この世界はあべこべである。   作:黒姫凛

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完全にやらかしたので初投稿です。

ラスト千文字辺り書いてたと思ってたんですけどすっぽかしたみたいで付け足しました。

数ヶ月経って知るなんてなんという無様。申し訳ないです。


その2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殴られた痛みを感じた時、ふとこれが何度目なのかと考えた事があった。

 

 

血眼になって私を殴る父親の姿。片手にはお酒が入っていたであろう一升瓶が握られ、いつその瓶を私に振りかざしてもおかしくは無かった。

 

父親が私を殴り始めたのは何時だったか。そんなことも忘れるくらい、私は毎日殴られた。

母親が不倫し、貯蓄を散財させて借金まみれで家に帰ってきた。泣きつく母親に、父親は馬乗りになって何度も何度も拳を振り下ろしていたのを覚えている。服を脱がし、父親が必死に腰を母親の股に押し付けていたのが鮮明に思い浮かぶ。

泣きじゃくる母親に容赦無く甚振(いたぶ)る父親。普通なら私は是が非でも止めさせなければならないのだろうが、私はあの時自分でも驚くくらい感情が冷め切っていた。辞めさせることもしないし、見たくないと顔を背けることもしない。ただじっと、2人の姿を黙って見ていた。不思議と何故か、ただ理由もなく見つめていたのだ。あの時は私自身もどうして見つめていたのか理解出来なかった。

ただまあ。何をやってるかとか、何しているのかとか、どうでもいいとさえ思ってしまっていたのだから。小学生だった時の私として考えても、なんて冷めた人間なんだろうって、今思えば笑ってしまうわ。

 

 

母親が家を飛び出した後、残ったのは母親が持ち込んだ借用書と借金、無心で立つ私と父親の込み上げる怒りだった。

そして父親の怒りが私に向けられる。元々そこまで仲が良かった訳でも無い親子の関係は一瞬にして消え去り、私は父親のサンドバッグとなってしまった。

 

村でも母親の不倫が広がり、村の人達からの視線は厳しくなる一方だった。道を歩けば腫れ物を見るかのような目で見られ、同級生や年上の子供達からはいじめを受け、父親の暴力を受けてボロボロになっていた私の身体は、もっと酷く、もっとボロボロになってしまった。

元々私の容姿は醜いし、母親のように美しいふくよかな身体をしていた訳ではなかったので、村ではずっと腫れ物扱いされていたが、不倫の事が広がってからもっと酷くなった。

 

 

 

髪を切られ、殴られ、耳を切られ、殴られ、服を燃やされ、殴られ、私物を壊され、殴られ、手を切られ、殴られ、殴られ、殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ燃やされ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ蹴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られっ、殴られっ、殴られ殴られ殴られ殴られ殴られ殴られっっ───

 

 

 

 

全身に青アザ、切り傷刺傷火傷跡様々な傷が身体に刻み込まれた。肉体的にも、精神的にも私は傷だらけになっていった。

知識が無い私が耳を切られた時ちゃんと対処出来る筈もなく、バイ菌が入って切られたところが膿んでしまったようで、それを面白がってか重点的に耳を狙うようになった。

 

え?今は別に耳はしっかりある?……まぁ、治療が何とか間に合ったって言うの?そういう感じよ。話の腰を折らないで貰えるかしら。

 

解放されたいあまり、死のうとしたけど死に方も分からなかったし、毎日お腹も空いていたから餓死で死んでやると考えたわ。血を止めようにも、傷が多過ぎて塞ぎ切れないから諦めたし、もう私の居場所は何処にもないって思ったわ。

 

 

そんな時、ある一家が私の家にやって来た。……覚えてる?水都さん。あの時かなり衝撃的だったでしょ?……え?思い出したくない?……まぁ、当たり前よね。何も知らなかった水都さん達からすれば思い出したくない光景だったでしょうし。……私はいつも、ふと思い返してしまうわ。あの時の優しさ、温もり。何よりも、私を助けたいって言う気持ちを。

 

 

