ヤバい剣しか投影できないオリ士郎君 作:ぬぶぬぶ
苦手な方はお気をつけください。
前回まではアンケートをお答えいただきありがとうございました。誤字報告も感謝です。結果としては約半数の投票をもちまして題名はこのままといたします。
今回もまた急いで書きましたので設定的におかしな点があるかもしれません。気づいたらすぐさま修正するので許してくださいなんでもしますから!
ピピピピピピピピ
眠りの底に沈んでいた意識がうるさく鳴る音に覚醒してゆく。
まだ寝ていたいのに。けど体を布団の中から起こさなきゃ学校に遅れてしまう。
「ふわぁ~~~~!」
手を握って勢いよく起きる。そうしないと眠りの気持ちよさに負けてしまいそうだから。
そして鳴り続ける目覚まし時計のスイッチをたたく。
ベッドのそばにきれいに並べていた服に寝巻から着替える。
さぁ今日も一日がんばろう。
自室の扉を開けて、居間へと向かう。
切嗣と可愛い弟にアインツベルンから連れ出され、この冬木にやってきてもう8年たった。
さすがにそれほどの月日をこの家で過ごしているので、いまだに覚醒しきってない頭でも、その足は自然と目的地まで歩く。
ふと気になったので立ち止まって窓から外を眺める。朝日が窓を通り体を温める。今日は晴れのようだ。
「どうしたんだいイリヤ?外を眺めて」
視線を声がしたほうへ向ける。そこには浴衣を着た切嗣がいた。
「おはよう切嗣!今日は早いのね」
「ハハハ...昨日は士郎の特訓に付き合わされてね、いつもより早く寝たんだ」
二人して居間に入る。そこにはセラが既に朝ごはんの用意をしていた。
「おはようセラ!」
「おはようございますイリヤさん。それと切嗣さんも」
セラは私たちを見ると一礼する。
「おはようイリヤちゃん!切嗣さん!」
そして食卓にはすでに藤村大河が座って朝ごはんを忙しなく食べていた。
「おはよう大河」
「随分と急いでるようだね大河ちゃん。何かあるのかい?」
「はい!これから急いでテストの採点をしなくちゃいけないんです!」
大河はそう言うと勢いよく朝ごはんを食べていく。しかし、何かしら企んでいるようで何かを今か今かと待っている。リズは寝坊しているのかまだ寝ているようだ。
「あれ?士郎は?」
「あの人は先ほどまで道場で鍛えていたようです。先ほど呼びましたのですぐ来ると思います」
すると居間の外から足音が聞こえた。
「おっすおっす皆」
入ってきたのは士郎だった。既に学生服を着ている。
「おはよう士郎!」
「おはよう士郎。朝から稽古かい?」
「あぁ。筋トレしてたんだよ。ふじ姉もおはよう」
「ハイ、オハヨー」
なぜか片言で返事を返した大河はどこから出したのか新聞を読んでいる。
「ふぅ^~朝から疲れましたよほんと」
明らかに怪しい大河を気にしてないのか士郎は大河の対面に座る。そして私もまた士郎の横に座る。
「それじゃあいただきます」
「「いただきます!」」
いつものように切嗣のあとに食事の感謝の言葉を呟く。今日の朝ごはんはとろろごはんに味噌汁、焼き魚などがある。
「わあうまそ!」
士郎はそう呟き、テーブルの中央にある調味料へと手を伸ばす。
「フフフフ....あれ?」
大河が新聞をずらし邪悪な笑みを浮かべていたが、その顔は一瞬で崩れる。
士郎は調味料の中からソースを手に取ったのだ。
「あれ?士郎、それソースだよ?とろろごはんには醤油じゃなかったっけ?」
「あぁ今日はソースの気分なんだよ」
と笑いながら士郎はソースをとろろごはんにかける。そこでごはんに流れる液体を見て私は(あれ?これソースじゃなくて醤油じゃない?)と気づいた。
「なんで...」
「あれれ~?ふじ姉とろろごはんに醤油足りてなくなくなくない?しょうがないから俺が追加してやるよ」
「あっ!ちょっと待っ」
素早い身のこなしで醤油のボトル(中身はソース)を手に取った士郎は大河のとろろごはんに大量にソースを垂らす。
「あぁ!!私のとろろごはんがああ!」
「ハハハハハ!この俺をだまそうとするなんて一億万年はやいわ!あっイリヤこれが醤油ね」
「あ、ありがとう...」
