また、seato様が挿絵を作ってくださりました。
これがTシャツ姿の涼太です。
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そしてこちらがプロローグの紅目涼太です。
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どちらも素晴らしい完成度です。本当にありがとうございました!!
馬車10両で構成されたキャラバンがリップル方面に向けて出発する。馬車の中には結局、俺とゆんゆん以外にも6人ほどの客が乗り込んだためやや居心地が悪い空間となってはしまったがそれは致し方ない。
それはそうと、馬車の中から見るアクセルの景色は新鮮だ。景色が移り変わっていく様がまるで車に乗っているときの感覚を思い出す。
ゆんゆんは窓の外を俺と同じく眺めている。やはり旅という物は人を高揚させたりするものなのだろう。その顔は楽しさを感じさせるものだった。
馬車はほぼ一定の速度で進みながら雪に彩られたアクセルの街を出て、これまた雪が各所に散見される荒野の中を進んでいく。荒野の、街を出てすぐの場所にはデストロイヤーが消し飛ばされた際にできた巨大なクレーターがある。そしてデストロイヤーの足跡も。荒野を抜けると平原に。しかしここにもデストロイヤーによってつけられた大きな足跡が散見された。
「デストロイヤーの爪痕が多いな、と言うかリップル方面からやってきたってことは進む先々で何度も遭遇しそうだな」
「そうですね。それにしてもデストロイヤーってなんでリップルは通過して、アクセルにはやってきたんでしょうか? ここ最近、他の街がデストロイヤーの被害を受けたという報告は特に聞いてないですし……アクセルに来たのはただの偶然なんでしょうか? 」
「破壊神が言ってた言葉の中に、破壊に強い因果を持つものを操る力があるみたな内容があったから、直観だけどデストロイヤーの進路はある程度制御されてたと思うよ」
「だとしたら目的は何でしょうか……まさか、アクセルにあったあの要石の奪取? 」
ゆんゆんは鋭いな。俺は全く想像できなかったが、そうかもしれない。
「そうかもね。狙いはアクセルにあった要石の奪取で、自分の力を取り戻すことが目的だったのかも」
「だとしたら、無駄足でしたね破壊神。めぐみんが要石もろとも壊しちゃってましたから、残機も力も」
「だね。……そうだゆんゆん、破壊神関連かもしれないよ、今回の悪魔」
「あ、やっぱりリョウタさんもそう思ってましたか? 」
「あいつが俺に倒されるときの残した言葉の中に自分の眷族が活動してるからいずれ我は復活するみたいなこと言ってたからね。……リップルはデストロイヤーの付近通過直後に被害が出始めたって話だから犯人の悪魔は破壊神の眷族かもしれない」
「だとしたら、私たちの手で絶対に倒さないといけませんね。破壊神はリョウタさんの宿敵ですから」
「そう、だね。なんか巻き込んでるみたいでごめんねゆんゆん」
「そんな!? 気にしないでくださいリョウタさん……!! 私はあなたのパートナーなんですから」
「パートナー……か」
なんだろう、毎度毎度思うがいい響きだ。これで人生のパートナーって意味なら最高なのに。
やがて、デストロイヤーに荒らされた穀倉地帯を抜けた馬車は、なだらかな山を登り始めた。山には綺麗に雪が積もっており冬将軍の時を思い起こさせる一面銀景色でとても美しい。
「綺麗……」
ゆんゆんがつぶやく。そんな言葉を聞いていると「君のほうが綺麗だよ」などと言うあほなセリフを思いついてしまい慌てて心の内にしまい込む。
「これでモンスターとかも出てこなければ最高なんですけどね。……でも、よくよく考えると冬ですからモンスターは出てこないか」
「俺は出てきてくれてもいいぞ。乗客に危険が及ばない程度の強さのモンスター。悪魔に合う前に肩慣らしくらいはしときたいしね」
「リョウタさんって意外と武闘派ですよね……優しいのに」
「そうかな、俺は本質はインドア派だよ」
「インドア派? 」
「あ……」
いかん失言だ。
今の俺はインドア派なんかではない。昔の俺は封殺すると決めたんだ。もう俺はインドアなんかじゃない。もうちがう、絶対にちがう。絶対に……絶対に……絶対に……!!
