【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

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020 さぁ決着をつけましょう!!

「めぐみん!! 私、上級魔法を習得したのよ!! 」

 

「よかったではありませんか」

 

 ゆんゆんが上級魔法ライトオブセイバーを習得して4日後。それを使いこなせるようになった彼女はギルドの酒場で昼食を食べるめぐみんに嬉々として話しかけた。それを聞いためぐみんはというと、何事でもないようにさらっと祝福すると、横に控えているちょむすけに昼食のベーコンを分け与えた。

 

 この場にいるのは俺とゆんゆんとめぐみんの3人だけで、カズマとアクアは馬小屋で内職を。ダクネスは用事があるとしてどこかに行ってしまっている。

 

「何でそんなにドライな反応するのよ……」

 

「だって、あなたが上級魔法を習得したということはいよいよパーティー内での私の立場が危ういものになったということではありませんか。素直に喜んだりほめたりするとでも? 」

 

「あんた、ファイヤーボールが使えるでしょ」

 

「あれは制御が効かないいわば裏の必殺技です。それに仲間がピンチに陥っているとき以外に使うつもりはありません」

 

「一応、絶対に使わないわけではないのね……」

 

「それで、そんなにうれしそうに言ってくるのですからまた勝負ですか? 」

 

「その通りよ!! 決着をつけましょうめぐみん!! 」

 

 立ち上がってめぐみんに向かってピッと指をさすゆんゆん。

 

「決着ですか……。よほど自信があるようですね。いいでしょう受けて立ちます!! ……カズマたちもいなくて暇ですから」

 

 めぐみんは立ち上がってマントをはためかせながら勝負を受けると宣言した後、さらっと毒を吐いた。

 

「それで対戦方法はどうするのですか? 」

 

「モンスターの討伐数で勝負よ!! 」

 

 めぐみんの毒吐きを特に気に留めず、勝負内容を宣言するゆんゆん。

 

 スルースキル。大したものだ。俺だったら結構傷つく。

 

「やはりそう来ましたか」

 

「実は俺とゆんゆんで受けるクエストがあって、白狼の群れの討伐なんだけど、それを利用しようというわけなんだ」

 

 白狼の群れの討伐。夜になると牧場にやってきて家畜を襲うらしい。なのでそれを退治してほしいというのがクエストの内容だ。

 

「なるほど白狼の群れですか。しかし数が少ないと意味がありません。しっかりと競えるほどの数がいる規模の群れなんでしょうね? 」

 

「それなら心配ないわ。なんたって塩漬けクエストのうちの1つで、高難易度だもの。白狼の数だってそれはもう大量よ」

 

 ゆんゆんが補足する。

 

 塩漬けになってるクエストだというのに、牧場がつぶれていないのは、職員が毎晩やってくる群れを何とかして追い払っているからだそうだ。

 

 ちなみに白狼というのはフェンリルというモンスターの下位種で、冷気を操ることができる狼型のモンスターだ。

 

「勝負するときは俺が錬金術使って仕掛けた罠で足止めしてその間にお互い最大出力で魔法を放ってどっちがたくさん倒せたか競う……って感じの内容だ」

 

「なるほど概要はわかりました。……ちなみにリョウタはどちらが勝つと思っていますか? 」

 

「正直俺もわからんね。めぐみんの爆裂魔法と比べりゃライトオブセイバーは火力に劣るがそれでも事前情報で分析する限りは白狼をオーバーキルできる火力だからね。最大出力を何度ゆんゆんが放てるかが戦いを左右するだろうなと思うよ」

 

 ゆんゆんの肩を持ちたいところだが、さすがに爆裂魔法の火力と範囲があれば多くの標的をまとめて消し去れることはわかっている。

 

「なるほど。よい分析です」

 

 めぐみんが最後の米粒を口に運びながらつぶやく。

 

「さぁ、リョウタさんが罠を仕掛ける関係もあるから勝負すると決まれば急いでいくわよめぐみん!! 」

 

「わかりました、ではちょむすけを私の宿泊先の馬小屋に戻したら行くとしますか」

 

 こうして、ゆんゆんVSめぐみんの戦いの火ぶたは切って落とされた。

 

 

 

 

 

「いやぁ、助かるよ。相手も知恵をつけて来たみたいで僕らで対処するのはそろそろ限界だったからねぇ」

 

 牧場についた俺たちは経営者のおじさんと事務所で話していた。

 

「そ、そうですか。任せてください」

 

