造られし害虫の王 ──The pest which is made──   作:バルシューグ

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第十三話 少年の決意

十三話

 

 

 

 

「始めろ」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

部屋のガラス越しに研究者達は豪太とアドルフの様子を眺めている。

 

 

 

二人の身には既にM.O.手術が施されている。この実験が始まる前に呼び出された二人は直様その場でM.O.手術を受けたのだ。

しかし、現在のM.O.手術は開発の初期段階の為に効率はまだまだ不完全な物である。

そのため、予定されているぐらいの力を発揮させる為に二人は実験を受ける事となった。

 

 

 

数日前まではアドルフ1人で行われる筈だったが、ある組織の申し出により、更にもう1人(豪太)も追加される事になった。

そのおかげで、二倍の速さで実験を進めることができ、二倍効率が上がるわけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在(いま)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験の真最中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ッ!!……グッ………ガ……」

口から漏れる、声にならない叫び。

体の節々からはギシギシと軋む音が鳴る。

全身がまるで切り裂かれ続けているかの様な感触が有り、鋭い痛みが巡っている。

そこからは針…いや、棘らしき物が生えかけていた。

 

 

 

 

 

───鋭く、太く、長い

 

 

 

 

 

これが刺さったら痛いだろうなー、なんて歯を食いしばり、痛みを耐えながら思う。

そして自身の体を眺める。

 

 

腕は、筋肉の膨張と凝縮が行われ、見るだけでもわかる程に逞しくなっている。

更に手の甲には体に生えている棘の小さい物が生えていて、

腕の表側はその棘と小さな棘の集まりで覆われており、より強固なものに変わっていた。

 

 

体全身にその小さな棘は現れ、覆われていき、身につけていた衣類は破れ、ヒラヒラと落ちていく。

 

 

なんて考えつつも、徐々に酷くなる痛みに耐えられなくなってきた…

神経が引き裂かれているのかと疑ってしまうかのような痛み…

いや、実際にそうなのだろう。

 

 

「─────ッ!!!」

 

 

その時、豪太の体は突然大きく膨れ上がる。

 

 

 

筋肉が、

 

 

骨格が、

 

 

甲皮が、

 

 

細胞が、

 

 

肉体が、

 

 

 

 

全身が、

 

 

 

 

───『変化』した

 

 

 

 

豪太の咆哮と共に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ…

ようやく、変化するのか。

また一歩、化物…いや、ーーと近づくのか…

 

 

 

 

 

あとは時間の問題か…

今までの時に比べれば小さな小さな時間で完成する、M.O.手術が!!

 

 

その時が君がまた進化する時だ」

 

オーエンは不気味に笑う。

その視線は何処を見ているのかもわからない様な表情で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア……ハア……ハア…」

 

 

「今日の実験は終わりだ。

また明日の実験に備えて体を休めておけ」

研究者はそういい、実験室から二人を出す。

実験は終わったというのに息が持たず、荒げる。

 

 

疲労仕切った身体で両者共に歩き出す。

人間として、生物としてしなければならない事をする為に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……寝れねえな」

俺は普段よりも早く床に就き、目を閉じたが全く眠気がおきず、

暇だし施設の自動販売機にでも何か買いに行こうと思った。

身体はまだ疲れが取れきっていないが、問題なく歩ける程度には回復している。

 

 

 

時刻は午後11時、施設内にバタバタと歩く音は一切しない。

 

俺の足音が小さく響くのが聞こえるだけで、それ以外の音は聞こえてこなかった。

灯りがついている部屋は数箇所見つけたが、物音は無く、俺はただ目的地へと歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地に着くと何故かアドルフがベンチに腰を掛け、アップルジュースを飲んでいた。

俺の存在に気付いたようだが特に気にかけるような素振りをせずにジュースをチビチビと飲んでいる。

 

 

俺は自動販売機で麦茶を買い、アドルフの方に歩いて行った。

 

 

 

「隣、いいか?」

 

俺の言葉に小さく頷くアドルフ。

俺はソレを確認すると隣に座った。

 

 

 

 

「なあ、アドルフも眠れねーのか?」

 

「……うん」

アドルフは小さく呟き、その瞳には涙が出ている。

 

「僕のお母さんとお父さんは、手術に失敗していなくなったの…

帰ってこなかったの…」

始めてアドルフから語りかけてきたのに驚きながらもしっかりと聴く。

 

 

アドルフは泣きながら言葉を続けた。

「頑張らなきゃいけないのに……

お母さんと約束したから、頑張らないといけないのに…

 

やっぱり、会いたいよ…!

もう、いないってしってるのに、どうしても!

