○月☆日⑤
【ヨーン】でBBQをした直後途中でこちらと合流し、少し引いた様子のレベッカとリチャードと一緒に探索を再開。二手に分かれる手もあったが不足の事態に備えて四人揃って行動することにした
これまでの
一方向しか見てなくて済むので労力は少なくていいし。
なにより左右後ろに味方が構えていてくれると言うのが心強い。
時折こちらを向かって振るわれる植物の鞭を避けて燃やして踏み潰しながら、研究員が作ったと記されていた除草剤を求めて寄宿舎内を歩き回る。そもそもここは植物によってゾンビやゾンビ犬が植物達によって粗方排除、及び吸収されており、探索の労力はとても少ない。
途中研究室への扉を開ける為に設置されたピアノを楽譜通りに弾くという実用性と利便性に喧嘩売ってるような仕掛けがあったのだが、何やら鬼気迫った様子のレベッカが『私にやらせて下さい!』と言い挑戦。見事撃沈。その後指先が器用なジルさんが普通に成功しさらに沈んでいくレベッカという珍事もありつつも、無事(?)研究室に到着した。
「………………………」
「どうかしら――何か手掛かりになりそうなものはあった?」
無事侵入した研究室にて資料を読み漁っていたブラッド一行。両名とも難しい顔をしながら解読を進める。床はマルやバツなどとペンで書かれたと思われる印の入った資料で白く埋まっており、ここまでの作業の量が窺い知れる。
時折目頭を揉み疲れを紛らわせながらも資料を読む手は止めず。たまに出てくる有力と思われる情報をカメラや手帳に写し記録していく。
「――――コレって」
そんな時、ふとブラッドが声をあげた。
「嘘だろ嘘だろ嘘だろ……!」
急に狂人の戯言のように同じ単語を繰り返し、手に持った彼の物とは別の
「ちょ、おいブラッド!?どうした!!」
リチャードがそんな彼を見かねて肩に手を置き、そのまま彼が見てきた書類を覗き込もうと顔を近づけ―――
「――ッ!見るな!!」
――る前に、ブラッドが咄嗟に持っていた日記帳を背中に庇うように回し隠すと部屋の角へ即座に移動する。彼はそのままそこから一歩も動かずに静止した。
「ど、どうしたんだよブラッド。俺はただお前のことを心配してだな…」
そう彼を宥めながらもリチャードは一瞬目を鋭くし、彼の後ろにある日記帳をロックオンした。アレに何が書かれてあるかは分からないが“彼しか知らない情報”はマイナス要素になり得るし、なによりリチャードは先程己の仇を討ってくれた彼があんな顔をしているのは同僚として、友として見逃せないものなのだ。
街角で偶々出会った友人のように、自然な動作で彼に近づきながらも万が一脇を抜けられないようにブロックしながらジリジリと近づいて行く。ブラッドはリチャードの狙いに薄々気付いたのか手持ち無沙汰気味に宙に浮かばせていた左手をニギニギして温め、ブラッドも腰を落とし臨戦態勢をとり警戒を強める。
そのまま二人とも高まった気力を爆発させようと――
「はい二人とも。それまで!」
パァン!とジルの猫騙しによって一瞬で正気に戻った。
「熱くなりすぎよ。ブラッド!」
「――ッ…でも、コレは流石に」
「いいから見せてみなさい!貴方が背負い込む必要はないわ。私達、チームでしょ?」
その言葉と共に接近したジルに対応が追いつかず、抵抗する間も無く背後の日記帳を毟り取られる。
「ジル、俺にも見せろ。ブラッドの野郎だけが知ってるってだけで気にくわねぇ」
奪った日記帳を臆する事なく読み始めたジルと、それに便乗する形で横から覗き見たリチャードもその文章に目を走らせた。
◯月☆日⑥
寄宿舎を覆う植物B.O.W。通称『プラント42』を打倒するための除草剤を捜すため。俺とレベッカは辿り着いた資料室にて資料を漁っていた。
探している途中に、俺は研究員のものと思われる手記を発見した俺は、自分も日記帳を付け入るものとして好奇心が湧き特に何も考えずそれを開き読んだ。
結果後悔した
なんだあの日記…内容はどうやら一飼育員のもののようだが、中身はなかなかハードな内容だった。日記の前半は飼育員の日常についてだ。動物実験用の犬だが蛇だが蜘蛛だがの不穏な単語が散見されたが大旨普通の、日常を記した日記だった。
異変が起きたのは日記が6割を超えた頃から。
どうやら日記の主は逃げ出した実験用動物の一匹に噛みつかれたらしく、その日の内容は罵詈雑言に満ち溢れていた。
いやそれはいい、それはまだいいのだ。
問題はその噛みつかれてから(日記の日付表記)から三日ほど経った頃の記述だ。
その日に飼育員――が感じたのは、軽い飢餓と、肌の痒み。
そしてその日を境にして、ドンドン日記の文章が乱れてくる。
先ずは文字が点線をはみ出し
続いて文脈が安定しなくなり
文章の間に間隔が開き始めて
遂には単語の羅列と成り果て
内容は、徐々に不穏となって
最後の一文には――――――
――かゆい うま
あぁ…今思い出しても吐き気がする。いまその日記はジルさんやリチャード達が回し読みしている。少し錯乱していたが、その間に俺の考えをまとめることが出来た。
今回の事件は、大規模な組織…恐らくどこかの巨大企業の陰謀によってなりたったものだ。最初は規模の大きなテロ組織かとも思ったがそれにしては規模な人手、金がかかり過ぎている。恐らくはここで生物を化物に変えるウィルスを研究中、不慮の事故によってこの洋館内にウィルスが散布。警備員や研究員、その他諸々の職員がゾンビと化してしまったというのが大まかなことの顛末だろう。
憶測だが洋館外部で出会った巨大蜘蛛や蛇、そして犬っころ共はそのウィルス――t-ウィルスによってゾンビ化してしまったのだ思う。流石に自然界にあんなB級ホラーみたいな進化を遂げた奴はいないだろう…いないよな?