 相変わらずのコミュ障を炸裂させ最初の一言が若干どもる。ああ、早く直したい。

 

「ちなみに周囲の地形が多少変わっても構いませんか? 」

 

 めぐみんがおじさんに問いかける。以前は爆裂魔法を基本的にどこでも撃ちまくっていたらしいめぐみんだがアクセルの街の門番のおじさんに怒られたことと、俺がベルディアに殺されかけたのがあってその辺をだいぶ気にするようになったらしい。

 

「そりゃ構わないよ。あの憎き白狼が全滅してくれるならなんだってかまわないさ」

 

 経営者のおじさんが暗い目で不敵に笑う。それの回答を聞いてめぐみんは満面の笑みになった。

 

「それじゃあ、僕たちは罠を仕掛けに行くのでこれで失礼します」

 

「ああ、倒したら言っておくれ」

 

 その言葉を聞くと俺たちは事務所を出てよく白狼が牧場に突撃してくるという、牧場を仕切る柵の向こうの草林のエリアに罠を仕掛け始めた。

 

「しかしどんな罠を用意するのですか? 」

 

「それは気になってました。いったいどんなものを? 」

 

「それはこれだ」

 

 俺は地面の土を錬成し鉄にそしてその形を変形させていく。

 

「「おお……!! 」」

 

 やがて変形したそれは、トラバサミになった。

 

 トラバサミ。日本では禁止されている狩猟用のトラップだ。草林の中にこれらを各所に設置し消臭ポーションで完全に隠匿する。草林の中なのでクエスト後にも残っていると大変危険だが今回はゆんゆん、めぐみんの全力魔法を受けて蒸発する予定なのでその点は気にしなくてもよい。

 

「錬金術は万能ですね。リョウタさん」

 

「この形に変形できるようにするまでに結構練習したんだ。この能力イメージ力はもちろんだけど力を流す強弱によって錬成するスピードも変わるからね」

 

「お疲れ様です」

 

「ありがとうゆんゆん」

 

 この子に労ってもらえると頑張った甲斐があったと思える。

 

「しかし凶悪なデザインですね。こんなものの構造どこで覚えたんですか? 」

 

 めぐみんが興味津々そうにトラバサミを眺める。

 

「爺さん婆さんの家が昔狩猟をしててね。倉庫に朽ちたトラバサミが残ってて、それをたまたま覚えてたんだよ」

 

「そういうことですか。紅魔の里では狩りとかでは基本的に罠を使わずに魔法で吹っ飛ばすので珍しく感じます」

 

 めぐみんがそう言って微笑んだ。

 

「前々から思ってたんだけど紅魔の里ってかなり武闘派なのかい? 」

 

「そうですね。四年に一度ピクニックで魔王城周辺まで行ってバーベキューをした後に魔王城の結界に向かって魔法を撃ちまくってからテレポートで帰るくらいには」

 

「君たち怖いな」

 

 俺はめぐみんの回答に軽く引く。そしてこうも思った。魔王軍が人間と戦争しているのは彼女たちの責任も一端にあるのでは無いかと。

 

「わ、私は普通ですよ。みんなみたいにおかしくないですから怖がらないでくださいねリョウタさん!? 」

 

 俺の回答に焦りながら、紅魔族の中では珍しく常識的な感性を持っているらしいゆんゆんが語り掛けてきた。

 

「みんながおかしいのではなくあなたがおかしいんですよゆんゆん」

 

「そ、そんなことないもん。アクセルの街の人の感性は私と似たような感じだし。やっぱり里のみんなが世間と常識がズレてるだけなのよ」

 

「しかし紅魔族としてあなたがおかしいことに変わりはないでしょう? 」

 

「あうっ……」

 

 ゆんゆんがめぐみんの一言を受けて消沈する。

 

 俺はそんな様子を見ながらトラバサミを大量に製造していった。

 

 落ち込むゆんゆんもかわいいと思いながら。

 

 

 

 

「これでいいだろう大量に敷き詰めたし。これで突っ込んできた白狼をその場に食い止める。たとえトラバサミに引っかからなかったとしても、警戒して停止してくれればそれだけで勝敗は決するし」

 

 俺は魔力が底をつきかけて、しんどさを体に感じながら顔の汗をぬぐった。

 

「トラバサミ約100個設置お疲れ様ですリョウタ」

 

「ありがとうめぐみん」

 

「これで後は夜が来るのを待つだけですね」

 

