【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

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30000UA突破しました。高評価の方もありがとうございます!! また、誤字報告ありがとうございました!! 第3章開始です。


第3章 リライズ
033 強さを求めて


 デストロイヤーを倒そうが、破壊神を倒そうが日常は続いていく。

 

 俺たちはデストロイヤー戦後の翌日の昼、ゆんゆんと一緒にクエストを探していた。なぜ朝からではないかと言うと、今日の午前3時まで雑談して会話を弾ませていたから二人とも起きるのが遅かったのと、俺が破壊神との戦いがまだ終わっていないというお告げを受けたことをみんなに説明していたからだ。

 

「それなりの難易度で高額報酬なクエストはなかなか見つかりませんね」

 

「報酬が良さげなクエスト……。なんかないかな」

 

「超高難易度クエストならありますけどさすがにこれらは……」

 

「ふっふっふっ……今の俺ならすごく高難易度のクエストでもこなせる自信がある」

 

 俺はわざとらしく笑いながら隣のゆんゆんに冒険者カードを見せる。

 

 そこに表示されているのは圧倒的ステータスとレベルだ。

 

「まぁゆんゆんを危険すぎる目に合わせる気はないから受けないけどね」

 

「リョウタさん……」

 

 ゆんゆんが少しはにかみ。

 

「それにしてもすごいです!! レベル45ですか……。破壊神倒したからですね」

 

「ああ。まぁ討伐報酬も出ないかもしれないんだからこれくらいの恩恵があってもいいだろう」

 

 ダクネスが破壊神デストラクターが復活していてそれを討伐したんだとすれば大変な功績だからギルドに報告してみてはどうだろと言ったので、ギルドに確認をとってみると、事態が事態なのでギルドだけでは判断しかねるとして報酬は保留になった。

 

 このパターン、おそらくうやむやにされて終わる雰囲気なのでお金がもらえると思わないほうが精神衛生上よろしい。

 

 俺たちはまた掲示板に視線を移し、クエスト探しを再開する。

 

「報酬……報酬。あ、これ変わった報酬ですね」

 

「どうしたんだいゆんゆん」

 

 ゆんゆんが何か特殊なクエストを見つけた様子だった。

 

「えっと……。え!? 」

 

 クエストの依頼書を途中から食い入るように読み始めるゆんゆん。

 

「リョウタさんこれにしましょう……!! 」

 

 そして依頼書をはがして俺の方に見せてきた。

 

「どういうクエストなんだ? ……えっと」

 

 依頼書を読んでみると、リップルと言うアクセルからかなり離れた王都近くの街で出没した悪魔の討伐という内容だった。高難易度のクエストで討伐対象の悪魔の特性として爆発魔法を使うらしいし。3日前デストロイヤーが街の付近を通り過ぎた直後から暴れるようになり街にいる冒険者では歯が立たないらしく、他の街に救援要請をしてきたようだ。

 

 それにしても駆け出しが集まる街に救援を要請するとはどういうことなんだろう? しかも報酬がまた変わっている。少量のお金と、金のエングレービングが施された白いマントなのだ。

 

「どうなってるんだこのリップルって街は」

 

 それにデストロイヤーが付近を通過した直後に被害が出始めたというのも気になる。まさか破壊神の眷族とかではないだろうな?

 

「この街、領主の貴族の人の手腕があまりよくなくて財政難なんですよ。そのせいで冒険者にもまともに報酬が支払えず、ほとんど冒険者が居着かないうえ、居付いた冒険者も育たないんです。だからこのマントを報酬にして他の地域の人にこの悪魔を退治してもらおうとしてるんだと思います」

 

「そのマント。いったいどういう物なんだ? 」

 

「ここには最近リップル近くのダンジョンから拾得した超高性能な魔道具とあります。身につけた者の魔法防御力を向上させられて、マント部分は強固な魔法防御と物理防御を誇り、その上、飛行可能になるみたいです」

 

