造られし害虫の王 ──The pest which is made── 作:バルシューグ
六話
大量のテラフォーマーがバグズ二号を取り囲み、一斉に艦を襲った。
窓に張り付き、強化ガラスを割ってテラフォーマーが艦内に侵入する。
その様子を呆然と眺める一郎とウッド…
その間、俺は必死に体を動かそうとしていた。何ど力を込めようとしてもまるで石になったかのように動かなかった。
『!!!』
五人はバグズ二号がテラフォーマーに襲われて煙火し、不時着するのを眺めていた。
地面に叩き落ちる音と共に衝撃が風となり、デイヴスたちの方にも吹く。
「…これより、内部へと侵入する。
全員、戦闘準備をしろ!」
デイヴスはそう隊員たちに言い、薬を用意した。
そして、バグズ二号の内部へと侵入を開始するのであった…
『ウッド!応答しろ!
蛭間!どうした!お前は生きてるだろ!本多だ!!応答しろ!』
ウッドが所持していた通信機器から本多の声が響く。
「クソッ…何か予想外のことがあったのか…!?」
本多は悪態をつき、通信機器を切る。
『ああ、そうだな…まさか一教授の君がバグズ手術の内幕にまで侵入しているとはね』
「⁉︎」
突然、ニュートンの姿が目の前に映り、通信が繋がる。
「UーNASA…!」
眉を顰め、本多は呟いた。
『ネムリユスリカにエメラルドゴキブリバチか…
なかなか面白い発想をするな…
まさかあのテラフォーマーを持ち帰って操ろうとするとは…』
ニュートンはニタリと笑みを浮かべながら言った。
『大方、アレを超法規的な抑止力…いや、戦力として置くつもりだったのだろう?
だが、アテは外れたようだな。
”進化”は常に我々の想像を超え…
そして常に───
現在進行形で起こっている』
場所は変わってバグズ二号内部…
「…!なんだアイツ…
まさか……!」
小吉はスキンヘッド型のテラフォーマーがとある場所に向かうのを見て、呟く。
「む……数が多過ぎる。
すまないが小吉、奴を追ってくれ!
戦況が良くなれば援護を送る!」
デイヴスはテラフォーマーと対峙しながら言った。
他の隊員も薬を使い、戦闘を開始し始める。
「ああ、任せろ!」
小吉はそう言い、テラフォーマーの後を追った。
数十のテラフォーマーを片付けた頃、四人の前に先程とは別のスキンヘッド型のテラフォーマーが現れた。
ティンがテラフォーマーの顔面、目掛けて蹴りを入れるが、テラフォーマーはその一撃を躱し、ティンの片足に蹴りを入れてバランスを崩させる。
明明が腕の鎌を使って切り裂こうとするが、受け止められる。
テラフォーマーが明明の腕を引きちぎろうとするが、デイヴスがそれをさせまいと殴りかかる。
しかし、テラフォーマーはステップをきかせて、その回転を利用してデイヴスを蹴り飛ばす。
再び、攻撃を再開しようとするが──
ギチッ
テラフォーマーの身体を糸が動きを食い止める。
その糸を引きちぎろうともがくが、どれほど動いても、もがけば、もがく程に糸はより、締まる。
意図を辿り、見ると糸を操っているのはその場から少し離れた所にいる奈々緒だ。
『クモイトカイコガ』──それが奈々緒の能力である。
蛾、と聞けば誰もが弱く、脆い昆虫だと答えるだろう…
確かにその肉体自体は脆く、強度など有りはしない。
…しかし、クモイトカイコガが吐く糸の強度は鋼鉄に匹敵し、僅か直径3mmの糸で66kgの物体を吊り上げる。
もし、その糸を自由自在に操り、更に強度を高めることが出来たなら───
──忽ち、強大な…殺傷能力を持つ生物へと変化するだろう…
すると、テラフォーマーは動きを止め、反対に糸を思いっきり引き寄せた。
「くっ!」
このままでは捕まる、そう考えた奈々緒は糸を切り離して横に飛び出す。
ソレを狙っていたかのように糸が緩んだ隙をつき、未だに抵抗する明明の腕を千切り、そのまま首を切り落とす。
「副艦長ッ!」
ティンが叫ぶ。
……何だこいつは…
他のゴキブリよりも素早い──いや、動作が…人間に近い…ッ!?