たとえコミュ障が完全に治りきっていないとしても少しずつ改善されてきてるんだ。だから俺は違う。前の俺なんかとは違う。俺はゆんゆんに必要とされる人間だ。
いや、そもそもゆんゆんに必要とされるってなんだ? よくわからない。基準がわからない。だけど、少なくとも今の真人間な俺は必要とされる存在であることは確かだ。パートナーだと言ってくれるんだ。だからこれが正しい俺だ。あるべき姿なんだ。ゆんゆんは……!!
「リョウタさん、大丈夫ですか? 突然つらそうな顔しましたけど……体調悪いですか? 」
ゆんゆんの心配そうな顔が俺のネガティブな思考を途中で中断させる。
「いや、ちがうんだ。なんでもないんだ……」
言葉がしりすぼみになっていく。そう、大丈夫かと言われればそんなことは無いからだ。
「そんな風には見えませんよ!! 少し落ち着いて何も考えずに景色でも一緒に眺めましょう? 」
「あ、ああ……」
俺は言われるがまま、無心になり外の景色を眺めることにした。
が。
「オーガだ!! オーガが出たぞ!! 」
「護衛の冒険者の皆さん、よろしくお願いします!! 」
無心になって数秒のうちに、キャラバンの人の大声が響く。
「オーガ!? そんなばかな!! 」
「何でこの季節に、しかもこの数は!? 」
護衛の冒険者と思しき者たちの嘆く声がする。
「大丈夫だよねママ? 」
「冒険者の人たちが護ってくれるわよ……大丈夫よ」
俺とゆんゆんのいる馬車の中がどよめく。
「俺も出る……!! 」
「ダメです……!! 」
神殺しの剣に手をかけ、立ち上がろうとした俺の服のすそをゆんゆんが力強く引っ張って静止した。
俺は座ったままの姿勢で。
「……何で止めるんだい? 」
そうゆんゆんに問いかけた。
「今さっきのリョウタさんの体調の悪そうな顔を見て戦っていいだなんて言う人がいると思いますか? パートナーとして、リョウタさんが戦うのを禁止します」
ゆんゆんが……、あの引っ込み思案なゆんゆんがここまで力強く言い切った。
その事実に俺は。
「分かったよ、ゆんゆん」
納得し、戦わないことを決意する。神殺しの剣にかけていた手をのける。
「二人でここで、様子を見守りましょう」
「うん」
こうして俺とゆんゆんは、戦いの顛末を見守ることにした。
オーガの数は15匹。対して冒険者の数は20人だ。
オーガとは人語を理解し話すことの出来るモンスターで、群れで行動する。非常に戦闘能力が高い種族だ。ちなみに人を喰う。通常5匹くらいで活動し、その数だけで十分すぎる脅威として認定される。それが今3倍の数で襲ってきている。
はっきり言って緊急事態だ。
冒険者たちが向かってくるオーガに向けて一斉攻撃を仕掛ける。オーガの方もそれに対応し陣形を組んで冒険者たちに襲い掛かった。
「しかしこの寒い時期に活動するモンスターなんてあんまりいないだろ。珍しいな」
「オーガは知能が高いですからね。それにこの数で襲ってきてるってことは何か理由があるのかもしれません。もしかしたらデストロイヤーに住処を壊されて食糧難な状態だとか……?」
冒険者たちは前衛後衛に分かれて的確な連携でキャラバンの右側から攻めてきた15匹のオーガに攻撃を加えていく。
「押してるな冒険者たち。これなら余裕そうだ」
「そうですね。でもちょっと変かも」
「どうして? 」
「普通、あんな無策に正面攻撃を15匹もの群れで行ってくるとは思えないんですよね……」
「でも逆に、15匹だからこそゴリ押し戦法に出て来たとも考えられないかな? 」
「確かにその可能性もありますね」
俺とゆんゆんが考察している間に、オーガが2匹ほど撃退される。だが、冒険者側も3名ほど戦闘不能になったようだ。
「拮抗、いや、やや押されてるな」
「……そうですね」
これはやっぱり参戦したほうがいいじゃないかと思い始めた矢先。
「左方からもオーガが出たぞ!! 数は10だ!!!! 」
「嘘でしょ!? 」
「なに!? 」
「右側だけで手いっぱいなのに左からもかよ!! しかも総数が俺たちより多い!! 」
オーガの群れが10匹ほど左方から現れた。それに呼応するかのように冒険者たちの悲鳴と怒声が飛び交い。
「ママ……」
「大丈夫、大丈夫よ……!! 」
馬車の中にも動揺が広がり恐怖が空間を支配し始めた。