父親が不在だったから、何度もインターフォンを鳴らしていたので出なきゃ不味いと思って私が玄関の扉を開けたの。

扉の前に居たのは一人の女性だったわ。見た目母親と近い年齢の女性で、母親と違ってどちらかと言うと私のような醜い容姿をしていた。そんな女性が私を見ては顔を青ざめたかと思えば、あれよこれよと車に連れられて市民病院に連れて行かれたわ。車の中に居た水都さんと彼が目をまん丸にして驚いていたのは今でも印象的ね。

 

病院に連れていかれた私は、すぐに手当され数時間後に緊急手術。体の治りきっていない傷を縫い合わせ、耳の切り傷の膿の摘出を行い、全治半年の診断の後入院となった。

 

後で分かったが、家に来た女性は母親の姉に当たる人物で、妹である母親の不倫の事や借金の事を母親の父親経由で耳に入れ、その謝罪とこれからについて話し合おうと家を訪れたようだ。

そして父親は不在だったが出てきたのはボロボロになった私。謝る気が失せたと腹を立てて父親を説得。借金を全て肩代わりする代わりに、私を引き取ると取引したのだ。

父親はうぬを言わさず頷き交渉成立。養子縁組として私は藤森家の一員となったわ。

 

そこからはもう天国のよう。水都さんと出会い、彼と出会い、お義母さんと出会い、私は毎日が今まで味わったことの無い幸せを感じていたわ。

退院後、精神的にも病んでいた私を気遣ってか、数年後もう一度改めて私の口から父親との縁を切ると言えるようにするためさっさと私は彼女らの家がある長野県に移住。学校という場所に嫌悪感を感じていた私は学校に転校するも全く学校に通わなかったけど、それを埋め合わせるかのように自宅で勉強に打ち込んだわ。

水都さんは学校では上位の成績だし、彼もとても優秀。かなり容姿も整っているし、女子人気も高いと言う。……ぶっちゃけ嫉妬してしまうけど、家で甘えられればそれでいいのだ。

 

 

そして私が中学2年生の年齢になった頃。私は約束した自分の口で父親との縁を切ると言う為に村に戻った。

そしてあの日の夜、星が宇宙から降り注いだ。

 

 

 

 

 

………と、言う感じよ。それからは貴方達が知っている通り、私は勇者をやって、彼とイチャイチャ過ごしているわ。

え?最後の言葉は余計?あのね、乃木さん。乃木さんが彼にどんな感情を抱いているか知らないけど、基本的にこの国は一夫一婦制なの。こんなご時世じゃ子供産ませ孕ませかもしれないし、私達勇者なら例外かもしれないけど、基本的には駄目なの。それを分かって?

 

……例外があるかもしれない?……まぁ、誰が決めた事じゃないから、私もはっきり言えないのだけれど……。乃木さんも彼の事、好ましく思っているのね。いえ、その気持ちを否定するつもりは無いわ。彼、優しいし。私達みたいな醜い人間にも優しいから、堅物で恋愛脳な乃木さんならイチコロよね。

 

……上里さん。何その目は。怖いのだけれど、瞳孔ガン開きのハイライトグッバイは怖いのだけれど……。え………?一夫多妻制に絶対出来る?……それ、職権乱用でしょ……。巫女の名前が呆れるわ。

 

…え、いえ、水都さんは彼と籍入れられないでしょ?兄妹なんだし。……愛の力には関係無い?精神論では無く倫理論で会話しなさい。だいたい、近親相姦って言うのはとっても危険なもので………。

 

……なに、土居さん。……チューしたことあるのか、ですって?勿論当たり前よ。なんなら、その先も超えてるから。

 

…その先って何……って言われてもね。口で説明するのは流石にまずいわ。伊予島さん、説明お願い出来るかしら?………え?無理?そんな恥ずかしい事言えない?……未だ未成年でありながら官能小説を読んでムフフしているむっつりちゃんが無理って言うの?あんまりだわ。だったら貴女が読んでいたお気に入りの内容を……あら、引き受けてくれるの?流石ね、伊予島さん。そういう知識でも役に立つわ。土居さん、向こうで説明受けてらっしゃい。

 

白鳥さんはよく畑仕事を手伝ってもらっているのよね。彼の友達と一緒に。これからも呼んでくれって言ってたわ。………少し嫉妬しちゃうけど、貴方の野菜で作る料理はスーパーで買った野菜で作ったのよりも美味しいから、見逃してあげるわ。