さっと士郎は醤油の入ったボトルを私に手渡す。
「なにをしているんだい二人とも...」
呆れている切嗣は士郎と大河の喧嘩をよそに、ゆったりと焼き魚を食べる。
私も二人の喧騒に笑いながら、朝ごはんを食べる。
もちろんその後大河は遅刻した。
「イリヤー行くぞ~」
「ちょっと待って士郎」
玄関で座って待つ士郎のために急いで準備する。学生服を着て、教科書を鞄に入れる。
「士郎お待たせ!」
「学校にほらいくど~」
いつも通りふざける士郎に少し笑う。そんな彼に手を引っ張られて今日も一日が始まる。
「わが校は予算のバランスが極端なんだよ」
「はえ~」
学校の資金繰りに眉をひそめるのは生徒会の長である生徒会長柳洞一成。学校についた俺とイリヤはクラスが同じなのだが、俺は一成に呼ばれていたので途中で別れた。
そして今一成に頼まれて古いストーブの修理をしている。
「直りそうか?」
「だめみたいですね」
「そうか...」
「ごめん嘘」
「どちらだよ!?」
少し不機嫌になる一成をなだめる。
「すまんちょっと外に出ててくれ」
「うむ。邪魔はせん」
生徒会室から外へ出た一成を確認して、魔術を行使する。解析をするとストーブの不調の原因は手に取るようにわかった。
取り合えず今直すことができる断線などのストーブの問題個所を修理していると、
「あら生徒会長」
「む、遠坂か」
「ん?」
どうやら生徒会室前の廊下に遠坂凛が来ているらしい。今外に出ると絡まれそうなので、おとなしくひきこもるとしよう。あの人怖いし。
廊下から遠坂と一成の会話する声が扉を通じて聞こえてくる。
作業に没頭すること数分、修理が終わったので外で待つ一成を呼ぶ
「終わったか士郎?」
「あぁ無事修理できたわ」
遠坂との会話が終わったのか、一成が生徒会室に入ってくる。どうやら遠坂はもうどこかへ行ったらしいよかったよかった。
そのまま一成とともに生徒会室を出て、自分のクラスへと向かう。
既にクラスのみんな揃っているようだ。俺と一成はクラスへ入る。
「朝から精が出るね士郎」
「慎二」
クラスに入ると扉近く、一番右前の席に座っていた慎二がクラスに入った瞬間声をかけてくる。
「お前は朝練行ってたのか?」
「あぁ。だからちょいと疲れててね。少し寝させてもらうよ」
そういうと慎二は机に突っ伏した。
「居眠りとは感心せんな慎二」
「一限目には起きるさ」
一成が慎二にそう言う。それならいいかと一成は自分の席へと座る。
「士郎!」
呼ばれたほうを向くと、クラスの窓際一番後ろという、主人公のはずの俺を差し置いて主人公席に座っているイリヤがいた。ちなみにその前が俺の席である。
そして学校のチャイムが鳴る。
やべっそろそろ虎が来るじゃん座っておこ。
そして2月一番最初の授業が始まった。
「士郎!一緒に帰ろ!」
「おっけー」
今日最後の授業が終わると後ろからイリヤがいきなり飛びついてくる。さすがに慣れた。
俺とイリヤは部活動をしていないので、授業が終わると用事がなければすぐに家に帰る。
教室に残っていたクラスメイト数人に挨拶をして俺たちは教室を後にした。
下校する生徒で騒がしくなっている玄関で、靴を履き替え外に出る。
学校の中はストーブがついていたけどやっぱり外はまだ寒いな。
「士郎、イリヤスフィール」
「おっどうした慎二?」「どうしたのよ慎二?」
校門を通り抜けると、慎二が弓道着を身に着けて待っていた。
慎二は辺りを見渡し、周囲に誰もいないことを確認すると俺に耳打ちする。
「まだサーヴァントを召喚しないのか?こっちはもう桜がライダーを召喚してるというのに」
「まぁこっちにも都合があるのさ」
右手に最近できたあざを見る。まだそれは本来の形にはなってない。
「遠坂ももう召喚しているはずだし、あとはお前らだけだぞ。まぁ士郎の投影があればそこらの英霊は太刀打ちできないだろうけど念には念を入れてせめて明日には召喚しておけよ?」
「わかったよ慎二」
そう伝えて満足したのか慎二は弓道の練習に戻る。桜と一緒に練習がんばっているようだな。
「まぁ士郎はたぶんアーサー王が召喚されると思うよ」
「そうだろうな」
