ヤバい剣しか投影できないオリ士郎君 作:ぬぶぬぶ
気づいたら前話から5年経ってたって、マジなのだすか。これが光陰矢の如しですか(小並感)
遅れまして、申し訳ありません!!
ひとまずリハビリで短いですが、投稿します!
おかしいところがあったら指摘ください!修正してきます!
5年もたって、いつの間にかFGOも二部が終わりましたね...
真っ暗な部屋の中央で、天井から吊るされた蛍光灯がひとつの机を照らしている。
「それでは作戦会議を開きます」
机に両肘をつき、組んだ手を口元に添えた士郎が、妙に重々しい声で宣言した。
机の向かい側では、雁夜が頬杖をついている。わざわざ照明まで用意したわけではないが、薄暗い部屋に机と蛍光灯だけが浮かび上がる光景は、確かにそれらしい雰囲気を作っていた。
「これ毎回やる必要ある?」
「こういうのは雰囲気が大事かなと思って」
士郎はさも当然といった顔で答える。
雁夜は小さくため息をついた。真面目な話をするために呼び出されたはずなのに、どうにも調子が狂う。とはいえ、今さら士郎のこうした振る舞いにいちいち突っ込んでいては、話が先に進まない。
雁夜は机の上に置かれたコップを手に取り、水を飲み干した。
「それで今回は何について話すんだ?」
「ライダーの同盟のことっすね」
「あぁ...なるほど」
昨日の深夜、士郎はライダーとそのマスターであるウェイバーに同盟を持ちかけた。今のところ話はまとまっているが、正式な協力関係を築くには、まだ片付けなければならない問題が残っている。
つまり士郎が話したいことは
「士郎君が悩んでいるのは
「うむ」
士郎は重みを含んだ顔で頷いた。
士郎が召喚されたその日、雁夜は士郎から聖杯の汚染について聞いた。
聖杯が汚染されている。その事実を聞いたとき、雁夜は自分の耳を疑った。
万能の願望器。あらゆる願いを叶えるとされる奇跡の器。
それが実際には、願いを叶える過程で災厄をもたらしかねない代物だというのだから、笑い話にもならない。
しかも、ライダーは聖杯を求めている。願いを叶えるために戦っている相手に、その願いを叶える道具そのものが危険だと伝えなければならないのだ。
「ライダーは聖杯を欲しがっているし、どう伝えたものか....」
「もう最初から正直に伝えるべきっすかね?」
士郎は腕を組み、机の上に視線を落とした。ライダーであるイスカンダルの属性は中立・善である。
善という属性を持つ彼ならば、破壊しかもたらさない聖杯を悪用したりはしないだろう。
「最後までそのことを黙っていたままだと関係が最悪な状態になりかねないし、やっぱり伝えるべきかな?」
「やっぱりかぁ...どうやって伝えたものか....」
机に突っ伏す士郎。彼の頭の中では、いかにしてライダーに真実を伝えるかでいっぱいいっぱいだろう。
その後、十数分ほど会議を続け、ひとまずの結論を出した。
次にライダーたちと会った時に、正直に伝えることにした。
出した結論について、まだ不安なのか唸っている士郎。その様子を見ていた雁夜は、「そういえば」と声にだす。
「士郎君。今日はもう何も起きないのか?それならもう夜も遅いし、寝ようと思うんだが」
「...今日の夜?何かあったかな...」
士郎は首を傾げ、指先でこめかみを軽く叩いた。
「なーんかあったような気がするんすけどねぇ。こう、口の喉元まで来そうなんだけど」
「ここで吐かないでくれよ」
「そうじゃないわい!」
士郎は顔を上げ、雁夜に抗議する。
「……まあ、ここまで思い出せないってことは、つまりどうでもいいってことなんじゃないすか?」
「なるほど」
雁夜はあっさりと納得した。
少し不安だが、彼はこの聖杯戦争について、自分よりもはるかに多くの情報を持っている。そんな士郎が気にしていないのなら、大した問題ではないのかもしれない。
そう考え、雁夜は席を立った。立つと眠気が襲ってきたのか、ついあくびが口から漏れる。
「ふぁ~~じゃあ僕はもう休むよ。今日はいろいろあったから疲れた」
「ゆっくり休んでね。あと寝てる最中にライダーに伝えるようの原稿を考えてくれよな~」
