ヤバい剣しか投影できないオリ士郎君 作:ぬぶぬぶ
感想欄で剣を紹介してもらうことが規約違反に引っかかる恐れがあるとのことです。今まで頂いた感想には大変感謝しておりますが、剣の紹介は今後ご遠慮してもらうと助かります。勝手ながら誠に申し訳ありません。
どれくらいの間眠っていたのだろうか。
最後にイビルメタルの投影に成功し、すべてを切ったことは覚えている。
目を開ける。
戦いの最後で見えなくなっていた目が、なぜか回復している。
朝日が昇り明るくなってきた空の景色が目に映る。
耳の鼓膜も、風に揺れる草木の音をしっかりと届けている。
「目が覚めたか雑種」
「王様」
草木の上に横たわり空を見上げている士郎の耳に、英雄王の声が届く。
士郎は消し飛んだはずの左腕と右足を使い、起き上がる。
ギルガメッシュのほうへ顔を向ける。彼は丸太の上に座り、昇り行く朝日を眺めている。その体は徐々に透けていく。
「死の寸前にあった貴様を治療した我の慈悲に心から感謝するがいい」
士郎は自分の体を確認する。よほどすごい財宝が使われたのか、士郎の体には傷一つない。
士郎は感謝の言葉を英雄王に告げる。
「フン...此度の戦い、貴様の勝ちだ。これを受け取れ」
英雄王は手をかざすと士郎の前にゲートが開かれる。
慌てて士郎が手を差し出すと、士郎の手の上にラピスラズリの腕飾りが落ちてきた。
士郎はその腕輪を受け取ると自らの右手につける。右手につけたラピスラズリの腕輪に太陽光が反射して青い光を放っている。
「何の力も持たぬ石だが、この我がくれてやったのだ。後生大事にせよ」
ギルガメッシュが丸太から立ち上がる。そして、消えゆく体で士郎を見る。
「行け。さっさとこの戦いを終わらせてこい。そして日常に戻り、その生を謳歌しろ」
英雄王は士郎を正面から見つめる。ギルガメッシュは白い歯を見せ笑う。
英雄王の清々しい表情を見た士郎はギルガメッシュに一礼をする。そして背を向け、その場から走り去る。その脚が向かう先は、戦っているであろう皆のもと。
ギルガメッシュは去り行く士郎の背中を眺め、最後にこう告げた。
「お前と共に騒いだこの8年、なかなかに楽しかったぞ。
士郎の走る脚が急に止まる。
その名を初めて英雄王に呼ばれた。
士郎は英雄王へ振り返る。だが既に彼はそこにいない。朝日のまぶしい輝きが、天に昇っていく黄金の粒子を照らしている。
その幻想的な風景の前に立ち尽くす士郎。その表情は....
士郎は右腕につけたラピスラズリの腕輪を眺める。
そして再び走り出した。
聖杯戦争の終わりを迎えるために。
「
影の大軍を前にして、ランサーは自らの宝具を解放する。
その槍の切っ先は、ランサーが槍を放つとともに木の枝のように分裂し、
「おいおい、宝具も打ったっていうのに一向に減らねえじゃねーか」
手元に帰ってきた槍を掴みながら、ランサーはそう呟く。
「えぇ、今のところ倒す量と出てくる量は拮抗していますけど。さすがに不味い状況ですね」
ライダーはペガサスに乗り、影を蹂躙していく。しかし、影からの反撃を時々もらっているのかペガサスの体のいたるところに傷ができている。
「やはり大本の孔を何とかしなければ」
