【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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 このすば原作がついに本日完結しますね。少し寂しいですが、最終巻を読むのがとても楽しみです。原作者の暁なつめ先生。お疲れ様です、素晴らしい作品を作り出してくれてありがとうございます。

 さて、第2章の始まりです。そして評価バーに色がつきました。とても嬉しいです。高評価をくれた人たちのためにも頑張っていきます!!



第2章 宿命の始まり
017 冬将軍


「「金が欲しい!! 」」

 

「何よカズマに神殺し。ハモらせてそんなこと言って。お金は誰だって欲しいわよもちろんこの私もよ」

 

 冒険者ギルドに併設された酒場にて。俺とカズマは血を吐くような気持ちで切実に言い放ったというのにこのアクア様ときたらこの調子である。

 

「ねぇ、というか甲斐性が無いと思うんですけどあなたたち。特にカズマさん。私をこの世界に連れてきておいて毎日馬小屋なんかに泊めちゃって恥ずかしいとは思わないの? 」

 

「ミツルギのところに行くかてめぇ!? 」

 

「い、いや。あの人はナルシストこじらせてるからちょっと勘弁したいわね……」

 

 カズマの噛みつくような一言に委縮するアクア。そんな彼女にカズマはさらに畳みかける。

 

「というか俺たちがこんなに金を切実に欲しいと思ってるのはなぁ!! 借金のせいだ。お前が塩水湖の生態系を破壊したしわ寄せだよ!!!! そこんとこ分かってんのかこのクソビッチが!!!! 」

 

「な、クソビッチですって!? 謝りなさいこの私に!! このクソニート!! 大体私が水を大量召喚しないとデュラハンには決定打を与えられなかったじゃない!! 」

 

「もともと作戦では洪水クラスの()()の水を浴びせろって指示してただけで実際に洪水を引き起こせなんて言ってねぇ!! 」

 

 そう。あの時の作戦では確かにカズマはアクアに洪水クラスの威力の水を起こすように指示していたのであって、実際に洪水を起こして城ごと崩壊させろなどという指示は出していなかったのだ。

 

 俺もアクアに何か言ってやりたかったが、あの時の尽力があって今俺は生きてるので、あまりあの件に関しては強くは当たれない。というか最終的にめぐみんが自責の念を感じ始めることになる話に帰結してしまうためやるわけにはいかない。

 

「ほかの冒険者なんて宿を借りて生活してんのに俺たちなんか馬小屋で朝起きればまつげが凍ってるような生活だぞ!! これでもまだ冬に入ったばっかり。これからどんどん寒くなって真冬になったら俺たちに待ってるのは凍死だぞ、わかってんのか!? 」

 

 アクアは耳をふさいでとうとうそっぽを向いた。カズマの怒りの言葉を耳に入れたくないのだろう。全くこの女神さまは子どもみたいだ。かわいい。

 

「カズマ、アクア、争うことはやめましょうよ。争いは何も生みません。もちろんお金も。不毛ですよ」

 

「なーう」

 

 ペットのちょむすけという名前の羽の生えた子猫を胸元に入れて暖を取るめぐみんがヒートアップする2人をなだめる。

 

 紅魔族のネーミングセンスと、ちょむすけの本当に猫なのか怪しい姿はもはや突っ込むまい。

 

「さて言い争いはやめてそろそろクエストを探そうじゃないか」

 

「そうですね。それがいいと思います!! 」

 

 そう進言するダクネスとそれに同意するゆんゆん。

 

「だね。仕事探すか」

 

 俺の言葉を皮切りに酒場の席からみんな立ち上がるとギルドの掲示板へと向かう。

 

「まともに受けられるクエストが日に日に減ってるな……ああ、クエスト……」

 

 量が減少し、内容も凄惨なものばかりになってきたクエストの依頼書を見て嘆くカズマ。

 

「実入りのいいクエストは何かないもんかな。1か月前の一撃グマの群れ討伐みたいな……お、あるじゃないか、畑に出没した一撃グマの討伐。200万エリスだってさ」

 

