「カガミリョウタさん。起きてください」
ひどく美しい声がする。俺はその声に引き寄せられるかのように意識が覚醒する。
「目覚めましたか? ようこそカガミリョウタさん死後の世界へ。と言っても今回は特例ですが」
「……ここは? 」
俺は見覚えのある場所で見覚えのある椅子に座っていた。そうここは、俺が日本で死んだときにいた場所と同じ……!!
「俺は死んだのか!? 」
俺は立ち上がる。
嘘だろ。死ぬわけにはいかないのに。
「いいえまだ死んでいませんよ。大きな傷こそ負っていますが……」
目の前には椅子に掛けた白髪の女神のような女性がいた。いや、その美しさはアクアにも匹敵している。女神そのものだ。
「じゃあいったいどうしてこんなところに? いやまずあなたは何者ですか? 」
俺は椅子に掛けなおしながら目の前の女神のような女性に質問する。
「失礼しました……。私は女神エリス。モンスターとの戦いで命を落としたこの世界の人々の魂を導くものです」
目の前の女性はそう言って優しい微笑を浮かべた。
女神エリス。俺のいるベルゼルグ王国ではエリス教は国教であり、周辺諸国ではお金の単位になっている。そういう偉大な存在だ。
「まさか死んでもないのに女神エリスにお会いすることになるとは……これは夢ですか?」
「いいえ。近くで門が開いたので特別にあなたにお会いしているんですよ」
苦笑するエリス様。
「門が開いた? 」
どういうことだろう?
「先ほどサトウカズマさんがアクア先輩の力と脅迫で生き返りました。その時ここと現世の間に強いつながりができたのであなたの魂を呼び寄せました。まぁ門が開かなくても呼び寄せること自体は可能なのですがタイミングが良かったので―――――」
「カズマが生き返った!? 」
俺はエリス様の言葉を遮る形で驚愕の声を上げた。
「はい。アクア先輩のリザレクションによって」
エリス様は優しく笑う。そしてカズマが現在、アクアに膝枕されダクネスとめぐみんに泣きつかれている様子が彼女のかざした手の平に表示された空間ディスプレイに映し出されていた。
「よかった!! 本当に良かった……。あっ、冬将軍はどうなりましたか!? まだ奴はあそこに……」
「いませんよ。冬将軍はあなたを撃退したと判断し消滅しました」
「それなら安心です」
せっかくカズマが生き返ったのに奴に再び襲撃されて全滅など笑えない。
「……それで、俺はあっちではいわば仮死状態ということですか」
「そう言うことになります」
エリス様は申し訳なさそうな顔をする。夢でもなければ、嘘でもなさそうだ。いったいどうしたのだろう。というか、なんで。
「なんで死んでもないのにここに呼び出されたんですかエリス様? 」
「それはあなたに直接お伝えしなければならないことがあるからです」
「俺に伝えなければならないこと? 」
なんだろう? 何か現世で悪いことをしたからとかかな? 今のところそんなことをした覚えはないのだが……。
「そんなに身構えないで下さい」
エリス様が優しく微笑む。しかしその後悲しそうな顔をした。
「しかし今からお話しすることの内容からすると少し覚悟をしていただいていたほうがいいかもしれませんね……」
「と言いますと? 」
不幸ごとか何かか?そう言えばさっきのビジョンの中にゆんゆんの姿が見えなかったがまさかゆんゆんに何かが?
俺は努めて冷静さを失わにようにしてエリス様の話を傾聴する。
「実はあなたには過酷な運命が待っているんです」
「過酷な運命? 」
どうやらゆんゆんに何かあったわけでは無さそうだ。
俺は内心で胸をなでおろした。
「あなたはこれから近い将来、魔王に匹敵する人類の脅威になる存在と戦う運命が待っています」
「は? 魔王に匹敵する人類の脅威? 」
いったいどういうことだ?
