最近引越し等社会人としての準備が押し寄せてきてかなり緊迫感が押し寄せてきてます。エグいっすね社会人。心持つかな………。
形振り構わず走る姿は、何処か焦燥を感じた。消えそうな影、薄れていく存在。燃えカスの様にひと吹きで散り散りに飛び散りそうな脆さが、その小さな背中にあった。
未だ小学生最高学年でありながら、伸びるはずの身長は伸びることは無く、華奢な身体が少しずつ肉がつくようになっていく体が憎らしい。せめて顔だけでもと、醜い顔をさらけ出して生活するのは嫌だったので、顔を被えるようマスクをして生活しているが、それが返って世間からのいい的となってしまった。
醜い顔で救いようのない華奢な身体。肉付きが良くなったは良くなったが、それはあくまでも成長許容範囲での話であり、この世界で最も美しい女性になる為には今の数十、数百倍は必要となる。そして内気な性格が相まって、家以外では一人でいる事が多かった。
お姉ちゃんはいる。お姉ちゃんはいるが、四六時中一緒にいれる訳では無いので、必ず半日以上は一人になる。
辛いとは思わない。もうそんな事どうでもいいから。
苦しいとは思わない。だってどうでもいい事だから。
でも、一人は寂しい、って思う。
親が居ない私達は親の愛なんて知らないから、お姉ちゃんが私のお母さんだ。本人に言ったら怒るけど、何から何までやってくれるのは世間一般的には母親である。
お父さんは普通は居ない。この世界で何時までも夫婦揃って生活している人なんて居ない。テレビで何度かそういう話を特集していたが、数ヶ月後には自然崩壊。ニュースで取り上げられることもしばしばあった。
だからお父さんなんていらない。お母さん、お姉ちゃんだけで十分だ。
だから、どう思ってたって………。
最近お姉ちゃんは部活動を立ち上げたって言ってた。部員は東郷力哉さんっていうカッコよくて優しい男の人とその護衛役二人、力哉さんの妹である美森さんと近所の人友奈さん。力哉さんを除いて、みんな醜い代表なんて呼ばれてる。学校でも他の人たちが噂してた。小学校まで噂が飛んでくるなんて、ただ事じゃないんだよお姉ちゃん。
評判は良くも悪くも無く、普通と言った感じ。奉仕を目的なんて言ってたけど、お姉ちゃん達の顔じゃよってこないと思うけど大丈夫なのかな。
力哉さんの名指し指名しか今のところないらしい。
流石力哉さんだって思う。あんなにカッコよくて、そして優しい男の人。この世界何処にも居ないであろう凄く稀な人。
でも私はどうしても信用出来ない。男の人は皆危ないってお姉ちゃんが言っていた。そのお姉ちゃんが頻繁に男の人と関わっているのは凄く不安なんだけど、もしかしたらお姉ちゃん、人に言えないような事をあの人に無理矢理させられているかと思うと、怖くて怖くて仕方ない。
優しい人だってわかってる。けど、男の人だから、よく分からない。きっと、お父さんが居てもこんな様な気持ちだったんだなって思う。
悪い人について行って、お姉ちゃんがもし酷いことされてるんだとしたら、私は……どうすればいいんだろう。
私は懐にしまってあるタロットカードを無造作に1枚だけ抜き取る。
───し、死神………。
こ、こういう時に限って、何か起こってしまう。
経験が語りかけてくる。いつもこのカードを引くと、必ず何か不吉な事が身の回りで起きるのだ。
「───お、樹ちゃん」
ビクンっと私は身体を震わせ、声が聞こえた後ろを見る。
「───今帰り?」
後ろに木刀を構えた二人の護衛を引き連れた、力哉さんが笑顔でそこにいた。
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「………ほいっ、ココアでよかったかな?」
「うひゃあい!?ココココココアでよかったでででしゅしゅしゅ」
公園のベンチに座らせられた私は、自販機で買ってきた飲み物を差し出してくる力哉さんにドギマギして噛み噛みになってしまった。恥ずかしい……。
私の姿が面白いのか、力哉さんは少し微笑むとブランコに座ってキコキコ揺れている護衛の方二人にも飲み物を渡している。
「夏凜喜べ。煮干しジュースなんてあったから買ってきたぞ」
