RASのマネージャーにされた件【完結】 作:TrueLight
チュチュ編(共通ルート)「23.大好きなんだ」からの分岐になりますが、チュチュ編で描写したシーンの大部分をダイジェストでお送りする予定なので、先にチュチュ編をすべて読んでからこちらをお読みいただくことを強く推奨します。
P1.パレオちゃんとなら
『それなら、どうすればいいの……?』
『俺に、話してみてくれよ。俺はRASじゃない。間違ってもRASの表現する音楽に悪い影響なんて出ない……いや、出さない。信じられないなら、俺をクビにしてくれりゃいい』
『…………
ポピパの主催ライブのあと、チュチュの元へ戻ってからの一幕。RASの進む道に、自らの表現する音楽に、ほんの少しこぼれた不安。焦燥。俺がそれを取り払ってやれないかと愚考したが、残念ながらそれは叶わなかった。
「ま、しゃあないか……」
ベッドで横になり、天井を見つめつつ俺は呟いた。チュチュもすでに床に入り、今日はもう寝るだけだ。寝るだけなんだが……。
「はぁ……」
いらんことが頭の中をぐるぐる回って、なかなか寝付けない。もっと良い言い方は無かったんだろうか? 俺が余計なことを言ったばっかりに、チュチュの音楽に影が射したりしないだろうか?
杞憂なのは分かってるんだ。チュチュにも言ったように、その経験と価値観を基準に、"俺に胸の内を明かさない"ことを彼女は選んだんだから。その道の先に何があろうとも、チュチュはその原因を他人に押し付けたりしないだろう。
でも、俺はRASが。チュチュの表現する音楽が好きなのだ。出来ることなら、その大成に一役買いたかった。
「……ふっ。我ながら小さいぜ……」
思わずそんなことをカッコつけて言ってみた。なんだ、考えてみればなんてことは無い。RASの大成に一役買いたい? 自分のバンドもまとめられなかった俺が? ちゃんちゃらおかしいわ! そう、結局のところ、俺の出しゃばりが過ぎたってことだ。やめやめ、考えるだけアホらしい。
明日からはきっと、今まで通りの活動が続く。チュチュもポピパのライブで受けた衝撃をずるずる引きずることは無いだろう。なんせ本人が、我が道を突き進むと決めたんだから。だったら俺も今まで通り。自分に出来る精いっぱいで、チュチュの領分を侵さないように、その活躍を見守ろうじゃないか……。
ヴー……ヴー……。
と、そこまで考えを巡らせたところでスマホに着信が。通知を開くとパレオちゃんからのメッセージだった。しかも一時間前。この
『チュチュ様のご様子はいかがですか? ポピパの皆さんにご挨拶して以降、電車の中でもお加減が思わしくないようでしたので。パレオではお力になれそうにありませんでしたが、ソースさんならきっと! と考えています。不甲斐ないパレオをお許しください。そして出来れば、チュチュ様のお力になって差し上げてください!』
「ふふっ……」
先ほどの自嘲とは違う笑みがこぼれた。どこまでも健気な娘っ子やね、パレオちゃん……。そうだ、チュチュを手助けするために、俺自身が何か出来ることは無いかーなんて考えていたが。パレオちゃんは、自分では力不足だと考えたら真っ先に俺へ連絡してきた。
俺のように独りよがりじゃなく、心底チュチュの力になりたいと思っている証拠だ。なんというか……自分が恥ずかしくなる。と同時に、励みにもなった。自分と同じように、チュチュを。大切な人を支えたいと思ってくれる人がいるんだ。
「"すまん、俺も無理だった。でもパレオちゃんとなら、チュチュの力になれるかも。
鬱々とした思考はどこへやら、晴れやかな気持ちで俺はスマホを掲げた。そうすることで送信が早くなったりはせんだろうが、こういうのは気持ちだ。届け! 俺のメッセージ!!
すると数秒経たず、返信が届いた。ちゃんとアプリを開いていればすぐに通知してくれるらしいね、このポンコツスマホ。
『ぜひよろしくお願いします!』
その一文と共に、星形のスタンプ。脳裏に溌溂とした笑顔で、メッセージをそのまま口にするパレオちゃんの姿が鮮明に思い浮かび。思わず緩んだ口と心のままに、俺は眼を閉じた。今日は良い夢が見れそうだ……。
なお、なぜかチュチュが投げるフリスビーを俺とパレオちゃんが奪い合う夢を見た。しかも人間のまま。解せぬ……。