二人は地下道から脱出し、村ではなかなか御目にかかれなかった立派な屋敷へと辿り着いた。
「鍵が特殊すぎる…なんだこのバカキー……!」
ブラッドはそう最後に水晶を上に向けると『ガシャン』という重々しい音を立て扉が横にスライドした。
「というかコレ村でちょくちょく見た紋章じゃねぇか!防犯意識は!機密性は!?」
「そこまでにしとけブラッド…多分ここは――ボスとやらの家だ」
悪態をつきながら不機嫌そうに中に入ったブラッドを諌めたレオンの脳内には、自分の後ろ回し蹴りを諸共せずに受け止め投げ返された小屋での風景を思い出す。
「強いからセキュリティは要らないってか?そりゃあ……こわーい空巣が入って来ても文句は言えないな」
「違いない」
渦中にありながらも笑みを絶やさないブラッドの悪童の様な笑みにレオンも口端を吊り上げ、二人は油断なく銃を構えながら部屋へと入った。
「…調度品の類が多いな。流石はリーダー、いや村長と言うべきか」
「これが“教祖サマ”とやらの似顔絵か?如何にもって感じだ…」
思いも思いの感想を言い合いながらも探索を続けていると、ふと日記らしい羊皮のノートを見つけたブラッドは一応相方のレオンが部屋の探索にまだ夢中であることを確認してから日記を開く。
「……………」パラパラパラ
(ルイス――確かレオンと一緒に監禁されてた気障
読み終えた本を…元の場所に戻すことなく仕舞い込んだブラッドは疲労感を覚え目を揉み込み目の皺を取ってからレオンに向き直る。
「情報は取った。家主と事を構えるのも疲れるし、離れるか?」
「賛成だ」
レオンの言葉を聞いたブラッドはドアノブに手をかけ部屋の外へと出る。
ひとしきり周囲を確認し後方のレオンへ声をかけようと顔を―――
「っ!?」
――振り向いた瞬間、強烈な殺気が全身を突き抜ける感覚を察知したブラッドは反射的に飛び退いた。
次の瞬間、先程まで自分が立っていた場所に拳大の穴が開く。
「――チッ、外したか」
パラパラと家屋の欠片を落としながらも尋常ではないパンチを放った。牧師を思わせる格好の大男はブラッドをまるで子どもを見遣るような角度で見下ろした。
「ゲェーッ!村長!?」
「なにッ!?」
轟音に反応し部屋から飛び出たレオンと共に驚きの表情を浮かべ、しかし体は冷静に銃器に手を伸ばし構える。
「………フゥ」
緊迫感溢れる二人とは対照的に、村長と呼ばれた大男は溜息をつくと拳を下ろして口を開く。
「血が混じった者と…論外のが一人づつ。サドラー様は何を考えて不干渉などと……」
口元に手を当て嘆く姿は商業会社の中間管理職のソレだが、その隙間から覗く瞳はドロリとした暗い物に染まっている。
「血が混じった?どうゆう事だ」
「まさかのハーフ?」
「バカ言え混じりけ無しのアメリカンだぞオレは」
いつものクセで軽口を叩くブラッドにレオンが返し幾分雰囲気が軽くなるが、大男が握り拳を上段に構えた瞬間目つきが鋭くなる。
「エージェントの方は言いつけ通り殺しはしない。だが――お前はダメだ」
床を蹴り、瞬く間に距離を詰めた大男の拳が振り下ろされる。体躯も相まって迫る壁を思わせるものであった。
「ッ――ゲホッ!?」
ブラッドは咄嵯に標準を頭に合わせ引き金を引こうとするも、そうする間もなく横殴りに吹き飛ばされた。
「ブラッド!」
「ぐぅ……う……ゴホォ……!大丈夫!!」
壁に叩きつけられながらもすぐに起き上がるブラッドにレオンは一瞬安堵するも、目の前に立つ村長の姿を視界に入れ再び臨戦態勢を取る。
「…とはいえ此処は私の家。あまり荒らすのもな――今は諸共見逃してやろう」
「既に大穴を一つ拵えてるのに荒らすのもというのな如何に…イテテテ」
殴られた痛みに思わず呻くが不敵な笑みと共に茶化すが、大男はブラッドを一瞥した後にブラッド達か出て来た自室へと入って行き消えていった。
「ブラッドお前…ツナか?」
「泳ぐならぬ喋らないと死ぬってか?うっせぇ」
「……」
「……まぁ、なんだ。アイツはヤバい。アレは人間じゃねぇな」
そう言ってブラッドは村長が消えた扉に視線を向ける。レオンもそれに釣られる様にして同じ方向へと顔を向けた。
「……行くぞ」
「ああ、も一度ちょっかいかけに行くか?」
「あんなの見せられてまで行くのはな」
ブラッドは肩をすくめながら答えると、レオンは苦笑いを浮かべながら歩き出した。
・
・
・
「あら、レオンなら追うと思ってたのだけど…
家を出て周囲に沸いた村人達と戦う二人を見ながら、長いスリットがかなり扇状的な特徴的なチャイナドレスを身に纏ったアジア系の美女が村長の家の屋根から二人を見ていた。
「フフ…レオンは兎も角、BSAAもいると厄介かしら?」
そう言う彼女だったが、その口元は妖しく。蛇の様に歪曲していた。
「…!相変わらず勘がいいこと」