 実に楽なクエストだ。

 

「「「一撃グマはやめよう(やめましょう)!! 」」」

 

 カズマにアクアとめぐみんが一斉に拒否する。

 

「なんでだ? 一匹だけなら楽勝じゃないか。この前の30匹なんかと比べたら余裕だろ」

 

「そうですよ。中級魔法の一撃で倒せちゃいますし。受けてもいいと思うんですけど」

 

「そうだぞ、あの素晴らしい一撃。またさらされたい」

 

「ダクネスはともかく、リョウタとゆんゆんはまともに戦えるからそう思うだけだよ!! 俺は作戦を作ったって台無しにされて詰みかけたモンスターとなんてもう戦いたくない!! 2人だけで行ってこい。安全に狩れるだろ? てか気づいてないかもだけどリョウタ、お前はメンタル的に戦いに向きすぎてるんだよ」

 

 ゆんゆんにも戦いの才能があると言われたしベルディアにも戦いの中で成長していると言われてたから本当に俺は戦闘に向いてるのだろう。それに最弱職の『冒険者』で一撃グマを倒しまくれる者はそうそういないというのも受付の人から聞いている。どうやら俺は冒険者が天職なようだ。俺自身は戦闘中ある程度は緊張もしているし相手によっては恐怖心を感じることもあるからメンタル的に最適な職業かどうかはわからないけど。

 

 まぁとにかく。

 

「……じゅあ、今日のクエストまともなのが他に無かったら俺とゆんゆんで行くか」

 

「そうですね。その時は2人で頑張りましょう」

 

 ゆんゆんが俺に笑いかける。正直金なんて無くてもこの笑顔があれば生きていける。

 

「リョウタさん? なんで私の顔をずっと見つめてるんですか? は、恥ずかしいですよぉ……」

 

「ごめん。あとやっぱりかわいい」

 

「っ!! も、もうリョウタさんは」

 

 ゆんゆんが手で顔を覆う。定期的にかわいいと言い続けてきたがやっぱりかわいいと言われるのには慣れないようだ。そこもかわいい。

 

「2人だけの世界に入らないでくださいね」

 

 めぐみんがあきれ顔で俺たちに声をかける。

 

「全くだ、いちゃつくなよ」

 

 カズマは心底不快そうに言い放った。

 

 そんな言い方するなよカズマ。恋をすれば分かる。好きな相手が天元突破してかわいく見えるこの感覚が。

 

「い、いちゃ……。そういう関係じゃないですから!? 」

 

 ゆんゆんが顔を赤らめて戸惑いながら否定する。

 

 本当にこの照れが俺への好意由来だったらいいのになー。きっとゆんゆんは俺のことを友達としか思っていない。少し悲しい。

 

「ほほえましいなゆんゆんとリョウタは」

 

「も、もうダクネスさん……」

 

 あれでも傍から見ればそう言う風な2人組に見えるってことか。ゆんゆんと恋人関係になりてぇーなぁー……。

 

「なんだこれ。接近中の起動要塞デストロイヤーの進路予測のための偵察募集? 」

 

 俺がゆんゆんとの理想の未来を想像する中、カズマがそんなことを言ってある依頼書を指さす。

 

「ああ、デストロイヤーですか。クモのごとく動きそしてすべてを蹂躙し無に帰す超巨大な動く要塞です。子供たちに妙に人気があるんですよ」

 

「なんだかすごそうなやつだな」

 

 俺はそう言いながら、ビームを撃って街を焼く八本足の機械のクモを想像した。

 

「デストロイヤーは、報酬はいいけど遠出する割に合わないから無しだな。……お、これなんか良さそうだな雪精の討伐依頼。一匹倒すごとに10万エリス。しかも特徴読んだ感じ弱そうだな」

 

 カズマがいい感じのクエストを見つける。 

 

「雪精はとても弱いモンスターですよ。ただ……」

 

「1匹倒すごとに春が半日早くなるって言われてるモンスターね。人畜無害なモンスターだから安全よ」

 

「雪精か。いいではないか」

 

