この世界はあべこべである。   作:黒姫凛

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お ま た せ た な ぁ ! !


どんくらいぶりに投稿?知らんけどほんと申し訳ない。
本当はGWに投稿したかったけど休み無かったので是非も無いよね!!






皆さん感謝祭行かれました?作者は仕事というクソみたいな理由で行けませんでした(言い訳)。
仕方ないじゃないですか!!有給なんてないんだから!!あーマジ行きたかった。ほんとに行きたかった。

参加された皆様方今更遅いですが楽しい一時を過ごせましたでしょうか。機会があれば一度行ってみたいものです。ええはい。


長々とお話申し訳ごさいません。閲覧されている方々には感謝しかないです。これからもどうぞ末永く宜しくお願い致します。











彼岸花は揺れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力哉達がフロアに合流した最中、力哉の後ろに着いてきた乃木の姿を見てぎんと夏凜、防人達が硬直した。序列的に言えば赤嶺よりも高位の存在。管轄外の場所に現れるのは一重に緊急事態と解釈出来る故に、硬直した者達に緊張感が迸る。

 

乃木は巫女の総主、上里との対極にある御家。それは大赦全体の統治を主にするが、彼女の立ち位置は中立性が強い。過激派や温厚派と言った派閥がある事も陰ながら認知しているが、それをどうこうする考えは持ち合わせてない。

友好関係的にみれば、乃木は確かに温厚派と言えるだろう。しかし表立って温厚派の肩を持てば過激派の矛先が乃木に向けられるのも事実。自己防衛を兼ねて、乃木はあくまでも中立という立場で大赦を統括している。

 

そんな存在が現れるとなれば、何かあるというのは感が鈍いものでも分かるというもの。本人が顔を見せに来ただけと言っても、下の者からすれば一大事である。それ程までに影響力が凄いのだ。

 

 

「……あら、何しに来たのかしら?ここに来るなんて珍しいわね」

 

「……なに、かなり急ぎで力哉君に知らせがあってね。次いでに防人部隊に顔でも出しておこうかと思ったのだが………」

 

 

この場において、乃木と対等に会話出来るのは赤嶺と力哉ぐらいなものだろう。防人部隊を見てみれば予想通りの反応である為、乃木はやれやれと肩を竦めるしかない。

そしてこの場の中心。乃木は勇者部達の方に近付くと少し物腰低めに挨拶を交わす。

 

 

「お初にお目にかかります。私、大赦総括乃木家当主乃木紅葉と申します。世界の為、人類の為勇者として戦いに身を投じて頂けること、誠に感謝致します。我々大赦一同、勇者様方のサポートに徹底して参る所存。どうぞ宜しくお願い致します」

 

 

改まって頭を下げられる事に恥ずかしさを覚えた風はアワアワと手振りしながら頭を上げさせる。歳上、しかもお偉いさんにそうされるのは流石に申し訳ないと思うのが普通なのだが、乃木は少しそう言ったところが配慮にかけていると言えよう。

真面目な乃木だからこその姿なのだが、長年連む赤嶺曰く、そこが彼女の好いところであるが欠点でもあると述べている。初代勇者の末裔故、誠実な心は血筋から来るものなのだろう。

 

 

「……私達はあくまでも力哉を守りたいからであって、世界がどうたらとか別に深く考えていません」

 

「それでもだ。世界の危機が迫っているとはいえ、無理に強要させるなんて非人道的な行いを私は絶対にさせない。今はその力を何かに使おうとしてくれているので十分です。本当にありがとうございます」

 

「わ、私達にそんな畏まらないでください。さっきの赤嶺さんと会話していた時みたいに………で」

 

「……成程、確かにそちらの方が好ましいのか。では少し崩させて頂こう。貴方方のことは存じている。犬吠埼風と妹の樹、結城友奈…………そして」

 

 

乃木は美森の前で少し屈むと、ゆっくりと視線を動かし美森の体を視る。美森の顔から肩、腕、胸、胴、最後に脚。少し焦燥が混じった表情を浮かべた乃木は、視線を上げ美森の瞳を見つめる。

 

 

「……こんな身体になってでも、誰かの為に力を手にする。私には想像を絶する決意と意思なのだろう。本当にありがとう、………東郷美森」

 

 