ライダーは空に浮かぶ孔を眺める。そこから泥が勢いを増して流れている。シャドウサーヴァントが出てくる泥の源流を断たねばいくら倒しても言峰の持つ聖杯の魔力が尽きるまで終わらないだろう。
しかし、ライダーの宝具では孔を塞ぐことはできない。
孔を潰すのはアーチャーとセイバーにまかせ、私は影を蹴散らしますか。とライダーは影を蹂躙しながら決めた。
そして少し離れたところではアーチャーが弓を使い、迫りくる影を倒している。
アーチャーもライダーと同様に孔を潰すべきだと考え、自らのとっておきで孔を破壊することにした。アーチャーは後ろにいる凛に声をかける。
「凛!魔力を回せ!」
「えぇ!わかったわアーチャー!」
凛の体から魔力がパスを通じてアーチャーに流れる。自らの肉体に十分な魔力が集まったことを確認したアーチャーは詠唱を始める。
「
アーチャーの手元に螺旋模様の剣が投影される。彼はそれを弓につがえた。狙いは泥が流れてくる孔。
「
限界まで引き絞られた弓を放す。勢いよく飛び出た矢は孔に向かって一直線に突き進んでいく。
そして大爆発が起こる。その爆発は孔の周囲にいたシャドウサーヴァントごと飲みこむ。
「チッ...ダメか」
アーチャーは舌打ちをする。
その視線の先の孔は依然として開いている。
「どうやら生半可な攻撃では消せないらしいな」
ここはやはり彼女の宝具か...とアーチャーは前方で戦っているセイバーをチラリとみる。
影を切り倒していくセイバーもまた自らの宝具をいつ使うべきか決めかねていた。
士郎から大聖杯は破壊しないでくれと伝えられている。今この場で宝具を解放すれば、孔の後ろにある大聖杯ごと巻き込んでしまう。それに魔力の問題もある。令呪の補助も無しのこの状況、彼女では一発がせいぜいだろう。
「状況が不味くなれば躊躇せず解放させてもらうぞ士郎」
脳裏に能天気なマスターを思い浮かばせながら、彼女は戦い続ける。
そして、近くにいる雪の妖精もまた思考を繰り返していた。
彼女はその手に握りしめられた氷剣を振るい、影を切り伏せていく。
「キリがないね」
周囲のシャドウサーヴァントを断ち切ったイリヤはそう独り言ちる。
やはりシャドウサーヴァントでは、女神三人の力を借りた今のイリヤの敵ではない。
「それにしても...さっきから何か変」
さきほどからシャドウサーヴァントの手ごたえがない。
途中から少しは強くなったけど、今は最初のほうよりも弱くなっている気がする。
その違和感は凛と慎二を守っているキャスターも感じていた。
「やはり変だわ」
「どうしたんだキャスター?」
魔力弾を影に向けて撃ちながらキャスターは違和感を訴える。
そんなキャスターの様子を変に思った慎二が尋ねる。
「最初よりシャドウサーヴァントに込められている魔力が少ない。あの聖杯の魔力が切れたとは思わないし、何か企んでいるのかしら」
「やはりか。それで先ほどから楽に倒せているわけだ」
途切れることなく矢を放つアーチャーは敵の脆さの原因を理解する。シャドウサーヴァントはアーチャーの何の力も込められていない矢の一撃だけで沈んでいく。
「何を企んでいる?魔力を温存しているのか...?」
長年の戦闘経験を持つアーチャーは先ほどから嫌な予感をひしひしと感じている。
「ん?あれは...」
ふとアーチャーの視界の隅に剣を上段に構えたシャドウサーヴァントがうつる。
「ッ!