 

ただし秋原さん。貴方は有罪よ。街を案内と称してデートなんて頂けないわね。お互いに親しみのない丸亀市をよくもまあぬけぬけと案内できると言って誘ってくれたわね。……夜中、寝首を狩りに行くから首を洗って待ってなさい。……ラーメンで手をうて?お生憎、私はラーメンでは心は揺るがないの。……彼が私とデートに行くための下見を兼ねてて彼から話しかけてきた?……くっ、複雑だけどっ、私には……貴方を許すという選択肢しか……ないのね……。

 

古波蔵さんは……あまり彼と関わってない気がするのだけれど。彼に不満でもあるというのかしら?……不満などある訳ない?ならどうして会話しないの?恥ずかしい?……古波蔵さんって意外と初よね。可愛らしい所があるわ。彼に言って、もう少し古波蔵さんと会話してって伝えておくから。ん?恥ずかしくて死ぬ?大丈夫よ、ボロ雑巾みたいだった私がしぶとく生きてるんだから、彼にあったぐらいじゃ死なないわ。

 

 

兎も角、私はあんまりな状態だったけど、今はピンピン生きてるから問題無いし、今更あの父親や村に未練も無いわ。どうぞ勝手に潰れてくださいお笑い致しますってね?

 

 

……あの、高嶋さん?どうして無表情でジャブしているのかしら……?……え、た、高嶋さん、聞こえてるかしら?……っ!?たたたた高嶋さんがいぢめ絶対許さないウーマンになったわ!!不味いっ、このままじゃああの村に殴り込みに行ってしまうぅ!!

 

乃木さんっ、貴方の無駄に鍛えた身体を今ここで披露する時よ!!何呑気に見ているのかしら?!脳筋若葉ちゃんなんでしょ?!脳筋らしく身体でぶつかって!!

 

高嶋さん落ち着いてっ!!私はもう何ともないのよ!!今は幸せだし毎日が楽しいの!!だからもう気にしてないから落ち着いて高嶋さんっ!!

 

 

 

 

私は今っ、幸せなのぉーーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こくんこくんと船を漕ぐ。ただしそれは夢見心地の船の上。上の空で歩く私の足取りは、ゆっくりと川を進む船のよう。

しかして船に意思はなく、乗られる側の自由自在。しかして私は意思がある。待人来るその時までは、多分ずっとこうなのだろう。

 

時刻は夕刻。赤橙の太陽の日がこれみよがしに眩しく照らし、沈む最後の悪足掻きのようにも感じるその光を鬱陶しく思いながらも、着々と私は足を前に進める。

周りは帰宅する学生達の集団が流れており、社会人の帰宅ラッシュと被って歩道はかなりの大混雑。かくいう私も帰宅する学生達の一人なのだけれど、私の周りには人一人として寄り付かない。理由もなにも、考えてみればわかるでしょう。醜い人に誰が近付くものですか。

 

周りから響く足音。コンクリートを擦り、砂や石を蹴飛ばし、地面から生えた雑草を何食わぬ顔で踏みつける。命を大事にしろとは強く言わないけど、私達が今どうして生きる場所を追われてここに来ているのかもう少し考えて欲しいと思う。

SFチックな話だが、もし仮にこれが神様等という存在が無く、自分達だけで生き抜かなければならないとなった時、果たして私達は無事に生きていられるだろうか。映画でよくある侵略者から地球を守る話も、守っただけで後の事など知らんがなと割り切って話が終わることがよくあるけど、あれはどう言う事なのか今この現実と向かい合った時改めて感じる。

皆で力を合わせて生き抜こう。いや分かる。確かに分かるが、たったそれだけなのか。絶対また同じ事を繰り返すだけ。

 

後悔するが反省はしない。いくら争いはダメと言い張りながらも一向に争いを辞めない人間達なんて信用も信頼もゴミっかすみたいな存在なのによくもまあ神様は力を貸してくれるわねと、心底そう思ってしまう。

 

 

かくして、私の気持ちが一体誰に届くというのかと。私は吐き捨てるように息を吐いて苦笑い。

何処も彼処も人人人々、私と同じ感性の人間は居ないようね。

 