美森のか細い指が乃木の手に握られた。何が起きているのかその場にいる殆どの者が分からない様子だったが、一部を除いて例外であった。特に、正面に見すえる美森は理解出来ないが乃木がどんな思いで見つめているのかは感じる事が出来た。

後悔、焦燥、悲しみ。少しだけ重く冷たい感情が乃木の瞳から覗いていた。まるでそれは心の奥底から見られているような。

恐怖では無く、なぜこの人はこんな瞳を向けてくるのかが、美森には全く理解出来なかった。美森の()()()()()()()の中で、乃木と出会った事など一度もない。もしかしたら()()()()()かもしれないと一瞬考えたが、相手は大赦のトップ。忘れられるほど薄い印象はしていない。

ならば何処で、と思考に浸ろうとしたと同時。乃木の握っていた手に手が重ねられ、ゆっくりと絡めていた指が解かれる。手を置いたのはすぐ後ろに立っていた力哉だった。

 

 

「……いや、すまない。これは私の()()だな。許して欲しい」

 

 

力哉を一瞥した乃木は、力哉の表情に少し口元を崩しゆっくりと上体を起こす。力哉がどんな表情を浮かべたのか、美森には死角となって見えなかったが、困惑する美森を気遣って止めてくれた事は理解出来た。

感謝を述べようとしたが、それに覆い被さるように乃木が言葉を述べる。

 

 

「さて赤嶺。これからの予定は?」

 

「一先ずは彼女達に住居の場所の案内を。今日は皆さんお疲れのようですから、明日から本格的に活動して頂きます」

 

「えっ!?じゅ、住居って……。私達家に帰れないってことですか!?」

 

 

聴き捨てならない言葉に、友奈が思わず反応した。

 

 

「……そういう事になります。御安心下さい。既に御家族の方には御説明済。御家族の方に頼んで必要最低限の品は送って頂ける手筈です」

 

「……そ、そこまで」

 

「これから先、急を要する事もある事を常に心に留めておいて下さい。学校の方も連絡済み。期間は未定ですが、何卒必要な事ですのでご了承を」

 

 

突然家に帰れないと言われれば思わず動揺してしまう。

しかし風は仕方ないと一人納得している様子。親のいない犬吠埼姉妹からすれば、姉妹が揃っていれば多少の事は問題ないと言った所だろうか。

 

 

「……皆、そこは納得しましょう。引き受けた以上、多少の事も受け止めなきゃ。それに、同じ所に居られるなんてまるで合宿みたいじゃない」

 

「……お、お姉ちゃん、流石にそれは……」

 

「そう聞くとなんだか楽しそうですね。私はそれで構いません!」

 

「えぇえっ!?ゆ、友奈さん!?」

 

「……お兄様がいらっしゃるのなら、私もそれで構いませんが……」

 

「と、東郷さんまで……。いや、これはいつも通り………」

 

「納得して頂けて幸いです。ではご案内しましょう」

 

 

よっこいしょと椅子から立ち上がる赤嶺。銀と夏凜が肩を支え、ゆっくりとした動きで歩き出す。若干介護されることに不満の表情を浮かべる赤嶺だが、そこを乃木が静止した。

 

 

「待ってくれ。ならば、力哉君を少し借りたい。それと、三ノ輪銀もだ」

 

「……どういう事です?力哉さんはともかく、どうして銀まで」

 

()()()が解除されたと言っておこうか」

 

「っ………、じゃあ今から」

 

「そういう事だ。ついては、力哉くんと縁のある銀を連れていくのだ」

 

「ならば防人からも連れて行きなさい。芽吹さん、リーダーである貴方が同行しなさい」

 

「……はっ!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。一体なんの話をしているんですか?」

 

 

話が進んでいく事に不安感を覚えた風が声を上げる。しかしその返答にしっかりとしたものは無く、はぐらかされるだけで流される。

ポンッと美森の頭に手を乗せて一撫でした力哉は、何か物言いたげな表情を風に向け赤嶺が立つ側まで歩く。

ここまで来るのにかなり力哉は焦らされた思いだった。知らない事が多いし、自分に出来ないことも多い。力哉はいっその事ここで全て聞き出したいとすら思った。どんな事を切り口に、なんて言えばいいのか模索する。

 

力哉の四面楚歌する表情を感じた赤嶺は、力哉の悩みを紐解いていくようにゆっくりと力哉の手を握る。

 