「ゆんゆん、行こう」
俺は立ち上がり言った。ここで何もしなければ間違いなく冒険者たちは倒され乗客はもれなくオーガの胃の中に入ることになってしまう。
「そう、ですね。仕方がありません!! 行きましょう。でもリョウタさんは無理しすぎないでくださいね? 約束ですよ? 」
「約束する」
「じゃあ行きましょう!! 」
「ああ!! 」
俺とゆんゆんは馬車の中から勢いよく飛び出しキャラバンの左側に躍り出た。
「お客さん? なにをしてるんですか!? 」
「俺たちも冒険者なので戦います!! 」
俺とゆんゆんが乗り込んでいた馬車の御者のおじさんが驚愕の表情を浮かべる中、俺たちは向かってくるオーガに向く。
「おうおうおう!!!! ひょろい坊主に、姉ちゃんじゃなぇか、すりつぶしちまえ!! 」
オーガが俺たちを見て罵声を浴びせながら近づいてくる。
その手にはアックスが握られていた。
「ゆんゆん、いつも通りのフォーメーションで行くぞ!! 」
「はい!! 」
俺はまず先頭にいるアックスを持ったオーガに全速力で突撃すると、オーガの斬撃をうまく翻した後、フェイントオブバーナー……、『クリエイター』の魔法で爆炎を放射する魔方陣をオーガの腹に殴りつけて設置し、発動する。
腹から推進力が発生したオーガは悲鳴を上げながら後方に吹き飛ばされていく。それに追い打ちとしてゆんゆんが放ったライトニングが命中しオーガは焼き焦げる。
「おめぇ、よくも俺の弟分をやりやがったな!! 」
ガントレットで武装したオーガが俺の横から殴り掛かってくる。俺は拳の一撃を、左の手のひらに展開した魔方陣型バリア、ガーターで受けとめる。その瞬間。想像以上の衝撃が俺の全身に走った。おそらくまともに喰らえば吹っ飛ばされて、どこかにぶつかり内臓破裂でもしそうな威力だ。
「わしらもおるで!! 」
「おんどりゃー!!!!!!!! 」
連続で繰り出される正拳突きをガーターでガードしている中、左右から1匹ずつオーガが突貫してきた。
「ちっ!! 」
「援護します!! 」
その2匹に対し、ゆんゆんがマジックワンドと素手の両方から発動させた長大なライトオブセイバーで俺への接近を阻止する。
俺は左手でガーターを発動した状態で、右手の神殺しの剣に魔力を集め、ルーンオブセイバーを発動。オーガが拳を引いた一瞬のスキをついてガーターを解除。大火力の光の斬撃を、オーガの胴体に撃ち込み、上半身を消滅させる。
「ゆんゆん、次は棍棒持ってるやつを倒す!! ゆんゆんはインフェルノで!! 」
「わかりました!! 」
俺は、棍棒を装備したオーガ。先ほど俺に突貫してきた2匹のうちの1匹に狙いを定める。
「わしか、わしとやるんか!? 」
オーガに全力の体当たりを食らわせ神殺しの剣を突き刺す。その瞬間オーガが怯み出来た隙をついて左手でオーガの身体に触れて、錬金術を発動。
「引き裂けろ!! 」
上半身と下半身を分断するように錬成。オーガが二つに割れる。
その一方で、後方から弓矢や、投石を行おうとしていたオーガたちにゆんゆんがインフェルノを発動。巨大な炎の津波が雪を溶かしながら彼らを飲み込み、一網打尽にする。
「「「ぎゃぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!!! 」」」
燃え盛る炎に巻き込まれ、オーガたちが悲鳴を上げながら焼けて、炭化して、崩れて、絶命していく。そんな中でもインフェルノに耐え抜いた2匹が炎の中から現れてゆんゆんへと迫る。
俺はトンファーを持った、先ほど俺に襲い掛かってきた二匹のうちの生き残りの方のオーガと相対しているが、エアスライサーを発動し、風の斬撃波を俺の横に展開した魔方陣から打ち出して距離を取らせると、その隙にゆんゆんへと迫る2匹にバーニングスラッシャーを射出した。
ゆんゆんは、バーニングスラッシャーを背中に喰らい、のけぞった2匹にマジックワンドから発動さえた大出力のライトオブセイバーを見舞い、消滅させる。
それを見届けると、トンファーを持ったオーガの打撃を回避と防御でいなし続け、相手の一瞬の隙を見計らい続けると、やっとできたその瞬間に、ライトニングを浴びせる。同時に。奇しくもゆんゆんも俺への援護で放ったのがライトニングだったため、2方向から攻撃を喰らったオーガはしびれで動きを狂わされ、それとともに熱量で焼かれ悲鳴を上げる。
