ノーブル・ブラッド   作:korotuki

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最初に謝っておきます。ブラッドも多少なりとも()()()()です
あとレオンの口調意外と難しい…


-2004年(バイオ4)-002

「互いに無事そうで何よりだよ」

「そうだな。にしても排他的だと予測してたが……」

「いやぁ排他的でもここまではしないだろ。今法整備が施された21世紀だぞ」

「まるでここだけ中世だな」

 

 合流したレオン(2階を捜索中にブラッドが襲撃された事に気付いたため2階の窓から飛び出して来た…が。既に戦闘は終わっていた)とブラッドは軽口を叩き合いながらも先程撃破した村人の家に再び上がり込みその場でスーツケースを開いていた。

 

「….それにしても、相変わらず準備がいいな」

「まぁ今回の相手がB.O.Wの可能性は予測してからな。…逆にハンドガンとナイフしか持ってないお前に驚いてるんだが?」

「いや普通要人救出の任務でそんな戦争しに行く格好はしない」

 

 レオンはブラッドが持参したスーツケースの中身を見て呆れた様子で息を吐いた。「調査道具です」と言い張って持ってきたケースの中身は銀が眩しい最先端の調査器具――な訳もなく、むしろ鈍色に輝く無骨な銃と戦闘用具の数々であった。

 

 規格こそBSAAの正式採用弾を使う為に拵えられた別物だが、その姿形はブラッドがS.T.A.R.S.に所属していた時から愛用していた【M4カービン】【AA-12】と同じ形をしている。しかし【Steyr SSG 69】だけは容量の問題かBSAAの正式ライフルとなっていた。折り畳み式で更には精度も以前の物とさほど変わらないという逸品である。

 

「前に比べたら軽装な方だぞ?まぁそれはそれとして……っよし準備完了だ」

 

 そうして立ち上がったブラッドはBSAAの軽戦闘服に肘や膝などの関節部を意識した追加プロテクター。タクティカルベルトには交換用の弾丸を納めるためのマガジンポーチがぶら下がり。辛うじて「調査員」と言い張れたその姿は、すっかり「戦闘要員」の姿となっていた。

 最後に同じくベルトから垂れ下げらせていた青色の特殊警棒をクルリと回しその手でガッシリと握った。無論握ったその手もしっかりと滑り止めの効いたオープンフィンガーグローブである。

 

「お前の近接武器はそれか?警棒にしては短いな」

「んな他人行儀な呼び方しなくてもいいぞ?あとこれ可動式な」

 

 レオンにそう返し柄の部分についた()()()()()()()()の内のボタンを押すと「カシャン!」という音を立てて棒の部分が伸びた。

 しかしレオンの目にはまだ伸びる余地があるようにも見えた。

 

「ガムより根性ないんじゃないのかそれは」

「ハハッ、言うな?まぁお楽しみだ」

 

 ニヒルなレオンな言葉に同じように笑ってみせブラッドは怪盗ドラマの悪役看守のように掌を軽く警棒でパシンと叩いてみせた。

 

「さぁて検挙のお時間だ。手錠のかけ方は分かるかな配属一日目で辞めた新人クン?」

「さてな。ご指導頼むぜ先輩サマ……いや、ブラッド」

「応ともさ、まぁ今回アイツらがかけるのは手錠じゃなくて生死の狭間への崖*1かもだけどな」

 

 互いに軽口を叩くと民家を出て、二人は村の中心部へと移動を始めた。

 


 

 クゥーン……

「犬だな…助けてもいいか?」

「いいぞ。ウィルスの類にもかかってなさそうだからな」

 

 レオンが犬を罠から解放すると、犬は尻尾を千切れんばかりにふりながら何処かへ去っていった。

 

「にしてもトラバサミ…今の時代合法だったか?」

「あれ一個とは思えない。他にもあると考えてとこう」

 

 そう言い進んでいると、視線の先には多くの村人たちがいた。一様に此方を見ると一葉に赤い目を輝かせ手に取った農具を持って二人に向かって走ってきた。

 

「歓迎って雰囲気じゃ…無さそうだな?」

「じゃあコッチは致死性のクラッカーで歓迎してやろう」

 

 二人は互いに拳銃を構えそれぞれの近接武器を携え村人に向かう!

 

PAN! PAN!

ガアッ!

 

 レオンとブラッドはラクーンの悲劇後更に磨かれた射撃技術を用い正確に頭へ鉛玉を撃ち込む。堪らず怯む村人達に、二人は追加の弾丸を撃たず村人達に()()()()()

 脳裏に浮かぶのは、民家から出て直ぐに交わした二人の会話。

 

『ラクーンやバイオハザード発生地なら兎も角、こんな僻地で追加の弾薬が確保できるとは思えない。俺も相当な数持ってきているが、持つかどうか……』

『だったら、弾を消費しない戦い方をしないといけないな』

『しかないか・・・アイツらは見た目以上にパワーがある。下手こくなよ?』

『大統領のエージェントに銃の腕だけでなれると思ってるのか?』

 

「ハアッ!」

 レオンのそのモデルの如き長い御見足から放たれた回し蹴りは見事に村人の側頭部を捉え、頭だけではなくその体ごと持って行った。

 

「おお、凄いな・・・んじゃあオレも――羅ァ!!