隣のイリヤが俺にそう言う。胸に手を当てる。俺のこの胸のなかに、アーサー王の剣の鞘が埋まっている。
この鞘が触媒となり、必ずあの青セイバーを引き寄せることができるだろう。
問題はイリヤのほうだ。
原作のイリヤが召喚していたかの大英雄ヘラクレスの触媒は残念ながら手に入ることができなかった。
本来ならアインツベルンに頼ればいいのだが、どうやら俺たちに触媒を与えたくないようだ。
頭にきますよ!
切嗣の手を借りようにも、既に10年も裏仕事から離れてる切嗣には頼る伝手も少なく、手に入れてもあまり強くない英霊の触媒しかないらしい。
既にセイバー、バーサーカー以外が召喚されているはずだ。俺がセイバーを召喚することが確定してるので、イリヤにはバーサーカーとなるが...
比較的マシな源頼光とか金時とかが来てくれないかな....
まぁ召喚してから考えることにしよう。
そしてその日は終わる。始まりを明日に控えながら。
早朝、とある館。そこであるマスターとそのサーヴァントが話し合っている。
「なんだと?」
「だからマスターの候補よ。私の予想というか確信だけど一人は間桐慎二と同じクラスの
「彼女が高校に通っているのか?」
「?そうだけど」
サーヴァントであるアーチャーは頭に手をそえる。それはまるで信じられないことを聞いたかのような反応だった。
「どうしたのよ?彼女のこと何か知ってるの?」
そんなアーチャーの様子をみて、マスターである遠坂凛が不思議に思って尋ねる。
「いや...なんでもない。それよりそのマスター候補とは話したことはあるのか?」
「えぇ。前に一度だけ。アインツベルンって名前がつくから御三家の一人じゃない?気になってちょっと人となりを知るために話しかけたのよ」
「それで?」
「普通の魔術師のような考え方はしてなかったわね。魔術に興味がなさそうな感じ。衛宮君と彼のお父さんと一緒に住んでるらしいけど、関係性はわからないわ」
「何!?」
「わっ!?なによ?」
アーチャーは机をドンと叩き、身を乗り出す。
「衛宮とその父と言ったのか!?」
「え、えぇ。衛宮君とイリヤスフィールと親しそうに一緒に歩いている男の人を見たことあるし、たぶん彼のお父さんだと思うけど」
「馬鹿な...じいさんがまだ生きてるのか?」
遠坂凛に聞こえないような声量でぶつぶつと呟くアーチャー。その様子に疑問を抱いた凛は
「ねぇその人のこと何かしってるの?前の聖杯戦争でマスターだったとか?」
「...いや関係はない」
「本当?」
誤魔化しているかのような態度のアーチャーに疑問を抱いたが、また令呪を無駄に使って聞き出すのも馬鹿らしいのでその場は見過ごした。
「いったいどうなっているのだ...」
その真相はもうすぐわかる。
時は移ろい、その日の放課後。
「悪いな士郎。弓道場の掃除手伝ってもらって」
日が落ち、昼より寒くなった弓道場にて、慎二は床を雑巾で磨きながらそう言った。その口からは白い吐息がでている。
「ほんとだぞめんどくさいことさせやがって。おかげで切嗣のおっさんにイリヤを迎えにきてもらうはめになったじゃねーか。てか時期が時期なんだから掃除くらいサボれよ」
まだサーヴァントを召喚してないイリヤを一人で帰らせることは心配なため、切嗣に迎いに来てもらった。もちろんおっさんには名刀電光丸を持たせてある。
「そう言うなよ。僕は真面目で通ってるからね、サボりなんかできないのさ。それにライダーは家で桜を守らせていてね、僕が安全に家に帰るためにはお前が必要なんだよ」
「ちゃんと電光丸持ってんだよな?」
「あぁ。この通り」
そう言って慎二は服の中から電光丸を取り出す。
「もう一個のあの剣はどうしたんだ?」
「あれはまだ僕が使うには早すぎるね。あのじゃじゃ馬を手懐けるのにまだ時間がかかりそうだよ」
「そうなのか?俺の言葉には素直に聞くのに...俺が作り出したからか?」
脳裏に妙に俺を慕っているあの剣を思い出す。俺を創造主とかよんでいたな。
「てか、手を動かしてくんない?いつまでたっても終わらないよこれ」
「なんだァ?てめェ...」
こいつこれが人にものを頼む態度か?