「随分万能なマントだな。まるで神殺しの剣と同じ神器みたいだ」

 

「そうですね。魔道具の性能からして神器みたいですけど……って、それやっぱり神器だったんですね 」

 

「うん」

 

 俺がさらっと肯定すると、ゆんゆんは不思議そうな顔で。

 

「リョウタさんはいったい何者なんですか? 」

 

 そう聞いてきた。

 

 元ヒキニートと答えるわけにはいかない。自分の過去は今や黒歴史。そして嫌いなもの、否定し続けたいものだ。知られるようなことがあればこれまで築いた信頼関係が崩れかねない。何より今更言い出せるものではない。ずっと隠し通す。過去より今の方がはるかに大事で価値があるから。

 

「ただの青年だよ」

 

 いくばくか間をを開けて俺はそう答える。

 

「それにしては錬金術や神殺しの剣なんて言う凄い物持ってますね」

 

 ゆんゆんが俺の神殺しの剣を見つめる。

 

「まぁいいですけど。リョウタさん過去のこと話すの嫌いですからね」

 

 優しく微笑むゆんゆん。彼女からこれ以上追及が無かったことに俺は安堵する。

 

「それにしてもどうしてこのクエストを? このマントが欲しいのかいゆんゆん」

 

「……はい」

 

 うつむきながら返事をするゆんゆん。

 

 珍しい。

 

「別にこのクエスト受けるのは構わないよ」

 

 破壊神関連案件かもしれない以上、見過ごしておくのも寝ざめが悪いしな。まぁ自分から首を突っ込むのもどうかと思うが。

 

 それにしてもゆんゆんがこれを欲しがる理由がわからない。

 

「なんだ、手に入れたあと売ろうってことかい? 」

 

「いえ、使おうと思って。少々邪道ですがこれがあれば強くなれるじゃないですか。そうすればリョウタさんと……一緒にもう少し戦えるようになるんじゃないかって思って」

 

 ゆんゆんは少々照れながらそう言った。かわいい。そして嬉しい。

 

「ありがとうゆんゆん」

 

 俺はゆんゆんの健気さにお礼を言った。

 

 

 

 

 俺とゆんゆんは件のクエストを受けることにした。正直、爆発魔法を使う悪魔は危険すぎる存在だ。「ゆんゆんを危険すぎる目に合わせる気はないから受けない」と、言ったそばからこのクエストを受けるのはあれだが、これから先、破壊神との戦いがもう一度あるかもしれない以上ゆんゆんの安全確保という意味でもパワーアップアイテムは必要だ。

 

「と言うことでしばらく留守にする。デストロイヤー討伐の臨時報酬とかは4人が俺たちの分も受け取っておいてくれるか? 」

 

「よろしくお願いします」

 

 俺とゆんゆんは帰宅し、リビングにて、今日はクエストを探す気が無いカズマたち4人に件のクエストを受けることを報告する。

 

 クエストは俺とゆんゆんだけで受ける。理由は俺たちのパーティーに、現状では2人分程度しか旅費が捻出できる余裕がないことだ。フルメンバーで挑もうして、デストロイヤーの臨時報酬が入るまで待っていては他のパーティーにマント獲得を先を越されかねない。

 

 暖炉の前のソファで仲良く暖を取っていたカズマとアクアが。

 

「了解だ」

 

「分かったわ!! 」

 

 口々にそう返事をする。二人ともこっちにサムズアップしている。

 

 俺はサムズアップでそれに応えた。

 

「しかし街に大打撃を与えるような悪魔だぞ、二人だけで大丈夫なのか? 」

 

 俺たちに心配を投げかけてくる、机でお茶を飲んでいるダクネス。

 

「大丈夫だよ。俺には神殺しの剣があるし、ゆんゆんとの連携で今までいろんなクエストを達成してきたんだ。何とかできるさ」

 

「しかしだな……」

 

「破壊神と戦った時のリョウタさんの凄さを考えれば、悪魔に負けることなんてないと思います」

 

 ゆんゆんが俺に信頼の目線を向けながら言い切った。

 

 しばし沈黙した後。

 

「そうか。私はリョウタのすさまじさを目にしていないからよくわからないがゆんゆんが言うのであればそうなのだろうな。リョウタをいつも間近で見ているお前の言葉だ、信じるとしよう」

 

 目を細めるダクネス。

 

 何かほほえましいものを見る目のようにも感じるのは気のせいだろうか?