 

 レオンに追従せんと警棒を順手に持ち、腰の捻りと腕の筋力に任せ振り抜く、疾く強かに打ち据えられた村人は仰け反る・・・・・・が、()()()()()()()()()()。足と腕の筋肉の差が如実に表れた結果である。

「まぁんなもんか・・・まだだぞ!」

 そう言うと未だよろめく村人を見据えニヤリと笑いすぐ側の小屋の壁を蹴り跳躍。蹴った反動で体を村人の方へ向き直ると鞭のようにしなった左足から放たれた蹴り――俗に言う【三角跳び蹴り】――は村人の頭部を捉えレオン以上の勢いを持って錐もみ回転を描き吹っ飛んだ。

 

 片や政府に保護されてから少女のため、己のため自らを鍛え上げ大統領直属のエージェントまでにのし上がり、また片や諸悪の根源たるアンブレラを打ち倒し、戦いが終わってもなお世界中で巻き起こる生物災害に立ち向かい続けた英雄の一人である。本人達がそう望んだわけではないのだろうが、培ってきた経験則と戦闘技術は“並”ではすまない領域に達していた。

 

「昔なら近接戦闘なんてイヤでもしなかったな・・・・・・」

「・・・いや確か最初に会ったときにやってなかったか?」

 

 そうだったか?と疑問の声をあげるブラッドにそうだぞ。と返答しながらもレオンは自然とラクーンのことを思い出していた。

 

 自らに襲い掛かるゾンビやB.O.W。複雑怪奇な仕掛けが目立った警察署や地下研究所。今の自分と同じように政府の監視下に置かれているシェリーに、同じ地獄を生き延び以前「テラセイブ」という組織に所属したことを知らせて来たクレア。

 そしてクレアよりも親密に関わり合い、現在生死不明という扱いになってはいるが自身の中では半ば生存を確信している女スパイ。

 

「エイダ…………」

「エイダ?…あぁ、産業スパイの」

 

 口に出した事に気づき急いで口に手を当てるが、時すでに遅し。ブラッドは言葉を反芻しその意味を瞬時に理解した。

 

「確かお熱だったよな?」

「まぁな。生きてるかどうかは分からないが」

「生きてそうだよな。生きてたら確保するだけだが」

「え?」

「え?」

「……あ、あぁそうだな」

「…お前逮捕の時に邪魔したら公務執行妨害だからな?」

 

 変な沈黙を伴いながら二人は石製の大仰な扉の前にたどり着いた。

 

「……どうやら、ここから先が村のようだな」

「今まで以上に村人がいるだろうな。あまり接敵はしないように行こう」

 

 互いに頷くと、物音を立てないよう静かに扉を開け突入、村への入り口と思われる石柱にその身を滑り込ませた。

 

 レオンは双眼鏡、ブラッドは単眼鏡と其々の索敵道具を用い村の様子を観察し始めた。

 

「村の構造自体はよく有る感じだな、村の中心部である広場を中心として蜘蛛の巣の縦糸みたいに道が広がり横糸のように建造物が建っている」

「蜘蛛の巣か…なら差し詰め俺たちは今から態々その巣に囚われに行く哀れな蝶か?」

「どちらかと言うとそのまま巣の主人刺し殺す雀蜂でありたいもんだな」

 

 鋤や鍬を持った男手達

 

 藁を所定の場所から台車に移す女性

 

 村人たちの足の隙間を走り回る鶏の鳴き声

 

 ……村の中心の祭壇じみた場所で焼かれるダレかの体。

 

 “日常”と“非日常”が混在する空間に軽く眉を顰めつつも、二人は村人からの袋叩きを回避するために中心部を避けグルリと回るルートで進もうとした。

 

パキリ

「あっ」

「…マズイな」

『『『『『『………』』』』』』

 

 注意して歩いていた二人だったが、ブラッドが足元にあった小枝を踏み抜いた。大元から切り離させ適度に乾燥された枝は小気味のいい音を立て、その最後を当事者のみならず村の周囲一体に知らせた。

 こちらを見つめる村人達の目が加速度的に吊り上がっていくのも見た二人は背中に冷たいものが走る感覚を覚え………

 

「生憎とサインと握手はNGでな!」

「整理券も予約券もないから悪しからずッ」

 

 脱兎の如く走り出した。

 

ウン、フォラステロ!

オスボイヤ、ロンベル、ア、ペソーダス…*2

ドンデ、エスタ!

