Bチームの生き残り   作:いさな

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幕間 万能の願望器

ドクターが部屋から出て行ってしばらく時間が立った

 

「何だよ、これは」

 

時間を使ったおかげでだいぶ気持ちは落ち着いてきた

そのはずなのに胸に穴が開いたかのように苦しい

思わず手に力が入り ――持っている聖杯に意識がいく

 

『蘇生』

 

その一言が頭をよぎる

 

馬鹿か俺は 術ジルがそれを願って無理だっただろうが

――いや、待てよ

 

これは術ジルが叶えられなかった完全に一からの蘇生ってわけじゃない

そうだ、所長は精神体でカルデアスに飲み込まれただけ

正確にはまだ死んではいないことを俺は知っている

聖杯の力で呼び戻して肉体を用意して蘇生、そんなことが可能なんじゃねえか?

 

「――アホか、これは人理修復のために」

 

そう人理修復のために ――いや、本当に必要か?

多分、いらねえよな

そうだ なら使っても問題なんて…

 

「駄目だ、冷静になれ」

「ただでさえ主人公がいねえんだ この先で絶対に必要になる」

 

――駄目だ

可能性があると分かったら、そのことばかり考えてしまう

 

「一旦落ち着け 使うにしても、独断でやるのは論外だ」

「カルデアの復旧に必要かもしれねえし、そもそも使うとしても人理修復の成功率を上げるためにAチームにだ」

 

そう思っている、理解している、所長を生き返らせる『理由』はない

なのに何故か自分の思考はどんどんと「所長の蘇生を行うためにはどうすればいいか?」の方向に進む

 

「一つじゃ足りねえよな……」

 

肉体の用意、精神体の救出、精神体と肉体の融合

合計三つだ 三つあれば蘇生できるかもしれない

これはあくまで可能性でしかないが――

 

「足りないのは後二つ オルレアンとセプテムか」

 

俺はそこで何が起こって、何をするべきかを分かっている

 

「――いける」

 

――違う、駄目だ 冷静じゃない

 

……いやでもまずはどちらにしても召喚が必要だな

特異点を解決するとしてもまずサーヴァントがいなければ話にならねえ

 

正直に言うと強制力がそこまでないカルデアの令呪で召喚するのは怖い

従わないサーヴァントを引いてしまったら――

最初は従順でも後から反抗されるんじゃないか――

最悪の想像が次々と頭をよぎる

 

それでも召喚は、絶対に必要だ

 

「一騎、せめて一騎だけは耐えろ」

 

大丈夫だ、最悪の結果なんてそうそう引くはずがねえ 大丈夫、大丈夫だ

自分にそう言い聞かせて体の震えを押さえつける

――情けない態度は召喚したサーヴァントには見せられない

誰がそんなやつをマスターと認めるっていうんだ

 

「覚悟を胸に、刻み込め」

 

『絶対に救って見せる』

 

ベッドから起き上がり召喚ルームへと向かうためにドアを開ける

 

「――――。」

 

周囲を確認して誰もいないことを確認してからこっそりと進む

 

最悪は、強制送還を行えば問題ない

だがそれでも送還までのわずかな間に殺される危険性がないわけじゃない

誰かを巻き込むわけにはいかない

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ここだよな」

 

部屋を開けると中心に光り輝く召喚サークル、そして壁や床一面に広がる天体

まるで自分が宇宙に浮かんでいるかのような感覚を覚える

 

「すげえ――」

 

知識としては知っていたが実際に体験すると思わず見とれてしまうほどに、美しい

 

「これはどうなってんだ? ああ、なるほど そういう仕組みか――」

 

時間を忘れてしばらく部屋を調べまわして大分気分は落ち着いた

いや、逆に高揚してる

 

「よし」

 

このままの勢いでいくしかない

 

「守護英霊召喚システム・フェイト、起動」

 

宣言すると共に召喚サークルに光の珠が浮かび上がる

 

「――――告げる。」

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

「誓いを此処に。 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

霊基が構築されていく

桁外れの力を持つ英霊から、人間でも扱えるように一面だけを写し取る作業

霊基が完成に近づくにつれてクラスが固定されていく

 

「よし、セイバーか」

 

セイバーであればいきなり敵対するようなサーヴァントはいない、はず

基本的には「騎士」といった性格の持ち主が多い

気性が荒いって意味であればモードレッドが当てはまるが、

双方の同意が必要な召喚システムだからわざわざ応じてくれるようであれば問題はないはず

 

「――は?」

 

ふと気づくと、召喚サークルに浮かび上がっているのはランサーの霊基に変わっている

 

どういう、ことだ?