 

「とはいえ、油断してはいけませんよ。さっき2人の言っていた説明に爆裂魔法の1つ格が下の魔法である爆発魔法を使用するという内容が聞き受けられました。かなり危険ではあると思います。……まぁ範囲や形すら制御した爆裂魔法を連射してくるらしい、もっと危険な破壊神を倒したリョウタにとっては今更感のある敵でしょうが」

 

 ちょむすけと戯れているめぐみんの言葉の後半は少し恨めしそうで、なおかつ羨ましそうだった。そりゃ自分の目指す爆裂道の先の先にいるような存在の破壊神について言うのだからこうもなるだろうな。

 

「うん。だからまぁ問題ないだろ。でも油断しないように万全の状態で挑むよ」

 

 めぐみんに俺は笑顔でそう返す。

 

「ねぇめぐみん、あなたなら破壊神と同じところにまで達することができるわよ」

 

 ゆんゆんは、俺と同じでめぐみんの言葉の裏にある感情を読み取ったようで、そんな励ましを彼女に送った。

 

「当然です。私は爆裂道を極めんとするもの。絶対に破壊神と同じ土俵にまで上り詰めてやりますとも」

 

 マントをひるがえしながら自信満々に宣言するめぐみん。

 

 やっぱりこの子もかわいい。

 

「じゃあさっそく準備したら馬車の乗り合い所まで行くよ。ゆんゆん、急ごう」

 

「はい」

 

 そして。俺とゆんゆんは準備を済ませた後、4人と1匹に玄関まで見送られながら屋敷を後にした。

 

 

 

 

 早足で馬車の乗り合い所まで向かう俺とゆんゆんは雑談していた。

 

「私、馬車での旅は久しぶりです。でもこんな長旅は初めてですね」

 

「ゆんゆんは馬車での旅の経験があるのか? 」

 

「はい、リョウタさんは? 今の言い方だと」

 

「ない。……ここまでは徒歩で来たから」

 

「そうですか」

 

 俺の嘘を疑うことなく信じた様子のゆんゆん。それに少し罪悪感を俺は覚える。

 

 ああ、嘘はつきたくないものだな。

 

「ちなみに馬車での旅はどんな感じだった? 」

 

「そうですね……、乗り心地はまぁまぁですね。それと、初めての馬車での旅の時はめぐみんと一緒だったんですよ!! ただその時は……何度かモンスターに襲われたりしましたね。しかも悪魔が追い立ててきたモンスターだったんですよ。そのうえ、その悪魔とも戦いになって……」

 

 懐かしそうに語るゆんゆん。

 

「強かったのかい? その悪魔」

 

「強かったですね。今の私なら少しはマシな勝負が多分できると思いますけど。結局めぐみんが爆裂魔法で倒しちゃいました」

 

「めぐみんが悪魔を何度か葬った我が爆裂魔法って言ってたのを覚えてるけどその時だったのか」

 

「はい。ちなみに2度目はアクセルの街の近郊の森に現れた悪魔ですね。私も腕利き冒険者の人たちと一緒に戦ったんですけどとどめを刺せなくて。結局めぐみんが最後の一撃を見舞う形でした」

 

 え、腕利き冒険者と一緒? 意外だな。この子が俺に出会う以前に他の人と一緒にクエストを受けてたなんて。

 

「どうしましたリョウタさん?そんな鳩が豆鉄砲を食らったようなお顔して……」

 

「いや、何でもないんだ……」

 