危機を感じたアーチャーはすぐさま右腕を前に出し、前方に自らの最大の防御を敷いた。
慎二と凛を守るかのように大きな7枚の花弁が咲く。
そして敵が放った漆黒の力の奔流が花に激しく衝突する。
「これは宝具!?ただの影が英霊の切り札を使えるというの!?」
「あぁ、そのようだ!」
キャスターが危うく自らに当たりかけた宝具に驚きの声を上げる。
アーチャーは全力を出して、敵の宝具を防ぐ。花弁はひとつひとつ割れていく。
「くっ...アイアスの盾が4つ破られたか」
敵の宝具の攻撃が終わる。こちら側に負傷はなかったが、アーチャーの盾がなかったら怪我では済まなかっただろう。そのことに少しだけホッとする凛と慎二。
だが
「!?」
一息付けぬままアーチャーは悪寒を感じ、とっさにアイアスの盾が広げられた腕をまた前に突き出す。それと同時にまたもや相手の宝具が盾にぶつかる。
「魔力を温存していたのはこのためか!」
連続した敵の宝具でアイアスの花が散っていく。理性無きシャドウサーヴァントが放つ宝具は同胞すら飲みこむ。彼らに同士討ちという概念はないのだろう。
パキンパキンと花びらは割れていき、そしてアイアスの花びらは最後の一枚となった。なおも止まらぬ敵の宝具により最後の花びらにヒビが入る。アーチャーはうなり声をあげてその一枚を死守する。
しかし、その最後の一枚はあっけなく破壊される。敵の宝具が無防備となったアーチャーたちに迫る。
「させない!」
突如、アーチャーたちの目の前に大きな氷が出現する。その氷は敵の宝具を一時的に防ぐ。
「大丈夫皆!?」
「助かったわイリヤスフィール!」
前線から帰ってきたイリヤがアーチャーたちを氷で守ると、凛が感謝の言葉を告げる。
皆の無事を確認したイリヤは今の宝具を打ってきたシャドウサーヴァントを見据える。
そのシャドウは再びその剣に大量の魔力を溜めて、宝具を解放しようとしている。
「ランサー!」
「おうとも!」
宝具を解放寸前のシャドウへと音速で駆けぬけたランサーがその槍を突き出す。しかし、シャドウサーヴァントはランサーの槍裁きを自らが持つ剣ではじき返す。
「ほぉ、他の影どもとは一味違うじゃねーか」
ランサーはその顔に獰猛な笑みを浮かべ、目の前の敵と剣戟を続ける。
「あれはランサーに任せてよさそうだな」
そしてアーチャーは孔の真下に溜まる泥を見る。黒に染まった泥からとてつもない魔力を身に秘めたシャドウサーヴァントが現れる。
「敵は決めにきたのか?小僧の戦いが終わるまで仕掛けてこないと思っていたが」
「どうでもいい。こちらも決めにかかるまでだ」
アーチャーとセイバーの身に魔力が吹き荒れる。
「私も...!」
イリヤは女神たちの力を最大解放する。もともと白かった肌や髪がより氷のような白さになり、赤かった目が青く染まる。
「ここで決める!」
セイバー、アーチャーとともに出現した影に迫る。敵が放つ矢をくぐりぬけ、イリヤたちは影に切りかかる。
「たぁっ!」
氷の剣を大振りで影に叩きつける。しかし、シトナイの筋力はEランク。強化された影にシトナイの攻撃は容易く防がれてしまう。
「まだまだ!」
氷剣から手を放し、相手が仕掛けた攻撃をよける。そのまま距離を取り、氷でできた弓を作り出す。
そして弓に氷の矢をつがえ、放つ。高い貫通力を誇るその氷の矢は一直線に敵へと向かい、敵が纏う鎧ごと貫く。
イリヤは矢のダメージにひるんでいる敵へと駆ける。
「わたしの中の女神たち、力を貸して……!」
イリヤは胸に手をあて、女神たちに祈りを捧げる。
そして先ほどよりも膨大な魔力を乗せた矢を作り出し、構える。
「貫け!」
放たれた矢は空中で巨大な氷の槍となり、隙だらけのシャドウサーヴァントに突き刺さる。
そして氷の槍に捕らわれ身動きできない敵にイリヤは剣を振りかざす。
「これでっ終わり!」
手にもつ剣で敵を拘束する氷ごと両断する。左右二つに割れた影は霧となって消えていく。
敵を倒せてほっとするイリヤ。
アーチャーとセイバーのほうを見てみると、彼らも問題なくシャドウサーヴァントを倒せていた。武器を携え、イリヤのもとへと集まる。