俺は思わず身を乗り出した。
「あなたが戦うことになる相手は破壊神デストラクター。神格を持った悪魔ともいうべき存在です」
「破壊神? 」
俺の中で破壊神と言えば漆黒のボディに胸にライオンを備えたスーパーロボットのイメージが真っ先に出てくる。
「彼は爆裂魔法を操りあらゆるものを破壊しようとする危険な存在です」
「まるでめぐみんだな……」
「そうですね。でもめぐみんさん以上に強大です」
「そんなのと俺が戦う運命にあると? 」
「残念ながらそうなんです」
どうしてそんなことがわかるんだ? 神だからか?
疑問を抱いているとエリス様が答えてくれた。
「あなたをこの世界に送った天使ミルデは未来視の力を持っていました。そんな彼女が詳細な未来像こそわかりませんがあなたが破壊神と戦うという未来を予見したのです」
「その破壊神はいったいどこに? 」
「それはわかりません。そもそも現段階で復活しているのかどうかすら……。ごめんなさい」
エリス様が頭を下げる。アクアみたいななんちゃって女神さまと違ってこっちは本当の女神様なので逆に申し訳なく感じる。
「いいですよそんな気にしなくても。……そうですか俺にそんな宿命が」
まるで何かの物語の主人公だなと自嘲気味な笑いが出た。最近までニートやってて、恋をした結果やっと真人間になろうとしているような奴が主人公とか。……あれ異世界転生物でよくあるパターンだからそんなにおかしくはないのか?
心情の変化に合わせて俺は笑った後、難しい表情になった。
「リョウタさん? 」
「ああすいません。自分の身に起こるであろうことがなんかおかしくてつい」
「そうでしたか。……。カガミリョウタさん」
「はい」
「あまりにも無茶なお願いなのはわかっていますが。それでもお願いです。人類の脅威となる破壊神デストラクターと戦ってはもらえませんか? 」
「……わかりました」
「ええ!? そんな、本当にいいんですか? 」
「構いません。今の俺には護りたい人たちが5人もいます。この世界のことも好きですし、5人のためになるのなら」
柄にもないことを言っているのはわかっているが、本物の女神の前だからか、偽らざる本心が言葉になった。
「ありがとうございます」
エリス様は満面の笑みを見せた後、何か呪文を唱え始めた。
そして。
「セイクリッドハイネスブレッシング……。どうかあなたに祝福があらんことを」
俺の身体に淡い光がまとわりつき消滅した。
「今のは、ブレッシングの最上級のやつですか? 」
「そうです。あなたに幸運がありますようにとかけました」
まさしく女神なほほえみでそう告げるエリス様。
「ありがとうございますエリス様。でも俺は神殺しの剣の呪いの効果で神様のスキルは効かなくなってるんですよ。すいません」
「いえ、神殺しの剣の呪いは肉体にかかっている物なので魂には作用しません。ですのでしっかりと効果を実感できると思いますよ」
「それはありがたい。本当にありがとうございます」
「それはこちらが言いたい言葉ですよカガミリョウタさん。戦うという選択をしてくれたこと。意志を見せてくれたこと。本当に心から感謝します。どうか世界を護ってください。討伐の暁にはなんでも願いを一つ叶えますので……」
エリス様はそう言うと俺の足元に魔方陣を展開した。
「では、あなたを待っている人がいるのでそろそろ元の世界にあなたの魂を送り返します」
「待ってる人? 」
「すごく泣いてますよ。まずは慰めてあげてくださいね」
いたずらっぽく笑うエリス様。
「それではまた機会があればお会いしましょう。カガミリョウタさん。……がんばってください」
その言葉を最後に、俺はかつて転生したときのようにどこかに引き寄せられる感覚とともに視界が光に包まれて……。
「リョウタさん!! リョウタさん!! 」
「……ゆんゆん? 」
俺は目覚めると吹雪の中あおむけになっていた。真上にゆんゆんの顔が見える。
「よかった、意識が戻ったんですね!! 本当に良かったよぉ……」
ゆんゆんが涙声でそう言う。
ああ、こんな顔をさせてしまうだなんて失敗だな。
俺はゆんゆんをさっそく慰めようとすると体に痛みが走った。それは感覚の消えてしまっていた腰から下も同様だった。見ると神殺しの剣が右手に握らされている。
