【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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036 リップル

 アクセルを出発して7日後。キャラバンはリップルに到着した。道中、やはりデストロイヤーに住処を荒らされて冬眠から目を覚ましたモンスターたちの襲撃が何度かあり戦うことがあったが、初日のように大けがをして死にかけるようなこともなく撃退することができた。

 

 俺とゆんゆんとクリスは、リップルの馬車乗り合い所にてキャラバンのリーダーの男性に頭を下げられていた。

 

「ありがとうございました、あなた方3人がいらっしゃらなければ我々のキャラバンは今頃全滅していたでしょう。これはほんのお礼です。受け取ってください」

 

「いいんですか? 」

 

 お金がぎっしり入った袋を各々手渡される俺たち。

 

「そんな、受け取れませんよ、冒険者として当然のことをしたまでですし」

 

 そんなことを言うクリス。

 

 え、受け取らないの?

 

「そんなこと言わずに受け取ってください。お願いしますよ」

 

 男性はペコペコ頭をクリスに下げる。

 

「うーんじゃあ貰おうかな。ありがとうございます」

 

 クリスは苦笑しながら礼金を受け取った。

 

 よかった。これで俺とゆんゆんもお金を受け取りやすいというものだ。

 

 それから、護衛の冒険者や、長い間一緒に過ごしたことでそこそこ仲良くなった乗客に手を振られながら俺たちはリップルの冒険者ギルドへと向かった。

 

 

 

 

 

「思わぬところでお金が稼げたな。これでリップルでの滞在費用とアクセルへの帰りの馬車代は浮く。それどころか借金返済にもまた一歩近づくね」

 

「そうですね……!! 」

 

 地図を見ながらギルドに向かう道中、俺はゆんゆんとクリスと雑談していた。

 

 リップルの街は財政難と聞いていただけあって、どこもかしこも建物が古びており、街ゆく人々にも活気がアクセルのようには無かった。というか、活気に関してはもはや無と言ってもいい。

 

 無気力そうな人や、悲しそうな顔の人々が道を行きかっている。

 

「寂しい感じの街ですね……」

 

 それを見たゆんゆんが小さな声で呟く。

 

「そうだね……。あ、クリスはお金どうするんだ? 」

 

「あたし? あたしは生活費以外はエリス教の運営してる孤児院に寄付するよ」

 

「「立派だ……」」

 

「いやいや、そんな、別に褒められるようなことじゃないよ。好きでやってることだからね」

 

「そう言えるのがすごく立派だと思います」

 

「うんうん」

 

「あはは、ありがとう2人とも」

 

 頭をかきながらそう言うクリス。心優しい子だな本当に。

 

 クリスに対しもはや尊敬すら抱いていると、どこか焦げ臭い香りが唐突にしてきた。

 

「ん? なんだか焼けた後のにおいがしますね……」

 

 ゆんゆんもそれに気づき指摘する。

 

「ほんとうだね、何でだろう? 」

 

「こっちの方だよ」

 

 俺たちはにおいが気になったため地図をいったん畳み、足を運ぶ方向を変える。

 

 すると見えてきたのは、あまりにも悲惨な光景だった。

 

「……なんなんですかこれ? 」

 

「これって、どういうことなんだ……? 」

 

「さぁ……? でもよくないことが起こったのは間違いないね……」

 

 多くの建物が爆発させられる形で倒壊している。街の一区画が焦土と化していた。地面は荒れて土がむき出しになり、クレーターがいくつも散見され、瓦礫がそこら中に広がっている。まるで戦争でもあったかのようだ。

 

「この街ってデストロイヤーに襲われてないはずだよな。なのになんで」

 

「これってもしかして、討伐依頼のあった悪魔の仕業なんじゃ……」

 

 そう言えば爆発魔法を使う悪魔と情報があった。その力があればこんな惨状を引き起こすのも不可能ではないだろう。俺はこの被害で犠牲となった人たちを思うとやりきれない気持ちになった。