クラスはセイバーに固定されていたはずだ

ランサーで敵対するようなサーヴァントは…

駄目だ、考えてる時間がねえ――!

 

直後召喚サークルが光り輝く

 

「ワルキューレ、スルーズ 召喚に求め参上しました」

「大神オーディンの名の下に貴方をマスターとして認証します」

 

「あ、ああ」

 

頭が混乱してこんな言葉しか絞り出せない

一体何が起こった? 召喚システムに割り込まれたのか?

クラスの確定から変わるような演出、FGOではなかったはずだ

 

「――ふむ、混乱しているようですね」

 

「いや、大丈夫 大丈夫だ」

 

落ち着いて考えろ

ワルキューレなら別に問題ない

ステータスも幸運以外は安定して高いから戦闘能力は問題ない

性格面も人間味が薄く従順なタイプ、そのはず

全部ゲームの中ではの話だが……

 

「そうですか」

 

「ああ、そうだ いや、そうです」

 

「? 私に敬語は必要ないかと思われますが何故言い直しを?」

 

『別に、いいわよ?』

『だから別にいつも通りの口調でいいって私は言ってるの』

『――ええ、分かったわ その内、ね 別に今そんなに拘ることでもないし』

 

脳内にあの光景がフラッシュバックする

 

「――やめろ」

「いや、すまない そうだな 敬語は、やめる」

「座から知識は問題なく与えられているな?」

 

「はい、問題ありません」

「人理修復のため力をお貸ししましょう」

「この霊基が終わるまで、私は貴方に仕えます」

 

よし、これで戦力は入手した

当たりのサーヴァントだ、何も問題はない

 

「まずはカルデア内を案内する」

「何か質問があればその都度言ってくれ」

 

「分かりました」

 

『絶対に救って見せる』

 

それが人理であるのか、それともAチームか、それとも――

今の自分には何に向けた決意なのかはわからない

ただ、覚悟はできている

後は進むだけ

 

「――なるほど」

 

「何かあったか?」

 

「いえ、問題ありません 案内の続行を」

 

少し不安な点は召喚システムがおかしかったことだが、問題なさそうだよな…?

後で戦闘訓練で様子は見ておくか

いや、案内が終わった後は他の職員に紹介が優先だな

戦闘訓練はその後、そしてそれが終われば次の特異点に向けての準備だ

 

休んでる暇はない、進み続けろ――

 

歩みを止めるな――

 

勝ち取れ――

 

――ここからが、俺の『聖杯戦争』の始まりだ




覚 悟 完 了

いや、私欲のためじゃなく頑張れるぐだってやっぱすごいよなあって

というわけでやっと召喚出来たー!
そうです、相棒はワルキューレのスルーズさんです
それでワルキューレなんですけど、オルトリンデとヒルドは出てきません
完全にリンクが切れた状態でスルーズのみが召喚された形となっています
理由はちゃんとあります


あと聖杯についてですが
『カルデアが回収後のものはあくまで巨大な魔力リソースとしてしか使用出来ず、願望機としての役割は持っていないとされる。』
っていう公式設定はちゃんと分かってます
でも、この作品では回収後も願望機として使えることにしました

そもそも何で願望機として使えなくなるんでしょうね?
使えなくなる条件が『カルデアに持って帰る』だったら回収したその場で使えばいいだけですし…

なのでたぶん『カルデアが回収した』という時点で駄目になると思うんですよ
そうなると『カルデアの願いが叶えられない』って考えになって、それは何故か?って考えると
たぶん原因はビーストになる可能性を秘めた存在もサーヴァントとして呼べるような召喚システムなのかなと、それで抑止力が警戒していたり
だからお前らの願いは叶えられないよ状態になってる的なね

最初に魔術協会から七騎の制限があったのは多分そういう抑止から警戒されないようにって意味も含まれてたのでは?みたいな妄想もしてみたり
ああ駄目だこれ以上はもう止まらなくなっちゃう…!

ま、まあ そんな独自解釈をして、実験など含めても四騎しか呼んでいないこのカルデアはまだ目を付けられていないってことで!
だから回収後も聖杯を願望機として使えるってことで何とか…!
敵側が願望機として使ってるんだからいけるいける!

以上オタク特有の長文でした
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