「まっ、俺はそろそろ行くよ。あとシャワーありがとな」
「本っ当に感謝するぜ!何言ったらいいか……!」
〈ケンドの鉄砲店〉の入り口では、軽く湯気立つ体と、それによって柔らかくなった髪を纏め防護服を着込むブラッドと、それを見送るクシャクシャになった顔が印象的なケンドがいた。
彼らの後ろからはソファーに寝そべりスウスウと寝息を吐く女の子がおり、数時間前までは土気色だったその顔も大分人らしい紅潮した頬に戻っており、その様子から峠を越したことは想像に難くなかった。
「だから礼はシャワーと追加物資で充分貰ったっての。これ以上は過剰になる」
「そうか…いや、そうだな。分かったぜブラッド」
二人は顔を合わせて頷き合うとブラッドはそのまま踵を返して家を出ようと……する前にケンドに再び向き直り、徐に懐のラクーン市のミニマップを取り出した。
「あと、今から数時間後にここにヘリが来るハズだ。パイロットは現地についてからのお楽しみだが信頼できる奴だから…少しでも“勇気”があるなら、行ってみてくれ」
頷いたケンドを見たブラッドは、今度こそ本当に踵を返し〈ケンドの鉄砲店〉を後にした。
「………………」
彼は店から出て暫く歩いた後ポケットから如何にもな無線機を出し、とある人物との通話を開始した。
「あぁ俺だ……ウンそのことなんだけど、俺の座席はキャンセルで頼む。代わりにお前とそう変わらない体型のやつと小さい
ふとブラッドが空を見上げると、何処の組織の引き金なのかわからない黒塗りの艶消し軍用ヘリ達に混じって、赤と白でカラーリングされた輸送ヘリが、漆黒の夜空を少々危なげに飛翔していた。
「アンタだって早く家族に顔見せたいだろ?だから頼むよ…………バリー」
■月○日⑥
…カッコつけようとしたらつい勢い余って緊急脱出用のヘリまで送ってしまった。
ま、まぁ警察官として民間人を避難誘導したと考えよう。
しかしこの先どうしたものか…正直このまま街をぶらついているだけでは事件の究明とラクーンからの離脱という二大目標が達成できるとはとてもじゃないが不可能だ。何とかしてジルさんと合流したいところではあるのだが、いかんせん手がかりがない。
ジルさんもどうやら探索中に無線機を落としたらしく連絡つかないし、どうしたもんか……
信号弾を打ち上げてもいいのだが、これにみよがしに軍用ガトリングを取り付けたヘリが飛び回るヘリ相手にそれはやりたくない。下手するとコッチを撃ってくる可能性もある
あぁそうそう探索している内に面白い人と遭遇した。
少しくすんだブロンドの短髪が特徴的な伊達男兼俺からしたら後輩にあたる【レオン・
数体のゾンビに囲まれていた所を俺が通り掛かり、レオンが近くに居て尚且つ距離が極めて近かったので、アサルトライフルやショットガンといった長物を自主的に封印し助けた。握手の際にバケモノを見るような目をしていた事は見逃してやった……まぁ俺たちS.T.A.R.S.程B.O.W戦に特化した人間はそうそういないとは思うが、それでもちょっと傷付いた。 というか俺S.T.A.R.S.の中なら遠中距離からの支援が主だからまだ人間らしいと思うのだが――ジルさんとクリス辺りなら体術だけで仕留めてる。
(ここから先は自らの誇りのようにS.T.A.R.S.の仲間自慢が書き記されている……)
「クソ! どうなってるんだこの街は……!?」
そう零しながらも手元の愛銃――マチルダ*1を連射する。 一般的な警官としてはかなりの腕前を誇るレオンの凶弾は此方へ向けて呻き声を吐露しながらもゆっくりと進んでくる
「本当になんなんだ!?」
堪らずマチルダを腰のホルスターに仕舞い込みゾンビたちに背を向け走り出す。 数回の戦闘から自分に襲いかかってくるゾンビ達が全員例外なく足が遅い事を学習したレオンは、こうして気持ち程度の足止めをしてから逃走という勇ましいのか小賢しいのかよく分からないこの行為を数回繰り返し、つい先ほどまで行動を共にしていたクレアという女性との集合場所であるラクーン警察署へ
本来今日付けでラクーン市警に配属(尚彼女にフラれヤケ酒し泥酔。現在大遅刻かましている最中)され、街一帯どころかラクーン警察署近辺の地形もロクに把握していないはずの彼がゾンビを避け続けながらという極限下でも淀みなく走り続けていられているのは…大きな理由があった。
(本当に、さっき道端で見つけた木箱がなかったらどうなってたやら…!)
