ダクネスにスキルを教わって3日後。俺はゆんゆんに各種魔法を教わり、さらにゆんゆんメモの中にあったいくつかのスキルをギルド内の冒険者に金を払って習得した。それにより少ないお小遣いもゼロと化しスキルポイントも底をついたので、お金とスキルポイント稼ぎにクエストに出ることにした。
ゆんゆんも他の上級魔法を獲得するためにスキルポイントを求めており、また、コンビであるため俺と一緒に高難易度クエストに挑戦するということになった。
クエストの内容は、アクセルの近くの大規模な村の墓地で大量のゾンビメーカーが発生し夜な夜な無数のゾンビを操っているためそれを討伐してほしいというものだ。
「報酬の割にはかなりの数の敵と戦わなきゃいけないクエストだな……。ありがたいと言えばありがたいんだが」
「経験値的にはおいしいクエストですけど、仕事量に見合った報酬じゃないのは確かですね。ゾンビは大火力で吹き飛ばすか動けなくなるまでバラバラにしないといけませんし。それにゾンビメーカー本体にとどめを刺すには神聖な力かそれなりの火力の魔法が求められます。だから誰もやりたがらずに放置されてたんだと思います」
村の墓地近くでキャンプを開いた俺とゆんゆんはテントの中で会話する。
今回のクエスト、経験値目当てのため対アンデッドのエキスパートであるアクアを連れてきていない。そもそも仕事量の割に報酬の額が少ないため誘ってもついてきたかどうかは怪しいところではあるが。
「今回のクエストでは学んだスキルも積極的に活用していきたいところだな。何よりゆんゆんから教わったライトオブセイバー振り回すのは楽しみだよ」
「そ、そうですか? 」
ゆんゆんが照れながら聞き返す。
「ああ、お揃いだ。……俺はうれしい」
好意を包み隠すのを忘れて、つい本音がポロリと出てしまう。
しかしそれを聞いたゆんゆんは。
「わ、私も嬉しいです。リョウタさんとお揃い……」
赤い顔でそう言って笑った。そんな仕草をするゆんゆんに思わずドキッとしてしまう。反則だろその言い方!!
「あ、ありがとう」
とりあえずお礼を言っておく。
「い、いえ」
ゆんゆんはうつむきながら返事をする。
それからしばらく無言が続く。
「し、しかしゾンビメーカーの討伐とは最初のころを思い出すな」
珍しくゆんゆんとの間での無言に気まずさを感るので話題を変えるとしよう。
「そうですね、あの頃はお金も結構余裕がありましたけど……今の方が楽しいですね」
「そうだね。まぁ借金を抱えてるのは不安要素だけどそれでも毎日が楽しいよ。アクセルに来てよかった」
「私もです。アクセルに来て本当によかった」
ここにきていなかったら。もしあの時エコノミークラス症候群を発症しなければ俺の人生はきっと暗いものだっただろう。そんな運命のもとにいた俺を今はゆんゆんという太陽の存在に確実に救われている。ゆんゆんには恋心もあるが恩も感じている。
「ありがとうゆんゆん。いつも俺のそばにいてくれて」
「ふぇ!? いきなりどうしたんですか!? ま、まぁコンビですしそれは当たり前と言いますか……」
突然の感謝の言葉に挙動不審になるゆんゆん。だが彼女は少しして落ち着くと優しい顔つきで。
「私こそありがとうございます、リョウタさんは優しくて、温かい、私の陽だまりです」
とても。とても嬉しい言葉が返ってきた。
俺はゆんゆんに必要とされている。
そんな強い実感を味わうことの出来たゆんゆんの一言に俺は……。
「うっ……」
「ど、どうしたんですかリョウタさん!? 」
思わず涙がこぼれた。
ダメだろ俺。人にこんなに必要としてもらえてる経験が初めてだからと言って泣いてしまったら……心配をかけてしまう。
「ごめん目にゴミが入った」
「そ、そうですか、テントの中だから大きめの埃が入ったのかな? 」
「多分そうだと思う」
やばい。涙が出るほどうれしい。
そう思っていると。
「ウォォォォォォ!!!! 」
ゾンビの鳴き声がテントの中に聞こえてきた。
「来たか!! 」
「出てきましたね!! 」
俺とゆんゆんは各々の得物、神殺しの剣とマジックワンドを手にテントの外に飛び出すと、多数のゾンビをその目で確認した。その際に神殺しの剣のブースト段階はディナイアルブラスターを使えるほどではないことも確認する。
「サーチ!! 」
飛び出した俺は神殺しの剣を右手に構えると、新たに習得した魔法、サーチを発動する。敵感知とは違うがこれも周辺の敵や味方の位置を割り出すことの出来るスキルだ。