「怪我はないかイリヤスフィール」
「うん、大丈夫だよ」
傍まで来たアーチャーが心配そうに怪我がないか尋ねる。
そんなアーチャーの様子から、イリヤは士郎を頭に思い浮かべ、二人して過保護なんだからと苦笑する。
「さて、どうするつもりだ言峰」
敵を既に倒したのかランサーも槍を担いでイリヤのそばまで来た。その視線は目の前の台地の上に立つひとりの男へ。
「てめえの負けだ。正規の英霊ならならともかく、ただの影ごときで俺らを倒せると思わねぇことだな」
宝具を使えたのは少し驚きだったがとランサーは呟く。
「...どうやらこちら側の敗北というわけか」
ランサーの言葉に言峰は意外にもあっさりと敗北を認めた。
「ギルガメッシュが敗北した。衛宮士郎もじきにここへと来るだろう」
「士郎が!!」
言峰はギルガメッシュに通じるパスが途切れたことを把握した。それが意味することは、既にギルガメッシュがこの世から消えたということ。ギルガメッシュに打ち勝った衛宮士郎はすぐにでもこの場所にたどり着くだろう。
士郎が勝ったことを聞いたイリヤは喜びを顔に浮かべる。
しかし、手にもつ武器はまだ下ろさない。
警戒して言峰を観察する。
「残ったのは私ただ一人、ならば最後の足搔きをするとしよう」
聖杯を掲げる。聖杯に残るすべての魔力を使う勢いで消費し、言峰は自らの命を無視してまで決着をつけにかかる。
黒色の魔力が聖杯から孔へと流れる。
泥が流れ落ちている孔がドクンと鼓動する。そして一体の影を産み落とした。
空から落ちてきたシャドウサーヴァントが地上に着地する。弓を携えたその体には今までの影とは比べ物にならないほど膨大な魔力が込められている。
影が弓を構えた。空間が凍り付くかのような悪寒に包まれる。
「不味い!」
アーチャーとイリヤはすぐさま矢を放ち、敵の宝具の解放を止めにかかる。しかし、その影は己に突き刺さる矢にものともせず、弓をしならせる。
「解放しろ」
言峰の言葉とともに、影の体にヒビが入る。
それはまさに己の肉体すべてを使った一撃。消滅と引き換えに放つ、かつて大地を割った超強力な流れ星の一撃。
影となった今本来のそれには劣るが、広域に効果を持つその宝具をただの一点に集中させたその破壊力は容易くイリヤ達がいる龍洞を消し飛ばすだろう。
「■■■ーーー!!」
聞き取れない大声をあげて、影が不可避の矢を放つ。その必殺の一撃はイリヤ達目掛けて突き進む。
「お願い女神たち!皆を守って!」
イリヤは両手を前にかざし、自らが持つすべての魔力を持って氷の壁を作り出す。
そして矢が壁と衝突するとともに、その衝撃で龍洞が揺れる。
「ッッッ!!!」
「イ、イリヤ!」
だが敵の放った矢はそんな氷をものともせずに突き進んでくる。氷を支えているイリヤの腕の血管が破れ、血が流れ出る。
「クッ!私の宝具で相殺する!そのまま氷を出し続けろイリヤスフィール!」
イリヤの前に出たセイバーが黒に染まったエクスカリバーを構える。エクスカリバーが漆黒の魔力で包まれる。
「
セイバーが宝具を解放する。黒い極光がイリヤの氷を突き破った矢とぶつかる。
だがわずかばかり矢の威力のほうが強いのか、極光の中を矢は依然として突き進んでくる。
「これでも足りないのか!」
「セイバー!下がれ!」
後ろからランサーに呼びかけられたセイバーは後ろへと下がる。
ランサーは文字が書かれた石を四方へと投げる。
「キャスター!補助しろ!」
「えぇ!ルーン魔術は専門外だけど!」
ランサーが呪文を呟くと、彼らを包み込む結界が貼られる。そしてキャスターが高速詠唱をくりだし、その結界の強度を補強する。
セイバーが放った宝具を潜り抜けた矢がランサーの作り出した結界と衝突する。
イリヤの氷、セイバーの宝具と正面からぶつかったのにもかかわらず、いまだに恐ろしい破壊力を持っていた。
「この破壊力!あの影の宝具の力だけってわけじゃなさそうだな!」
ランサーは孔から流れ出る泥をチラリとみる
影が放った宝具は泥でコーティングされ、聖杯の無限ともいえる魔力のバックアップを受けた一撃。