「これはゆんゆんが? 」
左手で右手を指さす。
「はい。神殺しの剣は握っていればその効果で治癒力が上がると聞いていたので。冬将軍はいなくなっても雪精はまだいるので、リョウタさん大けがを負っていますし握らせました。それとカズマさんはアクアさんのリザレクションで復活しました。安心してください」
「そうか。いろいろありがとう」
ゆんゆんにお礼を言う。彼女は一瞬はにかんだがその後厳しい表情をした。
こんな顔見るのはミツルギにゆんゆんがパーティ移籍を進められた際に「こんなことしている場合じゃない」と言った以来かもしれない。
「リョウタさん!! カズマさんが殺されて激昂する気持ちはわかりますが一人で突っ走らないで!! 私だっているんですよ、私はあなたのコンビなんですよ!! それなのに、それなのに……一人でこんな。戦うときは一緒です!! それにあなたまで死んじゃったら私、わたしは……」
ゆんゆんの厳しい顔は途中で崩れ涙を流す悲痛な表情へと変わった。
「ごめん。ごめんよゆんゆん。約束する。次からは君と一緒に戦うよ」
彼女の頭を撫でる。吹雪で雪が少しまとわりついた彼女の頭だったがそれでも暖かかった。そしてふとその暖かさが自分の頭の裏からも感じられることに気づく。
「あれ、もしかして俺ゆんゆんに膝枕されてる? 」
「え? そうですけど、どうしました」
「いや、ただ嬉しいなと思って」
「リョ、リョウタさんはもう!! どうしてそう私なんかがやることなすこと全部で喜ぶんですか? 」
もじもじと照れながらそう言うゆんゆん。
それはね、君のことが好きだからだよ。恥ずかしいのと今の関係が壊れるのが恐ろしすぎてとてもじゃないけど言い出せないけどね。
俺は早速エリス様の祝福が効果を表したことに喜びながら、ゆんゆんの頭を撫で続けた。
その後、ゆんゆんが目印として吹雪の中で魔法を使用しカズマたちを呼び寄せた。マーカーとしてわかりやすい魔法の出せる彼女と、まだまともに動けないカズマたち四人に分かれて俺を吹雪の中捜索していたらしい。
迷惑かけたなぁ。
そして俺たちはギルドに討伐報告に赴いた。小一時間で稼いだ金は合計320万エリス。そこそこの額だが。
「殺されたり死にかけたりしてこの額は割に合わないな」
「まぁカズマの言うことには一理ある」
俺はカズマに同意しながら酒場の席でカエル肉をかじった。
現在俺たちは夕食中だ。
「ベルディア並みってカズマは言ってたけど実際に戦ったのと神殺しの剣の反応から考えてあれはベルディア以上だったぞ」
「マジか」
「うん」
「ますます割に合わなく思えてきた」
カズマが肩を落として呻く。
「冬将軍は基本的に雪精に何もしなければ現れませんからね。それでも懸賞金が確か2億ほどかけられていますが」
「……あんな上半身と下半身を真っ二つにしても再生するような化け物をどう倒すんだよ」
めぐみんの言葉に俺は顔をしかめた。
「リョウタ、カズマが死んでる間にそんなことしてたのか。ベルディアを倒したとあってさすがだな」
ダクネスが俺を褒めてくれる。
だが。
「でも負けたんだけどな」
というか、あんな超出力のディナイアルブラスターを喰らっても生きてるような化け物。倒そうと考える方が無謀だったな。あの時頭に血が上った自分を反省しなければならない。土下座でせっかく済むかもしれなかったし、アクアの力があればカズマが生き返ることを失念していたのは大きなミスだ。
「どうしましたリョウタさん? 」
「いや、反省してただけだよ。ごめん」
「そうですか。もっと反省してくださいね」
おう、ゆんゆん。なかなか手厳しい。
「ゆんゆんが私以外にこんな強気に出るのは珍しいですね」
「っ!! め、めぐみん……」
焦るゆんゆん。
ということは俺はめぐみんかめぐみんほどではないとしてもゆんゆんの中では心の距離が近い人間ということか。やったぜ。
「なによ神殺しそんなにやけ面して」
「べ、別に何も」
いかん顔に出ていたか。
「まぁいいわ、ねぇそれよりみんな、見てほしいものがあるの!! 」
アクアが嬉々とした顔をして身を乗り出す。いったいなんだ?