その後一時間ほどかけて、なんとか弓道場の掃除を終える。
「お疲れさん。ジュースでもおごってやるよ」
「じゃあ炭酸ジュースで頼むわ」
「了解」
それなりにきれいになった弓道場を一回り確認して掃除器具を片付ける。靴を履きかえ、そのまま外にでて弓道場に鍵をかける。
すると
「「!!」」
どこかから金属を打ち合う音がする。その音は止まることなく響いてくる。そこで俺は確信する。
「まじか、今日だったか」
「校庭からだね」
油断していた。まさか今日が運命の日だとは思わなかった。
「とりあえず様子見するとしよう。慎二、電光丸のスイッチを入れておけ」
「わかった」
慎二は懐から電光丸を取り出す。
「スイッチ入れたぞ」
「トレース、オン。音を立てるなよ慎二」
両手に電光丸を投影する。
そのまま慎二と音を立てずに校庭へと移動する。
校庭にたどりつくと、赤い外套を着た男と青色の衣装を身を包み、槍を持っている男が目で追いつけない速度で戦っていた。
その剣戟はすさまじく、打ち合いで生じた風がここまで吹いてくる。
その戦闘から少し離れたところでは、遠坂凛が真剣に戦闘を見ていた。
「赤い英霊と槍を持った男、ランサーか」
慎二は英霊同士の戦いを見て、分析を始める。
「遠坂のサーヴァントの赤いやつは両手剣を使っているな。セイバーではなさそうだが...狂気にまみれたバーサーカーでもないし、残りのクラスから考えて....もしかしてアーチャーか?お得意の弓は使わないのか」
「さすがだな慎二。お前の分析通りあの赤いやつはアーチャーだ。知ってるか?アーチャーは弓を使わないクラスなんだぞ」
「こんなときに何馬鹿な事言ってんだ士郎!戦闘の観察はもう十分だ引き上げるぞ」
「おかのした」
慎二はさすがに英霊二人相手では分が悪いと思ったのか、俺の背中を押して撤退を促す。俺も戦いたくないので反論せずに従う。
ランサーに宝具使われたら、概念ごと無くすヤバい剣投影しなきゃならんからね。さすがに初戦からあの剣を投影するのは嫌だ。
校庭から背を向け、静かに移動しようとするも。
「そこにいるのは誰だ?」
「なにっ?」
校庭からアーチャーの嫌な声が聞こえてきた。そしてランサーの殺意が身を貫く。
「ファッ!?」
「くそっ!バレたか!」
アーチャーの野郎!俺と慎二が観察してるの鷹の目で見てやがったな!
