ノーブル・ブラッド   作:korotuki

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最新作が発売間近なので初投稿です。(?)
イーサンお前なんでそんなモテモテなん………?


-1998年(バイオ3)-010

■月○日⑨

 …とりあえず、ジルと行動を共にしたと名乗るアンブレラの救助隊員達と合流した。

 

状況説明

 

 あの後、俺は見つけた装甲車で街からの脱出を画策する同僚の前で、俺は「やることがあるんだ」と言い残ることを宣言した。もちろん「何言ってんだバカ」「お前まで失いたくない」「人間辞める気かよDI○じゃあるまいし」「ちくわ大明神」と散々止められ……誰だ今の?――とまぁ凄い剣幕で詰め寄ってくる同僚に、俺は(アンブレラの事などは伏せながら)至極丁寧に説明して…あとマービンさんが「コイツにも何か考えがあるんだろう」と年長者の貫禄で止めてくれたお陰で、俺は何とか脱出への切符を破くことに成功した。

 

 因みにレオンやクレアも脱出から手を引いた。原因は駐車場で迷子になっていたシェリーちゃん。

 「お母さんを探してるの」と言うシェリーちゃんに下手な男よりも男らしいと話題のクレアは見事にその姉貴肌属性を発揮。お母さん探しについて行く事になったそうな。

 

 あ、あとそのシェリーちゃんを追いかけて来た様に現れたクソ豚署長がいたが容赦なく捕縛させてもらった。裏切り者は控えめに言って死ね

 


 

「右か左の何方かに一発。腹に二発入れてから甚振って、最後にドタマ一発……お前がここに来るまでに殺した13人の殺害手順だ」

「グァアアアァ!?!?」

「トドメはささない。ゾンビに喰われて死ネ」

 


 

 それにレオンも同行する形…つーかなんだろな。多分あの似非エージェントが気になったのもあるのか?取り敢えずレオンとクレアはシェリーの母親探しを手伝う事になっていた。

 

 んで俺は、勿論ジルさんとの合流が目的。当然可愛い後輩と苦楽(トレーニング)を共にしたクレアを助けたいのと山々だったが、泣く泣く彼らを見送った。

 後押しというにはなんだが、あのクソ豚(署長と呼ぶことすら不快だ)から押収した謎の鍵をレオンとクレアに渡しといた。

 

 レオンは引き気味に、クレアは「相変わらずね」と言いたげな呆れた顔で俺が渡した鍵を受け取った。

 

 

 ……んで、別れた。

 

 

 

 死ななきゃいいけど、まぁ大丈夫だろ?

 クレアの実力と兄譲りの胆力はよく知ってるし、レオンも会って数時間しか経ってないが、アイツの射撃技術には目を見張る物があった……それに、こんな極限状況下で女の尻追えるならまぁ生き残れるだろ。

 

 そんな訳で、俺は1人でラクーン警察署に居残りエントランスでパソコンを弄り、ジルさんが行きそうな場所に当たりを付けていたところ、カルロスとタイレルの二人組が警察署内に入って来た。

 最初はアンブレラの部隊ということで「すわアンブレラの刺客か」と思い腰のサムライエッジに手が伸びかけたが、チリチリ髪のパーマが特徴的なカルロスが「アンタがブラッドか?ジルって奴がアンタのこと探してたんだが…」と言った瞬間何事もなかったようにかつフレンドリーに接する事を決定した。カルロス、マイ=フレンド。

 

 なんでもラクーンのどこかにいる科学者を探すためラクーン住民のデータが余すことなく載っている警察署のデータベースを求めて来たらしかったので、信用を勝ち取る意味も込めてS.T.A.R.S.隊員である俺が案内することにした。

 

