【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

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045 壊れる、崩れる、暴かれる

「「「ダクネス(さん)!? 」」」

 

「フハハハハ、フハハハハハハハ!!!! 」

 

 まず、バニルの仮面が張り付いたダクネスはいきなりバニルの声で哄笑を始めた。

 

「聞くがいい貴様ら!! この鎧娘の身体は我輩が「どうしようみんな、体が乗っ取られてしまった!! 」乗っ取った、攻撃できるものなら「一向にかまわん攻撃してくれ!!」やかましいわっ!! なんなんだお前は!? 」

 

 そしてバニルとダクネスの声の入り混じった一人漫才を始めた。

 

「どうなってんの? 」

 

「リョウタ、多分これはバニルがダクネスの身体を乗っ取ろうとして失敗したパターンだ」

 

「マジで? 」

 

「だってそうだろこの光景、どう考えたってそうとしか思えねぇ」

 

「ダクネスさんの意識が表に出てますからね……」

 

 バニルinダクネスは後ずさりながらなおも一人漫才を続ける。

 

「バカな。なんだこの「麗しい娘は」何という頑強な精神力「まるでクルセイダーのかがみのような奴だな」やっかましいわ!! 」

 

 俺たちは、一人で言い争っているバニルinダクネスをどうしたらいいか分からず、しかし放置するわけにもいかず戸惑っていると。やがてカズマが。

 

「ゆんゆん手伝ってくれ、俺たちで魔方陣を消そう。リョウタはバニルinダクネスを見張っといてくれ」

 

「え、それでいいんですか? 」

 

「だって攻撃してくる気配がないし、やれるうちにさっさとやっといた方がいいだろ」

 

「そ、そうですね」

 

「わかった……見張っとくよ」

 

 ゆんゆんとカズマが奥の部屋に侵入し魔方陣を道具を使って消していく中、俺は一人でもがき続けるバニルinダクネスを一応神殺しの剣を構えてあきれ顔で見つめ続けた。

 

 やがて待つこと数分。

 

「終わりましたよリョウタさん」

 

「お疲れ様リョウタ」

 

「……ああ」

 

「その精神力は称賛に値するな。「いやぁ」しかし耐えれば耐える程に汝の身体には耐えがたい痛みが「なんだと!? 」……なぜ喜んでいる? 」

 

 バニルがダクネスのドMさ加減に戸惑っていると、ついにバニルはダクネスの身体から出ていくことを選択したようだ。

 

「この身体は失敗だった。「おい、人の身体に失敗だとか失礼ではないか!? 」紅魔の娘の方にするべきだった……。もういい、我輩は出ていく!! 」

 

「それは困るな」

 

 カズマがそう言うとさっと何かをポケットから取り出しバニル仮面に張り付けた。

 

「なんだこれは? 剥がせない」

 

 バニルが張り付けられたそれを剥ごうとするが剥げないでいる。

 

「ちょっ、カズマさん? 」

 

「お、おいカズマ、それって封印用のお札じゃ……」

 

「うん。セナさんからもらった封印用の札だ。このまま上まで上がってアクアにダクネスを浄化してもらう。そうすればバニルを討伐できる」

 

「な、なるほど」

 

「ひ、ひどくないですかその作戦? 」

 

「じゃあゆんゆん。これ以外にいい案あるか? 」

 

「……ないです」

 

 ゆんゆんが目を背けながら言う。

 

「と言うことで頑張って外まで行くぞダクネス。やれるな? 」

 

 

 

 

 

 それから俺たちは全力疾走でダンジョンから地上へと戻っていく。その間にもダクネスとバニルの一人漫才のような何かが繰り広げられていたが無視した。なにせ、本来大ピンチな展開のはずなのにダクネスが喜んでいるせいでそう感じれずに、呆れるしかない状況だからだ。突っ込む気力も湧いてこない。

 

「こ、小僧よ、我が支配力に耐えているこの娘の身体には常に激痛が走っている!! 「ああ、なんて心地よいんだ」耐えれば耐えるほどその激痛は増していく「うむ、そのようだな」やがてはこの憎からず貴様の思っている娘の精神が崩壊してしまうぞ「ん!? 」よいのだな? 「ま、待てカズマ、今この見通す悪魔が変なこと言わなかったか!? 」」

 

「き、気のせいだ!! 忘れろダクネス!! 」

 

 まっすぐな階段を駆け上がりながらそんなやり取りをするカズマとバニルinダクネス。

 

 そうか両想いだったか。よかったなカズマ。

 

「おっと、人生舐め切っている小僧がハーレムっぽくて少しだけ羨ましい青年よ」

 

「羨んでねーし!! 」

 

 この悪魔は!!