サーチによると本体のゾンビメーカーを含めたゾンビの数が100体以上存在していた。
「いくよゆんゆん!! 」
「はい!! 初手にて全力で行きます!! ライトオブセイバー!! 」
今回は作戦は特にない。好きなように各個撃破だ。
ゆんゆんの横なぎに展開した長大なライトオブセイバーが一気に10匹近くのゾンビを切り裂き、高出力で爆散させた。
俺はゆんゆんに続き。
「ライトオブセイバー!!!! 」
ゾンビの集団の中に突撃し光の剣の魔法を発動する。神殺しの剣を保持していない左手から放たれたそれは、練習不足でゆんゆんの物ほどの長さこそなかったがそれでも高出力を発揮しており、それを使って俺は3体のゾンビを切り裂いた。
「いいなこれ。長いし大火力だ!! 」
「短くもできますよ!! ライトオブセイバー!! 」
さらにゆんゆんが7体ほどのゾンビを切り裂く。
「負けてられないな!! ファイヤーボール!! 」
火の大玉を発射、ゾンビ2体を焼き尽くす。
ゾンビメイカーたちは俺たちの襲撃に怒りと危機感を抱いたのだろう。一斉に俺たちにゾンビをけしかけてきた。サーチで敵の分布を探ると、ゾンビメーカーの本体と思われるゾンビたちが一歩引いた位置にいることがわかる。
「ゆんゆん本体は後ろの方だ!! 経験値のためにも後回しにしよう」
ゾンビメーカーの手下として操るゾンビは、本体が自分の魂を分割して分け与えられることで操作されている。だから、倒しても経験値がしっかり入るのだ。もし先に本体を倒してしまっては得られる経験値が減ってしまう。
「ありがとうございます!! やぁぁぁ!!!! 」
ゆんゆんは俺の提案に返事をしながら、なおもライトオブセイバーでゾンビたちを切り伏せていく。
俺は魔方陣による罠を仕掛ける職業『クリエイター』。それの魔法スキルを使用することにした。
手近にいたゾンビに直接殴りつけると同時に魔方陣をゾンビに設置する。設置したのは衝撃波を発生させる魔方陣だ。俺はゾンビを蹴り飛ばし仲間の集団の中に放り込むと。
「フェイントオブインパクト!! 」
俺が魔方陣を起動させる。蹴り飛ばしたゾンビから魔方陣が展開し、衝撃波が発すると、周囲にいたゾンビたちは発生した衝撃波に吹き飛ばされ体勢を崩した。
その隙に。
「おりゃぁぁぁ!!!! 」
ライトオブセイバーセイバーを発動して、一気にバランスを崩したゾンビたちを薙ぎ払い消し飛ばす。
「残り60か」
俺たちの火力が高すぎて、単調な動きしかしないゾンビたちにたかられる前に撃退できてしまう。
「楽勝だな」
「そうですね」
俺とゆんゆんは背中合わせになる。攻撃のたびに進撃していたこともあり周囲は完全にゾンビたちに包囲されている。しかしここまで一方的に殲滅してきたのだから危機感はない。それに俺の背にはゆんゆんがいる。負ける気がしない。
「ウォォォォ!!!! 」
俺たちを包囲したゾンビたちが一斉にフリーズを発動し攻撃してきた。冷気が勢い良く迫ってくるが。
「今さっきレベルアップして習得したインフェルノで焼き尽くしてやるわ!! 」
ゆんゆんが手を突き出しインフェルノを唱える。この魔法は最高位の炎の魔法だ。巨大な炎が大量のフリーズを飲み込み、そのままゾンビたちを焼き尽くした。
俺はというと。
「バーニングスラッシャー!! 」
神殺しの剣から炎の斬撃を放つ。フリーズを切り裂きながらそれは突き進み、ゾンビ数体を焼き切った。
「このままぶっ潰す!! 」
「はい!! 」
俺とゆんゆんは同時に対極の位置に驀進する。
「ルーンオブセイバー!! 」
ソードマスターとルーンナイト専用の光の斬撃を剣から射出するスキル、ルーンオブセイバーを発動する。神殺しの剣から爆発的な光とともに強烈な破壊のエネルギーを秘めた魔力の斬撃が横なぎに剣を振った瞬間に発射された。
巨大な斬撃波が一気にゾンビたちを20近く消し飛ばした。
俺はサーチに意識を集中する。残りのゾンビの数は15だった。
「リョウタさん!! こっちは終わりました!! 」
「了解!! 」
俺は応答しながらゾンビの集団に突入して神殺しの剣で切り落としまくる。
そして周囲にいたゾンビを全滅させた。
「残りはゾンビメーカーの本体が入っていると思われるゾンビたちだけですね!! 」
「ああ!! 」
遠巻きのこちらを見ていたゾンビメーカー入りのゾンビたちは手下たちが全滅したのを受けて、パニックに陥っていた、ある個体は俺たちに突撃、ある個体は逃走、またある個体は呆然と立ち尽くしている。