 ダクネスがほほ笑みながらそう言った。

 

「そうですね、たくさん倒さなければ安全ですし。……見た目がかわいいので討伐するのはちょっとかわいそうですけど」

 

 ゆんゆん曰くどうやら雪精はかわいらしい見た目のようだ。

 

「なぁ今日はこのクエスト受けないか? 」

 

 カズマの提案に。

 

「いいわよ」「そうしましょうか」「ぜひ!! 」「ああ」「賛成です」

 

 各々返事をすると、俺たちは受付に雪精討伐のクエストを受注することを伝えた。

 

 

 

 

 

 街から離れた場所の平原地帯には、まだ街には雪が降り積もっていないというのにそこだけ雪が積もっていた。

 

 真っ白な雪景色。

 

「初めてこんなキレイな雪景色を見た」

 

 俺は若干感動していた。そして。

 

「雪精本当にかわいかったんだな」

 

「リョウタさんもそう思いますか? かわいいですよね」

 

「私も同じくです」

 

 ちょむすけを置いてきためぐみんがそう言った。どうやらゆんゆんについては知っていたが、めぐみんも小さくてかわいい生き物が好きなようだ。

 

 雪精の見た目は手のひらサイズの白いふわふわした毛玉と言ったもので本当に無害そうだった。

 

「こいつを討伐するだけで10万ももらえるのか。すごいもんだな」

 

 どうしてほかの冒険者は受けないのだろうか。

 

 だが気になることがもう一つ。

 

「なぁアクア様? みんな揃って普段の装いとは違う防寒対策済みの服装なのはわかるんだがその装備は何なんだい? 」

 

「全くだ。冬場にセミを取りに行くみたいなバカな子どもみたいだぞ」

 

 アクアは虫取り網と小瓶を抱えていた。

 

 俺たちの辛辣な視線や言葉を逆にバカにしたような顔で見返してきた。

 

 うぜぇ。きっと隣のカズマもそう思ったことだろう。

 

「この虫取り網で雪精を捕まえてこの小瓶に保存するの。そしたら飲み物と一緒に箱にでも入れておけばいつだってつめたーいネロイドが飲めるってわけよ」

 

 なるほど、そんな発想もありか。案外頭が回るんだなアクアは。

 

 そんなことを俺が考えた後、カズマの一声で俺たちは雪精討伐を開始した。

 

 

 

「すげぇ、まさか雪精が神殺しの剣に反応するなんて!! 」

 

 俺は歓喜しながら強化された身体能力を思う存分発揮して雪精を切り殺していく。

 

「おらっ!! おらっ!! おーりゃぁぁ!!!! 」

 

 掛け声に合わせて三匹を切り裂いて消滅させる。

 

「これも撃てるよな。ディナイアルセイバー!! 」

 

 そして俺はテンション高く新技の名を叫ぶ。極黒で白電を纏ったビーム光線・ディナイアルブラスターを神殺しの剣の刀身から照射。極太の光線がまっすぐ伸びた状態で振り回すという技だ。すると、一気に雪精を20匹ほど溶解させた。

 

「一気に20も討伐だ!! やっほー!! 神殺しの剣最高!!!! 」

 

「リョウタの神殺しの剣カッコいいですし素晴らしいですね。負けてられません!! 」

 

「ねぇめぐみん、雪精ってどのくらい倒しちゃダメなのかな? 」

 

「さぁ? 私も知りませんね。……今のところ問題なさそうですしもう少し討伐してもいいのではないでしょうか? では……エクスプロージョン!!!! 」

 

 めぐみんが爆裂魔法を発動して雪精を消し飛ばす。しかし柔らかくふわふわした雪精たちは衝撃波でつぶされることなく舞飛んだため、爆裂魔法の熱量にあてられた個体だけ消し飛んだ。

 

「くっ、討伐数18ですか……残念です。私の敗北です。レベルは1つ上がりましたが……」

 

 雪原に倒れ伏しためぐみんが悔しげにつぶやいた。

 

