【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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025 幽霊屋敷

「え、何やってんのゆんゆん? 俺みたいに人形の頭と胴体を引き裂こうとしてるのかい? 」

 

 あまりにも想像とかけ離れた光景が広がっていたため俺は拍子抜けする。

 

「そんなひどいことしませんよ!! 私はこの子と友達になろうと思って……」

 

「と、友達!? 」

 

 いったいこの子はなにを言ってるのか理解したくないが、わかってしまう自分が嫌だ。ゆんゆんは悪霊と友好関係を築こうとしているのだ。

 

「ダメだよゆんゆん。相手は悪霊だし……。というか悪霊の方が恐怖で震えてないか? 」

 

「そ、そんなことないはずです!! ね、そうよね人形さん!? 」

 

 人形は頭を高速で横に振った。

 

 まさか自分が恐怖に陥れようとした相手に友達になろうとされるというわけのわからない状況に悪霊は恐怖しているのだろう。

 

「何と言うか悪霊も気の毒に」

 

「え、気の毒? 」

 

 俺は無言でゆんゆんから人形を奪い取ると。

 

「あっ、リョウタさん!! なにを!? 」

 

 神殺しの剣で一閃した。

 

「ああっ!! 」

 

 ゆんゆんの驚き声とともに、切り裂かれた人形が地面に落ちた。

 

「なんてひどいことをするんですかリョウタさん!! 私とこの子お友達になれたかもしれないんですよ!? 」

 

「絶対無理だから!! 大体さっき悪霊入り人形も頭を高速で横に振ってただろう!! それが答えだよゆんゆん!! 」

 

「ええっ!? 」

 

 ゆんゆんが、人形を切り裂かれたためか、はたまた、その人形と友達にはなれなかったことを知ってかショックを受けて肩を落とした。

 

 どう元気づけるのが正解か?

 

 そう思いながら俺は浮かび上がってきた言葉をそのまま口にした。

 

「き、君には俺たちがいるだろ? 悪霊なんかと友達にならなくったっていいさ」

 

 俺が照れてどもりながらになってしまった言葉を聞いて、しばし沈黙するゆんゆん。彼女はやがてうれしそうな顔で。

 

「そう……ですよね!! 今の私には友達が何人もいて友達と一緒の家に住んでるんですよね!! そう考えたら悪霊と友達になるのは間違いですよね!! ああ、でも友達は多いことに越したことは無いし……」

 

「ゆ、ゆんゆん……」

 

「あ、ごめんなさい!! 」

 

 この子の将来が本当に心配になってきた。友達になってくれるならどんな存在でも受け入れそうで怖い。いや、懐が深いことは結構なのだが、さすがに悪霊は、名に悪がついている通り害をなそうとする存在なのでダメだろう。

 

「正気に戻りました。もう大丈夫ですよリョウタさん」

 

「それはよかった……」

 

「ほかのみんなは大丈夫でしょうか? 」

 

「少なくとも友達になろうとして悪霊を逆に恐怖させては無いと思う」

 

「も、もう、リョウタさん……」

 

 少し赤い顔で抗議するゆんゆん。

 

「とりあえず、アクアと……」

 

 合流でもするか。

 

 と言おうとして、男女の悲鳴が聞こえてきた。

 

「「ひゃぁぁぁぁぁ!!!! 」」

 

 …………。

 

「今のって!? めぐみんとカズマさん!? 」

 

「だよな!! いくぞゆんゆん!! 」

 

「はい!! 」

 

 俺とゆんゆんは声のした方に駆けだす。すると、今度は何かを言いあうカズマとめぐみんの声がした。

 

 どうやら声のしているのはアクアの部屋のようだ。

 

「大丈夫ですか!? カズマさんめぐみん!? 」

 

「二人とも助けに来たぞ!! 」

 

 俺とゆんゆんがアクアの部屋に突入すると、もみ合いをしているカズマとめぐみんがいた。

 

「何やってんの? 」「いったいどうしたの? 」

 

「おお、リョウタいいところに来た!! ちょっとこのめぐみんを引きはがしてくれ。俺がベランダから失礼してトイレを済ませようというのにこいつが邪魔をしてくるんだよ!! 」

 

「べ、ベランダから!? 」

 

 ゆんゆんが赤面して小さく悲鳴を上げる。

 

「いいところに来ましたゆんゆん!! ちょっとこのカズマが1人ですっきりしようとするのを邪魔するのを手伝ってください!! この男、私にそこに転がっている酒瓶で用を足せだのと言ってくるのですよ!? 」

 

「え、えええええ!!!? 」

 