 

「おい、リョウタ、どこをどう見たら俺がハーレム築いてるようん見えるんだよ!? 」

 

 カズマ。お前が気付いてないだけでダクネスとめぐみん両方から好意を寄せられてるかもしれないんだぞ。めぐみんの方は不確定だけど。

 

「汝この仮面の封印の札をはがせば我輩が超絶当たる恋占いをしてやるぞ。汝の恋が成就すること間違いなしだ。どうか? 」

 

「リョウタさんが恋してる!? 相手は誰なんでしょう……

 

「……はっ!? いかん、手が無意識にバニルの仮面に伸ばされていた!! 」

 

 何という悪魔のささやきだろう。

 

「ちっ!! これも効かぬか、まぁ良い。……支配は完了した」

 

 そう言えばダクネスの声が聞こえてこなくなった。

 

「これから貴様らの仲間の忌々しいプリーストにきついのをお見舞いしてくれるわ!! 」

 

 バニルが速度を上げる。ダクネスの身体能力は高い。おまけに乗っ取られているせいでタガが外れているようなので、とても普通に走っているだけでは追いつけない。

 

「階段は直線!! 今なら使える!! ウイング展開!! 」

 

 俺は1対の高密度な、金色をした電撃状のエネルギーで形成された羽を展開。バニルに追いすがる。

 

「速いな神殺しの青年よ!! だが、追いついたところでどうする!? 」

 

「羽交い絞めにして止めるんだよ!! 」

 

 見通す悪魔のことだ。どうせ俺の思考を見透かしている。ならば最初からやることを言ってしまっても問題あるまい。

 

 後ろに回るが、ひょいっとうまく体を逸らして俺のホールドを回避するバニル。

 

「クソ、間に合わない!! 」

 

「フハハハハハ、では、忌々しいアークプリーストに……」

 

 バニルがそこまで言った瞬間ダンジョンの外に躍り出た。その直後。

 

「セイクリッドハイネスエクソシズム!!!! 」

 

 青白い光線が上方から照射されバニルを飲み込んだ。

 

「ぬわぁぁぁぁ!!!!「ぬわぁぁぁぁ!!!!」」

 

 俺はすんでのところでその光線に飲み込まれずに停止する。ダクネスの悲鳴も重なって聞こえてくる。どうやら、意識は完全に乗っ取られたわけではないらしい。むしろ今ので覚醒したのだろうか?

 

 やがて光線が止んでから外に出ると。ひざまずき体から黒い煙を出しているバニルinダクネスがいた。

 

「バカ、アクア!! いきなりダクネスに魔法ぶちかますな!! 心臓に悪いだろう!! 」

 

「そ、そうですよ。酷いと思います!! 」

 

 あとからやってきたカズマとゆんゆんがアクアのその暴挙とも言える出会いがしらの魔法攻撃に文句を言う。

 

「え? だって邪悪な気配を感じて撃ち込んでみたんだけど、いけなかったの? 」

 

「ダクネスいったいどうしてしまったのですか? そんなカッコいい仮面なんかつけて」

 

 めぐみんがダクネスの仮面。つまりはバニルに興味を示す。

 

「フハハハハ、我輩の仮面の良さがわかるとはさすがは紅魔族よ!! 我が名はバニル!! そして忌々しい水の女神と同じ名のプリーストよ!! 出会い頭にいきなり魔法を放ってくるとは、これだからアクシズ教徒は忌み嫌われるのだ!! 礼儀を知らんのか!? 」

 

「なんですって!? ってダクネスから凄い悪魔臭がするんですけど!! 」

 

「あ、あの仮面は魔王軍幹部バニルの仮面!? 」

 

 セナさんがダクネスの仮面を見て驚き声を上げる。

 

「今ダクネスは魔王軍幹部、見通す悪魔バニルに体を乗っ取られてるんだ!! 」

 

 カズマが大声で叫ぶ。

 

「魔王軍幹部だって? 」

 

「本当かよ!? 」

 