 今は何事もなくS.T.A.R.S.オフィスに到着し、情報担当らしいタイレルがPCを弄っている途中でこの日記を書いている。

 道中カラスゾンビが窓を突き破って入ってくるなどのトラブルはあったが、開幕閃光手榴弾で目を塞ぎ、地面に落ちた時に踏み潰した。2人には「そんな方法があったのか」と仕切りに感心され、なんだがむず痒い。

 

 というか明らか目が腐れ落ちた個体でも閃光手榴弾が効くのはなんで……。いや、これ以上は止めとこう。

 

 にしても、ジルさんよくコイツらに協力できたな。俺は結構薄情な方だから割り切れるが、人情堅いあのジルさんには難しいことだったろうに……と、どうやらタイレルの情報収集が終わったようだ。この二人の目的は街からの脱出のようだし。このまま協力するか?

 

 


 

 

「で、その件のヤツは病院にいるのか?」

「あぁ。コイツを保護して隊長と一緒と合流して地下鉄にてオサラバって訳さ」

「成る程…まぁ確かに一般市民確保して行くってんならそれが一番か」

「そうなるな。んで路線だが……」

 

 ブラッドとカルロスは尚もPC作業を続けるタイレルを尻目に顔を突き合わせて脱出計画の手順を確認していた。ブラッドはともかくとして、実行側であるカルロスも戦闘力と冷静さに長けたブラッドが作戦の概要を理解しているのは悪くないことだと思い丁寧に説明していた。

 

(俺とジルさんだけなら最悪車での脱出も行けるが……まぁ市民を見捨てるなんて、ジルさんも、勿論俺も出来るわけないか)

 

 カルロスからの説明を聞く中一瞬「自分たちだけ生き残る」という選択肢が浮かび上がるが、それを瞬時に否定した。

 

『ppppp……』

「ん?トランシーバー鳴ってるぞ?お仲間からじゃないか」

「マジか、定期連絡の時間…じゃあねえな。なんかあったか?」

 

 『ちょいと失礼』とブラッドに礼を入れてからトランシーバーを耳に当てるカルロスから目を外し、ブラッドはふとPCに写っている初老の男性を見やった。

 

(この男は確かバード博士か…アンブレラとの繋がりの疑いがあった研究者だな。ここで繋がってることが確認できたのは僥倖なのかねぇ)

 

 バイオハザード災害が起こる前なら有益な情報になり得たが、今の状況だとあまり利用価値が無いことに密かにため息をつきながらも視線をカルロスへと戻した。

 

「……は?全滅だと?」

 

 そんな時、カルロスから聞き逃せない単語が聞こえた。

 

「ニコライ?アイツがどうし――おいジル!?説明しろ!オイ!!――――ッチ!切れやがった……」

「どうしたカルロス」

「なーんかやべぇ単語が聞こえたが…」

「……ッ!!」

 

 データを一通り端末に入れ終えたタイレルと共にカルロスへ問い掛けるが、カルロスは黙ったまま走り出してしまった。

 

「お、おいカルロス!!」

「とりあえず追おう。説明は落ち着いてから聞けばいいだろ」

 

 狼狽えるタイレルを宥めつつもカルロスの後を追うためブラッドも走り出した。元々かなり素早いブラッドは程なくしてカルロスに追い付いた。

 

「おいカルロス、なんかあったのか?」

「ニコライの奴が裏切って!電車を脱線させやがった!!」

「ハァ!?マジかよ…!」

 

 カルロスがトップを貼りブラッドが真ん中でタイレルが最後方という典型的なスリーマンセルを組みながらも進む。 

 

「取り敢えずどう行くんだ?こっから結構距離あるぞ」

「走りで行くしかないだろ!」

「いやバイク使おうぜ。地下駐車場に幾らか予備はあるだろ」

「マジか?なら案内してくれ!」

「了解、こっちだ」

 

 玄関に向かっていた足を急遽変更し、3人はドタバタと地下駐車場へと向かおうとする。エントランスを抜けエレベーターで早速駐車場に――

 

バタン!!

