これもイベントを立て続けに開催したfgoが悪い(擦り付け)
地面の冷たさを感じ、颯斗の意識は覚醒する。
視界の中に移る手を、開閉し、体の具合を確かめる。
自分の体が無事な事を確認すると、颯斗は体を起こした。
そこで颯斗は、自身の体に走る、赤黒い線に気が付いた。
まるでこの迷宮の魔物の様に、体の所々に浮き出ている。
「んだこれ?魔物みてぇに…それに体が軽いな」
座り込んだ颯斗は、体が軽く、全身に力が満ちる事に首を傾げた。
あれほどの苦痛を味い、のたうち回ったのだ。
体の何処かにガタが来ていてもおかしくない。
それでも肉体面には何の問題も無かった。
そして横に居るはずのハジメを見て、硬直した。
「う…あ?どうなって…ん?」
「…ハジメか?」
起き上がったハジメも、颯斗の姿を見て硬直する。
まずハジメは、以前よりも明らかに筋肉が発達している。
この二週間で軽く筋肉が付いた程だったのに、腹筋が割れている。
そして何より身長が延びている。
170cmを越え、鋭い目も合わさって、面影が殆んど無い。
対して颯斗はまず身長のこと。
186cmと元々長身だった颯斗が、今は200cmを優に越える大男になっている。
そして元々日本人特有の黒の瞳が、薄いグレーとなり、下ろしている髪と合わさって爽やかなイケメンになっている。
「ハジメ…イメチェンなら少しは面影残した方が良いぞ?」
「なんの話だよ。つかそれブーメランだからな」
心に余裕が出来たためか、久しぶりに軽口を叩き合う二人。
そして体に浮かび上がる赤黒い線に気が付いたハジメが、気持ち悪そうに顔をしかめる。
冷たいような温かいような感覚に意識を集中させると、線が濃く浮かび上がる。
「き、気持ちワリィ…魔物にでもなった気分だ」
「俺らが魔物を食ったのではなく、俺らが魔物に食われていた…!?」
「洒落になってねぇ…そうだ、ステータスプレートは…」
存在が消えかかっていたプレートを取り出したハジメが、それを見てまた硬直した。
不思議そうに眉を潜めた颯斗が、同じようにプレートを取り出し、ハジメと同じ様に石像になる。
そこに書かれていたのは___
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橘颯斗 17歳 男 レベル:15
天職:拳闘士
筋力:650
体力:840
耐性:890
敏捷:520
魔力:200
魔耐:890
技能:全属性耐性・物理耐性・複合格闘術・剛力・金剛・縮地・直感・気配感知・限界突破・闘気・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解
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「なんじゃこりゃあぁ…!?」
「無駄に声を似せんなよ。いやホントに似てるな」
「特技だからな」
颯斗の意外な特技が披露されたが、ハジメと颯斗の視線はプレートから離れてなかった。
ステータスが軒並み上がっており、技能も三つ増えている。
「〝魔力操作〟?」
呟いたハジメは、先程から感じている奇妙な感覚が魔力なのでは?と考え、先程と同じように集中し始める。
赤黒い線が体に浮かび上がり、右手に収束させるようにイメージすると、ゆっくりと奇妙な感覚、もとい魔力が移動し始めた。
「お?おっ、お~?」
「気持ちワリィ声出すなよ」
動く感覚につい声を上げ、颯斗に突っ込まれながらも試していると、集まってきた魔力がそのまま手にはめている手袋の錬成陣に宿り始めた。
驚きながらも錬成を試すハジメ。
するとあっさり地面が盛り上がった。
「マジかよ。詠唱要らずってことか?」
「あんま魔法には詳しくねぇんだが、確か魔力の直接操作なんて出来ねぇのが原則だよな?」
「あぁ。つまりは魔物の肉食っちまったせいでその特性を手に入れたって事だろ」
ハジメはもうひとつの〝纏雷〟を発動しようとする。
