造られし害虫の王 ──The pest which is made──   作:バルシューグ

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タイトルのネーミングセンスの無さに落ち込む日々…


第十一話 予定

十一話

 

 

 

 

二人の接触(戦闘開始)まであと10メートル…

 

 

 

豪太とフィルナは、お互いの距離が残り3.4メートルという所で歩を止めた。

 

 

 

 

 

 

ーー両者、共に動かない

 

 

 

 

 

 

身長差でフィルナが豪太を見上げる形となっているが、”今、この時”に身長差など意味を成さない。

どちらが先に動くか、が重要なのである。

 

 

両者共に動かなかった…

 

否、

 

──動けなかった

 

 

相手がどう攻撃を仕掛けてくるのかがわからない今、ただ突っ込んでも反撃を喰らうだけだ。

 

”だから”動けなかった…

 

 

 

が、

 

 

 

豪太はフィルナに向かって駆け出した。

 

 

 

 

「!?」

思ったよりも早い行動に驚くフィルナだったが、すぐに構える。

 

 

フィルナは思った…

──確かに、どちらかが攻めない限り、この組手は引き分けとなると思う…時間的に。

 

 

ただ、隊長だから、私のベース生物の事を知っていても可笑しくないけど、それだけの情報じゃあ、相手がどんな戦い方を取るのかわからないのに隊長はすぐに攻めてきた…

 

いったい、何故だろう…──

 

 

フィルナにはわからなかった。

何故、豪太がすぐさま攻めに投じたのかか…

 

 

しかし、これこそが豪太の作戦なのだ。今までの200にも及ぶ程、同じ場で訓練をしてきた…

偶には一緒に隊のメンバー全員で遊ぶことも有った…

その年月の中で見極めた隊員の性格…

それを豪太は利用したのだ。

 

豪太は確信していた。

何でも興味を持ち、知りたがるフィルナならば絶対に豪太は攻めようとしたのかが気になる、と…

そしてそこに隙が出来る…!

 

 

 

数メートルという距離を一瞬にして詰め、豪太は掴みかかる。

後少しで掴めるという所で、それをスルリと滑るかの様にフィルナは避け、軽快なステップを踏んで、豪太の懐に潜り込む。

 

 

「なッ!?」

 

 

──侮っていた、フィルナの身体能力を──

 

豪太は己の傲慢を後悔した。

 

 

 

それに、ただでさえ懐に潜り込まれたら回避が難しいのに、相手は子供である。

その小柄な体にどう攻撃を当てるのか…

 

そんな思考をする暇さえ与えない程、素早くフィルナは豪太の腹部に二本の爪を叩き込む。

 

 

しかし、フィルナの動作を見て、ギリギリの所で反射神経を研ぎ澄ませて間一髪、爪の直撃を避ける。

 

 

 

(速い…そして力強い。

これがバグズ手術か…いや、こいつら、そういえば自らの身体に事前にベース生物の遺伝子を取り込んでいるんだっけ?

例えそうだとしても、この強さは異常だ…

でも、まだまだ攻撃に移る時の動作が大振りだな。

今はソレを高い身体能力で補っている様だが…)

 

 

豪太はフィルナについて密かに分析を始めるが、それが分かっているかの様にフィルナは追撃を開始する。

 

 

的確に人体の急所を狙い、打ち出される突きは擦るだけでも豪太の甲皮に傷をつけた。

傷と呼ぶには小さい物だが一番の注目すべき点は、フィルナが豪太に傷を付けたという事である。

 

 

その突きを紙一重で躱す豪太だったが、その顔面には予想外の展開に冷や汗が滲み出していた。

 

 

 

 

 

フィルナの攻撃を、俺の甲皮は耐えられないのか…!

 

 

 

 

思考を巡らせながらフィルナの猛攻を躱す。

今、豪太が攻めようとしても、恐らくは僅かに出来る隙をついてフィルナが捨て身の攻撃を放つだろう。

 

そしてその一撃は豪太に直撃し、豪太の放つ攻撃もフィルナに直撃する。

しかし、そうなると豪太自身の体にフィルナの持つ猛毒が注入される事となる…

 

そうなれば、幾ら豪太の毒に対する耐性が有ろうとも、確実に動きが鈍る事になるだろう。

 

 

 

ーー駄目だ、迂闊に行動出来ない…!ーー

 

 

 

 

「隊長、これは躱す事が出来ますか?」

フィルナが突然、そう言って猛攻を止める。

しかし、何かを放つかの様に腕を構え始める…

 

 

 

豪太は後退しようと行動を取るが───

 

 

 

豪太は首を鷲掴みされ、その顔面目掛けて霧状になった毒をフィルナは口から噴き出した。

 

 

 

「ガフッ!?」

もろに吸い込んだ豪太は咳込み、フィルナはそのまま地面に投げ叩きつける。

 

 

 

 

 

ーー腕の構えはフェイントで、本命は口からの毒噴射か…!

…まさかここまで強くなっていたのか…ーー

 

 

 

 

 

 

豪太は地面に這い蹲りながらそう考えていた。その事に嬉しく思うと同時に、まだ負けてられんと感じた。

 

 

フィルナはゆっくりと這い蹲る豪太の元に歩いて向かう。

「どうです?隊長!

私、結構強くなってますよね!?

実際にこうして隊長をダウンさせてるんだし…」

フィルナはニコニコと笑いながら言った。

 

「そうだな…強くなっているぞ。

…少し、甘く見ていたが…

その必要がない事がわかった」

 

「?」

フィルナがその言葉に首を傾げていると、豪太は立ち上がった。

 

 

「へぇー…隊長、やっぱり凄いですね!私の毒を食らっているのに立ち上がるなんて!