 

「「「?――っ!!」」」

 

 行こうとした時、大きな音を立てて警察署のドアが勢いよく開いた。

 これだけなら「生存者かな?」と思うだけで終わるのだが…その後中から出て来たのは3m程とあるのではないかと思わせる程の巨漢だった。青白い見事な禿頭に全身を包むトレンチコート、この時点でブラッドのみならずカルロスとタイレルの脳内ではレッドアラートが大音量で鳴り響く。

 

「なんだアイツ!?あのストーカー野郎の仲間か!!」

「頼むから出て来るのはゾンビだけにしてくれよ……!」

「タイレルは後方から援護射撃。俺と…カルロス。お前も前に来てくれ」

 

 混乱しつつも銃を構えたカルロスとタイレルに、ブラッドは素早く指示を飛ばした。

 タイレルは戦闘力というよりかはコンピューター技能が買われたため戦闘力に関しては並程度のタイレルを援護射撃に徹させ、B.O.W戦に慣れている自分と、射撃の腕もよくまたその鍛え上げた肉体を利用しての近接戦にも長けたカルロスを前方に配置する。

 

「なんか知ってんのか!?」

「ひとまず足止めするぞ!安心しろお前とジルさんが会ったアイツほどじゃ無い!!」

 

 暴君(タイラント)は3人の男――抹殺するようにプログラミングされている【生存者】の姿を認め、手近なブラッドに向かって大振りの右フックを放った。

 

「よっ――まあ強いのは確かだけどな!アドバイスとしては化け物じゃなくて熊だと思え!幾分かは気が楽になる!!」

 

 ボクシングのスウェーの要領でその拳を避け、ショットガンをぶっ放し足の一部分を削り敏捷性を僅かに減らした。

 

 即座に離れ油断なくショットガンを構え続けるブラッドに対し、直ぐに殺せるような人間に一矢報いられた事が彼の中で消えかけていた人間性に火をつけたのか先ほどまで能面のようだった顔を僅かに歪ませ、敵意の赴くままに再びブラッドへ……というところで、後ろに控えていたタイレルが構えたアサルトライフルの銃口から発射された鉛がタイラントの顔に直撃する。

 

 顔面は視覚聴覚嗅覚と生物が活動するのに重要な感覚器が多く集まる箇所である。そこを撃ち抜かれたタイラントは堪らず顔を抑え――

 

「ヌオリャア!」

『!!』

 

 二人が気を引きつけている間にタイラントへ走り寄ったカルロスが強烈な左パンチを放つ。

 ウェイト差があるといっても不意打ち気味に放たれた打撃はタイラントを軽くのけぞらせ、その一撃で許容範囲を超えたのか跪きスリープに入った。

 

 トドメの一撃(ファイナルブロウ)をおみまいしたカルロスは手をブンブンと振りだす。

 

「〜〜ってえっ!?なんだコイツ肌っつーより鉛殴ったみてぇだ!」

「いやお前クマって言ったよな?お前クマ相手に殴りかかんのか?」

「んなことより早く逃げるぞ!!?」

 

 痺れた左拳を仕切りに振るカルロスに呆れるブラッドと、その二人を諌め先頭に立ってエレベーターへと逃げ込むタイレル。

 3人を睨みつけながらもスリープ状態から立ち直れないタイラントを他所に3人を載せたエレベーターは下へ下がり、そこで警察用のバイクを3台パクった3人はササッと病院へと向かうのだった。




【ある日のブラッドとクリス】
「…………」
「?どうしたブラッド」
「いや、なんか。またアンタを殴らなきゃいけない日が来そうでさ」
「…今でも思うんだが。態々試作の腕部エクソスケルトンで殴る必要あったのか?」
「バッカお前裸の俺の拳がアンタに通じるわけないだろ」
「まぁ実際。お前のお陰で目が覚めたのもあるから強くは言えんが……」
(実地試験の最終テストに乗じたのはだまっとこ)

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