 

「ゆんゆんの言う通りだと思う」

 

 クリスが歯を食いしばる。

 

 心優しい彼女にとってこの光景は許せたものではないのだろう。

 

「早くギルドに行こう、リョウタ、ゆんゆん。そして一刻も早く悪魔を倒そう」

 

 固く決意した表情のクリス。

 

「そうですね、こんなひどいことをした悪魔は倒さないと……!! 」

 

 ゆんゆんもまた心優しい少女だ。この光景を見て、おそらく報酬のことよりも悪魔を討伐することに意識が向いている。

 

「ああ。俺たちでやろう」

 

 こうして俺たち三人は地図を広げると速足でその場を後にし、ギルドへと向かった。

 

 

 

 

 ギルドの中の雰囲気もまた陰惨としていた。冒険者たちにはアクセルの冒険者のような活気などなく死んだ目をしている者もいれば、おそらく街の被害のせいだろう。悲痛な表情をしているものも見受けられた。

 

「悲しいところだな……」

 

「……そうですね」

 

「だね……」

 

 俺たちはギルド内の空気について感想を述べた後、ルナさんのような元気のない沈んだ様子の受付嬢にアクセルから悪魔退治に来たと言った。

 

 その瞬間ギルド内の空気が一変する。

 

 まずは受付嬢が。

 

「ほ、本当ですか!? あなたたちがあの悪魔を討伐してくださるんですか!? 」

 

 血相を変えて、窓口から身を乗り出して俺たちに問いかける。

 

 しかし。

 

 続くリップルの冒険者たちの言葉は期待に満ち溢れた受付嬢の態度とは程遠かった。

 

「無理に決まってるだろ。王都から騎士の大部隊が派遣されない限り倒せっこないって!! 」

 

「どうせ報酬目当てなんだろ? それが目当てで昨日出ていったよそから来た奴らは帰ってこなかったぜ!! 」

 

「第一私たちが総力を結集して戦っても倒せなかった悪魔だよ? たった3人で勝てるわけが無いわ。あきらめて帰った方がいいわよアンタたち」

 

「それに今は街はずれの森にいるだけだから、下手に刺激しないほうがいいと思うんですがねぇ!? 」

 

「そうだ、また街が火の海になったら今度こそこの街から住人と一緒に避難しないといけなくなる!! そうなったとき責任とれるのかよアンタたち」

 

 そのようなネガティブなことを口にしまくった。

 

「ちょっ、あなたたちなんでそんなに諦めてるのさ!? 自分たちの街でしょ!? 」

 

 クリスが焦る。

 

 ゆんゆんはおどおどしている。

 

 俺はと言うと、悪魔がこの街の冒険者の心を折るに十分な強さを秘めていることと、死人が出ていることに少なからず動揺した。

 

 アクセルの街では大けがを負った者の話は聞いても死亡したという話は聞いたことは無かった(主にアクアのおかげで)。しかしここでは人が死んでいる。

 

 ベルディアやデストロイヤー、破壊神を倒しておいて、さらに一週間前にも死にかけていたにもかかわらず死を間近に感じて怖気づくなどなんだか今更過ぎる気もする。

 

 だが、クエストをやめる気はない。あんな悲惨な光景を見たのだ。あれが繰り返されるようなことは容認できない。

 

 自分の中に芽生えている正義感を、良くもこんなものを抱けるようになったものだ。などと内心感心していた。それともゆんゆんがいるからこう振舞っているだけなのだろうか?