でも、満足に戦えないんじゃないですか?」

フィルナは余裕の表情でそう言ったが、豪太は焦るわけでもなく、ただ嗤った。

 

 

「甘いな…俺の動きが多少鈍ろうと、たとえ組手であろうと…

 

 

 

 

 

 

簡単に()に近づいたら避ける事は出来ないぞ?」

 

 

その言葉にフィルナは、咄嗟に構えるが、豪太の狙いを当てる事は出来なかった。

そして、豪太が放った足への膝崩しを躱す事が出来ずに直撃する。

 

 

その一撃を目で追う事は出来ても、

その速度には対応出来なかった。

 

 

 

倒れたフィルナに豪太は素早く近づいて拘束する。

 

 

「俺の勝ちだ、

あの時にもう少し詰めを厳しくしておけば勝てたかもな?」

 

「……参りました」

 

 

勝負は豪太の勝ちで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悔しいっ!!

悔しすぎます!!

人生の中で一番悔しいです!」

フィルナはそう俺に向かって叫ぶ。

 

「いや、でもしっかりと自分の能力を理解して使いこなしていたじゃないか。

実際に俺も負けかけたし…

 

まあ、敗因は詰めの甘さだな。

後は攻撃の動作が大振りな感じがするからそこも気をつけたらより良くなるぞ」

豪太はフィルナにそう言った。

 

「むぅ…

次こそ勝ってみせます!

絶対に!」

フィルナはそう俺と他の三人に宣言する。

 

 

 

あ、そう言えば…

 

 

「そういえば、お前らも組手したいんじゃないのか?」

豪太は三人に向き直り、そう言った。

 

 

「いや、遠慮しておきます…

今の俺たちでは勝てないのが先程の組手でわかりましたし…」

ラズイルが、三人の代表をしてそう言った。

 

「そうか?十分にお前らのベースも強いと思うんだが…」

 

「まあ、確かにそうですが…

…流石にフィルナみたいに強くないですし、俺なんかは力でゴリ押しで、イマリアは主には徐々に切り刻む戦法で、カルバールなんか逃げる専用のベースですから…」

ラズイルの言葉に、二人は頷く。

 

 

 

まあ、一応、四人の情報を載せてある役に立ちそうにない資料を持っているからわかるが…

 

 

 

 

 

 

 

……何故か、カルバールのベース能力に同情したくなる。

アレは専用武器に頼るしか攻撃が出来ないだろ…

 

 

 

 

「そうか…でも、

今日から半年間は、訓練無しだから変体の訓練だけはしておくぞ」

俺がそう言い、立ち上がると…

 

 

 

「「「「エエエェェェェェェェェェェェェ!?」」」」

ホール内に響き渡るほど、大声量で驚き四人…

 

 

…もしかして、聞いてなかったのか?

 

 

 

「え?そんなの俺、聞いてませんよ!?」

 

「そんなあああ!?

暫く組手出来ないなんて…

訓練出来ないなんて…」

 

「そりゃあねえぜ!隊長!」

 

「そうかー、あたしの中でトップクラスの楽しみだったんだけどな…」

 

 

四人は多種多様の反応を見せ、騒いでいる。

残念に思ってくれているのは嬉しいが…

 

「俺も残念だが、半年間は訓練を休む。休む理由も上の連中からのある依頼をするからだ。

そこは我慢してくれ…」

俺がそう言うと、四人は何かに気づいたように黙る。

 

 

…たぶん、こいつらが考えている事が当たりだ。

俺が依頼されたのは、研究の為だからな…

 

何をするのかまでは知らんが。

 

 

 

「そういう訳だ。

さあ、変体の練習をするぞ!

フィルナはそこで休んでおけよ。

俺との組手の直後だし」

 

 

そうして訓練は終わり、俺は自室へと戻った。

戻るまでに訓練の再開をキツく約束されたが…

 

 

ーーでも、悪くない気分だなーー

 

 

俺はそう感じながらソファーに座った。

 

 

 

 

 

 

 

「…確かコレだったよな」

俺は端の机からある資料を取り出し、目の前のテーブルに広げる。

 

 

半年後に備えて四人の情報を確認しておこうと考えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

『フィルナ・エルテシモ』

・9歳

 

性別 女

 

ベース生物

【クロドクシボグモ】

 

身長

139.3cm

 

体重

38.4kg

 

誕生日

1月19日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カルバール・トリアン』

・8歳

 

性別 男

 

ベース生物

【コスズメ】

 

身長

133.5cm

 

体重

32.7kg

 

誕生日

8月23日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イマリア・アルカード』

・9歳

 

性別 女

 

ベース生物

【ブラックキラーヒヨケムシ】

 

身長

143.8cm

 

体重

41.1kg

 

誕生日

6月9日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラズイル・デメルト』

・11歳

 

性別 男

 

ベース生物

【ゴライアスオオツノハナムグリ】

 

 

身長

157.9cm

 

体重

50.6cm

 

誕生日

11月14日

 

 

 

 

 

 

 

 

…やっぱ、この資料、当てにならねえー……

 

俺はそう思いながら頭を抱えた。

 

 

 

 

 

少しの間は頭を抱えていたが、実験場所に明日は向かわなければならない為に、準備が必要なのを思い出した。

 

 

ーーもう、訓練の話は終わりにして、明日からの実験の為に体を休めておくか…

 

 

 

 

 

俺はそう思うと家の用事を済ませていった。

 

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