「ああ、もし魔法をかいくぐって白狼がこっちに襲い掛かってきたときは俺が神殺しの剣で切りかかるから安心して魔法を撃ってくれ」

 

 あたりはすっかり日が暮れはじめ、オレンジ色に染まっていた。

 

「私は一発だけですがね」

 

「めぐみんあなた、やっぱり爆裂魔法でライトオブセイバーに挑む気? この決着、私の勝ちになるけれどいいの? 」

 

 ゆんゆんが自信ありげな態度でめぐみんを挑発する。

 

 このどや顔カワイイ。

 

「爆裂魔法をなめないでください。ライトオブセイバーなんぞに負けるような魔法ではないのですよ」

 

「ライトオブセーバーは十分強力な魔法だから!! そっちこそなめないでよね」

 

「2人は仲いいな」

 

「そ、そんなことないです。ライバルだし……」

 

 ゆんゆんが紅潮した状態で顔を逸らす。

 

「おやおや、親友と言ってくれたではありませんかゆんゆん」

 

「それはめぐみんも同じじゃない!! たまに私のこと親友って言ってくれてるし」

 

「じゃあ、親友同士でいいだろ。何で二人とも毎回照れて素直に親友同士ですって言えないんだ? 」

 

「そ、それを聞きますか、リョウタ!? 」

 

「そ、そうですよ。親友って言い切るのは恥ずかしいから普段は言わないようにしてるだけなので……」

 

「そこに照れる理由がいまいちわからん」

 

 いいものじゃないか親友。俺にはいなかった。今はカズマがそのポジションにいるが。

 

 そう言う風に考えていると突如めぐみんが。

 

「それでは、あなたは人と話すときにどもるのに恥ずかしい以外の理由があるのですか? 」

 

 そんな思わぬ切り返しをしてきた。

 

 単純にコミュ障だからだが、突き詰めていくと恥ずかしいから、もしくは他人が怖いからというのに帰結するだろう。

 

「すいませんでした」

 

 俺はため息をつきながら2人に謝罪した。

 

 それから俺たちは白狼たちが襲ってくるという時間帯になるまで牧場の人たちに夕飯をごちそうになり、事務所内で時間を潰した。

 

「テレポート」

 

「なかなかやるではないですかリョウタ」

 

「ゆんゆんとの戦いで鍛えられてるからね」

 

 俺とめぐみんはゆんゆんの用意してくれたチェスで対戦していた。

 

「リョウタさんは上達が早いですよね。ゲームに限らず、冒険者レベルとかも」

 

 ゆんゆんが俺たちの対戦を眺めながらそう言ってくれた。

 

 うれしい。

 

「まぁ運がいいだけだよ。今なんて運のステータスがカズマ一歩手前だしな」

 

「そう言えばゆんゆんから聞きましたがあなたの運は女神エリスのおかげでかなり高まってるんでしたね。それによってカズマ以上のセクハラもしたと聞きました」

 

「ちょっとめぐみん!! そ、そのことはぁぁぁ……」

 

「グッ!? なぜそれを……」

 

 俺は動揺させられる。あれは人生の中で大きな失敗の一つで、一歩間違えればゆんゆんに嫌われていたかもしれない頭の悪い奇跡だったからだ。

 

「ゆんゆんから聞きました。いやしかし、スカートどころかパンツまで奪うとはとんだ鬼畜ですね。……バーコードを見ませんでしたか? 」

 

 にやにやしながら。おもむろにバーコードなどというこの世界には無さそうなワードを言ってくるめぐみんはクルセイダーの駒を進めてきた。

 

「バーコード? どういうことなんだい? 」

 

「リョウタさん!! 気にしなくていいです!! 」

 

「ゆんゆんも気にしていたではありませんか。……紅魔族にはバーコードという縦じま模様のあざがあるのですよ。ゆんゆんに至っては内太ももの際どいところにそれがありましてですね。それを見られていないかゆんゆんは4日前から気にしていたのですよ。なにせバーコードの位置を知られることは裸を見られることより恥ずかしいことですから」

 

「ちょっと、それ……教えちゃってるじゃない……めぐみんのバカぁ……」

 

 ゆんゆんが消え入りそうな声で涙目になった。

 

 かわいい。

 

「ああ、そんなことか。俺はそれを見て……」

 

「え? リョウタさんまさか……? 」

 