 

「……言いたいことは分かります。ですが、今はやるべきことがあるのでしょう?その後、ゆっくりとお話しましょう。この子と一緒に」

 

「……ありがとう、お母様。まずは自分の責務を全うしてきます」

 

 

膨らんだ腹部を一瞥し、愛おしく上から下に撫で下ろす。力哉もそれに合わせて手を当てる。未だ実感の無い自身の血を分けた子供。当てる掌から現実味を帯びる熱が伝わってくる。感銘を受けながら思わず口元を緩める。

 

少し眩しい夫婦の光景。この時代には先ず珍しい姿である。

 

 

「……力哉さん、禁忌令って?着いてくのは構わないんですけど」

 

 

訝しげに銀が力哉に尋ねる。重みのある言葉に銀は胸の内のざわめきが気になるのか、表情は暗い。

別段別行動に関しては日常茶飯事なので特に気にする事は無いのだが、如何せん聞き問い質したい言葉が聞こえたので銀はそこに食いついたのだろう。

 

 

()()の拘束が外される。だから迎えに行く」

 

「……彼女?………ってまさかっ」

 

 

銀にしては珍しく目を見開いた。銀と力哉が言う彼女は確実に同じ相手を思い浮かべている。

銀の驚く様に、状況が分からない周りも驚いた。銀がそこまで取り乱すのなら、余程の事なのだろうと誰もがそう思った。

 

 

()()()()の解放。あの子に、言いたい事いっぱいあるだろ?」

 

 

気付けば銀は、ポロポロと涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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道中、ツンと冷たい感覚を受けるようになったのはいつ頃か。

ひんやりとも違う鋭い冷たさ。張り詰めた空気を認知出来ない存在が宙を舞い、恐れ、緊迫、殺気を漂わせて道歩くものを震え上がらせる。

 

勝手な想像に過ぎないが、きっと、多分ここにはいてはいけないものが数多く存在するのだろう。実にオカルトチックだが、そう思わざるを得ない光景を目の当たりにすれば、自然と感受性も変わってくる。

 

例えばそう、床や天井壁に貼り付けられた御札の数々やしめ縄。立て続けに祀られた小さな祠。祀られた何かの木の幹など。

何が出るのではと、瞬間に思いついてしまうような酷い光景。祀り奉られる神秘的な物事は、道行く力哉達の足取りを重くさせるには十分過ぎた。

 

 

現在ここは大赦中枢、では無く。国内最大規模の病院である。全国の医療伝達網を握る重要な役割を持つこの()()()()()()の最上階。厄祓いや祈願を込めて1フロア丸々使った社を模様した内装の階層は、病院内でも極僅かな人間しか入れない場所である。

 

そのフロアを歩く力哉、銀、芽吹、乃木紅葉は、まじまじと周りを見渡しながら道を往く。病院の最上階にこんな場所があったのかと驚く事反面、何故ここに監禁されているのかという疑問が半々と思考を巡る。

神秘的な光景だが同時に、これではまるで神を奉っているような。

 

現実離れしているこの空間に、尻込みしながらも進む一同。その中でも、銀の表情は誰よりも重いものだった。

 

 

「……銀、大丈夫か?」

 

 

彼女の姿に異常を見出すのは容易いが、何故かと理由がわかっているのは力哉のみ。気分的にも()()()()過ぎている銀を心配するのは当然の姿であった。

 

 

「……そんな心配されるような状態っすか?別にアタシは平気っすよ……」

 

 

無理して笑みを作っているのは明白。明らかに銀は隠している。

痛々しく見えるその姿に、力哉も眉を顰めるしかない。

だが、銀がそういうのならそれ以上追求するのはイタチごっこだと察し、そうかと一言だけ慰めを込めて銀に声をかけると、しばらく力哉は口を開かなくなった。

 

暫しの無言。コツコツと響く靴音だけが木霊し、冷たい空気が頬を撫でる。

しかしその無言を突き破ったのは、鬱陶しそうに不機嫌な表情を浮かべる芽吹だった。

 

 

「……女々しいわね、貴女。そんなひき腰でどうするの?」

 

「……なんだよ。今、お前に喰いかかる程のヤル気無いから」

 

「それは好都合ね。溜め込んだ私の鬱憤を喜んでぶちまけられるわ」

 