 さらに赤面が進むゆんゆん。

 

 ようするに。

 

「2人とも膀胱の危機に瀕していると」

 

「そういうことだ!! 」「そういうことです!! 」

 

「そんなのトイレに順番に行けば済む話だろ……」

 

「アホかー!! こんな悪霊人形がはびこる屋敷でアクア抜きで行動なんかできるかー!! 」

 

「そうですよ!! そう、です、よ……」

 

 めぐみんの声が消え入りそうに小さくなっていく。何事かと思い、ゆんゆんと一緒にめぐみんの方を注目すると、めぐみんが恐る恐るカズマの後方を指さした。

 

「なんだ……よ……おぉぉぉぉ!? 」

 

 カズマが振り返ると固まる。俺とゆんゆんもカズマとめぐみんが見ている光景を目にした。

 

 人形がぎっしり、まるで光に集まる大量の羽虫のごとく、アクアの部屋の窓に張り付いてこちらを見ていた。

 

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!! 」」」」

 

 俺たち4人は絶叫とともにアクアの部屋から飛び出した。

 

「どうするこれからどうする!? 」

 

「とりあえずトイレに行きましょう。トイレです!! 」

 

 カズマとめぐみんが走りながらそう言う。

 

「そうだよな!! また漏らすのはごめんだよねめぐみん!! 」

 

「その通りで……」

 

「ん、また? どういうことだ?まるで1度おもらししたことがあるみたいな言い方するな」

 

「「「あ」」」

 

 トイレの方に自然と足を運んでいた俺たちだったが、カズマ以外の3人で立ち止まる。

 

「ん? 」

 

 カズマも思わず立ち止まって俺とめぐみんを交互に見る。

 

「りょ、りょ、りょ、りょ、リョウタ。あなたという人は……あなたという人は……!! 」

 

 めぐみんが耳の先まで真っ赤にして、打ち震える。

 

「リョウタさんなんてことを!? 」

 

「おまえ、おもらししたことがあるのか」

 

「ふわぁぁぁぁぁぁ!!!! 聞かないでくださいぃぃぃぃ!! 」

 

 めぐみんが膝を抱えて絶叫する。

 

「つまりこのままだとお前は2度目のおもらしをしてしまうんだなめぐみん!! 」

 

「ふ、ふぇぇぇ」

 

 涙目になるめぐみん。

 

 かわいい。そしてごめん。なんてかわいそうなことをしてしまったんだろう。

 

「わかった。トイレの順番はお前からだ。その歳で何度もおもらしはしたくないだろ……」

 

 カズマが哀れんだ顔をめぐみんに向ける。バカにしているとかではない。本物の哀れみだ。

 

「や、やめ、やめろぉぉ!! そんな目で我を見るなぁぁぁ!! そうです。ゆんゆんも!! ゆんゆんもおもらししてました!! 」

 

「なんてことバラすのよぉぉぉ!? 」

 

「え、マジか、マジなのか? 」

 

 カズマが俺の方に確認を取ろうという意図の目線を向ける。

 

 俺はどうしていいか分からず目を逸らした。

 

「本当のことなんだな……」

 

「わぁぁぁ!!!! カズマさん!! そんな顔しないでくださいぃぃぃ!! リョウタさん、どうして目を逸らしたんですかぁ!? それだと認めてるようなものじゃないですか!! というかめぐみんあなた許さない!! 」

 

 ゆんゆんも耳の先まで真っ赤になった顔でめぐみんを振り回す。

 

「ぬわぁぁ!!!! や、やめ、やめ、やめろぉぉぉ!!!! 漏れてしまいます!!!! 」

 

「また漏らせばいいのよ!!!! このっこのっ!! 」

 

「お、おいやめてやれゆんゆん!! めぐみんがかわいそうだ!! 」

 

 カズマがゆんゆんを引き留める。俺もめぐみんがかわいそうなのでそうした。

 

 

 

 

「みんな本当にいますか? 」

 

「「いるよ」」「いるわよ」

 

「ほんとに、ほんとにいますか? 」

 

「いるから急げめぐみん!! 」

 

 順番が後になっているカズマがめぐみんをせかす。

 

 トイレに無事到着した俺たちはまずめぐみんをトイレに入れて、ドアの前で彼女が用を足すのを済むまで待っていた。

 

 ゆんゆんもめぐみんもどうにか、お漏らしばれの中から落ち着きを取り戻し、現在に至る。

 

「その恥ずかしいので何か歌を歌うなりしてもらえませんかね。で、出るものも出ませんし」

 

「面倒な奴だなお前は!! 」

 

「歌か、何かいいのありますか? 」

 

 ゆんゆんが俺とカズマを交互に見る。この世界の歌という物をそう言えば知らない。どんな歌があるのだろうか?