「それにダクネスさんが乗っ取られてるって!? 」

 

 冒険者たちがどよめいた。

 

「いかにも!! 我輩は魔王軍幹部にして、見通す大悪魔、バニルである!! さぁ冒険者どもよキリキリと掛かって来るがいい!! 「くっみんなすまない」」

 

「み、皆さん、確保を、確保をお願いします!! 」

 

 セナさんの一声で冒険者総勢16人とアクアにめぐみんが身構える。

 

 そして一斉にバニルinダクネスに襲い掛かった。

 

「みんなダクネスを取り押さえてちょうだい!! 私がもう一度セイクリッドハイネスエクソシズムを撃ち込んで倒してあげるから!! 」

 

『了解!! 』

 

 バニルinダクネスはすぐさま取り囲まれて、全方位から攻撃を仕掛けられる。が。

 

「フハハハハ、フハハハハ!!!! この体は頑強なクルセイダーだぞ冒険者たちよ。おまけに主導権を握っているのがすべてを見通す我輩である以上!! このように貴様らの攻撃などかすりもせんわ!! 」

 

 バニルinダクネスは全方位からの攻撃を回避し、それどころか反撃して冒険者数名を吹っ飛ばした。

 

「ダクネスさん、あんたには失望したぜ!! 」

 

「そうだそうだ!! 」

 

「俺、あんたがカズマのチームの中では一番まともだと思ってたのに!! 」

 

「攻撃が当たるようになったとたん調子に乗りやがって!! 」

 

「今は地獄の公爵バニルであ「ああ、普段気さくに話しかけてくれる冒険者たちがあんなにも蔑んだ目で私を見ている!! くぅん!!!!」……何という頑強な精神」

 

 冒険者たちからの罵倒で気持ちよくなっているダクネスに感心して立ち止まるバニル。

 

 ディナイアルブラスターはダクネスを焼きかねないから使えないし、ここはアクアの言うようにダクネスを取り押さえるしかないか。

 

「ゆんゆん、行くぞ!! 俺たち2人も参加しよう!! 」

 

「はい!! 」

 

 俺たちは互いに飛行し、上空からバニルinダクネスを強襲する。

 

「空を飛ぶか!! 青年に紅魔の娘よ!! 」

 

「おりゃぁぁぁぁ!! 」

 

 ダクネスの剣をまずは叩き落す。若しくは破壊しようと急降下斬撃をバニルinダクネスに行う。しかしそれをバニルinダクネスはステップを踏んで後方に回避する。だが。

 

「やぁぁぁぁ!! 」

 

 ゆんゆんが後方に瞬時に降下して回り込み、ハルバードをバニルinダクネスの鎧部分に叩きつける。

 

「っ硬い!! 」

 

「フハハハハ!!!! いくら高レベルのアークウィザードでも所詮はアークウィザード。その筋力ではこの頑強なクルセイダーにダメージなど通らぬわ!! 」

 

 それでも体勢は崩れた。今だ!!

 

「はっ!! 」

 

 俺は好機とみて神殺しの剣でダクネスの剣を弾き飛ばそうとした。しかし思った以上の筋力のバニルinダクネスは剣を頑なに保持し続け、回し蹴りと言う形で反撃を一瞬のうちに行ってきた。

 

 俺は鎧で威力の強化された回し蹴りを、籠手で受け止める。一瞬バニルinダクネスの動きが止まる。その隙に他の冒険者たちが一斉に攻撃を加えるが、バニルinダクネスはその場で回転切りをして一斉攻撃を払いのける。俺は後方にいったん下がった後、再度武器破壊を狙って突撃。剣を振り下ろす。

 

「ふん!! 「すごい!! リョウタの剣を受け止められている!! 」やかましいわ!! 」

 

 バニルinダクネスは精神的には相反しながらも完璧な動きで俺の斬撃をガードする。神殺しの剣は神器。ダクネスの剣は頑丈と言っても所詮はただの剣だと思っていたが、想定よりだいぶ頑丈だった。冬将軍に武器破壊された反省からだろうか?