「うぇえい!?に、煮干しジュース……ですか?あ、あんまり聞かないな。い、頂きます、力哉さん」
「いや、誰得のドリンクよ。需要完璧にワンショットだろ。どこにも刺さんないとおもうけどぉぉおおっ、あっぶねぇな吐き出すんじゃねぇよ!!」
「ゲホッ、ゲホッ……うぇぇえええ、ま……まじゅいぃぃ………」
「当たり前だろそんなもの。力哉さん絶対分かってて買ってきたな」
「当たり前じゃん。煮干しをジュースにする頭の可笑しい企業もそうだが、この製品が煮干しマスター夏凜のハートを射抜くかどうか知りたいという冒険心が働いちゃってさ」
「さ、流石に私も煮干しは煮干し。ジュースはジュースで区別してます!!煮干しが飲み物では無いことぐらい分かりますよ!!」
「久しぶりに夏凜が力哉さんにからかわれてる。なんか懐いな」
「……ごめんごめん。これ、ミネラルウォーター飲んで口スッキリさせな。あ、銀はこっちな。しょうゆ豆ジュース」
「………うわぁ、あたし夏凜と同じ道たどるわコレぇ……」
水を受け取った夏凜さんは勢い良くペットボトルの口に口を当てて飲み干していく。銀さんは受け取ったしょうゆ豆ジュースを興味深く、それでいて飲みたくはないと言った表情を見せながら眺めていると、ふと疑問が浮かんだ。
「……あれ?そういや力哉さんがあげたミネラルウォーター、最初から減ってる?」
「ん?……あぁ、そういや飲みかけだって言うの忘れてたな」
「んぐぅっ!?グゴゴッ、ゴボボッ、ごぼぼぼぼっ!?!?」
一瞬気が緩んだ夏凜さんは、力哉さんが言った事実に戸惑い慌てふためく。きっと気道に水が入ってしまったのだろう。ペットボトルを中々離せず四の五のしている夏凜さんがなんだか可愛く見える。
「こここここここここれれれれれれれれりりりりりりりきやささんんんんんののぉおっ!?!?!?」
「いやどんだけ初なんだよ。間接キッシュなんて何度もやってるだろ?今更何慌てふためいているんだよ」
「こここれとそれと話が別よ!!それにっ、私先輩程間接きききききしゅなんてしてないからっ!!」
「羨ましいか?あぁ〜羨ましいのかぁなぁ?」
「ううううるさい!!アンタも早くその不味そうなジュース飲んじゃいなさいよ!!」
「これは観賞用。あたし、自販機の飲み物は必ず使用保存観賞用の3つくらい用意する人だからさ。あと2本無いとあたしは飲まんいや飲めん」
「な、なんて言う屁理屈……」
「そう言うと思って、もう2本買っておいたぞ」
「さっすがー力哉さん。よくあたしをご存知で………、よう考えたらめちゃくちゃ貢がれてんなあたし達」
気のせいだよぉーとミネラルウォーターを銀さんに渡した力哉さんは、その場から離れて私の隣に腰を下ろした。背もたれに腕を置き、私を抱き寄せているような座り方だ。
「……あ、あのっ。ど、どうして声をかけてくれたんですか……?」
何を言えば分からなかったので、咄嗟に浮かんだ言葉を口に出す。一瞬キョトンとした力哉さんは、少し考える仕草を見せると訝しげな表情から優しい微笑みに変わる。
「たまたま樹ちゃんが居たからさ。最近は樹ちゃんと関わりが無かったから、少しお話出来たらなってさ」
成程、と相づちを打っておく。
しかし、私のお家と力哉さんのお家は凄く離れているし、中学校の場所から考えると、小学校からの帰り道を行く私と会うには力哉さんが帰宅しようとすると遠回りになってしまう。
何か、隠し事があるんだなと勘繰り深く考えてしまった。
「……そう、なんですね。私も、力哉さんと話せてう、嬉しい……です」
「おっ、そっかそっか。そう言ってくれると有り難いな」
より笑顔に輝きが増した。本心で喜んでいるように見える。
しかし、力哉さんと会話出来て嬉しくない女の人なんて居ないと思う。自分から関わってくれる異性に、肉食系である女の人達が興味深く関わろうとするのは当たり前の事。力哉さんは少し常識外れな所もあるから、偶に驚愕するような事もしばしば。………嬉しいのは、本当に本心である。
「最近は風が部活を始めたから、遅くまで樹ちゃんは一人だって聞いたけど、寂しくはない?」
「えっ。……えっと」
急にそう聞かれてしまったら、戸惑ってしまう。なんて答えればいいのだろう。聞き方からして、私の事を案じているのだと理解出来るが、返答に困ってしまう。