サーヴァントであるがゆえに、彼らが持つ防御は容易く泥に侵食されてしまう。
イリヤ達を守る結界にヒビが入る。そして、結界は容易く打ち破られる。
「
先ほど出したばかりの宝具をアーチャーが再び解放する。しかし、魔力が足りておらず花弁は三枚しか開かれない。
「もう一度!」
イリヤもまたアイアスに重ねるように氷を展開する。花を包むように氷が形成される。
アーチャーとイリヤが最後の力を振り絞り、迫りくる矢を必死にとどめる。
しかし一枚、二枚と花びらは散っていく。
残りの一枚。
これが破られれば、もうあとがない。慎二や凛、サーヴァントもろともすべて消し飛ぶだろう。
最後の一枚にヒビが入る。
それでもイリヤは決して諦めない。その身果てるまで、生にしがみつく。
だって
「矢を切り刻め、『
ほら、やっぱり間に合った。
イリヤは愛する人の声を耳にし、笑顔を浮かべる。
そして、目の前まで迫っていた矢は跡形もなく切り刻まれた。
その瞬間、何があったのか言峰綺礼は理解できなかった。
自らの敗北を悟り、聖杯に残る魔力すべてを使っての自爆攻撃を行ったが、放った宝具はあと一歩というところで急に掻き消えた。
言峰は声がした龍洞の入り口へと顔を向ける。そしてその原因となった人物を見つけた。
「貴様か!衛宮士郎!」
件の人物は、人差し指の上に背筋が凍るナニかを乗せていた。
「ケリをつけに来たぜ言峰」
鋭い目つきで士郎は言峰を見ていた。
誰一人として欠けていない皆を見て、少しホッとする士郎。
「士郎!」
ボロボロになったイリヤがこちらへと振り向く。腕の痛みをまるで気にしていないかのような笑みを浮かべている。
すぐにでもイリヤのもとへ駆けつけたいが、士郎は目の前に迫ってきている影の集団を一瞥する。
「邪魔だ」
士郎がそう呟くと、視界すべての影が両断される。
目の前に障害がいなくなったことを確認した士郎は
「アーチャー!今だ!」
「わかっている!キャスター!宝具を貸せ!」
「えぇ!」
キャスターは己の懐から宝具を取り出す。それはキャスターが持つ最強の対魔術宝具。
「狙い撃つ!」
キャスターの宝具を手に取ったアーチャーは弓にその宝具をそえる。
そして高く飛び上がり、狙いを定めた。
「
放たれた宝具は一直線にアーチャーの狙いである大聖杯へと突き進む。すべての影が切り倒された今、その攻撃を止めるものは誰もいない。
そしてルールブレイカーは大聖杯に突き刺さる。
それと同時に禍々しい魔力が大聖杯から発生する。それはまるで中に潜む何かが苦しんでいるようだった。
貫かれた大聖杯は初期化され、その中にいる余分なものは外へと強制的に排出される。
空にあった孔が消える。
そして大聖杯から大きな泥の塊が飛び出し、大聖杯から遠く離れた場所へと落ちる。
まるで人のような形をしたその泥は地面に倒れ伏し、まだ諦めていないのかその腕をイリヤ達へと伸ばす。
「すべての令呪をもってセイバーに命ずる。宝具を解放しろ」
「フッ、よかろうマスター!」
いつの間にかイリヤたちのそばまで来た士郎が手にある三つの令呪を使う。
その命令を了承したセイバーは、令呪のバックアップを受けてその剣に膨大な魔力を乗せる。
「
セイバーのそばに立った士郎はその両手に黄金の輝きを持った剣を投影する。
「鳴け。地に墜ちる時だ。極光は反転する」
「束ねるは星の
黒と黄金の輝きが龍洞を照らす。
そして二人は同時に宝具を解放した。
『
『偽・
金色の奔流と漆黒の極光が束なるようにして泥の人形へと突き進む。泥は何もできずその金と闇の光に飲まれる。
そして黄金と漆黒の柱が龍洞の天井を突き抜け、空高く舞い上がった。
その柱は冬木のどこにいても見えるほどのものだった。
「...この世すべての悪が消えたか」
天に上る柱を見上げた言峰は力を失いその場に倒れる。
この世すべての悪によって生きながらえていた言峰の体が活動を停止する。
その指は一本として動かなくなり、意識が暗闇に飲まれていく。
「...」
言峰は瞼をゆっくりと閉じる。
彼が何を最後に考えていたのかは誰にもわからない。