「寝てる間にどう考えるんだい....それじゃあお休み」
「お休みっす」
そして雁夜は会議をしていた居間から出ていった。
静かになった部屋には士郎だけが座っている。無音の部屋には、士郎の真上に吊るされた光だけが白く降り注いでいる。
「ファ~...なんだか俺も眠くなってきたな」
大きなあくびをした士郎はそのまま机の上でうつ伏せとなる。強い睡魔に襲われていたのか,士郎は目を閉じ,夢の世界へと落ちていく。
そのまま明かりのついた居間の中で、士郎は眠りについた。
夜。間桐邸の廊下を、小さな足音が進んでいた。
「...おトイレ」
寝ぼけ眼の桜は、壁に手を添えながら、薄暗い廊下を歩いていく。
夜の暗さに少し怖いと思いながらも、桜は士郎からもらったお守りを手で強く握りしめる。
そして廊下の突き当りを曲がり、居間のほうへと通じる廊下へと出る。
「...?」
そこで、桜は足を止めた。居間の出口から光が漏れている。誰かいるのだろうか。
桜はそっと顔を出し、部屋の中を覗き込んだ。
「...あれ?だれもいない」
机も、椅子も、いつもと変わらない。
ただ、天井から吊るされた蛍光灯だけが、誰もいない部屋を照らしていた。
「消し忘れかな...?」
今夜は作戦会議をすると聞いていた。雁夜おじさんも士郎さんも、もう寝てしまったのだろう。
そう思った桜は、特に疑問を抱くこともなく、壁のスイッチに手を伸ばした。
カチッ。
蛍光灯が消え、居間は暗闇に沈んだ。
桜はそのまま廊下を歩いていく。
自分が電気を消したその部屋で、誰が眠っていたのか。そして、その人物が今どこにいるのか。
幼い少女が知るはずもなかった。
「オッ...オォオオオ!!」
そこには、燃え盛る地獄のような光景が広がっていた。本来は豪雨や洪水時など、非常事態時に水を貯蔵する場所。その広い空間は今や炎に包まれ、壁も床も赤く照らされている。
黒煙が立ちこめ、焼け焦げた臭いが鼻を突いた。
その中心で、一人の男が泣き叫んでいた。
「リュ..リュウノスケェエエエエ!!!」
男は、すでに真っ黒に焼け焦げた死体を抱きしめていた。
聖杯戦争に召喚されたサーヴァント、キャスター。ジル・ド・レェ。
彼は腕の中の死体を見つめ、涙を流していた。その顔には悲しみと憎悪が入り混じり、やがて、すべてを焼き尽くすような怒りへと変わっていく。
そして、顔を上げた。
その視線の先に、一人の少年が立っていた。
「許さぬ!許さぬ許さぬ許さぬ許さぬ!!この匹夫めがァ!!」
マスターを失った今、キャスターに残された時間は長くない。それでも、彼は何もせずに消え去ることを選ばなかった。
手にした宝具『螺湮城教本』を掲げる。
次の瞬間、周囲の空間が歪み、無数の異形が姿を現した。海魔たちが、ぬめるような音を立てながら地面を這い、少年へと殺到する。
本来なら、ただの子供など一瞬で飲み込まれて終わるはずだった。
だが。少年は、動かなかった。
迫り来る怪物たちを前にしても、逃げようともしない。恐怖に震えることもない。
ただ、そこに立っていた。
「___」
少年の口が、わずかに動いた。
次の瞬間。
炎が、燃え盛った。
そして、その者は歩き出す。
目の前の消えゆく焼死体に目を向けず。
褐色の肌をした裸足のままで歩いていく。
視界の隅に映る、五体満足で眠る子供たちにも目を向けず。
ただ前に進み続ける。
燃え盛る炎の風に白い髪をなびかせ、
遠くから聞こえてくる雷鳴の車輪音を気にせず、一歩一歩と悠然に。
そして、月明りの下へと現れた。
白い髪が風に揺れる。
月の光が、その瞳を照らした。
「____!」
刹那、少年は顔を傾けた
直後、耳をつんざく轟音が夜の静寂を破る。
顔のあった場所を何かが通り過ぎ、直線上にあった川の土手へと突き刺さった。遅れて爆発音が響き、土砂が夜空へと舞い上がる。
その者は、輝きの無い眼で襲撃者を見据える。
完全に避けることはできなかったのか、一筋の赤が頬を落ちていく。
「誰の許可を得て、我を見上げる。雑種」
電柱の上に、一人の男が立っている。
黄金の甲冑。月明かりを受けてなお、夜の闇に負けない輝き。
