造られし害虫の王 ──The pest which is made── 作:バルシューグ
七話
黒島 豪太
彼は人間とテラフォーマーのキメラ生物である。
通常、人間で異種交配を行うのは不可能である。
何故ならば、染色体数を同じとする者以外ならば交配はほぼ不可能だからだ。
たとえ、塩基配列がヒトに近いとされるチンパンジー等の類人猿などでも無理だとされている。
ではどうやって豪太という異質な存在は創られたのか…
テラフォーマーのクローンを使ったのだ。
バグズ一号から送られたテラフォーマーの遺体を使い、創られたテラフォーマーのクローンを…
しかし、問題があった。
──クローンはオリジナル程、強大な力は持っていなかった
そのため、まずはクローンの強化から始まった。
人類の英知をフル活用し、改良に改良を重ねた一体のクローンは遂に火星のテラフォーマーの強度、力を分析結果上で越える事に成功した。
次に異種交配を実現させようとした。
基本的に異種交配で品種改良された生物はより、強く逞しく成長する。
例を挙げるとするならば、ライガー、タイゴンなどである。
その特性を利用し、人間とテラフォーマーの異種交配をする事が決定した。
異種交配を成功させる為には同じ属でなければならない。
ヒトならばヒトの精子でなければならない。
ならば、その精子を改良すれば良い…
そうして人間の精子にクローンのテラフォーマーの遺伝子を取り入れ、
何度も行う事によって改良が施され、受精するまで多くの女性が研究に使われた。
そして、幾度と繰り返し、遂に人間の長所とテラフォーマーの長所ばかりが合成された子が生まれる。
そして産まれた子を幼少期に、より強力にする為に身体を改造し、出来たのが『豪太』である。
異種交配によりオリジナルよりも強い個体となり、更に改造を施されていたのだ、何故豪太が強いのかも納得出来るだろう。
更に人間社会でも生きやすくする為にその姿は人間に近くなっている…
理由は勿論、国家関連である。
『豪太』は極悪非道であり、多大の犠牲を出した研究の中で生み出された存在なのだ。
「オイ…テラフォーマー…
オレハオモイダシタゾ。
オレヲウミダスタメノ、ケンキュウニドレホドノ、ギセイヲハラッタノカヲ…
ソシテ、ソレデモオレニアイヲオシエテクレタハハガイタコトヲ…
コンナカイブツデ、チニヨゴレタケンキュウデウマレ、ハハジシンノミモ、ホロボスコトニナッタケンキュウデウミダサレタオレヲ、トキニハシカッテ、トキニハホメテクレテ、ソシテニンジョウとアイジョウヲクレタコトを……
オレハチカッタ、オレジシンをイツワラナイ、ト!コノチカラデヒトヲスクウ、と…!!」
…ああ、何故今まで思い出せなかったんだ…
俺がこの世界に産まれて過ごした数年の事を…
「……ナア…ヤッパ負けラレねえワ、オレ。
オマエをツブシテ、ニンムヲハタス…!
ナントシテデモナッ!
そして、ウンメイヲカエテミセル…」
俺は立ち上がり、一度、俺を潰したテラフォーマーの前に立つ。
不思議と俺の足は動く事が出来た。
しかし、このままでは立つ事で精一杯だ、ならば…
俺は体の殻を破り、”脱皮”した。
外皮が剥がれ落ち、肉体の傷は再生する。硬化はものの数秒で完了し、身体の強度はより強力な物となった。
「マタセタな…
サア、
テラフォーマーの動きが完全に見える…
豪太の動体視力は成長していた。
テラフォーマーが何をしようとしているのかがわかり、それに体も対応出来るのだ。
腰に目掛けて回し蹴りを放つテラフォーマーの足を上手く受け止め、そのまま力の限り締め付ける。
筋肉が圧迫され、特有の音が鳴り始める。
「じょ?」
テラフォーマーに疑問が現れる。
先程まで、此奴は唯の雑魚だった筈だ。それこそダメージ一つ自分に与える事が出来なかったのに…
テラフォーマーは考える。
何故、ボロボロになって、肉体はもう限界になっているのに此奴は立ち向かうのか…
外見が元に戻ろうと内部のダメージまでは回復出来ていないのはわかる、なのに何故──
テラフォーマーはもう片方の足で踏ん張り、豪太に拳を叩きつける。
豪太の全身に衝撃が伝わり、僅かに力が抜けてしまう…
まあいい…
所詮は唯の雑魚だ。
テラフォーマーは敵を潰す事に集中し始めた。
しまった…!?