 涙目のゆんゆんの顔がどんどん赤くなっていく。俺がしばらく無言でいると耳の先まで真っ赤になった。そして、手で顔を覆い隠す。

 

「見たのですね」

 

 俺の沈黙を受けてめぐみんはそう判断したようだ。しかし実はそんなことは無く。

 

「……ないよ。見えなかった」

 

 そう。俺は残念ながらそれを見ていない。しかし、そんなものよりもっと素晴らしいものが見れた。それに、いま沈黙したのはただ単にゆんゆんの照れる表情を見たかっただけだ。

 

「何で沈黙してたんですかぁぁ!? 」

 

 しかしゆんゆんは俺の心の内を知らないため俺の返答を嘘だと感じたようだ。今のゆんゆんは過去最大級に取り乱している。

 

「見たの!? 見たんですか!? 見ちゃったんですか!? どうなんですかリョウタさん!? 」

 

「見てない見てない。たださっき黙り込んでたのはゆんゆんの照れる姿を見たかっただけだ」

 

「な、なんですかそれぇぇぇ!? 」

 

「リョウタナイスです。ゆんゆんが取り乱していてくれれば勝負の時、平常心ではいられずにしくじりやすくなるでしょうから」

 

 めぐみんが俺にサムズアップする。

 

「あんた卑怯よ!! 卑劣よ!! リョウタさんもまさか私をはめるためにめぐみんと協力を!? 」

 

「それはない。ただゆんゆんが照れてる顔を見たかっただけだよ、ほんとだよ」

 

「嘘だったら、私誰も信じられなくなりますよ? 」

 

「大丈夫だ、安心してほしい。ゆんゆんに嘘は絶対つかない」

 

 俺は、自分が真人間であるように『演じている』かもしれないため、実はだましているのではないかと言う自分への疑念を振り切り、真剣な表情でそう告げる。するとゆんゆんは、顔は赤いまま安心したという風な表情をした。

 

 

 

 

 

「さぁそろそろ時間だ。クエスト前の待ち時間というのは本当にもどかしく思えるけど本番が来たときは楽しくてたまらない」

 

「同意しますよリョウタ。私は仲間との待ち時間楽しくお話しするのも好きですがね」

 

「別に俺もそう言うのを楽しんでないわけではないよ。さて、二人とも準備はいいかい? 」

 

 俺たちは白狼の群れに気づかれないように消臭ポーションを使用したうえで、光の屈折魔法を発動させるマジックスクロールを使用して姿を消した状態で罠を仕掛けた草林の前の柵で仕切られた牧草の生えている場所に立っている。

 

「姿が見えなくて声しか聞こえないっていうのは変な感じだな」

 

 自分自身の姿は一応見えてはいるのだが、横にいるはずのゆんゆん、めぐみんの姿が見えないのでなんだか独り言を言っている気分だ。

 

「そうですね。実際に使ってみるのはこれが初めてなので私も違和感を感じます」

 

 ゆんゆんがおそらく苦笑しているのだろう。そう感じさせる声のトーンで言った。

 

「しかしこんな魔法あったら覗きとかで大変なことになりそうだな……」

 

 俺はこの魔法の危険性を強く感じる。

 

「魔法を使ってそのような行為をした場合は重罪に処されることになってますからめったにそんな人はいないと思いますよ」

 

「それなら安心だ」

 

 めぐみんの一言にこの世界の常識を1つ覚えた俺は絶対に魔法を悪用しないようにしようと心に誓う。まぁ悪用できるほどの度胸なんてそもそも俺にはないが。

 

「リョウタさん真っ先にそんなこと思い浮かべるだなんて……スケベですね」

 

「ちょ!? ゆんゆん? 」

 

 まさかこの子にこんなことを言われようとは。先ほどの意趣返しだろうか?

 

「だってパンツやスカートをスティールしたりしてますし、時々リョウタさんの目線が私の……その、胸の方に向けられてることがありますし」

 

 先ほどどころか今まで全部の俺の失態への意趣返しだったようだ。

 

「それはあれだ、生理現象だ。男として当然の…………ごめん」

 

「な、何で途中で謝るんですか? 」

 

「ゆんゆんから何となく悲しいものを見る目で見られてる気がしたから」

 

 とはいえ、君がそんな胸元開いた服着てるのも悪いと思うんですよね。

 

「二人とも、そろそろ静かに。標的らしき音がしてきましたよ……!! 」

 

「「了解」」

 