英雄王ギルガメッシュだった。
「不愉快極まりない。その器を使い、何をしようとしている?」
冷たい視線が、少年を射抜く。
ギルガメッシュの周囲に、いくつもの黄金の波紋が浮かび上がった。そこから姿を現した剣や槍が、少年へと狙いを定める。
だが、少年は逃げなかった。
手にした剣を構え、ただ静かにギルガメッシュを見返している。
数秒の沈黙。
やがて、ギルガメッシュは小さく舌打ちした。
黄金の波紋が、一つ、また一つと消えていく。
「貴様相手にこの程度の宝具では役に立つまい」
ギルガメッシュは新たな波紋を開き、その中から一本の鍵を取り出した。王律鍵バヴ=イルである。
ただ、ギルガメッシュは開錠はせず、王律鍵をそれに向けた。
「次にその姿で顕現するならば、我の本気で貴様を滅ぼしてくれよう。....疾く失せよ、二度とその面を我に見せるな」
少年は何も答えなかった。
しばらくギルガメッシュを見つめたあと、手にしていた剣を消す。
そして、音もなく霊体化した。
その姿が完全に消えたことを確認してから、ギルガメッシュは王律鍵をしまった。
「あの雑種め...面倒なモノに目を付けられておるな」
脳裏に浮かんだのは、身の丈に合わぬラピスラズリの腕輪をつけた少年の姿だった。
「まぁいい、精々あがいて見せよ」
ギルガメッシュもまた、夜の闇へと姿を消した。
朝日が昇り、住宅街を明るく照らし始めていた。
「ふぁ~~よく寝た」
雁夜は大きく伸びをしてから、洗面台へ向かった。冷たい水で顔を洗うと、ようやく眠気が薄れていく。
昨夜はいろいろあった。士郎との作戦会議に、ライダーとの同盟。考えるべきことは山積みだが、今はまず、二人の朝食を用意しなければならない。
雁夜はキッチンへ向かい、慣れない手つきで朝食の準備を始めた。
しばらくして、食卓に料理を並べ終える。
「さて、と。二人を起こしてくるか」
そう呟き、居間の前を通りかかったときだった。ふと、机の上に突っ伏している人影が目に入った。
「……あれ? 士郎君、ここで寝てたのか」
雁夜は苦笑しながら近づき、士郎の肩を軽く揺する。
「起きて、士郎君。朝だよ」
雁夜は寝ている士郎を手で揺らす。揺らされた士郎は「うん~?」と目をこすりながら目覚める。
「ん~?雁夜のおっさん、おはよ~」
「おはよう、士郎君。昨日の打ち合わせ終わったあと、ここで寝てたの?」
「あーそうだった。滅茶苦茶眠くなったから、寝室に行かずにここで寝たんだった」
士郎は腰を伸ばし、顔をしかめる。
「おーベッドで寝てないから体がいてえ」
士郎は腰を叩きながら立ち上がる。
雁夜は士郎の様子に苦笑いをしながら、朝食ができていることを伝える。
そのとき士郎の右頬にある赤い線に気づいた。
「士郎君。右頬どうしたんだ?」
「えっ?右頬?」
士郎は言われるままに頬へ触れた。指先に、乾いたものが付着する。
「うわっ、血じゃん。机のどこかで切ったのかな」
「そんな鋭い場所はないと思うけど...」
雁夜は机を見回した。角はきちんと面取りされており、頬を切るような箇所は見当たらない。
「まぁ、そんなこともあるか。それより雁夜のおっさん、朝飯できたって?」
「そうだよ。だから2人を起こしに来たんだ」
「それなら桜は俺が起こしに行くよ」
「そうかい?じゃあよろしく頼むよ」
「まかされた!」
元気よく答えた士郎は、そのまま桜の寝室へと走っていった。
「桜~!起きろ~!朝だぞ~!」と士郎の大声が届く。
遠ざかる足音と大声を聞きながら、雁夜は小さく笑った。
キッチンに戻った雁夜はご飯をよそいながら、つけていたテレビに耳を傾ける。
『昨夜未明、行方不明となっていた子供たちが無事に発見されました。連続殺人・誘拐の容疑者と見られる男は遺体で発見されており、警察は自殺との見方を……』
「あの物騒な事件の犯人、死んだのか...桜ちゃんが被害にあわなくて良かったな」
遠くから聞こえてくる二人分の足音を聞きながら、雁夜はほっと息を吐いた。
第四次聖杯戦争。
まずはキャスターが脱落することになった。
戦争はまだまだ始まったばかりである。