「……もしかして私が誰かと一緒に戦ったことがあるのが意外だったんですか? 」

 

 げ、ばれてる。というか鳩が豆鉄砲喰らうなんてフレーズがあるのか……。転生者が持ち込んだのか? それはともかくここは素直に認めるか。

 

「はい。実はそうです」

 

「もう、ひどいですよ。私だってリョウタさんやめぐみん達以外と組んだことも一応あるんですからね。パーティーに誘われたことだってその……2回はあるんですから」

 

 頬を膨らませるゆんゆん。年相応でかわいらしい。

 

「あ、そう言えばパーティーに誘われたのもそのうち1回は馬車の中でしたね」

 

「そうだったんだ」

 

「はい。あのお姉さん、今も元気かなぁ? 」

 

 どうやら同性だったらしい。しかしそんな組みやすそうな相手の誘いをなぜ断ったのか?

 

「ちなみになんでその人とパーティーを組まなかったんだい? 」

 

 組んでくれてなくて正直ありがたいのだが。理由が気になる。

 

「あう、それはですね、その人の行き先がアルカンレティアだったからなんです。あそこにはもう行きたくないです」

 

 ゆんゆんがげっそりした顔をする。

 

「アルカンレティア? あの街か? 」

 

「はい。あそこはアクシズ教徒の総本山ですから……とんでもない人ばかりいるんですよ」

 

「アクシズ教徒か……」

 

 破壊神復活の一端を担ったとんでもない集団と言う印象が強い。

 

「あの人はたちろくなことしない人たちですね。それに、破壊神復活の遠因だったみたいですし。もう関わりたくないです。アクアさんはいいですけど」

 

「ゆんゆんにろくでなし評価されるんだからとんでもないんだろうなアクシズ教徒」

 

「はい、とんでもない人たちです」

 

「アクアですら正直言うとかなりあれな子だから、その信者となると、似たような感じなんだろうな……」

 

「いえ、アクアさんは純粋な子供みたいな感じですけど、アクシズ教徒の人たちはなんというか、みんなアクアさんとは別ベクトルでフリーダムな感じです」

 

「会いたくないな」

 

 そんな本音がこぼれる。

 

「私もです」

 

 やがて俺たちは馬車の乗り合い所に到着した。乗り合い所は人でごった返している。

 

「にぎやかだね」

 

「そうですね……。えっとリップル行きの馬車は……っと」

 

 ゆんゆんが行き先であるリップル行きのキャラバンを探し始める。俺もゆんゆんの後ろをついていきながら各キャラバンの行き先を確認していくが……どうやらリップル行きのキャラバンは無いらしい。代わりに、カルタットと言う目的地に行くためにリップルを一時休憩の場所として停泊するキャラバンを見つけた。

 

 リップルは小さな街だ。そのうえ財政難で、観光名所と言ったものも特にない街。そんなところに直通のキャラバンは無いのだろう。

 

「これしかなさそうだな。料金は結構かかるがこのキャラバンに乗せてもらうか」

 

「そうですね。そうしましょう」

 

「それにしても馬の脚で1週間は大体かかるのか。遠いな」

 

「すいません。私のために」

 

「いいよ。全然気にしないで。馬車での旅自体がすごく楽しみだしさ」

 

 それに好きな子と遠出ができるのだ。楽しみにならないわけがない。

 

「よかったぁ」

 

「さてと、じゃあどの馬車に乗るか決めたらキャラバンの料金支払い所にさっさとお金払おうか」

 

「はい!! 」

 

 俺とゆんゆんは、馬車の中でも乗り心地が良さそうな(俺たちにとって乗り心地がいいというのは人の数の少なさも含まれる)馬車を選んでキャラバンに料金を支払った。




 公式にはリップルなんて街は存在しません。

 さて、リョウタとゆんゆんの2人旅が始まりました。しばらくオリジナル展開はありますが、バニル戦にはちゃんと参加しますのでご安心を。というかバニル戦が本章の最大の見せ場です。
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