「慎二!俺の後ろに隠れろ!」
「あぁ!」
そして両手の電光丸に体をゆだねる。迫る死の槍に体が自動で動く。
ランサーの槍を右手の電光丸で止め、そしてカウンターでランサーの懐を左手の剣で殴りかかる。
「ほお」
ランサーは迫る剣を槍を回転させることではじくと、ランサーはバックステップで俺から距離をとる。
「ただの一般人かと思ったが、なかなかやるじゃねーか坊主」
「俺のは借り物の力だけどな」
ランサーに両手の剣を構える。頑張ってくれよ電光丸。
「臆病なマスターから帰還命令が出ているが...もう数手打ち合ってから退くとするかッ!」
ランサーは槍を構えると、ブンッと揺れるように姿が消える。
すると俺の両腕は自動で首の後ろへと瞬時に回る。耳に金属音が聞こえた。
それでは止まらず俺の両腕は動きを続ける。俺の両腕はそれぞれが独立して、右、左、上、後ろ、目に見えない速度で左右上下から迫る槍を電光丸は見事にはじき続ける。
「解せねぇな」
ランサーは攻撃をやめて、俺を睨む。
「明らかに俺を捉えてないその目線。先ほど借り物と言っていたが...その剣がお前の体を動かしているのか?」
「さすがに気づくかランサー。確かに俺はこの両手の剣に体を委ねてるにすぎない」
「フン...面白くねえ」
ランサーは槍を肩に乗せる。その顔は心底つまらなそうな表情を浮かべている。
「それでどうするランサー?このまま続けるか?それなら俺はとっておきを出すしかなくなるんだが」
「いいや、今夜はこれで終いだ」
そうランサーは呟くと、ランサーの背中から迫る矢を槍で全て撃ち落とす。
ランサーの背後を見ると、アーチャーが弓を構えていた。
「アーチャー。てめえはまた今度相手してやるよ。その時は今みたいに力を抑えず本気でな」
「負け惜しみを述べて、逃げ帰るならさっさとご主人様のところへ帰ったらどうだランサー」
「チッ、次は殺してやるよアーチャー」
するとランサーは霊体化して消えた。俺は両手の剣を消す。どうやら言峰のところへ戻ったようだ。
「それで、どういうことか説明してもらおうかしら衛宮君と間桐君?」
声のするほうを向くと、遠坂凛が傍らにアーチャーを従え、ひきつった笑みを浮かべていた。
「どうすんだ士郎?」
後ろから電光丸を構えている慎二が声をかける。
俺はとりあえず遠坂とその傍にいるアーチャーにこう言った。
「まずうちさぁ、お茶・・・あんだけど・・・話していかない?」
「は?」
その言葉を聞き、遠坂はこめかみに青い筋を浮かべた。
一触即発となった雰囲気に慎二が慌てて説得し、衛宮邸に連れていくことに成功した。もちろん慎二には頭を叩かれた。
「どうするんだ士郎、全部話すのか?」
衛宮邸への道の途中で慎二が話しかけてくる。
「そりゃそうよ。俺はさっさとこの聖杯戦争を終わらせたいんだよ。そのためにも遠坂には今の聖杯戦争の現状を知ってもらわないとな」
チラリと後ろを歩く遠坂を見る。その顔は先ほどのことにイラついているのかまだ俺を睨みつけている。
「まあそれもそうか」
慎二はそう納得する。
衛宮邸に到着すると俺はいつもの挨拶をする。
「入って、どうぞ」
「邪魔するぜ」「お邪魔します」
家に慎二と遠坂を招き入れる。
「アーチャー、いるんだろ出てこいよ」
「なんのようだ」
玄関先で霊体化を解除しアーチャーが現れた。その顔は俺など見たくもないかのように歪んでいる。
「お前も中に入って話聞けよ。
「!貴様どこまで知っている?」
「何もかもだけど?」
「...いいだろう」
殺気立つアーチャーは俺の言う通りに家の中に入る。
俺はアーチャーのあとに続き居間に入る。
「士郎、待っていたよ」
中に入るとおっさんとイリヤ、ライダーを連れた桜がすでに待っていた。
「それで、君がアーチャーなんだね」
「あぁ...そうだ」
アーチャーは切嗣とその横のイリヤを困惑した表情で見ている。
「さ、桜!?あなたマスターだったの!?」
「そっそうです姉さん、すみません内緒にしてて」