 

 そんなことを考えながら俺は頭に浮かんだ歌を歌うことにした。

 

「俺が知る限りでもっとも「ガ」が多い歌でも歌っておくよ」

 

「よくわかりませんがとにかくお願いしまーす」

 

 そして俺がカズマとゆんゆんの注目を浴びながら、歌っていると、サビに入る前の「技名」を叫ぶ寸前あたりでめぐみんがトイレから出て来た。

 

「カズマどうぞ。……本当に「ガ」ばかりの歌でしたね。変わった歌です」

 

 めぐみんと入れ替わりでカズマがトイレに駆け込む。

 

「勇者王の歌だよ。紅魔族の琴線に触れそうなデザインしてるから今度イラストでも描いてあげよう」

 

「本当ですか? 」

 

「もしかしてリョウタさん、絵心あるんですか? 」

 

「少しだけね。勇者王はカッコいいぞ。この世界で言うゴーレムみたいなものの最強の存在だ。……まぁ単純な強さに関する議論を始めたら上には上がいるが最強クラスのかっこよさなのは間違いない」

 

「それは楽しみですね。期待しています」

 

「私はリョウタさんの絵が気になるかな……」

 

 そんな会話をしていると。

 

「ああ、すっきりした」

 

 カズマがトイレから出てくる。

 

「これで危機は去ったな。一件落着だ」

 

「いやリョウタ、まだ危機は去ってないぞ。悪霊だらけなんだからアクアと合流しないと」

 

「そうだったな」

 

「そう言えばダクネスさんは大丈夫かなぁ? 」

 

「ダクネスはあれでクルセイダーですからね。神聖な力も少しは使えるはずなので大丈夫ですよ」

 

「そっか」

 

 俺たちは談笑しながらアクアを探し始めた。すると、屋敷の曲がり角から……。

 

 大量の西洋人形がこちらになだれ込んできた。

 

「うわぁぁぁぁ!!!! 」

 

「まだいたの!? 」

 

「りょ、リョウタ。神殺しの剣でどうにかしてください!! お願いします!! 」

 

「了解!! 」

 

 カズマが絶叫し、ゆんゆんが驚き、めぐみんが怯える中。俺は神殺しの剣を構えて、なだれ込んでくる人形の群れに突撃して切り落としまくった。

 

「3人ともここは引き受けた!! アクアのところに行け!! 」

 

「任せたぁぁ!! 」「頼みましたよ!!」「リョウタさん頑張って!! 」

 

 そう言って3人は人形どもから遠ざかっていった。

 

 俺を無視して3人の方に行こうとする悪霊人形たちもいたので、それらにも強化された身体能力を発揮して切り落としていく。

 

 それからは浮かぶ悪霊人形を切り落としまくったどころか、ついには人型をしたゴーストというモンスター状態の悪霊とまで戦うことになり激戦を繰り広げることになった。

 

 結局朝まで悪霊退治は終わらなかった。

 

「お疲れ様だな、アクア、リョウタ」

 

 神聖な力が使えるので悪霊に攻撃力を持っていたダクネスが、同じく戦い終えた俺とアクアを労う。

 

「もう結局眠れなくってくたくたよ。つかれたわ。今日はゆっくりしたーい」

 

 疲れてしおれた女神様がそう言った。

 

「同じく。閉所での戦闘。しかも家だから傷つけちゃいけないという制約の中で戦うのはなかなかにきつかったよ……」

 

「だがこれだけの悪霊を退治したんだ。本来冒険者ギルドが請け負う仕事だし街の悪霊屋敷を除霊したことで臨時報酬が出るかもしれないぞ。この街で悪霊騒ぎが多発している理由も知りたいしギルドに行ってみないか? 」

 

 ダクネスのその提案に、お金に目を輝かせたアクアがしおれた状態から復活する。

 

「じゃあさっそく、冒険者ギルドに行ってみましょう!! 」

 

 

 

 

 ギルドに到着しカズマとアクアがルナさんに掛け合いに行っている中俺たち4人はウェイトレスさんに朝食を頼みながら待機していた。

 

 そういえばあの、アクアの言ってたアンナだが、どうやらアクアのお酒を飲んだのは彼女だがその他の怪奇現象はすべて他の野良悪霊の仕業だったようだ。

 

「俺、間違ってアンナまで斬り裂いてないよな……」

 

「リョウタの神殺しには敵意のある者以外には反応しないんだろう? だったら大丈夫だと思うが」

 