「んー…どうすりゃ良いんだ?〝纏雷〟ってことは電気だよな?」
「あの尾が二本の狼が使ってたやつだろ?」
「そのハズなんだが…」
う~んと唸りながら、そういえば錬成にはイメージが大事だと思い出すハジメ。
魔法陣に多くの式を書き込まない分、イメージが加工物にそのまま伝わるのだ。
ハジメは、バチバチと弾ける静電気をイメージすると、右手の指先から赤い電気が弾けた。
「おお!出来たじゃねぇか」
「なるほど、固有魔法はイメージが大事ってことか」
「イメージねぇ…」
ハジメの言葉を聞き、颯斗も同じように〝纏雷〟を発動させる。
先程のハジメが発動させた電気をイメージし、魔力を込める。
すると琥珀色の電気が弾けた。
しかしそれは、ハジメよりもだいぶ規模が小さかった。
「んー俺には合わねぇな…まぁ物理専門だしな」
「それで魔法も強かったらまさしくチートだろ」
「強くて悪いことはねぇぞ?」
ハジメは何度かバチバチと放電を繰り返す。
しかし飛ばすことは出来なかった。
〝纏雷〟という言葉通り、纏うか周囲に伝わせることしか出来ないのだろう。
電流量や電圧の調整は要練習だ。
そして最後の〝胃酸強化〟に二人は心が踊る。
魔物を喰らってあの苦痛を味わったのだ。
食事をする度にのたうち回るのは勘弁してほしいが、迷宮に食料があるとは思えない。
飢餓を取るか苦痛を取るか、その究極の選択をこの技能が解決してくれるのではと二人は考える。
二人は狼さら肉を剥ぎ取り、〝纏雷〟でこんがりと焼いていく。
流石に飢餓感が癒された後で、わざわざ生食いする必要もない。
強烈な悪臭が漂うが、耐えて焼く。
そして意を決して食らいつく。
暫く待ってみたが何も起こらない。
二人は次々と肉を焼き、食らっていく。
それでも痛みは無く、胃酸強化のお陰か、耐性が出来たのは分からないが、食に困らなくなると、二人は喜んだ。
腹を満たした二人は、爪熊を倒すためにあれこれと話合っていく。
ここを脱出するにしても、必ずあの怪物が立ち塞がる。
そして勝てる可能性も出てきたため、ここに来たときとは真逆の、希望を持って力の習得に励んだ。
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二人が技能の訓練を始めて数日が経った。
ハジメはほとんど拠点に籠り錬成の訓練とたまに戦闘訓練を、颯斗は技能の訓練の為に外で魔物を狩る。
その成果で、どの技能も順調に成長している。
その中でもハジメの錬成に変化が合った。
なんと〝派生技能〟が付いたのだ。
それは〝鉱物系鑑定〟である。
国お抱えの錬成師の中でも上位の者しか持っていない技能だ。
通常、鑑定系の魔法は多数の式を書き込まねばならず、限られた施設で発動させる。
しかしこの技能を持つ者は、触れてさえいれば、簡単な詠唱であらゆる鉱物を鑑定できる。
早速ハジメは、周囲の鉱物を片っ端から調べ始めた。
例えば、緑光石を鑑定すると、ステータスプレートにこう出る。
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緑光石
魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。
また魔力を溜め込んだ状態で割ると、溜めていた分の光を一瞬で放出する。
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なんとも簡易な説明だが、十分にありがたい情報である。
ハジメはニヤリと悪巧みを考えついたように笑う。
それからもあちこち役立ちそうな鉱物を探して彷徨さまよいながら、ハジメの相棒にして、切り札となる武器を作るために必要な鉱物を発見した。
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燃焼石
可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。