桜とそのそばにいる英霊に衝撃を覚えている遠坂凛に桜は申し訳なさそうに謝る。
「ッ、まぁいいわ!それで衛宮君!話について聞かせてくれるかしら」
遠坂は座布団の上にドサッと座りこむ。アーチャーはその後ろで腕を組み立っている。
俺も座布団の上に正座する。
「どこから話すべきか...まずは聖杯が汚染されていることから話すとするか」
「なんですって!?」
「これは切嗣のおっさんに話してもらうほうが信ぴょう性があるか。頼むよおっさん」
「わかったよ士郎」
そうして切嗣は第四次聖杯戦争のことを話し出した。
セイバーのマスターとして参戦し、聖杯戦争を駆け抜けたこと。そして他のマスターを倒し、最後まで生き残ったこと。
そして聖杯から現れた災厄の泥のことを話した。
「聖杯が万能の願望器ではない呪われた存在であったことを知った僕は、セイバーに宝具で聖杯を破壊させた。けどそれでは収まらず厄災の泥はあふれ出し、10年前の冬木大火災が起こった。そして」
「そこで助け出されたのが俺ってわけだ」
親指を自分に向ける。遠坂は信じられないものを聞いたかのように机に倒れ伏す。その後ろのアーチャーはそういうことだったのかと頷いている。
「あーもう!で?これからどうするのよ衛宮君?」
机から起き上がった凛は俺に指さす。
「その前にまずアーチャーについて話したほうが良いんじゃないか。そうだろアーチャー?」
「?アーチャーがどうしたのよ」
凛は背後に立つアーチャーをチラリとみる。
「言いたくなければ俺がお前の正体について話すけどいいのか?」
「ふん...勝手にすればいいさ」
腕を組むアーチャーは俺の言葉にそう返す。
「おいどういうことだ士郎?その話は俺も聞いてないぞ」
隣に座る慎二が肘でつついてくる。
「まあこれは先に話しても信じてもらえないだろうからな。今まで秘密にしてたのさ」
「なんでアーチャーの正体について衛宮君が知ってるのよ?マスターである私ですら知らないのに」
対面に座る遠坂が当然の疑問を聞いてくる。アーチャーは無言を保っている。
「アーチャーが自分から言わないなら俺が言うけど」
俺はそう前置きをする。
「ぶっちゃけて言うと、アーチャーの正体は
アーチャーの正体を告げると、シンと居間の空気が止まる。
「えぇーッ!!!???」
そして居間に大勢の驚きの声が響いた。
「どういうことよアーチャー!」
凛が後ろにいるアーチャーに飛び掛かって胸倉をつかむ。
「ちょっ!服を引っ張るな凛!」
アーチャーは暴走する凛を抑える。しかしアーチャーは俺の言った言葉を否定しなかった。
「うそだろ?この馬鹿が英霊になるっていうのか...?」
「喧嘩は買うぞ慎二」
慎二は俺とアーチャーを交互に見て愕然とする。
「先輩がアーチャーに...」
「なるほど、確かに似ていますね二人とも」
桜とライダーは俺がアーチャーであるという事実をかみしめている。
「これは...驚いたな、士郎が英霊になるとは」
「ふーん」
切嗣は驚いているが、イリヤは何を考えているのかその顔からは判断できない。
「落ち着け遠坂。一応言っておくが俺とアーチャーは厳密には同じ存在ではない」
アーチャーを揺らす手を止めた凛はこちらをゆっくりと振り向く。
「どういうことよ」
「俺とアーチャーは言ってみれば平行世界の自分同士だ。衛宮士郎であるという点は同じだが、その経歴はまったく異なる。ここにこの三人がいることがその証明だ」
俺は慎二、イリヤ、切嗣に視線を向ける。
「その三人がどうしたのよ」
「そこからはアーチャーが話してくれるよな」
俺はアーチャーに顔を向ける。アーチャーはため息をつく。
「どうやら...オレの願望はここでは達成できないらしいな」
アーチャー...エミヤは壁を背にして、座り込む。そして彼は淡々と正義の味方に憧れていた過去を語りだした。
摩耗しきったその記憶だったが、彼は少しずつ思い出しながら口に出していく。
かつてこの世界の衛宮士郎と同じように冬木の大火災時に切嗣によって助け出されたこと。
切嗣の死に際に正義の味方になることを誓ったこと。