「じゃじゃーん、雪精よ。1匹だけ確保しておいたの。私の迫真の土下座の前には雪精を隠していたことを冬将軍も気づかなかったようね!! 」
アクアが小瓶に入った雪精を見せつけてくる。
「おお、アクアでかした!! こっちよこせ討伐して換金するから」
カズマが小瓶に手を差し出す。
それをアクアがさっと手を引き護る。
「い、嫌よ冷血ニート!! この子には名前も付けてるんだから殺させるもんですか!! 」
「誰が冷血ニートだコラ!! そいつは金なんだよ、10万エリスなんだよ、借金を返すために必要なんだよ、だからよこせこら!! 」
金の亡者と化したカズマがまくしたてる。
「絶対嫌よ!! この子には夏に冷蔵庫になってもらうんだから!! あ、やめてやめて!!」
アクアがうずくまって小瓶を死守し、カズマがそれを奪おうと必死になる。
「二人とも食事の席でやめないか、行儀が悪いぞ」
「ダクネスの言う通りだぞ。全く、あの知的な雰囲気のエリス様を見習えよアクア様」
「な、後輩女神を先輩であるこの私が見習えですって!? 」
こっちを見て睨みつけてくるアクア。
「そうだ。リョウタの言う通りだぜアクア。あのエリス様みたいな神聖さを少しは出せないのか? 仮にも同じ女神なんだろ」
「仮にもとはなによ!! あれ? というか神殺し、あなたその口ぶりまるでエリスにカズマと同じであってきたみたいな感じね」
「ああ、まぁな。特例でお会いしてきた。かわいかったぞエリス様」
「おお、リョウタ。よくわかってるじゃないか。かわいかったよなエリス様」
「ああの美しさまさに女神って感じだった」
俺がそう言うと。
「へぇーそうだったんですね」
何故かゆんゆんが若干とげのある声質でそう言った。
そんなゆんゆんに俺を含めたみんなが目を丸くする。
「ど、そうしたんですか皆さん? そ、そんな顔して私を見つめて」
「いや、なんでもないんだゆんゆん。少し驚いただけだ」
「……そうですね。少し驚かされただけです」
そう言うダクネスとめぐみん。
俺はゆんゆんの先ほどの反応について考察する。そしてある一つの答えにたどり着いた。自意識過剰かもしれないがゆんゆんもしかして俺がエリス様を褒めたことに嫉妬してる?