「一匹も逃がすか!! 」
「はい!! 」
「「ライトオブセイバー!!!! 」」
俺たちは呼吸を示し合わせることなく、しかし同時にライトオブセイバーを発動すると、ゆんゆんは右から左に、俺は左から右にへと横なぎに振るった。
2本のライトオブセイバーによって上半身を光の剣に横一線に切り裂かれ爆散していくすべてのゾンビメーカー入りゾンビ。
そして、あれだけ大量にいたゾンビは戦闘開始から約2分、きれいに全滅した。
俺は肩の力を抜き、深呼吸した。
「ふぅ、終わった」
「終わりましたね!! お疲れ様です」
「お疲れ様」
俺とゆんゆんは顔を見合わせると笑いあう。
「いろんな魔法スキルや近接スキルが使えてよかった。レベルも3上がったし。防御系スキルが発揮されてるかどうか試せなかったのは残念だったけど」
冒険者カードを見ながら俺はそう言った。
「ダメージを負わないことに越したことはありませんからね。……私レベルが4上がりました。インフェルノも覚えたから、次はエナジーイグニッションを覚えようかな? 」
「魔法防御の低い敵は一撃だから便利な魔法だよね」
「はい、今あるスキルポイントで……習得できました」
ゆんゆんは冒険者カードをいじり、エナジーイグニッションを習得する。その際に彼女の今回のゾンビ討伐数が61と俺よりやや多いのが確認できた。
「今回は討伐数でゆんゆんに負けたか。魔法の扱いとなるとやっぱりゆんゆんに軍配が上がるな」
「そんな。リョウタさんも初めてなのにたくさん魔法を使いこなせてましたよ。あれだけ扱えているなら十分だと思います」
「そっか。ありがとう」
でも護りたい人に敵の討伐数で負けるのはなんだかモヤっとするな。次は負けないようにしよう。
「これからどうしますか? まだそんなに夜も深くないですしアクセルまで戻ります? 」
「戻ったら大体……」
俺は腕時計で時間を確認する。
「アクセルに戻るとなると大体10時ぐらいか。俺たち二人なら夜道もそんなに危なくないし戻ろうか。寝るんなら寝袋よりベッドの方がよく眠れるし」
「そうですね。じゃあ、村長さんに報告したらアクセルに戻りましょうか」
「うん」
こうして俺とゆんゆんは村長に討伐したことを伝えると帰路についた。
「そう言えばリョウタさんは将来の夢とかこれからの目標とかありますか? 破壊神と戦うこと以外で」
アクセルへの帰り道。ゆんゆんからふとそんなことを聞かれた。
「目標や夢か……」
破壊神と戦うという与えられた使命、もしくは運命ならあるが夢や目標と言われると……ルーンナイトにもなったし、ゆんゆんと恋人になりたいとかそう言うのしかないので「ない」と答えるしかない。
あ、言えそうな目標なら一応ひとつだけあった。
「ないな。ゆんゆんみたいな族長になるっていう立派な明確な夢や目標みたいなものは。あるのはちゃっちゃと借金を返済したい。これくらいだ」
なんかないだろうか? 借金を楽に返済する金儲けの方法。
「そうですか。まぁ借金の返済に関しては私も一つの目標です」
「どうしてそんなことを? 」
「いえ。その、リョウタさんのこと知りたいなと思っただけです」
「そ、そうか。あ、ありがとう」
なんだこの発言。若干顔を赤くしながら言ったことといい、これではゆんゆんからアプローチされているようなものなのでは? ……いや、彼女のことだ。きっと何気に「友達のことをもっと知りたいな」という程度の感覚で聞いているのだろう。変な期待をするな。
そう言い聞かせた後、ゆんゆんと談笑しながら俺はアクセルへと戻った。
今回はルーンナイトの力を紹介するお話でした。
ゾンビメーカーのゾンビの制御方法は本作独自の物です。公式設定ではありません。それと、エナジーイグニッションの魔法防御の低い敵に効果が高いというのも本作独自です。ほかにも、サーチの内容も本作独自です。
また、「バーニングスラッシャー」やクリエイターの魔法として出てきた「フェイントオブインパクト」もオリジナル魔法です。クリエイターの扱う魔法は公式で設定されていないので今後もオリジナルの物がバンバン出てきます。
追記。あとがきにてルーンオブセイバーはルーンナイト専用という記述をしていましたが誤りなので消しました。ソードマスター専用のスキルで、職業内容が本作独自のルーンナイトにも使用が可能というのが正しいです。2020年5月16日1時30分までに読んでくれていた人、すいませんでした。