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ハジメは遂に、
作成は一度作っているからそう難しいことではないが、自身が求める火力は、以前作った銃では役不足。
故に、寝食を忘れ、錬成の熟練度をあげ続けたハジメは、遂にとある物を造り上げた。
全長35cm、ここで見つけた最硬のタウル鉱石を使った、大型リボルバー拳銃。
もはや拳銃の域を越えているが、これだけではない。
弾丸は燃焼石の爆発力だけでなく、〝纏雷〟に電磁加速されるというレールガンになっている。
その威力は、対物ライフルの10倍を誇る。
「これならあの怪物も…脱出だってやれる…!」
何故ハジメがあの爪熊に執着するのか。
まずあれは颯斗であれば倒せるだろう。
一筋縄ではいかなくとも、ハジメも合わされば倒せない相手ではない。
しかし、颯斗はそれをしなかった。
否、ハジメが
ハジメが颯斗に頼んだのである。
「あいつは俺に殺らせてくれ」
ハジメは爪熊に心を折られた。
その原因を避けてしまえば、自分は何処かで〝妥協〟してしまう。
颯斗の荷物になるのだけはゴメンだ…と。
俺は背中に隠れるのでは無く、背中を守れる様になりたいと、ハジメは力強く宣言した。
それを颯斗は受け入れ、食料を狩りながら、技能の獲得に努めていた。
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ドンナー(命名:ハジメ)を造り上げたハジメは、それを使う戦闘訓練をしていた。
といっても、狼は素早く無いために簡単にぶち抜けるし、ウサギは一直線にしか突っ込まない為、狙いをつければ倒せるため、訓練と呼べるモノには成っていないが。
まぁ、秒速3.2キロメートルの弾丸を耐えられるわけが無かった。
そして現在、蹴りウサギより手に入れた〝天歩〟を使いこなそうとしていた。
ハジメは派生技能として〝空力〟と〝縮地〟を取得しており、颯斗の指導の元、〝縮地〟を訓練していた。
「あれ思い出せ、ウサギが突っ込んで来るの」
「あぁ…」
ウサギの、姿がブレる程の踏み込みをイメージする。
足に魔力を集め、爆発させるようなイメージで足を踏み込んだ。
ゴバッと足元が陥没し…吹っ飛んで顔面から壁にダイブした。
「痛っー!?か、加減がムズいな」
「力を込めすぎだ。足元を陥没させるほど力まなくても、少ない力を上手く推進力に変えれば良いんだよ」
「なるほどな…」
成功とは言えないが、発動することは出来た。
これから鍛練を続ければウサギ以上の機動力を手に入れられるだろう。
銃技と組み合わせれば、より強力な武器になる。
次に〝空力〟である。
これが中々発動しない。
名称だけではどんな技能なのか分かりにくい。
あれこれ試す内に、颯斗はウサギが空中を足場にしていることを思い出した。
早速颯斗は、空中に透明な板があることをイメージして、跳躍した。
そして顔面から地面にダイブした。
「ぐぁぁぁあ!?」
「お、おい。大丈夫か?」
鼻を思いっきり打ち付けた颯斗、顔面を抑えゴロゴロとのたうち回る。
そして痛みが引くと、憮然とした表情で起き上がる。
「まぁ一応は成功…かね」
「何があったんだ?」
「あー…空中に透明な板があることをイメージして、それに乗ろうとしたら高さ足りんくて足引っ掛けて転んだ」
簡単に言えば、階段を昇ろうとして、足を引っ掛けた感じだ。
中途半端に足場が出来たせいで、躓いたのである。
どうやら〝空力〟は空中に足場を作る魔法で間違い様だ。
そんな事故?がありながらも二人は鍛練を続ける。
目標は、生きること。
その為にまずはあの怪物を倒さなければ。
おそらく遠距離の銃撃で片はつくだろうが、念のため鍛えておく。
あれよりも強い魔物が現れる可能性があるのだ。
慢心で居れば、命は無いだろう。
そして怪物を倒した後は、出口も探さなければならない。
二人は気合いを入れ直した。