「エリス様良かったなー」
わざとそう言ってみると。ゆんゆんは「むぅっ」と言いたげな顔をして若干目を赤く輝かせた。
間違いない。嫉妬だ。なんだ、本当にかわいいなゆんゆんは。
というか嫉妬する程度には意識してくれてるのか俺のこと。
そう思うとついつい顔がにやけそうになる。それを努めてにやけないように頑張った。
「というか神殺し、特例ってどういうこと? 普通生者の魂があの部屋に呼ばれるとかないんですけど」
「ああ、それはだな。信じてもらえるかどうかわからないけど……」
俺は知る限りの破壊神デストラクターのことと。俺がそいつと戦う未来にあることを5人に説明した。
すると。
「そいつのこと知ってるわ。爆裂魔法で何でもかんでも破壊しようとする迷惑な悪魔もどきね。悪魔みたいに残機があって何度か殺さないと死なないのよね。生き返ってたらの話だけど」
いやそうにそう言ったアクア。どうやらご存じのようだ。
そして。
「破壊神デストラクターかー……確か紅魔の里に残機と力の4割が封印されてたはずよね」
ゆんゆんが想定外なことを述べた。
「は? マジで? 」
俺は絶句した。
「はい。要石によって封じられてます。紅魔の里だけじゃなくてベルゼルグ王国の各地にもいくつか。でも要石の封印は相当強固なプロテクトがかかっていますから解除するのは不可能に近いはずなんですよ。少なくとも紅魔の里にあるやつはそうです。だから今の段階で破壊神が復活してることは無いと思うんですが……」
「ううむ。私としても破壊神デストラクターがよみがえっているとはゆんゆんと同じで考えづらいと思うのだが。もし復活していればすでに大騒ぎになっているはずだぞ。やつが使う爆裂魔法によって」
「ゆんゆん、ダクネス。邪神の強固な封印が子どもに解かれるようなことが紅魔の里ではありました。それを踏まえて考えればありえないなんてことはありえないと思います。今は表立って活動していないだけでどこかで秘密裏に動いているということも考えられますし」
「た、確かにそうだけど」
ゆんゆんがめぐみんを見つめて焦る。
そんな中カズマは一人真顔のまま口を開く。
「なぁ。リョウタ。マジで戦わなきゃいけなくなるのか? 俺嫌だぞ。ただでさえ借金で死にそうになってるのに魔王討伐の使命に加えて破壊神の討伐とか冗談じゃない!! 」
実にカズマらしい意見だ。
「ちょ、カズマ!! 運命を背負いしリョウタの前でなんてこと言うんですか!? こんな熱い展開なら普通パーティーメンバーとしては奮い立つべきです」
若干論点がズレてるぞめぐみん。まぁいいけど。それに。
「カズマの言うことはもっともだ。俺も正直戦いたくはない。だけど」
「だけど何だよ? 」
俺は5人を見据えて深呼吸し、続きの言葉を紡いだ。
「俺はこの世界が好きだから護りたいんだ。結構理不尽でどうしようもないけれどなんだかんだ楽しいからさ。そして何よりここにいるみんなを護りたい。だから俺はもしデストラクターと出会うことがあれば戦おうと思ってる」
「リョウタ……」「神殺し、いいこと言うじゃない」「リョウタ。貴方という人は……」「ありがとうリョウタ」「リョウタさん……」
みんながほほ笑んだり感謝の言葉を口にしたりとそれぞれ好意的な反応を示す。なんだろうとても恥ずかしい。
するとカズマが、頭をかきながら。
「わかったよ、お前が俺らのためを思って戦うってんならその時が来るなら付き合うよ。まぁ、めぐみんの言うようにパーティーだしな。とりあえずありがとな嬉しいこと言ってくれて。でもお前、そういうキャラだったか? 」
そう言って笑いかけてきた。
「こういうキャラであろうと努力してるんだよ」
ゆんゆんに幻滅されないために。
俺は苦笑し、聞こえるか聞こえないかくらいの声の大きさで応えた。
side????