レオンが自身の胸中でそう独白した通り、クレアと共に搭乗していた車が背後からのトラックの追突事故による炎上。 そこから流れるようにエンジンとガソリンに引火し大爆発からの命懸けの脱出。尚且つ二人はバラバラの方向に脱出した為別行動に――となりレオンが走り出した瞬間。レオンは街の景観維持のため植林されたと思わしき常緑樹の根元にそこそこの大きさの木箱が置いてあるのを発見した。
何の変哲もないはずの木箱だったが、妙に引き寄せられる“ナニカ”を感じたレオンは木箱の側まで近付いた。
木箱の上部には、書類仕事で鍛えられたのであろう小さくも整った字でこう書かれていた。
『
短かくもシンプルに、かつコレを見る相手の緊張を解すためユニークな言い方のソレに、レオンが思わず頬を緩めていたが、自身の状況を顧みえ今の自分は間違いなく『困っている』と判断。 作った誰かに感謝しながらも木箱を開ける。
「コイツは…ありがたい!」
そこにあったのは数十発分の弾丸に三本のエネジーバーにスポーツドリンク。周辺の物と思わしき手書きの地図と……一通の手紙が入っていた。
周囲の炎上(物理)によって流れ出た汗の分水分を摂ろうと一息でスポーツドリンクの半分を消滅させ、弾丸を雑に掴むと自身のズボンのポッケに収納し、地図はハンドガンを持つのとは逆の手に掴み………最後にメッセージカードを軽く読む。
『コレを読んでるってことは、少なくともアンタは今危機に陥ってるってことだよな?
ここはラクーンの玄関口だから、来るのは余所者だと仮定して書かせてもらう。
今アンタが持っている地図に、赤い点があるだろ?
そこはラクーンで災害とかの非常事態が起こった時の“指定避難場所”だ。
ラクーン一の大病院 “ラクーン総合病院”
火が上がった時は最強の “ラクーン第一消防署”
んで、アンタのいる場所から一番近いと思われる “ラクーン警察署”
個人的な意見になるが、行くとしたら警察署に行くことをおススメする。
普段は“無気力”が服を着て歩いてる様な奴らだが、ここ一番ってときはクソ程頼りになる
あそこなら水も食料も、そして自衛用の武器もたくさんあるからな
………最後に一つ。窮地に一足早く陥った俺からアドバイス。
こーゆう状況で一番大事なのは、腕っぷしの強さでも、
手にした情報量でも、ましてや人脈でもない
絶対に折れない鋼の
手紙越しだから伝わらないかもしれないが、俺はアンタに生きてほしいと思ってる。
だから、どうか折れないでくれよ?』
その短いメッセージから、再び元気と…『折れないでくれよ?』というどこか挑発的な言い方から、『やってやる』という気概を貰ったとばかりにその目に強い意志の光を輝かせ走り出す。複雑怪奇な迷宮のような裏路地も、入手した地図による案内によって楽々と進むことが出来た……が、それも裏路地までの間。大通りにでたレオンを待っていたのは……
「なっ…いつの間に!?」
表通りに出た瞬間。レオンの目の前には大量の亡者どもが犇めいていた。
「――――クソっダメか!!」
今までと同じように隙間を見つけようとゾンビたちを見回すが先ほどと同じようにはいかんとばかりに、隙間なくレオンは彼らに包囲されていた。
(折角元気付けてもらったってのに…どうする…!)