「だ、大丈夫……です。慣れてますから……」
咄嗟に言葉が出た。その後、私はこれ以上言えないと口を固く紡ぐ。
そっかそっかと、数回相づちを打つ力哉さんは、手に持ったお茶のペットボトルを口に運ぶ。
質問の意図といい、私に会いに来たという行動力といい、今日の力哉さんはよく分からない。
「風からいつも聞いてる。樹ちゃんは強い子だって。自分がいない間でも、家事をやってくれてるって。偉いな、樹ちゃんは」
ありがとうございます、と言おうと口を動かすが、上手く言葉が出なかった。もどかしさが、胸の奥をぐるぐると渦巻いている。
「でも、それ以上に………風は、寂しがっているんじゃないかって、辛いんじゃないかって、心配してたよ」
分からない。力哉さんがなぜその話をするのか、分からない。
「今日話をしようと思ったのは、樹ちゃんの寂しさを少しでも和らげてあげようかと思ってさ。たまには、辛い事や苦しい事、嬉しかった事とか楽しかった事。風が聞けない代わりに、俺が聞こうかと思ってさ」
「……分かりません。力哉さんが私にそこまでする理由が、私には分かりません……」
「強いて言うなら……樹ちゃんともっと仲良くなりたいから、じゃ駄目?俺はもっと樹ちゃんと仲良くなりたいって思ってる。だから、樹ちゃんの事をもっと聞きたいんだ」
真っ直ぐな目で私を見つめる力哉さん。キラキラと輝き吸い込まれるような瞳が私の視線を鷲掴みしている。目が離せない。男の人の目って、こんなにも輝いているんだ。
この時の私は、なんて子供なんだって感じる。言葉巧みに誘導されて首を縦に振ってしまった私は、単純過ぎて少し笑えてしまう。
でもどうしてか、力哉さんに話してみたいと思った。私の事、思い、気持ちを。
「………うん。私も、力哉さんと仲良くなりたい」
「ありがとう。風が嫉妬するぐらい、仲良しになろうな」
そっと、頭の上に手が置かれ、撫で下ろすように力哉さんの手が私の髪の毛を触る。撫でられているんだと思った時、同時に何かよく分からないモノが胸の奥から込み上げてきたのを感じる。
自然とそれは嫌なものでは無いと感じる。初めてだ。何かを心の底から満たしたいと、力哉さんが物凄く欲しくて堪らない。
これが所謂恋ってものなのかな。でも違う。もっと撫でて欲しくて、もっとそばにいて欲しくて。無意識にそう思った時、口から転げ落ちた。
「……うん。
私の言葉に、力哉さんと銀さんや夏凜さんが後ろに崩れ落ちたのは直ぐの話で。
私が何を口走ったのか理解するのにも、その後数秒かかった。
力哉さんはその後、私にその呼び方をしていいと許してくれた。
ありがとう、お父さん。私は、お父さんのお陰で寂しくないよ?
死神の逆位置。意味は、新展開。
「………ねぇ力哉?ちょーーーーーーっと尋ねたいことがあるんだけど?」
「……え?何?え、何その木刀!?」
「……アンタ、うちの樹にお父さん呼びさせてるそうじゃない?」
「は?お兄様詳しく」
「ちょっと理解出来ないよ力哉先輩」
「待てまてまてまてまてっ!!語弊があるからやめろ!!」
「問答無用よっ!!あ、私はアンタを父親なんて認めないわ!!」
「お兄様お兄様っ!!言ってくだされば私と本当の夫婦になれますのに!!」
「力哉先輩私も先輩の娘にしてください!!」
「まてまてまてまて本当に落ち着けて!!そんなにいきなり来られてもわからん!!」
「うがァー!!あ、アンタはそそそそそうやって段階踏まずにっ!!私の気持ちも知らずに!!」
「お兄様お兄様お兄様お兄様っ!!私今からお役所に行って婚姻届を受け取りに行ってまいります。お任せ下さいっ、お母様の説得はお任せを。なんならお母様ごと娶って下されば万事解決ですね!!」
「力哉先輩……ううん、お父さん!!今からお母さんに言ってお父さんと結婚してもらうようにするね!!そうすれば私のお父さんになれるよ!!」
「「「さぁ、
「語弊があるからやめろって言ってるだろうがァァァ!!!!」
中々考えが纏まらず申し訳ないです。
結構内心新生活でゆっらゆらに揺れ動いてて心ここに在らずみたいな感じです。
少し間が空くかもしれませんが、これからもよろしくお願いいたします。