キャスターから案内された洞窟の中を進む
いよいよだ、この先にセイバーがいる
「ここは、工房のようね」
「おう、大聖杯はこの先だ」
「油断するなよ、俺の予想だとこの辺に――」
所長と俺の目の前で突然何かが弾かれる
「ひぃ!?」
後ろに崩れ込む所長
俺には何が起こったかさっぱりだったが、なまじ能力が良いだけに見えてるんだろうな
――にしても、弾かれたこれは
「剣、か」
「っと、危ねえ危ねえ」
「――お二人さん、信奉者様のお出ましだ あんま離れんなよ?庇いながらにも限度はあるからな」
「別に私は彼女の信奉者というわけではないんだがね」
奥から一人シャドウサーヴァントが出てくる
影となっている影響で見づらいが、多分あれがエミヤだろう
「よう、門番 相も変わらずご苦労様なこった」
特異点Fで事のあらましを理解していながらも自主的にセイバー側に付いたサーヴァント
しかも他のサーヴァント達と違い理性がある
「……なんでそっち側にいるんだよ」
誰に聞かせるでもなく思わず口からこぼれる不満
「マスターを先に始末できればと思ったが、そう上手くはいかないか」
「――さてキャスター、君はそちら側でいいんだな?」
「ああ、そうだ この退屈なゲームは終わらせようや」
「何からセイバーを守ってるかは知らねえが、もう終いだ」
「そろそろ駒を先に進ませないとな?」
サーヴァント二人の間では何かが通じ合っている
キャスターは千里眼が使用できるスキルを持っている エミヤは過去でも現代でもない未来を生きた英雄、それに抑止の守護者だ
両者が核心に迫る何かを知ってたとしてもおかしくない
「人類という種を守る」そんな抑止の守護者が、敵側にいる
今やってる行動は正しいのか?
そんな疑問が浮かぶが、先に進む以外道はない
「――キャスター」
「おう、坊主 覚悟は決まったか?」
「つってもまだ前哨戦だ」
「相性も最高だしリソースはまだ温存しておけよ? 本番はこの後なんだからな」
「言ってくれるじゃないかキャスター」
「確かに君と私の相性は最悪だ それにこの霊基では勝つことは難しいだろうな」
「だが、無傷でここを通れるとは思うなよ?」
――戦いが始まった
契約の際に守れと言われたことは三つ
一つ、出来るだけ敵のサーヴァントを視界に収める
二つ、基本的には自分と敵の間にキャスターがいるような位置取りをする
三つ、攻撃が来ても絶対に目をつぶらない
俺はサーヴァント相手に抵抗できるような腕前を持った魔術師じゃない
守れと言われた三つは全て俺が狙われた際にキャスターが反応できるようにするためだ
「ハァ――ハァ――」
自分に強化を使いながら全力で言われたことを守る
「――くそ、きつい」
「ふむ、基本的なところはできているか」
「前に出てくるような大馬鹿者であれば楽だったのだが」
「ははっ、思ったより動けんじゃねえか 坊主!」
うるせえ黙れ、こっちに喋りかける暇があるならさっさと倒してくれ!
デブを舐めんなよ?限界はすぐそこだぞ?
「さてではもう一人のほうは―― いや、彼方はいいか」
所長は最初に剣が飛んできたところから絶賛パニック中だ
うずくまって震えながらレフに助けを求めてる
あんなに隙だらけだが狙わないってことは、気付いてるんだろうな
死んでいるってことに――
「おいおい、いくら何でも余所に注意がいきすぎじゃねえか?」
杖での一撃が突き刺さり、アーチャーの体を吹き飛ばす
「――ッ! クソ、この間合いは」
間合いが近距離から中距離へと変化する
急いで体制を立て直しこちらに踏み込もうとしているが――
「残念、もう詰みだ」
無数の魔弾がアーチャーに襲い掛かる
アーチャーも弓で応戦しているがキャスターには全く当たらない
「――飛び道具が当たらない、というのは実に厄介だな」
「ハッ、だから最初から言ってんだろ? 相性最高だってな」
そのままじりじりと削られていきやがてアーチャーが膝をつく
「限界、か」
「その状態で俺と戦おうなんざ、ちょっと舐めすぎだ」
「――フッ、そうだな じゃあ後は彼女に任せよう」
「さらばだカルデアのマスター こうなっては無責任な言葉しか伝えられないが――」
「せいぜい足掻きたまえ、その分君は後悔することになるだろうがな」
それだけ言い残し消えていく
クソ、何が言いてえんだ 後悔? 意味深なこと言い残しやがって
「ふぅ、終わった終わったぁ! じゃ、本番と行くか?」
「って言いてえところだが、少し休憩を挟んだほうがよさそうだな」
キャスターがこちらに視線を移す
「ヒィ――ヒィ――」
「きゅ、休憩……しま、しょう……」
数分にも満たない短い戦いでこれか 自分で思うがこれ次、大丈夫なのか?
アサシン戦含めてもう一生分動いた気がする
――ああ、そうだ まだ休憩する前にやることあったな
うずくまって震えている所長に近づく
「所長、終わりましたよ」
「――え?」
え?じゃねえよ
お前がまともに援護してたらもっと楽に終わってんだぞ
「だから、終わりました」
「もう、大丈夫、です」
息を必死で整えながら手を差し伸べる
「――助かったの?」
「と、とりあえずは、ふぅ でも次が本番、ですよ」
お前まじで次は頼むぞ
アサシンの時は何故かは知らんけど、どうにかなったんだ
セイバーには対魔力があるがオルタ化したことでランクは下がってる
所長レベルの魔術なら牽制にはなるはずだ
俺じゃあそれすらも出来ねえ
「休憩してから、奥に、行きましょう」
「何で」
所長が絞り出すように声を出す
は?何がだよ?
休憩する理由か?俺がデブで体力がねえからだよ
――いや、違うか
「この先にいるのは今までとは違う、本物のサーヴァントだ」
「――俺の魔術じゃ、サーヴァント相手にいくら打ち込んでも、目くらましにすらならねえ」
「自分のことを分かってないようだから言うが、あんたは一流の魔術師だ」
もうすでに所長の精神が限界だってことは知っている
マリスビリーが非人道的な行いに手を染めていたことを知っただけでも限界だろうに
それに加えてこんな状況になってんだ
もし全てが無事に終わったとしても待っているものは時計塔や国連からの追求
どちらに転んだとしても過酷な未来
でも、それでも――
「今はそれ以外のことは忘れてくれ、少しでも勝率を上げるためには」
「あんたが必要なんだ、所長」
「どう、して」
だから何がだよ クソ、もう知らね
これ以上は無理だ、体力が持たねえ 次の戦いのために少しでも回復させておかねえと…
後ろに倒れ込みながら耳を塞ぎ念話でキャスターにフォローを頼む
「あとは頼んだキャスター、俺はもう休む」
「これは勝率を上げるために必要だ、どうにかしてくれ」
「全く、素直じゃねえなぁ――」
どちらに向けた言葉なのだろうか
それを考えるのすら面倒くさい、念話を一方的に遮断して目をつぶる
『■けた■った』
――黙れ
面倒なツンデレデブと依存一歩手前の所長
隕石落とせるようなレベルの魔術師って普通に化け物クラスだと思うんですよ
しかも因果逆転までやっちゃうし、チートだよチート
そんだけ能力あるのにメンタルよわよわって… やっぱり所長はかわいいなあ(甘やかし)
エミヤが敵側にいるって改めて考えると、とんでもない状況ですよね
まあ抑止の守護者として敵側に立っていたかは謎ですけど