掃討が終わった二人、レオンはブラッドに声をかけるが。当のブラッドは唐突に周囲を見渡し始めた。
『ブラッド?』
『……なんか嫌な予感がすんだよ。こう、背筋がゾクッとくる感じの』
『何だと?』
『蛇っつーか何か…観察されてるというか』
『…ゾッとしないな』
「蛇ではなく蝶って言ってほしいわね」
女性は不機嫌そうにそう呟くと、ブラッドが本格的に自身を補足する前に逃げるべくワイヤーガンを木に打ち込みその場から離脱した。
「ふぅ――あら?噂をすればってヤツかしら」
木々を伝い二人から暫く離れた所で、女性の腰の通信機が鳴り始めた。
「はいもしもし?」
『私だ。そっちの状況はどうなっている?』
「定期連絡は済ませた筈だけど?珍しいこともあるのね」
無機質で冷たい声が通信機越しに女性の鼓膜を叩き、彼女は口元に手を当てクスリと笑う。
「ええ。予定通り、予定外は一人だけよ」
『……何?調査に来ているのはエージェントだけの筈だ』
「どうやら密約の類いでも結んでたらしいわ。アナタの元同僚だと言えば分かるかしら」
その言葉を聞いた通信機越しの男は、一瞬うめくような声を発した。
『クリスとジルはアビスの件でここにはいないはずだ。となると――ブラッドか』
「もうちょっと見てたら危うく発見されるところだったわ。どうする?」
『……ヤツにはあまり手を出すな』
憎々しげにその名前を呟いた男だったが、女性に対処の方針を求められ。一瞬黙った後普段通りの平坦な声で“傍観”を指示した。
「意外ね。『殺せ』とか言われると思って他のだけど」
『不用意に手を出してどんな痛手を負うか分からん。故に傍観がベターな選択だ』
「そう……。…?」
今は雌伏の時だと現在裏から暗躍している彼らしい発想だと納得していた女性だったが、連絡が終わったのにも関わらず通信も切らない男を不思議に思った彼女は通信機に耳を近づけた。
『そもそもヤツはこの手で二人と同じように私自身で殺してやる……』
集音器にもギリギリ拾えた程度の音声。しかしその声は普段の男からは想像もつかないほどの黒い感情に満ちた声をしていた。
「レオ…エージェントの方はどうするの?」
『利用するだけ利用して殺せ。と言いたいがヤツがいるのなら…まぁ別れた所で隙を突け、努力目標で構わん』
「了解したわ。切るわよ」
『あぁ』
通信を切ると同時に女性が見たのは、敵地にいるのにも関わらず談笑を始めるブラッドと。それにあきれながらもなんだかんだ付き合うレオンの姿だった。
「私とレオンは腐れ縁だけど、あの二人は因縁ね。ちょっと妬けるかしら?」
女性…エイダ・ウォンは二人の後ろ姿を見ながらそう呟き、再び木に飛び移るとレオンの後を追うように移動を開始した。
▲月○日④
やっぱ気のせいだったか?今こうして日記を書いていてそう思う。
村人達のような見ため敵意に満ちているようで感情自体が欠落しているようなガラス玉のような視線。村長とという大男の上位者が下等生物を見下ろすような威圧感のある視線とはまた違ったが、今こうして日記を書ける程度には落ちついている。
にしても、宗教団体ロス・イルミナドスに第三勢力。それに血が混じったか…………
あの後暫く歩いたあとにハニガンと通信をし、先ほど日記に書いた教団の名前と。レオンに対して話していた「血が混じった」という話題が出てきた。
十中八九、感染のことなのだろう。本人は自覚症状はないらしいがいつ出て来て本人や俺に被害が来るとも分からない。速めにさっさとルイスというあのキザ男研究者(仮)を見つけて予防策――はもう遅いか、治療法やせめて症状を遅らせる方法を聞き出す必要があるな。
……せっかくの後輩なんだ。この手で撃つような結末にはしたくない。
ひとまずアシュリー嬢が囚われているらしい教会にさっさと向かわないと、救出に来たレオンにも感染されたのだ。アシュリー嬢にも
考えることが多い。
男もといウェスカーからのブラッドへは「クリス・ジルとは別方向に同じくらい厄介なヤツ」という評価。銃弾避けまくって貫手する気まんまんです
ブラッドがウェスカーにやったこと一覧
・ウェスカーのネット銀行の預金を一部差し押さえ
・黒ずくめのウェスカーの写真を指さし「チューニビョー」と発言
・盗撮したレベッカの写真をS.T.A.R.S.元メンバー全員(レベッカ以外)に共有。
・ウェスカー愛用のサングラス会社をBSAAのお抱えにし軍用サングラスオンリー化、オシャレサングラスの販売を停止。
ぶっちゃけ日記部分いります?(七月末まで)
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いる
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いらない