「お前らはいいな!! 俺なんてまだ7匹だぞ!! 」

 

 カズマが弓矢をつがえながらそう漏らす。すると。

 

「プークスクス。カズマさんたらどんくさいんだから。私なんてもう14匹も捕まえたわよ。討伐じゃなくて捕獲よ!! 」

 

「……あとでお前の分も討伐して換金してやる」

 

 忌々しげにつぶやくカズマ。

 

 そんな中。

 

「来たか!! 」

 

 ダクネスが満面の笑みを浮かべて剣を構える。

 

 そう言えばこの人全く雪精に手を出してなかったけど何をしてたんだろうと思いながらダクネスの見ている方を見ると。

 

 突如空間を歪めてそいつは湧き出てきた。

 

「敵感知に反応が無かったぞ……いきなりか」

 

 俺は現れたそいつに素直に驚かされる。

 

「みんな警戒しろよ今は敵感知にビンビン来てるぞ」

 

 注意喚起するカズマ。

 

「あわわわわわ」

 

 現れたそれを見てゆんゆんが焦りに焦る。カタカタと震えていた。

 

「カズマ、何で冒険者が冬になってからも、このおいしそうなクエストがあるのに受けないのか教えてあげる。それはね、雪精を倒しすぎるとこの雪精たちの主、冬将軍が到来するからよ!! 」

 

「ふざけんなぁぁ!! 」

 

 カズマが叫ぶ。カズマの叫びはもっともだった。冬将軍と言われたそれは陣羽織を纏った純白の巨大な鎧兜だったからだ。

 

 冬将軍は青い目を輝かせながら白い冷気を放つ刀を抜き放ち俺たちの方に向ける。

 

 そして、一番手近な位置にいたダクネスに切りかかった。

 

「やっ!! 」

 

 ダクネスが刀を剣で受け止める。が、一瞬でダクネスの剣が木っ端みじんになりさらに衝撃で彼女は後方に吹っ飛ばされた。

 

「ふ、冬将軍と戦うことになるなんて……!! 」

 

「私は何もできません。ごめんなさい」

 

「気をつけろみんな!! こいつデュラハン並みだ!! 」

 

「そんなことわかってるわよ。だからねカズマ。こういう時は!! 」

 

 アクアは戦場のど真ん中でのんきにも雪精を小瓶から解放した。そして、地面にひれ伏し冬将軍に向けて……土下座した。

 

「は? 」

 

 ディナイアルブラスターを放とうかどうか迷っていた俺はそのあまりにもあんまりな光景に思わず神殺しの剣を地面に落とした。

 

 神殺しの剣がずぼっと音を立てて雪の中に埋まる。

 

「何やってんのアクア様? 」

 

「お、おい駄女神、なにして」

 

「土下座よ土下座!! 」

 

「え、土下座!? 」

 

 ゆんゆんが素っ頓狂な声を上げる。

 

「ほらみんなも早く謝って冬将軍様に謝って!! 土下座すれば寛大な心を持ってるから許してくれるわ。みんなも早く……!!」

 

 アクアが女神としてのプライドを欠片も感じさせないそれはもう美しい土下座をしながら俺たちに土下座を促す。

 

 冬将軍はそんなアクアを見つめて固まっている。その後俺たちを吟味するような視線を向けてきた。

 

「……敵感知の感が鈍ったってことは実際効果てきめんってことか。よしみんな土下座だ。土下座しよう。リョウタ、ゆんゆん、ダクネス!! 土下座だ!! めぐみんは……そのままでいいや」

 

 ベルディアクラスの強敵。戦いたくねぇ。ここはアクアに倣ってカズマの指示通り土下座するか。それで丸く収まるならば。

 

「ゆんゆん、土下座しよう」

 

「は、はい」

 

 俺とゆんゆんも土下座をした。

 

 雪が顔に当たって冷たい。

 

「おいダクネス、お前も土下座するんだよ!! 」

 

「わ、私はしないぞクルセイダーとしてのプライドがあるかりゃ!! 怖いからという理由で敵に頭を下げるなど!! 」

 