いかん話が脱線した。
そんでブラボーチーム達が派遣された際に先程の犬達に奇襲され、その後オレ達アルファチームも………って感じだろうか?
ううん……辞めだ。いちいちこんなこと考えてたら止まらないし考えるのやーめた。
さて、向こうももう読み終わったらしい。予想通り青い顔をしているがみんな俺以上の化け物メンタルだし俺よりも立ち直るのは早いだろ
「取り敢えず、除草剤の在り方見つかったな」
「ああ……そうだな」
寄宿舎の廊下にて拳銃を構えつつ進むむさい男二人組、そう何を隠そう我らがブラッドとその相棒リチャードである。彼らはあの後件の除草剤が兵器庫にある事という情報を入手。ジルとレベッカの女性陣には引き続き資料の精査、及び資料室の警護を任せ、男性人二人は兵器庫へと向かっているところなのだ。
「ってオイオイ。お前も見たんだろ?噛まれたりしても四色配合ハーブなら治療が出来るって」
「そ、それは理解してるけどよ」
「…まぁ心配になるのは分かる。俺だって“ああ”はなりたくないからな」
そう言いつつ顎で指した先には、この寄宿舎内には珍しく動くゾンビ達だった。
「ッチ!ようやく見慣れてきたのに、まーた悍しく思えてきちまったぜ……」
「同感――いやバーで言い寄ってくる綺麗なねーちゃんだと思えばいけるか…?」
「オイオイ勘弁しろよ。あんな如何にも病気持ってそうな奴俺は御免だぞ!?」
「――――構えろリチャード。来るぞ!!」
「ってオイ誤魔化すな!」
右手に【サムライエッジ】左手にナイフを構えたブラッドがゾンビへ向かって走る。置き去りにされた形のリチャードも急いで走った。
「数は六体。互いに三体ずつ!危なくなったらカバー頼む!」
「応!バーの高級酒一本で請け負うぜ!」
「俺の月給をなくす気かよ!」
途中までは互いに軽口を叩くが、流石にゾンビ達が目前まで迫ってきていたので二人とも黙りこくり、互いの敵に集中した。
リチャードが敵の目前で止まり【サムライエッジ】を構えたが、ブラッドは対照的にゾンビ達へと向かって行く。
自ら近づいてきた
だが流石に二桁以上のゾンビを屠ってきたブラッドはそんな簡単にはやられない。
抱き付くように腕を伸ばしたゾンビ の凶碗を姿勢を低くする事で躱し肩を起点としたタックルを繰り出した。
『ッググウ!?』
流石にタックルは予想外だったのか悲鳴のような声を上げた。密集状態にあったため後方のゾンビを巻き込みながら倒れ込むゾンビを尻目に【サムライエッジ】を構え最後尾のゾンビへ向かって発砲。
運良く喉に命中し崩れ落ちるゾンビ。それを見て安堵する間も無く構え直し倒れ込んだゾンビの内一体へ向け再び発砲。頭を前後左右へフリフリ振るゾンビとは違い倒れ込み大人しくしているゾンビには簡単に当たり、頭蓋骨が弾け飛ぶ。
「おっしまいと」
最後に此方へと手を伸ばした最後のゾンビを踏み付け頭蓋を砕いた。
「…これ帰ってきたらPTSD患いそうだな」
そう呟きつつリチャードの方へ向くと丁度最後の一体を蹴り飛ばし、両手に構えたアサルトライフルを乱射しているところだった。
丁度マガジンが空になったのか入れ替えたリチャードもチラリと此方を振り返り、不満げな顔をした。
「流石に近接戦闘を仕掛けるとは思わなかったぞ」
「一応人型だし、近接は結構有用だと思うぞ?」
そう言うと互いの肘をぶつけ合いハイタッチの代わりとした彼等は再び進み出した。
正直自分でもここまでプラント42を長引かせるとは思わなかった。次回には燃やします!