その隙を見逃す筈もなく、下顎に蹴りを入れられてしまい、上に体が吹き飛ぶ。
空中で大勢を立て直し、そのままテラフォーマー目掛けて脳天に両手で殴りつけるーー
テラフォーマーの体は傾き、俺は地面に降り立つ。
しかし、テラフォーマーの甲皮を貫く程のダメージは与えられなかった。
何事もなかったの如く、姿勢を元に戻す。
「おイオイ…マジカヨ…」
苦笑いしながら俺はそう呟いた。
通常型テラフォーマーをいとも簡単に潰す拳は…
更なる強度を得てもーー
奴には届かない
それどころか、テラフォーマーの攻撃速度は恐ろしい程に加速していった。
───奥の手を、使うしかない
今ならまだ、脱皮した後で先程のダメージはほぼ消え、肉体にダメージが少ない。
細胞の活性化ーーー
豪太の奥の手はそれだった。
ソレを使えば大幅に強く逞しくなるが…肉体に対する負担も大幅に大きくなる。
時間は二十分間、もし奴を倒す程に強くならなければならないのならば…身体の負担は限界を越えるだろう。
だが、迷わずその道を選んだ。
「ガアアアアアアアアッッ!!!」
俺の身体中を激痛が走った。筋肉は盛り上がり、神経は悲鳴を上げる。
骨と内臓は圧迫され、血管は浮き出る。目は血走り、テラフォーマーだけを捉える。
「殺す…コロス、コロスッ!」
今の豪太の頭に有るのは殺意のみだ。ただ、テラフォーマーを殺すという殺意のみで動いていた。
──圧迫的なスピード──
──全てを粉砕する力──
──何物も通さない強度──
それ等を手にし、豪太はテラフォーマーに挑んだ。
「ウオオオオ!!」
雄叫びを上げ、一気にテラフォーマーとの距離を詰める。
その時間、一秒にも満たなかった。
テラフォーマーの視界にはその移動が見えていた、が、
気がつくと空中に舞っていた──
そのまま地面に叩きつけられ、無理矢理立ち上がらせられる。
テラフォーマーには疑問しか生まれなかった。
奴の身に何があった!?
いつ、自分は掴み投げられた!?
あの身体の何処にあんな力がある!?
テラフォーマーにはわからなかった。先程まではそれで良かった。
しかし、今は違う。
ムシケラの様な敵が自らを脅かす程の生物へと成長した、という事実が目の前で起きているからだ。
思えば可笑しかった。
奴は人間の味方なのに同族と同じ匂いを放っていた。
そしてーーー
我々と同じ様に進化していた
先程までの威力とは一転して、一発で身体にダメージを与える程に強くなり、自分が放つ攻撃をいとも簡単に躱す…
どれだけ殴ろうとしても、蹴ろうとしても、躱され、反対に自分がダメージを受ける。
次第にテラフォーマーの中で新たな物が生まれ始める。
それこそ、恐怖──
感情を持たないテラフォーマーが恐怖する程に豪太は凶悪に、強くなっていたのだ。
豪太から繰り出される拳はテラフォーマーの身体を確実に破壊していく。受ける度に体は動き辛くないき、その事実がテラフォーマーを更に疑問を与えた。
「ジィィィィ!!」
遂にテラフォーマーは逃げ出した。
その顔は無表情なのに、恐怖が浮き出て見える様だった。
散々に破壊され、機能しなくなり始めている足を使って、フラフラになりながらも走る。
同族がいる場所に向かって…
「アア、オマエノマケダ、テラフォーマー…
俺にセヲムケタオマエは、モウオレニタチムカウコトスラデキナい。
今、オマエガテニイレタカンジョウヲカミシメテ、死ね」
豪太は暴れるテラフォーマーの頭と腰を持ち、そのまま半分に引き千切った。
ピクピクと動くその身体を投げ捨てる。
勝った───
その瞬間に豪太の身体は動かなくなり、倒れる。
意識だけはハッキリとしていて、己の体の感触がないこの不思議な感じを味わいながら思った。
助けにいかなければ…
今、こうしている内にも仲間たちは戦っている。
休んでいる暇などないのだ!!
その気持ちとは裏腹に体は限界を越え、生命を維持するのにも精一杯だった。
肉体の限界突破を無理矢理起こしたのだ、それこそそう簡単に回復する訳がない。
豪太は理解しながらも体を動かそうとしたが、反対に回復を早めて動く事にした。
そのまま前を見ながら、豪太は静かに体が動ける様になるのを待つのだった。
設定にちょいと無理があると思いますが、それはご勘弁ください。