「うるせぇぇいいから頭下げろ!! 」

 

「ゆ、雪が冷たい!! 」

 

 横目でダクネスや冬将軍を確認する。ダクネスはカズマに頭を抑えつけられ土下座させられていた。そして冬将軍はというと、ダクネスの頭を抑えつけながら土下座するカズマを注視している。

 

「カズマさん武器を手放して早く!! 」

 

 カズマに向けたアクアの鋭い叫びが飛ぶ。

 

「へ? 」

 

 カズマの間の抜けた声がしたと思った瞬間。

 

 ぼとっという音がして白い雪が真っ赤に染まった。

 

 

 

 カズマの頭が地面に落ちた。

 

 

 

 それは紛れもない現実で、彼の首からは赤い血が噴き出している。

 

 仲間が、友達が殺された。目の前で。

 

「ああぁぁカズマさん!!!! 武器を捨てないからぁぁ!!!! 」

 

 アクアが土下座した姿勢で絶叫した。

 

「カズマに何があったのですか!!!? 」

 

 体が動かせないせいで状況を把握できていないめぐみんが混乱した声を上げる。

 

「そんな、カズマさんが!!!? 」

 

 ゆんゆんが衝撃で土下座の姿勢のままカタカタ震える。

 

「わ、私のせいだ、私のせいでカズマがぁぁ……」

 

 ダクネスはカズマの身体がそばで糸の切れた人形のように崩れるのを見て座り込んだ姿勢で硬直した。

 

 そして、惨劇を引き起こした犯人の冬将軍はというと俺たちに背を向けてこの場から去ろうとしていた。やつの周囲の空間が歪んでいく。消えるつもりなのだろう。

 

「そんなこと、させるかぁぁぁぁ!!!! 」

 

 絶対に許さねぇ!!

 

 俺は頭に血が上るのを感じながら、手のひらを地面にたたきつけると錬金術を発動。冬将軍へと力をまっすぐ伸ばすイメージで雪を氷に錬成。勢いよく盛り上がっていく氷の濁流を冬将軍へと叩きつけた。

 

 冬将軍はバランスを崩し片膝をつく。

 

 その隙に俺は神殺しの剣を勢いよく拾い上げると、ディナイアルブラスターを躊躇なく発射した。

 

 ベルディアに放った時以上の直径。もはやその太さは6メートルはあろうかというレベルで、そんなエネルギーの塊が、超威力を以て冬将軍を飲み込みはるか彼方へと吹き飛ばした。

 

「ちょっと神殺し!? 落ち着いて!!!! 」

 

 瞬時に千里眼と敵感知、神殺しの剣の力の発動の是非による冬将軍を撃退したかどうかの確認作業を行う。

 

 結果、まだ反応はあった。

 

「必ず滅ぼす!!!! 」

 

 俺はかなり離れた位置にいる冬将軍に向けて駆け出した。その速度は神殺しの剣の身体能力強化機能のおかげでとてつもなく速い。数秒のうちに300メートルは離れていたであろう冬将軍のところにたどり着いた。

 

「手ごたえはあるみたいだな……」

 

 冬将軍の各所にひびが入り、焦げ付いていた。鎧の一部パーツも欠損している。

 

 冬将軍の青い目の部分の光が鋭くなった。その瞬間天候がいきなり荒れ狂い吹雪が発生した。本気になったのだろう。

 

 それがどうしたと感じながら俺は神殺しの剣を構えて前進する。それに対応するかのように冬将軍も駆け出してきた。そして剣と刀がぶつかった。

 

 キンッという甲高い音が響き渡る。

 

「押し切る!! 」

 

 鍔迫り合いの中、力比べが始まった。俺が押せば冬将軍が押し返してくる。それがしばらくの間続く。そしてらちが明かないと思った俺と、同じくそのように感じた様子の冬将軍が互いに距離をとる。

 

 冬将軍は刀を持っていない左手を突き出し、手のひらから氷塊を生成。俺に射出してきた。

 

「撃ち落す!! 」

 