 めぐみんの真剣な声に頭を完全にクエストモードに切り替えた俺とゆんゆん。俺は神殺しの剣を抜き放ち、万が一に備えて構える。

 

 すると。

 

「あれ? おかしいぞ、神殺しの剣が起動してる……」

 

 しかもこれは冬将軍の時以上かもしれない。

 

「へ? 本当ですか? 」

 

 俺の発言にゆんゆんが驚く。

 

「おかしいですね。周囲に人外の存在は見受けられませんが? 」

 

 めぐみんが警戒心をあらわにした声を出す。

 

「二人とも勝負は中止だ。神殺しの剣がかつてないほどにパワーを出してる。……俺が白狼を殲滅する。二人は緊急時に備えて魔力温存。いいかい? 」

 

「「わかりました」」

 

 二人の同意を得た俺はディナイアルセイバーを放つ構えになる。

 

「二人はできるだけ後ろの方に下がっててくれ。見えないから巻き込むといけない」

 

「了解です。頑張ってください」

 

「リョウタさん頑張って」

 

 声援を受けながら俺は神殺しの剣に意識を集中する。すると、神殺しの剣からこれまでの中で最も身体能力が強化されているということを伝えられた。ほかにも様々な能力が現在使用可能になっていることも。

 

 これだけのパワー。近くに何かとんでもない存在がいるのか?

 

 そう思索していると。

 

 狼の遠吠えが聞こえた。その直後、草林の向こうの森の中からこちらに向けて白狼の群れが突撃してくるのが見えた。白狼が通り過ぎたところは冷気によって霜が降りていく。

 

「来たか白狼ども」

 

 白狼たちの数は敵感知の反応からして40。それらはまっすぐこちらに向かってくる。

 

 そして。

 

 「キャイン!! 」という犬種特有の悲鳴がいくつも響いた。白狼たちが罠のトラバサミにかかったのだ。多くの白狼がその場で立ち往生している。

 

「でも全部は引っかからなかったか……!! 」

 

 十数匹ほどがトラバサミに引っかからず、あるいは恐れることなく柵を超えてきた。

 

「まぁ関係ないけどな!! ディナイアルセイバー!! 」

 

 超高出力の光線、その直径が10メートルはあろうかというディナイアルブラスターを神殺しの剣全体から放出。その状態で横なぎに振るう。

 

 その瞬間。圧倒的な破壊力が白狼たちを襲う。

 

 大出力のエネルギーを浴びた白狼の群れは、草林や、その向こうの森の木々、牧草、それらが茂っている大地もろとも塵一つ残らず消滅した。

 

 俺がディナイアルセイバーの放出をやめると、眼前には削り取られた大地が広がっていた。

 

 ディナイアルセイバーのエネルギーがまだ大気中に電気のように帯電しぱちぱちと音を上げる中、俺は懐にしまっていたマジックスクロールを破り光の屈折魔法を終了させる。

 

「終わったな。でも、神殺しの剣はまだ起動してるままだ」

 

 そう言った俺の後ろから光の屈折魔法を解除した二人が寄ってくる。

 

「探しましょうか、それの原因を。それにしても爆裂魔法に匹敵する破壊の範囲ですね。素晴らしい!! 」

 

「ありがとうめぐみん。牧場の人にはやりすぎって怒られるだろうけどね」

 

 まさかここまでの破壊力が出るとは思わなかった。内心かなり事後処理のことを思ってひやひやしている。借金を増やしかねない。

 

「でもリョウタさんが放ってきたディナイアル系の攻撃の中で最大の火力だったわよね。いったいどんな凶悪な人外の存在なんでしょうか……? 」

 

「……わからない。だから二人は事務所に戻って待機を……」

 

「リョウタさん……!! 」

 

 俺が言葉をつづけようとすると不機嫌そうな、そして強い意志を秘めた顔のゆんゆんがそれを断固として拒むと言いたげな顔でこちらを見つめてきていた。

 

「そうだ、コンビだったな俺たちは」

 

「はい!! 」

 

 うれしそうな顔で声を上げるゆんゆん。

 

 本当は心配だからついてきてほしくないけれど、あんな顔されたうえ、冬将軍に殺されかけた後「一緒に戦う」と約束もしてたから仕方がない。

 

「じゃあ、原因を探しに行きますか」

 

 若干俺たちのやり取りにあきれ気味のめぐみんがそう言った。




 白狼の群れの討伐は原作に塩漬けクエストとして確か本当にあったはずです。
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