 

「とにかく情報をくれないかな!? 」

 

「情報なら私が知っている限りのことを話します!! 」

 

 受付嬢がクリスの問いかけに応えた。

 

「何でエメラちゃんはこいつらにそんなに肩入れしてるんだ!? 」

 

「どうせ今までの外の冒険者みたいに返り討ちに合って帰ってくるか、帰ってこないかでしょ? 」

 

 どうやら受付嬢の名前はエメラと言うらしい。

 

 エメラさんは冒険者たちの声を聴き、真剣な表情になると声を張り上げて。

 

「この方たちはアクセルの冒険者の中でも随一の強さの冒険者なんですよ!! 魔王軍幹部、勇者殺しのベルディアを倒しデストロイヤー破壊の中心人物にもなった。そういう人たちなんです!!!! そう、アクセルの冒険者ギルドからクエストを受注された際に情報をもらってるんです!!!! 」

 

 エメラさんのその一声を聞いた瞬間、ギルド内は静まり返った。

 

「皆さんこの方たちにできる限りの情報をさし上げましょう!? あの悪魔に少しでも勝てる可能性のある人たちなんです!!!! 」

 

 

 

 

 

 それから俺たちは件の悪魔と戦ったことのある冒険者やエメラさんからいくつもの情報提供を受けた。

 

「情報を整理するよ」

 

 真剣な顔のクリスが言う。

 

 席に着いた俺たち3人は作戦会議を開いていた。周囲では興味深そうにリップルの冒険者たちが俺たちを見つめてる。そのせいで少しゆんゆんは居心地が悪そうだ。俺も同じ気持ちだ。

 

 ちなみにリップルの冒険者たちは情報提供してくれたり、俺たちの作戦に対して興味こそ示しているものの、完全に戦う気力を失ってしまっており(情報収集しているうちにわかったことだが実に所属する冒険者の3分の1が悪魔との戦いで死んでいるため)助力はない。もともと、ゆんゆんが言っていたように冒険者が育たないし普通は居付かない街なので、ここに居付くような冒険者ははっきり言って質がいいとは思えないので最初から期待はしていなかったが。

 

「まず悪魔の名はゲキドラス。体長は4メートルくらいで体形はゴリラのようなバランスをしてる。顔は凶悪な面構えで噛みつかれたら危なそうなギザギザの歯。翼が生えていて体は左右が黄色と緑色に分かれてて黄色の左半身からは電撃を、緑色の右半身からは風を放ち操る力を持ってる」

 

「そして爆発魔法も使いこなしてる、でしたね。でも片言で話してて知能はそこまで高くなさそうって話でした」

 

「知能が低いところを突く必要がありそうだな。この場合、俺の習得してる『クリエイター』系列の魔法で罠を張りまくって、そこに誘い出してどんどんダメージを与えていくのがいいんじゃないか? 」

 

 俺は作戦をさっそく提案する。するとクリスが……。

 

「真正面から挑んで即座に潰すのはどう? リョウタの神殺しの剣のパワーがあればできそうだけど」

 

 思いもよらない一言を口にした。

 

「き、危険すぎませんかその作戦は? と言うか作戦と言えない気がするんですが……」

 

「あはは、そうだねごめん」

 

 クリスが心底申し訳なさそうに謝る。

 

 いったい何を焦っているのだろうかクリスは。そんなに悪魔を早く倒したいのだろうか? 気持ちはわかるが……。

 

「クリス、焦りすぎると命取りになるよ」

 

「うん、ごめんね悪魔が嫌いすぎて早く倒さないとって思うあまり軽率な発言をしちゃった」

 

 クリスは頭をぺこりと下げて謝罪した。

 

「エリス教の人は悪魔がとても嫌いらしいですし、仕方ないですよ」

 

 ゆんゆんがフォローする。

 

「ありがとうゆんゆん」

 

「さてと、じゃあ気を取り直して。俺のさっき言った作戦どうだろうか? 」

 

「うん、いいと思う。でも風と雷の魔法は耐性がありそうだから仕掛けるなら別の魔法だね」

 

「そうですね。それに空を飛ばないとも限りませんから、罠に誘い込むとしたら空を飛ばないように弾幕を張るか、クリスさんのバインドで自由を奪っておくかしないといけませんね」