 俺はとっさに回復用ポーションをもぎ取りその効果を錬金術で爆発に上書きすると氷塊に放り投げる。

 

 氷塊と爆発物と化したポーションがぶつかり音を立てて粉々になる。

 

 その瞬間俺は冬将軍に驀進した。まだ氷塊の破片が地面に落ち切っていない状態で突き進んだため氷の粒が俺に当たる。そんな中でも神殺しの剣を地面から水平に構え冬将軍に突き立てようとする。

 

 冬将軍はレンジに入った神殺しの剣を刀でいなす。俺は冬将軍の後方へ躍り出る。勢いよくブレーキをかけると。その場で回転。冬将軍の背中を切り裂こうとするがやつもそれを迎撃するために後ろへ瞬間的に向くと刀を神殺しの剣に打ち付けた。

 

「クソ!! だったら!! 」

 

 いったんバックステップで距離をとる。冬将軍からの追撃を逃れるためポーションを爆発物に再び変えて投げつけながら。

 

 爆発ポーションをもろに喰らう冬将軍だが大したダメージは無い。そんな奴に向けて。

 

「ディナイアルセイバー!!!! 」

 

 俺はディナイアルブラスターを放射した状態で全速力で神殺しの剣を振り下ろした。

 

 真上から迫る超極太のエネルギーの塊であるディナイアルセイバーを両腕で握った刀で受け止める冬将軍。

 

 いまだ!!

 

 俺は神殺しの剣を手放し冬将軍に一気に距離を詰める。ディナイアルセイバーが消失し冬将軍が下段に刀を構えていく。だがそれよりも早く俺の右手のひらが冬将軍に触れた。

 

 その瞬間。

 

「ちぎれ飛べ!! 」

 

 俺は触れた右手から錬金術を発動。冬将軍の上半身と下半身が引きちぎれるように錬成を行う。

 

 これが俺の奥の手と言える技。対象への直接の錬成。

 

 しかし。

 

 冬将軍の上半身と下半身は分かれたが、その状態で冬将軍は俺に膝蹴りを。そして真上からの肘鉄を見舞ってきた。背中と腹を強い衝撃に挟まれ俺は意識が一瞬遠のいていくのを感じた。

 

 さらに。

 

「がっ!!!? 」

 

 冬将軍が俺に前蹴りを放つ。

 

 俺は後方に10メートルほど弾き飛ばされた。

 

 雪に腰からうもる。背中と腹に受けたダメージがあまりにも大きく、体が痛む。しかもおそらく内臓や骨にダメージを受けたのだろう。吐血したうえ背骨が折れてしまったようで腰から下が動かないし、感覚が無い。

 

 おそらく神殺しの剣を握ったままならば単なる大きなダメージで済んでいたのだろう。しかし突撃時に神殺しの剣を手放したことで肉体強度も治癒能力も完全に人並みまで下がってしまっている今、受けた傷は致命的ともいえた。

 

「だが、やつに決定打は与え……嘘だろ」

 

 俺は目を疑った。冬将軍の上半身と下半身の両方の断面から延びていく氷柱がつながりあい、離れた体を引き合わせどんどん一体となっていくのだ。

 

「なんつー再生能力だよ……畜生が……。……ゆんゆん」

 

 愛する人の名前を最後に唱えた瞬間。俺の意識は掻き消えた。




 精霊は、信仰の対象になったりする超自然的な存在のため、本作において冬将軍や雪精も神に近いものとして神殺しの剣から認定されます。そのため神殺しの剣が起動しました。

 ちなみに、スーパー戦隊で例えると、カズマたちは言うまでもありませんが、ゆんゆんがピンクでリョウタが追加戦士ブラックのイメージに私の中ではなっています。なのでリョウタの服を黒中心のものに設定しているのはそんな背景があったりします。まぁ白いアーマーを上から身に着けているのでホワイトと言えなくもないですがね……。

 あとGW中はコロナの件もあり暇な方が多いと思うので予定を変更して毎日更新します。私の作品が少しでも暇つぶしになれば幸いです。

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