○月☆日②
ジルさんと洋館に突入したあと、色々と衝撃的な事態に立て続けに遭遇した。特にゾンビとの邂逅は久々に“恐怖”を感じたが、幾たびも遭遇、撃退を繰り返すうちに今ではすっかり平気になった。慣れって恐いな!
鍵のかかった部屋は弾薬が腐るほどあるのでショットガンにて蝶番を破壊して回り、時折出てくる謎かけの類は二人で知恵を出し合って解決。基本的に苦戦することはなかった。
最初は強張っていたジルさんも今ではすっかりいつもの姉御肌の頼れる先輩へと戻り、道中手に入れた火炎放射器でゾンビ達が万が一再生しないように丹念に燃やしていた。どうやら一度倒したゾンビ をそのままにしておくとその内強化されて復活してくるそうだ。死んでるのに“生き返る”なんでとんだ皮肉だな
…というか、謎解きの際にそこいらの資料とかを調べて回ったのだが、なんかこの洋館。汚い大人の陰謀が渦巻いているらしい。
所々で散見される【ゾンビ】だが【ハンター】だが、【t-ウィルス】と言った単語がいい証拠である。
取り敢えずその手の書類は写真に撮ったりしている。というかなんでこんな重要そうな書類をファイルに入れもせず裸のまま放置しているのだろうか?
なにやら自然と不自然が混濁しているような現場を疑問に思いながら探索していると、途中でバリーと出会うことが出来た。俺たちは一通り再開を喜び合った所で情報交換をした。大体バリーと俺たちも持っている情報は同じ程度で正直あまり意味はなかったが、有意義ではあったと思う。ジルさんが一緒に行動しようと言ったが、バリーは『他にやることがあるから』と言って別行動することとなった。その時マグナムの弾をいくつか渡すとどこか苦しそうな表情と共に受け取った。
なにか“ある”と勘が囁いた。
バリーは去り際に『ジルのことをしっかりと守れよ?ナイト様』茶化しながら合流した部屋を出てった。……正直、仲間のことを疑いたくはないが、ここ最近の的中率を考えると従っといた方が身のためかもしれない。『バリーには注意』覚えておこう。
そんな不穏な出来事も起こりつつ再び探索を開始していたら、思わぬ人物と再開することが出来た。
なんと行方知らずとなっていたブラボーチームのリチャード・エイケンと、レベッカ・チェンバースである。
何故か電子ロックでガチガチにロックされていた。二階の鍵を謎解きで手に入れた鍵で入りしばらく進むと唸り声が聞こえて来て、最初はゾンビかと思い緊張しながら進んでいたのだが、途中から女性の声も聞こえたので急いで急行したら顔色悪くして呻いているリチャードとそれを看護するレベッカがいたというわけだ。
感動の再会に抱き合うジルさんとレベッカが女の園を築き上げている間に、俺はリチャードの容態の確認と、そうなるにいたった経緯を聞いた。
容態はかなり深刻である。今は先ほど渡した四種配合ハーブやレベッカの賢明な延命治療で生き長らえているが、正直持って後数時間。目測と経験則だけなら、喰らったのはヘビの毒だろうか?
因みに経緯だが、レベッカと二人で探索中でかい蛇に襲われてしまってこうなったらしい。
一応蛇のサイズを大体で聞いてみたが――俺はその蛇のサイズを聞いた瞬間リチャードがくらった毒が幻惑剤の類なのではないかと訝しんだ。幸いレベッカからの修正によってそのサイズが真実であることが判ったが……普通にアナコンダの世界最大記録を上回っていた。
取り敢えずその巨大ヘビの名前を【ヨルムンガルド(仮称)】として、何とかしてリチャードを助ける為、洋館のどこかにあると言う血清を探すことにした――のだが、俺はジルさんに言われてレベッカ達の護衛として待機することとなった。
何でも常時はともかく毒に侵され瀕死に陥っているリチャードや、俺と同じポジションではあるが
一理あるので、俺は大人しくコレに従う事とした。
「周囲に敵影無し。暫くここは安全地帯の筈だ」
「ウゥ….すまねぇな」
「…今は寝といた方がいいぞ?なーに寝て起きたらサンズリバーなんて事はねぇよ」
「ハ、ハハッ……そうさせてもらうぜ」
リチャードはそう言うと、もともと疲れが溜まっていたためか、直ぐに寝息を立て始めた。眠り始めたリチャードを見てブラッドはフッと息を吐き出し、仮眠室に設置されたベッドに座っていたレベッカの隣に座り込んだ。
「レベッカちゃんも、今の内に寝とけ。こっから先何があるが分かったもんじゃないから寝れる時には寝といた方がいい」
「いえ、あの……」
「…さっきからそんな感じだけど、何か言いたいことでもあるの?」
レベッカは今悩んでいた。
だがそれは彼らを裏切ろうとしている事への葛藤とかそうゆう類のものではなく、自身が洋館に来る途中にあった列車での出来事と、そこで一緒に行動した元海兵隊員で現脱走兵。ビリー・コーエンについてだった。
彼のことは基本黙っておくことが最善だが、これまでのことを詳しく話すには彼との出来事を話さざるを得ない。
だがそんなことをしてみれば彼を逮捕せずに見逃した事は直ぐにバレてしまう。特にブラッドは“勘”という意味不明なシロモノで即座に人の隠し事とか、そうゆう物を暴くことにかけてはS.T.A.R.S.イチと言ってもいい。
どうしようかと悩んでいると……
「所でそのドックタグは何だ?ウチにドックタグなんてものはない筈だけど…」
思考に没頭していたせいか、周囲の景色と気配に注意が向かなかったらしく。ブラッドがこちらに顔を近づけレベッカの首に下げられたドックタグ――別れ際にビリーから貰ったお守り代わりの物だ――をマジマジと見つめていた。
「ん?ビリー…コーエン……海兵隊所属って……!」
ドッグタグに刻まれた名前と所属を読んだ瞬間顔色を変えた。ブラッドも列車にて輸送されていたビリーについては承知しており、名前もきちんと記録していた。
「えっ――あぁいや、先輩これは……!」
レベッカは咄嗟に誤魔化そうとするが、元々嘘をつくのに向かない性格のレベッカと人の機敏に聡いブラッドとの相性は最悪であり、そのまま嘘をつけば即座にバレるだろう。有り体に言うと拙い。
が、そう
ブラッドの灰色の脳細胞がトップギアに活性する!彼の脳裏に浮かんだのは、レベッカからビリーに対する親愛の感情と、ビリー・コーエンの基本的には優秀かつ仲間意識に溢れた経歴の記憶だった――!
「成る程、協力感謝しないとな」
「え、えっえっ?」
目を白黒させるレベッカを他所に云々と肯き『なーに報告書の偽造は手伝ってやる!』と勝手に協力を申し出たブラッド「あ、ありがとうございます…?」と言いながらも、未だ早過ぎる展開にあたふたするレベッカなのであった。
そんな何処か腑抜けた雰囲気の中―――
ヒタリ……
何かの足音が静かに鳴った。
正直に言うとこの小説は時間軸メチャクチャです。