テラフォーマーはそのままティンに飛び蹴りを放つがギリギリの所でティンは腕で防ぐが…
それでも威力は高く、そのまま壁まで吹き飛び、ティンは激突した。口から血を吐き、倒れる。
「ごォはっ!」
吐き出した血は一郎に掛かり、その血液に含まれる水分で一郎は意識を取り戻す。
「……う…
母さん…」
一郎は過去を思い出していた。
地球にいた頃の事を…
「母さん…!受かった!!
受かったよ、オレ…!」
家の襖を開け、一郎は母親に近寄った。
「あと四年の辛抱だよ母さん…
オレ…っ
必ず国家公務員になるから…‼︎」
寝込む母に必死に語り掛ける。
目からは涙を流しながら…
「大学入ったらバイトもするから…ッ!弟たちを食わせるからッ…‼︎」
すると突然、妹がやってきて
「…兄ちゃん、高校の先生が来てくれって」
と言った。
「?」
一郎は何故、先生が自分を呼んだのか想像もつかなかったが、高校へと向かった。
「………妊娠…?」
先生から話された事は自分を虐めていた女が妊娠した、という全く自分に関係の無い話だった。
しかし、薄々嫌な予感が頭を過っていた。
「はあ…鈴木さんが妊娠…ですか。
それがオレと何の関係が?」
その話と何の関係もないのに呼び出されたのだ、理由があるんだろうと一郎は思った。何となく想像が付き始めようとも…
すると突然、鈴木が両手を顔に当てて
「ひどいよ…
文化祭の日…
蛭間くんが私を…ムリヤリ…」
体を震えさせながらそう言った。
「!?」
……いや、指一本触れてねーよ
てゆーか、お前もオレをイジメてただろうが!!
「??
…は??」
一郎は自分がしていない事を言われ、意味の分からないという表情で二人を見る。
おかしいと思うよな!?
先生!!
一郎は先生を見て、そう思うが…
「………
本当なんだな、蛭間」
先生はそう呟いた。
……え!?
一郎は何故先生がそう言ったのかがわからなかった。
だが、その背後で鈴木がざまーみろと言わんばかりに笑っているのを…
先生の切羽詰まった表情と薬指にある指輪で理解した。
……あぁ、なるほど…
先生とね、そりゃ困るわ
──でも
「退学と、大学入学取消は免れないぞ」
この世界に…
味方いねぇや…オレ…
先生の声が聞こえてくる中、一郎はそう思った。
『あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''』
一郎は立ち上がり、咆哮する。
その様子をティン、デイヴス、奈々緒、スキンヘッド型テラフォーマーが見る。
「…金が要る」
「いっ、一郎…!?
逃げ──」
ティンは立ち上がった一郎に声を掛けるがーー
「金が…
要る!!!」
テラフォーマーが一郎に殴りかかろうとすると、一郎は一直線にテラフォーマーの顔面目掛けて頭突きを繰り出した。
激しい衝撃音が辺りに響き、テラフォーマーは鼻や口から体液を吹き出しながら吹き飛ぶ。
「ハア…ッ
ざっけんな…
こんな…」
「ハハ…‼︎」
ティンは薬を持ち、微かに笑う。
まだ、俺たちは負けていない…‼︎
一郎の咆哮は三人を立ち上がらせ、本気にさせた。
デイヴスと奈々緒がティンの元へと行き、薬を持つ。
ドスッ ドスッ
一郎は自分の太ももに薬を刺し、それと同時に三人も首に薬を刺した。
「そうとも、生きて帰る」
四人の毛が逆立ち、身体がより昆虫へと近づく。
『こんなところで死ねるか!!!』
スキンヘッド型テラフォーマーは背後に通常テラフォーマーを従え、対峙する。
四人はそれぞれ構え、前に出る。
「昆虫は生物の発展と生物の進化の過程の中に突然、現れている。
火星と地球…
惑星各地に残る同一文明の証拠…
ピリオド遺伝子を始めとする、人類の進化の斬跡…
そして、彗星の衝突により失われた旧第五惑星…ラハブの存在‼︎
繋がるぞ、今…彼らの闘争によって…」
ニュートンは画面でその様子を覗きながら呟いた。
「待て、何故脱出ポットの存在に気付いたのかわからねぇが…
貴様をここで潰す!!
ゴキブリ野郎!!」
今、小吉も