 

「それに破壊神の関係者かどうか聞きださないといけないな。……あとは俺個人の問題として神殺しの剣がどのくらい起動してくれるかも加味しないと」

 

 破壊神との戦いほどの性能発揮は期待できない以上、ベルディア戦程度の出力と最低値は見積もっておいた方がいいだろう。

 

 …………。作戦会議は実に2時間に及んだ。

 

 

 

 

 悪魔ゲキドラスの位置は冒険者たちから得た情報の通り、リップル近郊の森だった。森は木々が吹き飛び、荒れ果てており、雪が乱雑に重なり合った残骸に積もっている。これもゲキドラスが引き起こしたものらしい。

 

 俺はそんな荒れ果てた森の中にいくつも魔法陣による罠を仕掛けていく。破壊神討伐でレベルが上がったことに伴い獲得した大量のスキルポイントを動員していくつも取得した『クリエイター』の魔法が正しい形で使用できるのはうれしい限りだ(今までは敵を殴りつけた際に設置して使用するという罠とは言えない使い方ばかりだったので)。

 

「この木の下にも設置しようよ、万が一悪魔に罠を全部見透かされても物理的に見え辛ければ命中率が上がるし」

 

 クリスが盗賊としての経験則を生かして色々アドバイスしてくれる。

 

「そうだね。ここには爆発するトラップオブブラストを仕掛けるか。あとチェーンバインドも」

 

「いいと思います。確実にダメージを与えられるコンボになりますね」 

 

 今回の作戦は簡単に言うとゲキドラスに破壊神関係者か質問しながら、いくつもの罠に誘導してダメージを与えていき弱ったところを大火力魔法で畳み掛け、最後にディナイアルブラスターで消失させるという物だ。とどめにディナイアルブラスターを使うのは悪魔の残機を呪いの力でまとめて削り取れるからだ。これは神器に詳しいクリスからの提案で、俺以上に神殺しの剣に詳しいのは驚かされた。それと、俺が真正面から突っ込んで滅ぼすという案を作戦会議の最初に出した理由も納得がいった。

 

「これでだいたい設置は完了かな。魔力も底をつきそうだ。神殺しの剣が起動すれば回復するけど」

 

「しかしびっくりですね。神殺しの剣に反応がないなんて」

 

 そう、ゲキドラスは確実にこの森の中にいる。派手な緑と黄色のそのゴリラ体系のピエロのようなボディも望遠鏡にてしっかりと確認しているのだ。が、向こうが敵意や害意を現在俺たちに抱いていないせいで神殺しの剣が起動していないでいる。普通のメンタルをした敵であれば常に自分に害をなす存在に対して何かしら思うところが無意識化で存在しているため、神殺しの剣もおそらく起動するのだろうが。まさか寝ているのだろうか? なんにせよ難儀なものだ。

 

「じゃあそろそろゲキドラスのところに行くとしますか」

 

「うん……!! 」

 

「はい……!! 」

 

 ゲキドラスが何もせずに突っ立っている、巨大なクレーターの中心に俺たちはゆっくり近づいていく。ガーターが使える俺が先頭で、その後ろにゆんゆんとクリスが続く。俺は神殺しの剣を抜き放った状態で。ゆんゆんはマジックワンドとダガーの二刀流で、クリスはダガーとバインド用の頑丈なワイヤーを手にした状態だ。

 

 やがて、ゲキドラスとの距離が約10メートル。クレーターの端の方にたどり着いたのだがゲキドラスは何もしてこないし反応もしない。

 

「なんだか寝てるみたいだからこのままバインドかけた後襲い掛かって首をはねようか……」

 

「それは迂闊すぎるよクリス。頭に血が上りすぎだ。やるなら大火力攻撃で先制だ」

 

「うう、ごめん。悪魔が相手だとつい、ね」

 

 しかし、まさか本当に寝ていようとは驚きだ。

 