頭の中から絞り出したこれまでの経験や知識から今の状況を打開できないかと記憶を探るが、生憎ベテランならまだしも新人警察官(勤務先はバイオハザード)であるレオンの経験と、まだまだ浅い知識では状況を抜け出せるイカした名案は出てこなかった。
(出来るのは辛うじて数が少ない場所に集中攻撃してからの一点突破ぐらいか…だが出来るのか……?)
「……やるしかないか」
木箱から補充された弾丸をマチルダに装填すると、レオンは無数のゾンビの群れに向かってハンドガンを向ける。
「よし…やってやる!」
“覚悟”と“決意”を固めたレオンは、マチルダの引き金を引こうと――――――
「…やたらと集まってると思ったら、人がいたのか」
レオンの先――
「おぉ、見慣れた制服だけど見慣れぬ顔……新入りか! ようこそ絶賛進行中の地獄ラクーンシティへ!!」
倒れたゾンビの先から見えたのは、ショットガンをその手に構えたレオンと同じぐらいの背丈の青年だった。獰猛に笑う口角とは裏腹にその相貌は理性の光が爛々と灯っており、決してこの非常事態に飲まれた狂気のソレではなく……歴戦のモノを感じさせる。 若い外見のその
『UVAAAAAAA……』
喘ぐような声を上げながらも、のろのろとゾンビ達が起き上がってきた。
「オ、オイ危ないぞ――!」
レオンが警告の声を上げる前に、青年がホルスターから抜き撃った弾丸が立ち上がろうとしたゾンビの頭部を正確に撃ち抜いた。
「ここまで頑張ったんだろ? ちょっと休んどきな」
そう言うと、青年――ブラッドは背負っていたリュックサックを降ろすと、リュックのサイドポケットから引き抜いたスタンバトンを左手でクルクルと手で弄び「ギュウウ…」と第三者が見ても伝わる程しっかりと握り締める。 レオンとゾンビ達の間に立ち塞がるような位置に立つ。
「新人の前だ……エリート部隊員としていいとこ見せてみようか?」
先ほどレオンにかけた友好的な声とは比較にならないほどに低い声を出すと、浅く腰を下ろした体勢となり――一気に突っ込んだ。
「――――――シッ!!」
元の距離が短かったのもあるが、それ以上に彼の強靭な足腰から放たれた爆発的な加速によりブラッドとゾンビ達の距離は瞬時にゼロとなる
「羅ア!!」
『UGAAAA!!?』
加速をのせた状態から、スタンバトンを横に思い切り振り切る。 進路上にいたゾンビ三体に当たり、平時は暴徒鎮圧用に使われるそれは問題なく普段通りの威力を発揮し亡者達に電撃を這わせる。
「……ッ!!」
痺れた隙を見逃さずに、バトンを握るその手をそのまま拳として用い、正面の一体を真正面から殴り倒す。 右の一体は振り抜いた手を銃の安定させる足場として放たれた曲芸じみた射撃によって頭部を破裂させ、最後の一体は――――
『AAAAA――』
「フンッ!!」ゴキャリ
コチラに掴み掛ろうと向かってる最後の一体に対し、カウンターの要領でバトンで首筋を強かに打ち抜く。嫌な音と共にゾンビの首が本来曲がらないような方向に捻じ曲がり、ゆっくりと崩れ落ちていった。
『『『………………』』』
瞬く間に同族(彼/彼女達がそう認識してるのかは謎だが)が三人も
また三体をほぼ同時に倒したブラッドだが、彼自身ゾンビの恐ろしさは数ヶ月前の任務で骨の髄まで染み付いているため、油断する事なく素早くバトンと拳銃を持ち直すと、再びゾンビ達へと向かい直る。
「…………次!!」
続けて地を蹴り再びの加速を得た彼……ブラッドの右肩には、彼が選ばれた隊員である事を如実に示す。星を模したエンブレムが炎に照らされ確かに輝いていた。
伊達に地獄は見てねーぜ。な話
今後の展開
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テラグリジア・パニック事件(リベ0)
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アシュリー・グラハム救出作戦(バイオ4)
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リクエスト(書くかどうかは内容次第)