そして、第五次聖杯戦争に巻き込まれたということ。
彼の語る聖杯戦争の内容は凄惨なものだった。
慎二、桜、イリヤスフィールのことはもちろんとして、その裏に暗躍する神父。そしてさらに底に潜む災厄。
彼が第五次聖杯戦争で得た体験をすべて話した。
「全てを救うという理想を追い求め、生前抑止と契約し、オレは死後守護者となった。霊長の守護者として世界を救うために殺して、殺しつくした。それに終わりなどなかった」
彼は死後のことも語りだした。その口調はどこか投げやりとなっている。
「理想に絶望したオレは、ただ過去の英霊になる以前の自分を自らの手で殺すことだけを希望としてきた」
だが、とアーチャーは俺を見てそう呟く。
「どうやらこの世界のオレは正義の味方なんぞに憧れてはいないらしい」
「そうだな」
俺は他人を無条件で救いたいと思うほどできた存在ではないし、死後を明け渡すほどの理想を持っていない。
エミヤはそんな俺を見てうなだれる。彼の心境を思い量ることはできない。
「確かにいまのアーチャーの話が事実なら、この世界の衛宮君とは状況が違うようね。衛宮君のお父さんはまだ生きてるし、敵であったはずの間桐君もイリヤスフィールさんもここにいるし」
遠坂は三人を見ながらそう呟いた。
「シロウ」
いつの間にかエミヤのそばにイリヤが移動していた。彼女はエミヤの頭を抱き寄せる。
「今まで頑張ってきたんだね」
「やめてくれイリヤスフィール...オレはお前を救うことができなかったのに...」
「関係ないよ。だって私はシロウのお姉ちゃんなんだもん」
イリヤの腕に包まれるエミヤの顔には雫が走る。
「あぁ...そうだったな」
その顔にはわずかばかりの笑みが浮かんでいた。
「それでこれからどうするのよ?とりあえずエセ神父つぶす?」
遠坂がエミヤとイリヤを尻目に俺に話しかけてくる。どうやら言峰に強い憤りを感じているようだ。
「いやここはまずキャスターに同盟を申し込む必要があると思う。あのキャスターなら聖杯とその泥を分けることぐらいならできるはずだ」
「キャスターね...さっきのアーチャーの話からキャスターの真名はメディアであってるのよね?そしてそのマスターは葛木先生ね」
「そのことは僕と士郎が確かめたさ。確かに葛木先生はキャスターのマスターだ」
慎二が話に混ざってくる。この間、俺と慎二は葛木のあとをつけて迎えに来ていたキャスターを確認しているのだ。
「それで一番の問題は...やっぱりギルガメッシュね」
遠坂が苦虫をつぶしたような顔をする。
「まぁこちら側のサーヴァントの数なら何とか倒しきれるかしら...これから衛宮君とイリヤスフィールさんのサーヴァントを召喚するんでしょ?ならこっちは4人か...」
「そのことなんだが、話がある」
俺は右手を上げる。これは今までみんなに黙っていたことだ。
「
「な、なに言ってるんだ士郎!」
隣の慎二が動揺して俺の肩をつかむ。その手は震えている。
「お前が言ったんじゃないか!ギルガメッシュは次の戦いで
「なに?」
慎二のその言葉に反応したのはかつてギルガメッシュと戦った経験があるアーチャーだった。
「あの男が慢心しないというなら、こちら側の英霊だけでは勝負になるかわからんぞ。何か考えがあるのか小僧?」
「あぁ、そう言うと思ったからあらかじめ投影はしておいた。見せたほうが早いよな俺のヤバい剣を」
俺は右手の人差し指を上に上げて、投影開始と小さく呟く。
「「!!」」
その部屋にいたライダーとアーチャーが反射的に武器を取り出し、それぞれのマスターの前に立つ。
「小僧...なんだそれは」
アーチャーは冷や汗をながしながら、一瞬にして髪が白く染まり、体の皮膚が黒く変化した士郎の指の上にある物体を注意深く観察する。
「これが俺の数ある武器の中で頂点に立つ剣だ。この剣が投影できさえすればどんな相手だろうと終わる」
士郎は投影を解除する。するとその体の色素は少しずつもとにもどっていく。
「これが対ギルガメッシュ用の剣だ。他にもいろいろあるけど見るか?」