「いや、神殺しの剣に個別の感知機能は無いから……」

 

「……きっと斬っていないさ」

 

「うん」

 

 そんなやり取りをしていると、カズマとアクアが返ってきた。

 

 2人ともしょぼくれている。

 

「何があったのですか? 」

 

 めぐみんの問いにカズマは悲しそうな顔で。

 

「まず今回の悪霊騒ぎの原因はアクアにあった。アクアが共同墓地に定期的に除霊に行くって話になってたのはみんなご存じの通りだと思うが、それをさぼりたい一心でアクアは共同墓地に悪霊がたまらないように強力な結解を張ったそうだ。その結果行き場を失った魂たちが悪霊となってアクセルの街で悪さをしていたらしい。ちなみに俺たちの屋敷もその一例なようだ……」

 

 カズマに続いて、またしおれてしまったアクアが。

 

「臨時報酬が出ることになったんだけど、このまま報酬を受け取ると明らかにマッチポンプになるので報酬は受け取りません……でした」

 

「そうか。……そうか」

 

 まぁ、こんなもんだよな。うん。臨時報酬が出なくっても家が手に入ったんだから良しとしよう。それに今回の戦いでついにレベルが35に。そしてルーンナイトに転職可能になったしな。

 

 俺はカズマとアクアが残念がる中で、ルーンナイトへの転職に心を躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

「社長さん本当にいい人で良かったなカズマ。条件も変わってるけど楽なものだったし」

 

 俺は一緒に屋敷内の庭にある墓を掃除しているカズマと話していた。

 

 俺たちが帰宅すると心配して不動産屋の社長が屋敷を覗きに来ていたので早速事情を話して土下座した。のだが。社長さんは笑って「気にしないでください、冒険者に貢献するのはこの街の住人の義務ですので」と言って悪評が消えるまではこれからも俺たちが住んでいいことにしてくれた。ただし変わった条件を2つ付けて。

 

 それは。

 

「まずその1、冒険をした後は夕食時にでも仲間と一緒にその冒険話に花を咲かせること。その2、このアンナの墓を手入れすること」

 

「アクア曰く、アンナは冒険者の冒険話が好きな女の子だったらしいしな。それでこの条件なんだろう」

 

 俺は墓石を拭きながら、ぞうきんを絞っているカズマにそう言った。

 

 ちなみにアクアの霊視によるとアンナの霊はちゃんとまだ存在しているらしい。昨日の悪霊騒ぎの際には俺たちに誤って悪霊として除霊されないように、すでに屋敷の外にいたそうだ。斬ってなくてよかった。

 

「そうなんだろうな。まさかアクアの言ってたことが本当だったとは。……アンナ、化けて出るのはいいけど脅かさないでくれよー」

 

 カズマが墓石に語り掛ける。

 

「カズマさん、リョウタさんこんにちは。お墓の掃除ですか? 」

 

 突然背後から声をかけられた。振り返ると後ろにいたのはウィズさんだった。

 

「ああ、ウィズさん」

 

「よっウィズ。……昨日はすまなかったな。もう大丈夫なのか、うちのバカがやらかしたターンアンデッドのダメージは」

 

「もう全快したので大丈夫ですよ。それにしても皆さんが住んでくれることになってよかったです。アンナさんもこれで寂しくないでしょうから」

 

 ウィズさんはそう言って優しく微笑んだ。

 

「アンナのことを見に来たのか? 」

 

 カズマがウィズさんに聞く。

 

「はい。今私の横にいますよ。お墓がきれいになって喜んでいます」

 

「おお、いるのかウィズさん。アンナー、こんにちは」

 

 俺はアンナに挨拶した。

 

「アンナさんが「こんにちは。これからよろしくねお兄ちゃんたち」と言っています」

 

「おう、よろしく」

 

「これから住まわせていただきます」

 

 アンナがいるであろう方向に向けてカズマと俺は笑顔を向けた。

 

 それからウィズさんは店番があるのでと言い残し帰っていった。俺たちは墓の掃除を終えると昼食を撮るべく屋敷の中に戻った。 

 

 




 いよいよルーンナイトにリョウタが転職します。ヒキニートから冒険者、そしてルーンナイトというとんでもない出世です。

 それと「勇者王ガオガイガー」は最高のロボットアニメの1つだと思います。ロボはカッコいいしお話は熱いし、設定は凝っているしで個人的に文句の付け所がありません。ちなみにキャラクターで言うとボルフォッグが好きです。

 最後に。高評価、感想。いただけると嬉しいです。励みになっています。

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