 

ピタリと2人の足が停る。先を歩いていた乃木と力哉も足を停めざるを得ない。

ピリピリとした空気に様変わりし、同時に銀と芽吹が向かい合う。

 

 

「……2人とも。そんな場合では……」

 

「ごめんなさい乃木様。少しだけ、このままで」

 

「……力哉くん」

 

 

何かを察した力哉は乃木を思い留まらせる。傍から見ればこれから起こることは恐らく暴力による暴動。しかし、力哉はそれを敢えて見守る形を取った。勇者部内で度々起こるからかいを込めた言い合いとは訳が違うこの状況で、力哉は何を見出したのか、乃木には判断出来なかった。

 

 

「……私、言ったわよね。次不甲斐ない姿見せたらその場所代わってもらうって。今の貴女を見てると、さっきの反省がまるで見えない。貴女の立場、本当に分かってるの?」

 

「……はぁ、執拗いな。力哉さんはそういうお堅いのが嫌いなんだよ。立場って言っても、私は護衛。発言権も無ければお前みたいに部隊の指揮してる訳じゃない。力哉さんに降りかかる災悪を払うのが私の役目。ちゃんと理解してるし手を抜いてるつもりなんてサラサラねぇよ」

 

「私には、それは言い訳にしか聞こえない。自分はこういう存在だからって勝手に決めつけて、自分では動こうともしない。だから遅れる間に合わない。全部貴女の怠慢から来る結果だってなんで分からないの」

 

「分かってる。分かってるんだ。けど、これはどうしようも無い。アタシが今の()()()として存在する為に、私は今ここに居る。それを曲げようともねじ切ろうとも思わない。アタシはアタシの道を行くだけだ」

 

「……怠慢、傲慢。自信過剰とは恐れ入るわ。結局、自分なら何とかできるって裏返しよね。正直気持ち悪いわ。貴女、自分で何か解決出来た事なんてあったのかしら」

 

「……それは」

 

 

銀は自分の()()()()。何も無い、空を舞う袖のみ。痛々しい過去の傷。グッと眉を顰める銀は、()()()()()傷をさするように手を置いた。

 

結果。それは後にも先にも、未来永劫変えることのできない真実。曲げることも斬ることも壊すことも出来ない真実の点。

銀の腕はまさにそれ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。全ては結果。こうなってしまった。過去も、後悔も悔しさも帯のように連なる結果の副産物。銀は受け止めようにも受け止められない真実から逃げてきた。

過去の傷は()()()。後悔から来るのは()()()()いう少女。そして真実は焦燥していった()()()()という存在。

 

残った負の遺産を背負って歩んできた三ノ輪銀は、それから逃れる為に自分を変えた。

無邪気な少女から弄れた少女に。外向的な性格から内向的な性格に。

傷を負った後、目覚めた銀は自然とそうなってしまった。

 

 

()()さんの話は聞いてる。それを今更私はどうこう言わない。誰もが傷付いたし傷付けられた。貴女が傷ついたように私も()()()()()。貴女だけが無力だったなんて、絶対言わせないわよ」

 

「……芽吹」

 

「……それに、護衛である貴女が護衛対象に心配されてどうするの?正直見てられないわ。それこそ責任放棄して怠慢を貫いているとしか言い様がないわ」

 

 

銀がふと力哉に視線を送る。今の銀にかける言葉など決まっている、と言いたげな表情がそこにはあった。最近は事件が続き心休む暇がなかった為、お互いに心身共にボロボロのはずだ。

銀は勿論それを力哉が受けている事を良しとしないし、反対に力哉も銀が傷ついているのを良しとしない。

 

銀が明らかに態度を変えたのはここに向かうと伝えた後からだった。力哉はそれを負い目に感じているだろうし、銀が少しでも過去の挫折から立ち直って欲しいと思ってもいる。

 

力哉が銀に問い詰めてもきっとはぐらかしていただろう。それを分かっていた芽吹は敢えて好戦的に口を開き、力哉も察してそれを渋々受け入れた。

真実は当人達しか分からないが、きっと話の流れはこういう感じだったのでは無いだろうか。

 

 