「フン...今はよそう。大丈夫か凛?」
「大丈夫ですか桜?」
アーチャーとライダーは武装を解除すると後ろで腰を抜かしているマスターを支える。
「びっくりした...体中が切られたかと思ったわよ」
「兄さんから先輩はすごい剣を出せると聞いていましたが、まさか実物があんなにすごいなんて...」
凛と桜は苦笑いを浮かべる。
「馬鹿やろう士郎!いきなり投影するな!気失うとこだったぞ」
「ははは悪い悪い、これが一番アーチャーと遠坂を手っ取り早く納得させられると思ったんだ。イリヤも大丈夫か?」
「え、えぇ。けど心臓に悪いからもうやめてね士郎...切嗣がショック死してしまうじゃない」
「僕はそこまで弱くないよ!?」
イリヤの言葉に切嗣が反論する。
「なるほど...今の剣で確かに納得したわ。ギルガメッシュはあなたに任せていいのね衛宮君?」
「あぁまかせろ」
俺は拳を胸に叩きつけ、そう啖呵をきる。
「それじゃ話は纏まったことだし、サーヴァントを召喚するか」
「そうね。まず衛宮君とイリヤスフィールさんのサーヴァントを召喚しないと始まらないしね」
魔法陣は土蔵に書いてある。まずはそこに行くことにしよう。
頼むから青セイバーで頼むよぉ~(フラグ)
とある教会にて、
「それで?言峰。泥を吐き出す準備はできたのか?」
片手にワイングラスを持ち、その男は優雅にワインを飲んでいる。その目線の先には、神父の服を着た男が神に祈りをささげている。
「あぁ。お前の手伝いのおかげで一騎もサーヴァントを落とすこともなく聖杯を顕現させることができそうだ。あとはもういつでも泥を吐き出させることができる。それにしても、どうしてこんなに急いでいるのかね?」
「此度の戦いは最初からクライマックスといったものよ。既に7騎の内の半分の英霊が今頃あの雑種と徒党を組み、こちらを襲撃しようと企んでいるだろうさ」
「なるほど。彼らは既に聖杯に潜むこの世すべての悪を知っているというのか。」
面白くなさそうに言峰は勢いよく聖書を閉じる。
「そう怒るな言峰。あと二日もすればお前の望む光景が見られるだろうよ」
「私はそれぞれのマスターたちの苦悩をじっくりと見たかったのだがね。まあいいだろう」
言峰は教会の出口へと向かう。そして扉の前で立ち止まり呟く。
「衛宮士郎とは一対一で戦うのか?」
「そうだ。貴様であろうと邪魔は許さんぞ」
「ハッ、まさか。私はお前の戦いに混ざるほど強くはないのでな」
会話を終えると言峰は扉を開き外へと歩いて行った。教会にはギルガメッシュただ一人が残される。
「フム...8年ほどか」
手元のワインを揺らしながら英雄王は何かを回想している。その顔には笑みが浮かんでいる。
英雄王はただ今か今かと決戦を待ち望んでいた。
ちなみにfate UBWルートを参考にしています。
とある配信サイトで配信してたから助かりましたよほんと...
たぶんあと数話で終わります。
アンケートは投票された順から書く予定です。つまり一応全部書くつもりです。だけど後半になるほどエタる可能性があります。
聖杯戦争編が終わったら書こうと思ってる話の中で見たいのをお選びくださいお願いします。
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聖杯戦争編その後(ほのぼの)
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もしも原作士郎がオリ士郎を召喚したら
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もしオリ士郎君が汚染れたら(ドシリアス)
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fgo編
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他のfate作品にオリ士郎君突入