僕には無理なんだ…」

アドルフは知っていた。

自身の両親はこの世にいない事を…

いや、聞かされていた。

 

その悲しみと今日の実験、そして頼れる人がいないこの状況の中で、アドルフの心は限界に近づいていた。

 

 

 

豪太はその小さな(アドルフ)を抱きしめた。

 

 

「俺は気の利いた言葉なんか言えねえけどよ…

 

こうしてお前を支えてやれる。

今は精一杯泣けよ…

自分に正直にさ…

俺が聞いてやる、支えてやるから」

 

 

 

 

「う…うぅ…─────」

 

 

アドルフは泣いた。

その声は小さくも今、アドルフが出せる精一杯の泣き声だった。

 

 

 

「……俺はさ、お前の親にはなれねえけどよ…

仲間(家族)にはなれる…!

助けてやれる!支えてやれる!守ってやれる!

 

今は信頼なんて無いだろうけどよ…

少しずつ、小さな事でもいい。

俺を頼ってくれ…

お前はまだまだか弱い子供なんだ。

自分で全てを背負おうとするな。

 

 

俺も背負おう。

自分で出来ない様な事は俺が代わりに背負ってやる。

だから自分の心を偽ろうとするな…!」

 

「………うん……ありがとう、お兄ちゃん!僕、やっぱり頑張るよ!

お母さんやお父さんみたいになる…!約束を守る!」

アドルフは涙で顔を濡らしながら決意の言葉を言った。

 

「ああ…!

頑張れよ!俺も手伝ってやる!

お前は一人じゃないんだ!

俺がついてやる。だから自分の思うままに生きろよ!アドルフなら出来る!」

俺は嬉しく思いながら言った。

アドルフの表情には今までなかった光が薄っすらと光り始めていたから…

 

やがてその光が大きな物になる事を祈りながら俺はアドルフの頭を撫でた。

 

「明日も実験だからな。

そろそろ寝ないといけないぞ。

眠れないなら俺が昔話でもしてやるしな!」

 

「……ほんと?

ならお願い!お兄ちゃん!」

アドルフは満面の笑みを浮かべて言った。

 

「おう!勿論だ!

じゃあ寝床に行くか!」

 

「うん!」

 

「桃太郎っつう昔話をするかー!

楽しみだろ?

あと、明日も眠れないんなら俺がついててやるからな!」

 

「ほんとうに!?嘘じゃない?」

 

「ああ!嘘じゃないぜ!──」

 

そんな二人のたわいのない会話は廊下に少しの間響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、アドルフも寝たし、あの研究者共に話しつけてくるか」

俺は部屋を出て、向かった。

ある人物に会いに行くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ〜、あんたのトコのは随分とかっこいいじゃないか。

あんたと違って」

 

「当たり前さ!私の創り上げたものだよ?かっこいいに決まっている!」

 

 

ある一室に、二人の男女が会話している。

一人の女性は少しばかり年をとっており、一人の男性は黒ずくめである。

 

 

「で、どうだい?

条件は悪くないだろう?」

 

「確かにそうだが…

何故、そこまでする?どうしてもそこがわからん」

女性はそう言った。

 

「理由?それは簡単だ。彼が望むからだよ!」

 

「ふん…だから、何故そいつの為にそこまでする?」

 

「ああ……それは私が彼を息子のように思っているからだよ!」

 

「…何処に愛する息子で実験するクズがいるんだい」

 

「それもまた彼を思うゆえだよ!

彼は力を欲しているから!」

 

「…そうかい。

じゃあ、条件はそれでいい。

計らってやろう」

 

「頼むよ!

後は彼が来るのを待つだけだ。

…すぐそこまで来ているけどね」

 

その言葉の通り、すぐに扉をノックする音が聞こえてくる。

 

「はいりな」

女性の声と共に扉は開き、豪太が中に入ってくる。

 

「失礼します。お忙しい中、すみませんがある提案が有ります」

豪太は少し、黒ずくめの者、オーエンを見てそう言った。

 

「…アドルフの件かい。

それならもう話は済ませた。

あんたがアネックス計画の時にドイツ班に入り、彼奴を例の物替わりに守り、あんたが爆弾を持つという事でね。」

 

「!?」

豪太は自分が考えていた事をそのまま言われて驚きを隠せなかったが、オーエンが居ることで理由は想像ついた。

 

「ただ、そのかわりに彼奴を強くしてほしいね」

女性はニヤリと笑いながら言った。

 

 

「…わかりました。

私がアドルフを鍛え、家族として接していきます!

問題はありませんよね?」

 

「ああ」

 

「では、失礼しました」

豪太は礼をし、扉を閉めて自室に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

「…あれは、まだ化けそうだね」

 

「そうだろう?まだまだ強くなるよ!彼は」

 

 

二人の科学者は笑いながらそう呟いた。

 

 

 

 

「それに部隊のベース生物、人数が決まったし、まだまだ時間は有る。

上手くいくね、これは」

オーエンはそう呟いた。

 

 

 

手には

部隊人数…豪太を含め、11人

 

 

 

と、書かれた紙が有った。

 

 

 

 

 

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