「ライトオブセイバーいつでも撃てますよ? 」

 

「よし、各自できる最大火力を叩き込んであいつの目を覚まさせる。ただし情報を聞き出さないといけないから急所と思われる場所は外そう。合図とともに一斉攻撃だ。その後は手はず通り後方に下がっていって質問に答えてもらいつつ罠に引っ掛けるぞ」

 

 ゆんゆんとクリスが頷く。

 

「よし、攻撃開始……!! 」

 

 俺は戦いを始めるための一言を口にした。

 

「ルーンオブセイバー!!!! 」

 

「ライトオブセイバー!!!! 」

 

「ワイヤートルネード!!!! 」

 

 二つの高出力の塊がゲキドラス各腕に直進し突き刺さる。そしてそれと同時にクリスの手から射出された大量のワイヤーがゲキドラスを包み込むように展開し、その後一気に弾けるかのように中心へと暴れまわった。

 

「グワァァァァァァ!!!!! 」

 

 さっきまで突っ立ったまま眠っていた様子のゲキドラスが悲鳴を上げる。どうやらダメージにはなったみたいだ。ワイヤーが暴れまわったことによってできた切り傷と2つの大出力魔法を喰らったことによるやけどが全身(特にその大きな両腕)に刻まれている。

 

「2人とも!! 」

 

「わかってるよ!! 」

 

「もう一発ですね!! 」

 

 もう一度俺たちはゲキドラスに向けて必殺の技を叩き込む。

 

 しかし、それらは命中する前にゲキドラスを中心に展開された球体魔方陣によって防がれる。

 

 雪と爆炎と土煙が周囲に漂う中ゲキドラスは球体魔方陣を解除して。

 

「イッタイナンダ? ナンダ? 」

 

 きょろきょろと周りを見渡しやがて俺たちに目を向けた。

 

「気づいたみたいだね!! 」

 

「神殺しの剣にも反応ありだ!! 」

 

「オマエタチ、オレ、キズツケタ。イタイ、イタイ。ユルサナイ」

 

 ゆっくりとそう言葉にした後、人型にしては極端に肥大な両腕をこちらに向け、右腕からか竜巻を。左腕から稲妻を放ってきた。

 

「ディナイアルブラスター!! 」

 

 冬将軍と戦った時と同程度の強化具合なのを瞬時に感じながら俺はディナイアルブラスターを発射する。ディナイアルブラスターと竜巻と稲妻がぶつかり合い、爆発を起こした。

 

 爆風にあおられてクリスがバランスを崩す。

 

「大丈夫ですかクリスさん? 」

 

「大丈夫!! それより、攻撃だよゆんゆん!! 」

 

「は、はい!! エナジーイグニッション!! 」

 

 魔方陣がゲキドラスの下に展開される。だが、何のアクションも発生しない。

 

 エナジーイグニッションは相手の生命エネルギーを無理やり炎に変換する魔法だ(しかも炎の強さや消火は自由に操作可能で、手加減もできる)。……しかし、魔法攻撃に対する耐性が高ければ防がれてしまう物だ。おそらくゲキドラスの魔法耐性は極めて高いのだろう。

 

「なら、ライトオブセイバー!!!! 」

 

「バーニングスラッシュ!!!! 」

 

「ウィップインパクト!!!! 」

 

 ゆんゆんが標的の左腕を切り裂かんとライトオブセイバーを、俺はそれに合わせて炎の斬撃を、クリスはワイヤーを鞭のようにしならせた一斬をゲキドラスの右腕に見舞う。と同時に俺は目配せして2人とともに後退する。

 

「キカナイゾ」

 

 ゲキドラスは再度展開していた球体魔方陣で俺たちの攻撃を防ぎきるとそれを解除。後退する俺たちに右腕から竜巻を発射してきた。俺はそれをディナイアルブラスターで迎撃する。

 

「オレ、ネテルノニジャマシタ。ユルサナイ」

 