「とどめだ!! 」
俺はそんなオーガにルーンオブセイバーを食らわせ、爆散させた。
「すげぇぞあの二人……!! 」
「10匹のオーガをいとも簡単に倒しちまった!! 」
「お客に頼むのは筋が違うってのはわかったうえでお願いする!! こっちのオーガを倒すのも手伝ってくれ!!!! 」
「「はい!!!! 」」
俺とゆんゆんが冒険者たちの救援要請を承諾し、キャラバンの右側に行こうとすると。
「リョウタさん!! 」
「へ? 」
突如飛来した大きなアックス。
それが、俺の横っ腹に命中し、馬車の側面に俺は叩きつけられた。
「油断してるからだぜぇ!! 兄弟をやってくれた分はきっちりお返ししてやるけんな!!!! 」
馬車の側面から地面にずり落ちた俺は、何が起きたか分からないでいた。が。アックスが食い込み腹から出る血と、俺に罵声を浴びせてきているオーガの姿から、一番最初にフェイントオブバーナーで彼方に吹っ飛ばしたオーガによる報復であることを認識した。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
ゆんゆんの悲鳴が聞こえる中意識が遠のいていく。このままではダメだ、確実に死ぬ。
「許さない許さない許さない許さない許さない!!!!!!!! エナジーイグニッション!!!!!!!!」
ゆんゆんがエナジーイグニッションを、アックスを投げたオーガに向けて発動。オーガの足元で魔方陣が展開されると、オーガは青白い業火に突如包まれて死滅した。
「……っ!! 」
俺は「ありがとうゆんゆん」と言おうとしたが言葉が激痛のせいで遮られる。このままだとまずい。
別に油断してたわけじゃなかったんだが、さっき考えこんでたせいで勘が鈍ってしまってたか?
「リョウタさん!! リョウタさん!! リョウタさん!? 」
ゆんゆんが涙を流しながら横たわる俺のそばにやってくる。
どうしたもんか、治癒魔法で何とかなるのかなこれ? 俺の周囲は血だまりができ始めていた。
「どうしよう……どうしたらいいですか!? 」
パニックに陥っているゆんゆん。俺のためにこんなに取り乱してくれるとは、うれしい限りだ。
「止血だよ!! 止血すればまだ助かると思うから早く血を止めて!! 」
パニックに陥るゆんゆんと、どんどん気が遠のいていく俺にそんな声がかけられた。その声は聞いたことのある声で、クリスの物だった。
止血、止血か。だったら。
俺はアックスを力技で引き抜く。
「な、何してるんですかリョウタさん!? 死んじゃうよぉぉぉ!!!! 」
ゆんゆんが発狂する中。俺は傷口に向けて。
「……ファイヤーボール」
激痛とともに傷口が炭化する。その瞬間、血も止まった。また痛みの上乗せで意識が一気に回復する。
「すごい強引だけど止血できたみたいだね……。あとは護衛の冒険者の人にプリーストの人がいるからすぐに治療してもらおう? 呼んできてあげるから」
「頼むよクリス。ゆんゆんは向こうの冒険者の援護に向かってあげてくれ。もう大丈夫だから」
視界に入った、膝をついているクリスとゆんゆんにそう声をかける。
「で、でもぉ……」
「大丈夫だよゆんゆん。本人がこう言ってるんだし。それよりこっち側のオーガを倒すのを手伝って。じゃないと結果的にリョウタが死ぬことになるよ? 」
「わ、わかりました。リョウタさん行ってきます。すぐに戻ってくるから」
ゆんゆんが涙を拭きながらクリスの指示に従って向こう側のオーガ討伐に参戦する。
「じゃあちょっと、待っててね、プリースト呼んできてあげるから」
クリスが言葉通りプリーストを呼びに行く。
俺は馬車に背中を預ける形で体を起こし、プリーストの到着を待った。
それからいくばくもしないうちにプリーストが到着。俺の傷を腕がいいのか綺麗に修復してくれた。俺は治療してくれたプリーストの女性にお礼を言うと本調子ではないもののオーガ殲滅に参加した。
このすば世界のオーガらしい口調を書くのが大変でした。
ちなみにフェイントオブバーナーは公式にはありません。
さて、いよいよリョウタの闇が表にも明確に見え隠れし始めました。これからの展開をお楽しみに。