「ここからどうする?」

「ここの地理もよく分からんから、籠城戦かな!」

 

 走り寄る多数の村人を尻目に一件の家に転がり込んだ二人は迅速にドアに鍵をかけドア近くの窓ガラスの前にタンスを倒し封鎖した。

 

「二階の様子見てくる!」

「あぁ分かっ――チェンソーまで持ち出して来たぞ!!」

「伐採でもして…いや木製だからある意味正しいのかもな!?」

「言ってる場合か!」

 

 二階へ上がったブラッドが窓ガラスを突き破り設置された梯子を蹴落とすと同時に、チェンソーを持った村人がドアの切断を開始した。

 

「レオンも二階に!ベランダ広いし隣の屋根が近いから高所で戦える」

「見せ物じゃないんだけどな俺たちは!」

「そう言うな…ほら、ショットガン」

「助かる!」BANG!

 

 上がって来たレオンに壁に立てかけてあったショットガンを投げ渡し、レオンもそのまま階下の村人の足に一発叩き込み外へと出た。

 

「家から来るのは任せろ!」

「なら俺はステージに上がってくるマナーの悪い客を叩き落とす!」

 

 二人は言葉通りに村人への迎撃を行う。ブラッドは特殊警棒とハンドガンを用い窓枠やドアから踏み込もうとしてくる村人を牽制し、レオンも言葉通りに二人が居座る屋根(ステージ)に登ろうと村人達が掛けた梯子を蹴り落とし屋根伝いに迫ろうとする村人はハンドガンでで、数が多い場合はショットガンのパワーで無理矢理押し戻した。

 

 拳銃が、散弾銃が、足が、拳が、警棒が。

 

 それらが何かしらの動作を起こすたびに村人派吹っ飛び、また倒されていく。

 

 しかし村人の数は甚大で、対して立ち向かうのはたったの二人。しかも村人達には一定の知恵もあるようで……

 

「…ッ。マズイな広がり出したぞ」

 

 レオンの方では正面突破が難しいと察した村人達が浅く広くの人海戦術へと切り替え。

 

「だーもう!そのやたらとタフなチェンソー男を前線に出してくんなッ」

 

 またブラッドの方では逆に出入り口が限定されており数で攻めるのが困難なため、一回に繋がる入り口で一塊となり、その先頭には先程から何度もブラッドにやられながらも立ち上がってきたチェンソー男が担当する一点突破を実践していた。

 

「オラァ!」ドガン

ア゛ア゛ア゛ア゛!』ギュウイン!

 

 階段の近くにあった収納机を階下に向けて投下し、チェンソー男は手に持った電動工具で迎撃。次いでコレを放った下手人を抉り裂こうと前を見据え――

 

「遅い!」

――――!

 

 切り裂いた机の向こうからブラッドが接近し、チェンソー男の胸元に向かって鋭い突きを放つ……直前に、ブラッドは口元を歪めると特殊警棒のトリガーを勢いよく引く。

 

ズ ガ ン !

 

 弾丸が発射されたかのような轟音と共に警棒が更に延長。凄まじい速度で伸びた警棒の先端がチェンソー男の胸元に直撃し勢いよく吹き飛ばした。

 

「さぁ次はどいつだ!実戦運用も兼ねてるからドンドン来てもいいぞ!!」

 

 硝煙が立ち込める特殊警棒――内部の擬似 撃鉄(トリガー)を作動させることにより瞬時の火力上昇を目的とした試作近接武装【ネイルバトン】を携えたブラッドはそう高々と宣言した。

 

*1
崖の端に手をかける的な

*2
八つ裂きにしてやるの意




・ブラッドの体術
『一閃』
 頭を撃ち怯んだ相手に発動可能。手に持った警棒を横に振り強く叩く、ダメージは低く吹き飛ばすことも出来ない。
『三角跳び蹴り』
 『一閃』にて敵を攻撃した後に周囲に壁や障害物がある際に発動可能。自身の脚力と体重を乗せた勢いのある蹴りを放つ
『ネイルストライク』
 足を撃ち怯んだ相手に発動可能。警棒の特殊機構を起動させ敵を打ち飛ばす。威力は高いが発動毎に【ネイルバトン】の起動可能回数が一つ減る。これはメニュー場面の『組み合わせ』にてネイルバトンと何かしらの銃弾での調合で回復可能。

【ネイルバトン】
 BSAAがオリジナル・イレブンの一人であるブラッドからの要請に応え作られた特殊武装。本人からの要望は「耐久性があり携帯性があるもの」だったが、舞い上がった技術班によって「取手部分のトリガーを押すことによって内部機構が作動し火薬を爆発させ対象を穿つ」というトンデモ特殊警棒。試験運用ではコンクリートの壁に罅を入れる威力を見せた。命名はブラッド。

・ブラッド
 近接時の武装は特殊警棒とパルクールを活かした三次元的な格闘術を軸としている。それなりに仕上がっており訓練時はキースやジルと互角に渡り合う。市街地や都市部でのバイオテロも経験しているので籠城戦に心得がある

・レオン
 何の変哲もない蹴りでガナードを数体纏めて吹き飛ばすヤバいエージェント。作者は昔極真流という流派の空手をやっていたので人一人が飛ぶ光景は理解出来るが、複数体纏めてはチョットナニイッテフカヨクワカンナイ。トランクケースを持っていないのでショットガンは最中にかけている。

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