 翼を展開して巨体に似合わぬスピードで俺たちに距離を詰めてくるゲキドラス。俺たちはと言うと全力疾走で罠を仕掛けているポイントに下がっていた。

 

「早すぎませんか飛ぶの!? 」

 

 翼をはためかせ低空飛行で迫ってくるゲキドラスにそうこぼすゆんゆん。

 

「バインドで足止めするね!! バインド!! 」

 

 クリスが後ろを振り返り、ゲキドラスに向けてバインドをかける。ゲキドラスはそれをよけることなく喰らい、両腕と翼を巻き込んで簀巻きになった。

 

「あれ? あっさりと掛かっちゃった」

 

「間抜けすぎだろう……」

 

 これ罠にかけるまでもなく倒せるんじゃないのか?

 

 そうなるととっとと質問したほうが良さそうだ。

 

 俺たちは足を止めて、ごろごろと地面を転がっているゲキドラスの方を見つめながら問いかける。

 

「ゲキドラス!! お前の主人は誰だ!? 」

 

「デストラクターサマダ。……ウーン、ウーン、ホドケナイ……」

 

「やっぱりか。お前の目的はなんだ? 破壊神の命令か? 」

 

「オレ、バカダカラムズカシイコトバワカラナイ。デモメイレイ? デ、サガシモノシテル。ロッカッケイノホウセキ、パズルノピースヲ」

 

「六角形の宝石で、パズルのピース? いったい何だろう」

 

「デモ、イッパイコワシテサガシタノニソレミツカラナカッタ。ダカラ、モウメイレイ? ハシナイ。ツギノメイレイ。ニンゲンイッパイコロシテ、デストラクターサマニササゲル? 『スパリュード』モ『テンロン』モヤッテル。……ホドケソウ」

 

「『スパリュード』と『テンロン』。そいつらはお前の仲間か? 」

 

「ナカマデ、キョウダイ。3タイデデストラクターサマニツクシテル」

 

「眷族はあと2体いるみたいですね……聞いた限りの情報が正しければ」

 

「そうみたいだね。……なぁ2人とも、破壊神って人間一杯殺せば復活とかするのか? 」

 

「神や悪魔は魂を取り込むことで強くなったり、弱っていても元通りになったりできるよ。ただ必要な魂の量がそれなりに必要で、破壊神クラスだと残機1つにつき大体……1000人くらいはいるんじゃないかな……? 」

 

「ソロソロホドケソウダ。ホドケタラオマエラモデストラクターサマニササゲル」

 

「そのささげる相手はもう滅ぼしたけどな!! 」

 

「ホロボシタ? ハカイサレタノカ? デストラクターサマガ? 」

 

「そうだ、俺が破壊した。残念だったな!! これからお前が何人、殺そうが、殺してきてようが無意味だ!!!! 」

 

 ゲキドラスの動揺を誘えるかと思い俺は真実を叫んだ。

 

「ソンナ、デストラクターサマガハカイサレタ? 」

 

 どうやら効果はてきめんだったらしく、もがくのをやめて固まった。

 

「そうだよ、だからさっさとここで滅んじゃえ!!!! 」

 

 破壊神関係者なのが判明して、残りの倒さなきゃいけない眷族の数もわかった。眷族2体を滅ぼせば破壊神復活も阻止できる。ついでに、こいつの目的も把握した。やることといったらあとは処理するだけだ。

 

「ディナイアルブラスタァァァァ!!!!!!!! 」

 

 俺は全力を込めたディナイアルブラスター。射線上の物を轟音とともに全て消し去り突き進むどす黒い光線をゲキドラスに放った。

 

 




 ワイヤートルネードはこのファンでのクリスの必殺技です。一方、ウィップインパクトや、クリエイターの魔法として出したトラップオブブラストやチェーンバインドはオリジナルのスキル及び魔法です。

 さて、次回はひたすら戦闘の話です。

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