 

「もう、動き回らないでよダクネス!! 助かりたいの? 助かりたくないの? 」

 

 なかなか良いタイミングや、不意を見つけられないでいるアクアがバニルinダクネスに問いかける。

 

「「す、すまないアクア」フハハハハ、待っておれプリーストよ、必ずきつい一撃を見舞ってくれようぞ!! 」

 

「その前に俺とゆんゆんとこの冒険者軍団を倒してからだ!! 」

 

『おぉぉぉぉ!!!! 』

 

「フハハハハ。無駄である!! 」

 

 何度目かの全方位近接攻撃を回避しつつ反撃してさらには冒険者の武器をいくつか切断し使用不能にするバニルinダクネス。そして武器を失った者から鋭い蹴りや、みねうちの餌食となり戦闘不能にされていく。

 

「くそっ!! ダクネスさん人が変わればあんなに強いのかよ!? 」

 

「どうなってるんだ、動きが速すぎるだろう……!! 」

 

 冒険者たちが強いダクネスに不満を口にする。言いたくなる気持ちはよくわかる。肉体のリミッターまで解除されているせいで手が付けられないほど強い。おまけにこっちは本気の攻撃を見舞えない。

 

「「リョウタ!! こうなればお前のディナイアルブラスターで焼いてくれ」やれると思うかこの青年に?「できる。頼むリョウタやってくれ!! これ以上私はみなを傷つけたくない!! 」ほう、やる気になったのか神殺しの青年よ」

 

 心の内まで読まれというのはなんと不愉快な。

 

 そうだ。ダクネスに言われて俺はディナイアル系列の技を使う気になった。

 

「まずはヒット&アウェイでダメージを蓄積させる!! 」

 

「やれる「ものなら」やって「みるが」いい!! 」

 

 気丈にか、あるいは本心からこのように振舞うダクネスに安心感を覚えながら俺は彼女を救いバニルを倒すため本気で攻撃することにした。

 

「「ゆんゆんも遠慮はいらん!! 魔法を使え!!」この紅魔の娘には無理だぞ鎧娘よ」

 

「で、できません、ダクネスさんが死んじゃうかもしれないのに!? 」

 

「「大丈夫だ私は死なん」この防御力があれば確かにそう言える自信も湧いてくるであろうな」

 

「ゆんゆん無理しなくていいよ!! 俺がやるから!! みんなも下がってくれ!!」

 

 そう、ダクネスがたとえダメージを負ったとしても、たとえ死んだとしてもアクアがヒールで肉体を修復してリザレクションをかければ最悪の場合でもなんとかなる。ただそんな最悪をゆんゆんに押し付けるわけにはいかない。ここは俺がやるべきだ。

 

 ゆんゆんは悲痛な顔でその場に固まり、冒険者たちもアクセルで最高レベル(現時点でレベル50)の俺の言葉に耳を貸し下がってくれた。

 

「ほう、殺す気でかかってくるか、面白い。大した精神力であるな。さすがは偽物を演じ続けてきただけのことはあるという物だ「ん? 偽物とは? 」」

 

 っ!!

 

 気にしてたまるか。攻撃する。

 

 俺はダクネスの右腕の関節に向けて神殺しの剣を滑らせる。それをバニルinダクネスは見通す力で読み切り回避する。だが、絶対に当てる!!

 

「ディナイアルセイバー!! 」

 

 範囲を絞り直径1メートルほどになったディナイアルセイバーにバニルinダクネスの腕が巻き込まれ、腕の鎧が崩壊する。同時にダクネスの肌が焼けていくのが見ていて痛々しいがこれには耐えるしかない。

 

「「っ!! 良い、いいぞリョウタ!! これがディナイアルセイバーか!! 」喜んでおる場合か。汝、我輩がもう少し早く腕を引いていなければ片腕を失っていたのだぞ!!「わかっているとも。素晴らしい威力だ!! 」ええい、神殺しの剣は我輩たちの残機すらも削り取ってくる技も放てる。本当に紅魔の娘の方を乗っ取るべきだった!! 」

 

「今更後悔しても遅い!! 絶対に滅ぼしてやる!! 」

 

 俺はディナイアルセイバーの状態で神殺しの剣を振り回し、追撃を加えていくが、うまく回避し続けるバニルinダクネス。

 

「リョウタのやつ本気なのか!? 」

 

「リョ、リョウタ、ダクネスを殺してしまうのですか!? 」

 

「ちょっと神殺し!! 跡形もなく消しちゃったら蘇生できないから注意してやりなさいよ!! 」

 

「そ、そう言う問題なんですかアクアさん!? 」

 

 パーティーメンバーたちの戸惑いやアドバイスを耳にしながら、俺はバニルに心を読まれぬように無心を心がけてディナイアルセイバーを振り回し続ける。

 

「汝、無心になったか。ならば、それ相応の対応をさせてもらうとしようか!! このダンジョンを作った者の言葉を律儀に守り続けているつもりの腑抜けた青年よ!! 」

 

 これで煽っているつもりだろうか?