そして一人の男がその人生を終えた。
終わった。
この10年もの長い間、ずっと俺を悩ませ続けてきた聖杯戦争がついに終わりを迎えたのだ。
「士郎!!」
この世全ての悪が消滅したことを確認すると、後ろから急に抱き着かれる。
後ろを振り返ると、イリヤが俺の体に抱き着き顔を綻ばせていた。
「イリヤ、みんなも無事だな」
慎二や凛、サーヴァントの皆誰ひとつ欠けることはなかった。
これも皆のおかげだろう。
「そういや、言峰の野郎はどこだ?」
ランサーが辺りを見回す。
「奴ならあそこだ。大方この世全ての悪が消えたことによって連鎖的に死んだのだろう」
アーチャーが顔を向けると、そこには横たわった言峰が倒れている。その手から離れた聖杯が台地の上から転がって落ちてくる。
「おっとっと」
転がってきた聖杯を慌てて掴む。
「聖杯も無事のようね」
「そうだな」
傍に来た慎二と凛が聖杯の損傷を確認する。これがあれば皆の願いを叶える程度のことはできるだろう。
「やっと終わったんだな....」
俺は感慨深げに空を見上げる。
龍洞の天井にあいた穴から太陽の光が入ってくる。
その光はこの聖杯戦争の勝者を祝うかのように俺たちを照らしていた。
「おっさんこれでいいかな?」
「いや士郎...さすがにこれは...」
「あれ?士郎と切嗣?何してるの?」
何もない平穏なとある一日、イリヤは玄関先で士郎と切嗣が何かをしているのを発見した。
「おっ、イリヤか。今アインツベルンに送るために聖杯の梱包してたんだよ」
「こんな希少なもの普通の手段で送ってもいいのかな...」
「あっちも俺と直接会いたくないだろうしいいでしょ」
士郎の前にある段ボール箱の中に、勝ち取った聖杯が入れられている。
きちんと衝撃を和らげるため、段ボールと聖杯の間にはクッション材が入れられている。
超一級の魔術品をぞんざいに扱う士郎に笑いが止まらなくなる。
「あははははは!士郎ってほんとうに面白いね!」
「これでも結構真面目に考えたんだけど..」
士郎は聖杯が入った段ボールにガムテープをかけて固定する。
「それじゃ送ってくるわ。おっさん送料のお金ちょうだい!」
「わかったよ、数万円あれば足りるかな?」
懐から財布を出した切嗣が、福沢諭吉が描かれたお札を数枚士郎に渡す。
「ヒッヒッヒッヒ、ありがとなおっさん」
渡された一万札を扇子のように広げた士郎は邪悪な笑みを浮かべる。
これだけあればあの漫画が買えるなと士郎は周りに聞こえない声量でつぶやいた。
「士郎」
「ん?どうしたセラ」
居間のほうからエプロンを着たセラがやってくる。そしてその手にあった小さな紙を士郎に手渡す。
「外にいくならついでに買い物をしてきてください。切嗣さんから渡されたお金があれば足りますよね?」
「しょうがねえなあ」
士郎はしぶしぶ買うものが記された紙を受け取る。
「士郎!私も一緒に行ってもいい?」
「もちろん」
士郎の了承を確認した私は急いで靴を履く。
「イクゾー」
「行ってきます!」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ」
切嗣とセラに見送られて玄関を飛び出る。
今日の天気も晴れ、気温も寒くはなくちょうど良いくらい。
私と士郎は楽しく会話しながら、近くの配達所への道を歩いた。
「意外と配送料高かったな...」
「まぁ距離が距離だしね」
配達所を出た士郎は少なくなった一万円札にがっくりとする。
私はそんな士郎の手を引いて、商店街まで歩く。
商店街につくと、時間帯のせいもあってか人で賑わっていた。皆ここで買った材料を使って今日の晩御飯を作るのだろうか。
「えーとまずは魚か」
「魚ならこっちだね」
人混みを器用に避けながら士郎はセラからもらった紙を見る。
そして私たちはまず魚屋へと向かった。
「いい魚が並んでんじゃん」
魚屋には美味しそうな魚がならんでいた。
目当ての魚が置いてあることを確認した士郎は中にいるであろう店員へと声をかける。
「すみませーんこの鮭が欲しいんですけど~」
