更調子のいいことだってのは俺が一番分かってる」
「でも、所長には幸せになって欲しい」
うん、これが全てだ
「……ドクター、よろしくお願いします」
通信を繋ぎドクターに所長の帰還を頼む
「――分かった」
「ま、待って! 貴方も、ちゃんと帰ってくるのよね?」
ちゃんと、本当のことを言わないとな
「いや、無理だ 俺はここで死ぬ」
「――ッ! ロマニ!今すぐ中止しなさい!」
「それは…… 出来ないよ」
「ロマニ!」
「ありがとう、ドクター」
やさしさを感じる
思えばドクターには最初から気にかけてもらってたな
「いや! 私は貴方がいないと――」
所長の消えかかった体を抱きしめる
「大丈夫、大丈夫だよ オルガマリー」
「この先に苦難は多数待ち受けてるだろう、でも 貴方は強い人だ」
「俺なんかいなくたって上手くやれるさ」
「そんなことどうでもいい!」
「だって、だってこのまま死んじゃったらもう一生会えない……!」
「――ああ、そうだな」
俺だって、死にたくない
でもここでカルデアに逃げたからといって、どうせ乗り込まれるだけだ
それじゃあ折角助けたのに全て台無しだ
『もっと一緒にいたかった』
最初から素直になって行動してたら違ったのかもしれねえなぁ
「――絶対、絶対に会いに行ってみせる…! ここでお別れだなんて私は認めないから!」
所長のカルデアへのレイシフトが無事に終わる
多分、無理だろうな
そう頭の冷静な部分では分かってる
だけどその一言で安心した
死ぬのが全然怖くない
「それは、楽しみだな」
直後轟音と共に視界が白く染まる
ああ、ここで終わりか
願わくば所長に幸せな未来が訪れますように――
――これで、俺の物語は終了だ
カエサル好き。
というわけで本編終了です!
予想通りといった感じかもしれませんがヴァルハラエンドです。
この後に第二部として
『聖杯を三つ体に宿した所長が過去改変して二週目突入』
みたいなことも考えていましたが、終わりが思いつかなかったので没にしました。
所長がヤンデレするまでの過程を書けただけで私は満足です。
もしいい感じの終わりが思いついたら第二部書きます。
初めての小説投稿だったので文章はちょっとアレだったかもしれませんが、なんとか完結させることができました。
それも全て見てくださった皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。