「……銀。気付いてたけど、俺じゃ銀を説得なんて出来ないと思った。3()()とは関わりがあったけど、御役目としては何も知らなかったし当事者になれなかった。だから俺がどれだけ励ましたって、きっと銀には届かないんだろうなってずっと考えてたんだ」

 

「……そんな事」

 

「芽吹、ありがとう。正直、俺の言いたかった事何となく言ってくれてたから助かった」

 

「……いえ。冒頭のアレは私の本音です。力哉さんが命じられれば何時でも代わります」

 

「……その気持ちは嬉しいけど、それは()()()()()が戻ってきてから考えるよ。まだ、捨てきれないんでしょ」

 

「……私は防人部隊の長です。命令とあれば必ず遂行します」

 

 

先程までの怒りを顕にしていた表情とは違い、済ました笑みを浮かべる芽吹。相変わらず力哉に対して受け身だなと感じた銀は、話をこちらに戻す為にクイクイと力哉の右袖を遠慮気味に摘む。

 

 

「……力哉さん。アタシは……」

 

「……銀。頑張れとか、お前なら出来るとか在り来りな言葉しか言えないけど、これだけは絶対言える。気にしてるなら、気にしてること全部解決出来るようにするしかない。そのちゃんに負い目を感じてるなら、謝るなりなんなりすればいい。そのちゃんの事だ。笑って許してくれる!負った傷が気になるなら、俺にもっと身を任せろ。俺が君の腕の代わりになる。無理にとは言わないけど、銀の負担を軽くする事だって俺なら出来る。だから、銀ちゃんは負い目を感じながら生きなくていいんだ」

 

「……簡単に、言ってくれますね」

 

「誰しも言葉は簡単に言える。大切なのはその後。行動で示すことが出来るのが人間の理だ。ずっとそばに居た銀ちゃんなら、分かるだろ」

 

「……こんな、アタシらに優しくしてくれる人なんて、きっと未来永劫力哉さんだけですね」

 

 

少し荷が降りたのか、表情は先程よりも軽い。全てが丸く収まった訳じゃないが、それでも解決の方向に進路は取られたと考えていいだろう。

 

2人の様子を見る芽吹の目には少しだけ安堵の色が窺え、乃木の表情には自然と笑みが浮かべられていた。

それぞれが、これから会うであろう相手に対する覚悟が出来た瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして4人は廊下を再び進む。既に目と鼻の先に、恐らく彼女がいるであろう部屋の扉が存在していた。

しめ縄がかけられた扉を紐解き、ゆっくりと扉を開く。重々しい音と重量感のある扉の向こう側、最初に目に入ってきたのは目的の少女の姿。

 

 

左目を残しぐるぐるに包帯が巻かれた頭。リクライニングで背もたれのように起こされたベッドに体を預けた痛々しい姿。すぐそばに備え付けられた心拍を図るモニターや点滴、酸素呼吸器と言った医療器具の数々。入院着とは違う良質な素材で作られた丈の合わない服をベッドいっぱいに広げた彼女は、じっと入室してきた4人の姿を片目で写していた。

 

 

「……その、こ」

 

 

沈黙を破ったのは乃木だった。母親として、抑えきれなくなったのだろう。そのまま乃木は少女の側まで早足で歩み寄る。

大赦の人間だとか、統括だとかそう言った姿では無く、純粋に、1人の母親として子供に会いに向かった乃木の姿に、思わず目尻が熱くなった。

 

ボロボロと大きな雫を頬に伝わせる乃木は、身動きが取れないであろう少女を優しく抱き締める。

抱き締めた時、()()()()()()()()が今の乃木にそれを追求出来る余裕は無い。

 

 

「……園子っ、ごめんなさい……っ。ごめんなさい………本当にっ、ごめんなさい……」

 

 

嗚咽に混じった乃木の泣き声。しんみりとした空気に涙がそそられる。

少女は無言のまま、()()を動かして乃木の頭を手を置いた。パクパクと口を開く彼女だが、()は一切聞こえない。

しかし、乃木を思って何かを伝えようとしているのだけは理解出来た。

 

 

暫く、乃木の声が木霊し2人だけの空間が作られる。

力哉達はずっと、その光景を眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そのちゃん登場!!


エマージェンシーエマージェンシー!!そのちゃんの声が聞こえないぞ!!どうなってる!!



次回もお待たせしてしまいますが、首をキリンの如く長ーくしてお待ちください(土下座)。


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