「あいよっと!ん?なんだ坊主じゃねーか」
「ランサー!」
店の中から店員の恰好をしたランサーが出てきた。
「なんだランサー。ここでバイトしてたのか?」
「おう、見ての通りな」
そう言うランサーの店員姿は確かに似合っていた。
受肉したあと、生活費を稼ぐために働いているのだろうか。
「鮭だったよな?ほれ」
ランサーは充分な量の鮭の切れ身をビニール袋に入れ、士郎に手渡した。
士郎は料金ピッタリのお金を差し出す。
「ありがとなランサー、また来るよ」
「次も頼むぜ」
ランサーに別れを告げて、次の店へと回る。露店で売っている美味しそうな食べ物の匂いが伝わってくる。
士郎は紙を眺めて、次の目的地を呟く。
「魚は買ったし、次は野菜か」
「じゃあ八百屋だね」
今度は八百屋さん。紙に書かれたキャベツ、人参、玉ねぎなどの野菜を購入する。
八百屋にはいろんな野菜が並んでいた。その中には目的の野菜もある。
できるだけ新鮮なやつを選ぼうとするも、二人とも素人なのでどれが良いのかわからない。
「あれ?先輩?」
「うん?おっ桜とライダー。二人も買い物か?」
「そうです」
悩んでいる私たちの後ろから桜が声をかけてきた。
そばにはライダーもいる。
「ちょうど良かった桜。どの野菜がいいか選んでくれないか?俺たちじゃ違いがわからなくて...」
「わかりました先輩!この桜におまかせください!」
そう桜は自信満々で言うと、必要な野菜をすばやく選び取っていく。
やはり長年料理をしていると自然とこういう技術は身につくものなのだろうか。私もこれから頑張って料理の練習をしてみよう。
「ありがとな、助かったよ」
「いえいえ!おかまいなく!」
士郎は選んでくれたお礼にと買ったじゃがいも数個を桜に渡そうとする。桜は最初断っていたが、士郎の熱意に負けしょうがなく受け取った。
「じゃあな桜。また学校で」
「じゃあね桜」
「はい!」
桜とライダーに手を振って別れの挨拶をする。
両手いっぱいにビニール袋を持った士郎ははにかんだ笑みを浮かべ言う。
「それじゃあ紙に書かれた食料全部買ったし帰るとするか」
「うん!」
夕日を背中に浴びて、私たちは買ったものを手に家へと帰る。
聖杯戦争が終わり、私たちの何気ない日常が再び戻った。
あっという間に終わった聖杯戦争だったけれど、私は生涯この数日間を忘れることはないだろう。
ここまでが俺が生きた10年間の日々のできごと
そしてそれはこれから始まるストーリーのプロローグでもある
ヤバい剣しか投影できない俺だけど
がんばって生きていきます
実は英雄王核が切られていつ消えてもおかしくなかったのに、士郎に贈り物と別れを告げるまで意地でも現世にとどまっていました。
今回で聖杯戦争編は終わりです。
アンケート通りまずFGO編を開始したいと思います。
これは謝罪なのですがFGO編は最初の特異点冬木からやると絶対に間違いなく確実にエタるので自分の好きな章およびイベントだけやる予定です。
許してください!なんでもしますから!
あとイビルメタルちょっと強く描きすぎたことに反省しております。
ルールブレイカーのくだりもたぶんできるだろうと考えたことで、実際に大聖杯の泥をルールブレイカーで分離できるのかはわかりません。
あと聖杯のことを聞かれたので載せます。
本編では書いてなかったのですが、イリヤの小聖杯と桜のかけらはすでに封印されてます。
よってギルガメッシュは自らが持つ聖杯に強引に小聖杯の力を持たしました。
聖杯が残ったのは士郎の腕輪のようにプレゼントとでも思ってください。
中身もギルガメッシュ三騎分、シトナイの女神三騎分、アサシンの一騎でちょうど7騎あり、大聖杯への孔をあけるには十分な量が入っています。
まぁちょっとご都合主義が入っていますが...
聖杯戦争編が終わったら書こうと思ってる話の中で見たいのをお選びくださいお願いします。
-
聖杯戦争編その後(ほのぼの)
-
もしも原作士郎がオリ士郎を召喚したら
-
もしオリ士郎君が汚染れたら(ドシリアス)
-
fgo編
-
他のfate作品にオリ士郎君突入