「会いたかったぞ我が眷族よ。よくぞ我のもとに再び集ったな」
我は最近見つけた破壊を積み重ねる暴走中の素晴らしい居城、起動要塞デストロイヤーの内部。おそらくその指令室と思われる場所の玉座に腰かけて、目の前の展開された3つの魔方陣から召喚された霊体状の悪魔たちに嬉々として声をかけた。
眷族たちは赤紫に輝く魂の状態で我の周りを、我の復活を祝福するかのように飛び回る。
「お前たちには傀儡化した紅魔族の身体を依り代として用意してある。好きな傀儡を選ぶといい」
こいつらは我と同じようにこの世界においては依り代を必要とする。
我の玉座の後ろには真紅のローブを着こんだ傀儡化した紅魔族が30人ほど並んでいた。その紅い瞳には我とつながりを持っていることの証である金の輪が浮かび上がっている。
3つの赤紫の霊体は、吟味するかのように紅魔族の前を飛び回った後、気に入った個体の中に入り込んだ。
その瞬間。入り込まれた紅魔族は一気に周囲の空間を歪ませた後、その姿を変化させる。
まず1体は赤いラインの入った青い鎧を着た細身の銀髪の男。そして2体目はゴリラのような体形で、体の中心から左右の色が別で緑と黄になっている派手な異形。3体目はモノクロームのドレスを着た、黒のグラデーションが毛先にかけて掛かっている白髪の少女。
姿を変えた3体は我の前に来て、頭を垂れて跪くと、言った。
まず銀髪の男が口を開く。
「スパリュード参上しました」
次に緑と黄の異形が。
「ゲキドラス、デテキタゾ」
最後に白髪の少女。
「テンロン、参りましたわ」
我は数百年ぶりに再会した眷族たちに笑いながら話しかける。
「相変わらずの忠誠心に我はうれしく思うぞお前たち」
「もったいなきお言葉を」
スパリュードが顔を上げ微笑む。
「さぁ、我らに何なりとお申し付けくださいな」
「オレ、ナンデモヤルゾ」
テンロンと、ゲキドラスが言いながら立ち上がる。
「決まっている、破壊せよ、すべてを!! ……と言いたいところだが、我は万全ではない。お前たちには魂を収集して我の残機を回復するのと、我の残機と力を封印している要石を奪取してもらいたい」
忌々しくも我の力と残機は現在このベルゼルグ王国内に散らばってしまっている。それを眷族たちには回収させつつ、さらに残機が心もとないので新たに残機を増す作業をしてもらう。
「そう言えばあなた様の姿は本来の適性の高い紅魔族ではありませんね……いったいどうされたのですか? 紅魔族はたくさんいるというのに」
スパリュードも立ち上がって、黒髪黒目の我の姿を見て気になったのだろう。そのような発言をする。
「お前たちにより良い体を選ばせてやりたかっただけだ。それに少々役不足だが現状弱体化してしまっている我の魔力不足を補えるだけの特殊能力をこの身体は持っているからな。これで良いのだ」
「なんという気づかい。感謝します」
「ありがとうございますわ」
「ナニガアリガトウナノカワカラナイケド、アリガトウ」
3体とも、いや1体はいまいち知能が足りず理解できていないが我に感謝した。
「さて我はこの起動要塞デストロイヤーの破壊の因果を制御してアクセルの街の我の残機と力の1割を封印してある要石を奪取するついでにアクセルの街を滅ぼして魂を収集する。スパリュードにテンロンは傀儡を全員つけるから適当に要石の奪取や魂の収集を行え、何なら魔王軍と協力しても構わん。協力した場合は魔王軍側には今後500年は破壊行為をしないという契約を結んでやれ。そしてゲキドラス、お前には……テレパシーで送った通りこの六角形の宝石を見つけろ。おそらくだが我の本能からしてリップルの街にあるはずだ。デストロイヤーでその近辺を通過してやるからそこで降りて探せ。見つからなければとにかく殺して魂を収集しろ」
「わかりました」「タブンワカッタ」「わかりましたわ」
我は眷族たちの返事を聞いて満足に思うと玉座から立ち上がり。翼を変化させたマントを翻し、我は叫んだ。
「では、行くがいい我が眷族たちよ、破壊神デストラクターの名のもとに!! 」
ブレッシングが魂に作用する魔法というのは本作独自設定です。公式ではありません。なお本作において、リョウタの魂を呼び寄せる行為は、かなりエリス様が頑張らないとリョウタの肉体にかかっている神殺しの呪いのせいで阻まれます。今回はそんなに頑張らずとも近くに強いつながりができたため呼び寄せられました。
さて本作オリジナルの敵、破壊神デストラクターが登場しました。タグの「オリジナル展開あり」はこいつの存在が大きいです。
最後に、ゆんゆんのリョウタへの気持ちですが、現在本人も無意識のうちにリョウタを意識していると言った状態です。……これを書くのは無粋でしたかね?