勇者として何故選ばれたのかは分からないけど、大切な人を守る為に力を授けてくれたという事に関しては有難く礼を言うわ。でもそれだけ。

それ以外に興味は無い。なんなら、よくもこんな力寄越してくれたなと、胸ぐら掴んで殴り飛ばしてあげたい。世界が崩壊した世紀末だからこそ今は殴り飛ばすことも無いのだから、反逆精神を押さえつけている私にも感謝して欲しいわね。

 

 

私が今どんな顔で歩いているのか、そんな事自分では分からないのだけれど、周りの有象無象は私の顔をはっきり見ている。

そして今、私は歩いている最中だった事を思い出した。

 

周りから奇怪で、嫌悪で、険悪で、ゴミを見るような目が私を見ている。プレッシャー、そんな言葉も弱々しい。もっと強い何かを感じる視線が、四方八方からやってくる。

 

まぁそこまで気にする訳でもないのだが。言うて有象無象の視線なのだから、一々気にしてられる程暇では無いし気にしてない。

勇者たる者堂々たれ、とは誰が言ったかしら。乃木さんが言っていたような気がするわね。いえ間違いないわ、乃木さんならそう言って太刀を振り回しているでしょう。

 

 

そんな時、ふと横断歩道を渡る男子学生達が目に入った。天災後、珍しくなってしまった()()()()。避難民も通えるよう増築した近隣の高校の制服を着た彼らは、少し周りから物珍しそうな視線を向けられながら歩いていた。

 

 

それと同時に、私は足を止める。視線はその男子生徒達に向けられたまま。

お目当てのものを見つけた様に、私は目をゆっくりと見開く。視界に入っただけで、私はいつも心を弾ませてしまう。

 

別段特徴がある訳では無い。かと言って普通でもない。私からすれば()の全てが特別なのだが、1個1個説明するとキリがないので渋々だが割愛させてもらいたい。

 

 

「━━━康輔」

 

 

どれくらいの声量だっただろうか。周囲の汚声によって掻き消されてしまっただろうか。

しかし彼は声が聞こえたのかこちらを振り返った。周りもそれに気づいたのか、楽しそうにじゃれあった後、彼は背中を押される形でこちらに向かってくる。

 

聞こえる靴音が心地いい。彼から発するものは全て純白のベールに包まれたような初々しさと美しさを孕んでいるのだが、何故そう思えるのだろうか。

胸が動悸する。心臓が次第に激しく鼓動する。近付くその距離が鬱陶しくもあり、近づき難い神聖さを持つ彼の存在は私にとって天使と呼べよう。

 

少し困り顔でやってきた彼は私の目の前で止まるや否、数メートル離れていた身体をゼロ距離まで近付けた。まあ私が飛びついたからであるが。

 

 

「……おかえり、康輔」

 

「おっす。ただいま、千景」

 

 

彼、()()()()の腕の中で私は幸せを胸いっぱいに感じながら、彼と目を合わせる。

頭1個分程高い彼の身長を見上げる形だが、それがまた私は好きなのだ。

 

今日も無事一日を終えたのだと私は安堵し、より彼に伸ばす腕の力を強くするのだった。

 

 

 




文章中だけじゃ何が何だか分からないかもしれないので重要なとこ板書してね。


ちーちゃんの境遇ーーー村八分を受けてから心身共に傷だらけ。後に救出幸せ満悦。

藤森家との関係ーーーちーちゃんのクソ母とみーちゃんのお母さんが姉妹。旦那置いて一目散に子供連れてやって来たけど、出てきたのはボロ雑巾みたいなちーちゃん。こりゃあびっくり慌てて動転、一目散に病院に転がり込んで入院させた。そこから養子としてちーちゃんと共に過ごす。ちーちゃんはしっかりお兄ちゃんに恋した。完全にオリ設定。

この世界の男性ーーー天災後何故か男性人口減ってるのは何でだろうねぇ〜。







ちーちゃんを幸せにし隊としてはハッピーエンドにしたいんだけどなぁ。……久しぶりに来る愉悦がヤバくて捻じ曲げたくてうずうずしてる。



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