【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

2 / 100
プロローグのあとがきでも書きましたが大量にストックがありますので安心してお読みください。


第1章 運命の出会い
001 転生(あとがきに挿絵あり)


「私は天使ミルデ。加賀美涼太さん。あなたは不幸にもエコノミークラス症候群で18年の生涯を終え、亡くなりました……」

 

「……そんなことで俺死んだの!? 」

 

 俺は背景が黒いがなぜか明るく感じられる部屋の中。いつの間にか椅子に掛けた状態で、同じく椅子に掛けた、白い翼を持つ目の前の天使のような金髪の女性にそんなことを言われて、思わず叫んだ。

 

 死んだことには自覚がある。椅子に座ってネットサーフィンをしていて、いきなり体を動かしたとたんに胸が苦しくなって「これはやばい」と感じていたら意識が途切れたからだ。

 

 そしていつの間にかここにいた。

 

 天使と思われる女性……。いや天使は、叫んだ俺を優しい表情で憐れんだ後、これまた優しい口調で語りかけてきた。

 

「あなたには三つの選択肢があります。一つ目はこのまま天国へと旅立つこと。二つ目は赤子から人生をやり直すこと。三つ目は特殊な力を二つ得る代わりに異世界に転生することです」

 

「転生でお願いします!! 」

 

「えっ、そんないきなり即決でいいんですか!? 」

 

「いいんです」

 

 俺は生前。つまりさっきまでニートだった。やる気もなく両親の遺産を食いつぶし毎日を過ごしていたが、転生などというビッグチャンスが来て乗っからない理由が無い。

 

 異世界転生。それは現実に不満を持つ者なら誰もが望む素晴らしいことだ。

 

「えーと、表情を見るに相当決意が固そうなのですが、今から説明することを聞いてもあなたは転生を望みますか? 」

 

 天使様は転生できる異世界の情勢について説明を始めた、

 

 なんでも、俺を転生させてくれるという異世界は、魔法やレベルの存在するRPGのような世界の様子だ。そして、例のごとく魔王軍によって人類が危機に瀕しているらしい。そのうえ日夜強力なモンスターの存在に人々は命の危険にさらされている魔境のような世界なせいで、その世界の人々は生まれ変わりを拒否しどんどん人口低下の一途をたどっているとのことだ。

 

 そこで、日本で若く死んだ人間に特殊な力、すなわちチート能力を与えて転生させて魔王を討伐してもらおうという打開策が天界で打ち出されたらしい。しかし最近になって異世界転生を拒むものが激増し、仕方なく天界規定を特例で捻じ曲げ転生の特典を二つに増やして転生するように説得するという方向になったそうだ。ちなみに討伐の暁には願いを一つなんでも叶えてくれるようだ。

 

 もともと世捨て人のような状態だった俺。……しかも、一度死んでしまったことでもはや吹っ切れた感覚がある今の状態の俺にはそんな魔境に行くことにも何の心配もない。チート能力ももらえるようだしな。

 

「それでも俺は行きますよ、異世界」

 

 このまま、天国に行くくらいならもう一度生をチート能力で楽しく謳歌するのも悪くないだろう。あ、魔王討伐は先んじて送り込まれている同郷の者たちに任せよう。

 

「本当にありがとうございます!! 私がここの担当になってから誰も転生していただけなかったので……」

 

「それはまた」

 

 俺は天使の微笑みを見せる天使さまにかわいいと心の中で感想を抱きながら、何故この天使さまが担当になってから転生するものがいなくなったのか不思議に感じていた。

 

「チートもらえるのに転生しないだなんて選択肢をとるほうがおかしい」

 

 俺がそう言うと真顔の天使さまは。

 

「普通の日本人は命の危険にさらされるような世界に強い力をもらえるからと言ってもリスクから考えて転生なんて選択しませんよ」

 

「そうですかね」

 

「そうです。……これまでは前任の女神であったアクア様が特殊な力を一つお渡しするだけという条件でもうまく説得して転生していただいていたようですが」

 

 そう言って笑った。

 

「俺がおかしいのだろうか、いや、おかしいか、ニートという名の社会不適合者だし」

 

「そ、その、失礼な物言いになってしまうのですが、自覚があったのに身の振り方を改善しなかったのは何故ですか……? 」

 

「だって世の中が俺を拒絶しましたから。でもよかったです。次の世界は俺を受け入れてくれそうですから」

 

 チートがあればなんとかなるだろう。

 

「そうですか……」

 

 天使さまは残念なものを見る目で俺の方を眺めた後、一呼吸おいて引き締まった表情になると。

 

「それでは、加賀美涼太さん。転生先のことをもっと詳しく説明します」

 

「お願いします」

 

「それでは……」

 

 それからは天使さまによる異世界の詳しい情報の説明が続いた。転生先は駆け出し冒険者の街であることや、ギルドの存在、お金の単位。ほかにはその世界に存在する黒髪赤目の種族のことなどだ。中には言語習得時に頭がパーになるとかいう危険性があるという内容もあったがそこは無視だ。

 

「では……このカタログの中から欲しい特殊能力や神器を二つ選んでください」

 

 説明を終えた天使様が虚空に召喚した辞書のようなカタログ。それを受け取ると俺は早速、目を通していく。

 

 なんだかゲームのキャラメイクのようで楽しいなと感じながら俺は、二つの特殊能力を選び、天使さまに告げる。

 

「錬金術と神殺しの剣ですね」

 

「はい」

 

 錬金術は触れた物体を魔力を糧に思った通りの物に作り替える力だ。そして神殺しの剣はなんか名前と見た目がかっこよかったのと、神殺しとは名ばかりで様々な人外の存在に対して威力を発揮するそうだからだ。この世界はアンデッドがたくさん存在するらしいのでもってこいの武器だろう。

 

「わかりました。転生時に錬金術と神殺しの剣。それと10万エリスを所持した状態にしておきます。10万エリスはギルドの登録手数料やその他雑費に使ってください」

 

 そう言い終えた後、「準備はいいですね? 」と俺に問う天使。

 

「もちろんです」

 

「それでは」

 

 俺の座っていた椅子の下に魔方陣が開かれ俺の身体が魔法陣から発した光の柱に浮かされていく。

 

 そして。

 

「加賀美涼太さん。数多の勇者候補の中からあなたが魔王の討伐を成し遂げることを祈っています。いってらっしゃい」

 

 その言葉を聞き取ったと同時に、俺はどこかに引き寄せられる感覚とともに視界が光に包まれて……。

 

 

 

 

 リョウタがいなくなった部屋で天使ミルデは一人呟いた。

 

「私の未来視のとおりですね。加賀美涼太さん。あなたならばやはり錬金術と神殺しの剣を選ぶと思っていましたよ」

 

 ミルデは未来視を司る天使だった。ミルデは微笑む。

 

「あなたの選んだそれがあればあなたは必ずや大きな偉業を成し遂げるでしょう。あなたに祝福を」

 

 ミルデは心からリョウタへの祝福を願うと、次の死人を部屋に呼び寄せさっきと同じように案内を始めた。

 

 

 

 

 

 

 これは元ダメ人間とぼっちな少女の物語。

 




最後に三人称視点を使いましたが今後は使う予定はありません。基本的にはリョウタ視点です。というか他キャラの視点になることは基本的に無く、第5章の紅魔の里編でゆんゆん視点が何度かあるぐらいです。

追記……ちなみにこれが涼太のイメージ図です。
【挿絵表示】

これもseato様が作ってくださりました!! 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。