 

 俺がしゃがみこんで横一線に振ったディナイアルセイバーをジャンプして回避する。ダクネスの腰マントが若干焼き消えた。

 

「汝は恋は忍耐などと言う言葉を盾にして、自分を演じていることも耐えるべきこととしているようだが、その嘘で塗り固めた自分自身ががどこまで続くか心配なのだろう? 」

 

「うるさい!! 」

 

 なんなんだ!?

 

 俺がディナイアルセイバーを縦に振り直すが身をひるがえして空中で回避するバニルinダクネス。

 

「見通す悪魔が保証してやろう。汝それを続けていればいずれ心が壊れるぞ? 」

 

「黙れ!! 」

 

 なんなんだこいつは!? 人の心にづけづけと入り込んでくる感覚がある。本当に不愉快だ!!

 

 着地したバニルinダクネスに俺は素早く袈裟斬りを仕掛けるがそれを回避して俺に左ストレートを叩き込んでくる。その威力は高く、鎧を潰され、見事に拳の衝撃を腹に命中させられた俺は肺の空気を吐き出さされせき込む。だが。その状態でもウイングの力で無理やり体の方向を変えてディナイアルセイバーで追撃する。

 

 しかし、その場しのぎのような一撃を魔王軍幹部、まして見通す力を持った悪魔に通じるはずがなく完全回避されて、今度は蹴りを顔面に喰らい後方に吹き飛ばされた。

 

 俺は痛みに耐えながらウイングで補助しつつ体勢を整える。

 

「気分はどうであるか? おっとこれは失敬、顔を見ればまるわかりであるな。紅魔の娘にご執心の青年よ!! 」

 

 勝手にゆんゆんへの思いを大声でばらすなよクソが!!

 

 俺はバニルinダクネスに突撃する。

 

「過去に誇れるものが何もない青年よ。おっと、これも失敬。今も取り繕っていて、汝からすれば全てが虚飾に思えて仕方が無いようであるな」

 

「黙れと言ってんだろ!!!! 」

 

 俺の突きを簡単に躱すと、腹の、潰れた鎧部分に膝蹴りを打ち込んでくるバニルinダクネス。

 

「ぐっ!! 」

 

「汝、過去がすべて黒歴史で、羞恥でしかない無様な者よ!! 」

 

「それをゆんゆんの前で言うんじゃない!!!! 」

 

 俺は肺の空気がほとんどない状態で無理やり大声を出すと左手にライトオブセイバーを展開、首を狙って振りかぶった。

 

「仲間を傷つけることを承知の上で我輩を黙らせたいと思っている、顔面真っ赤な青年よ。貴様からは羞恥の悪感情よりも憤怒の悪感情の方が得やすいな。過去のことを話されるのがそんなに嫌であるか? 紅魔の娘の前で!! 」

 

「しゃぁべるなぁぁぁぁ!!!! 」

 

 こいつを黙らせる、絶対に黙らせる。過去をゆんゆんに伝えられる前に!! 

 

 俺はライトオブセイバーとディナイアルセイバーの二刀流をバニルinダクネスに振り回した。だが俺の攻撃はなぜか当たらない。

 

「フハハハハ、狙いが甘くなっているぞ!! 汝、引きこもりのニートだった見苦しい青年よ!! 紅魔の娘からしたらさぞ失望ものであろうな!! 」

 

「え、リョウタさんが引きこもりでニートって? そんなこと」

 

「ゆんゆん耳に入れるな、こいつの言ってることは全部嘘だ!!!! 」

 

 俺は必死にゆんゆんの方を向いて嘘を重ねる。

 

「紅魔の娘の前で粋がり続けねばならぬ哀れな青年よ、まだ嘘を重ねるのであるか? 汝、過去に紅魔の娘に嘘はつかないと言っておきながら紅魔の娘に嘘に嘘を重ね続けているではないか!! 貴様の本質はどこまでもまっすぐでありたいと願っている嘘つきのひねくれ者である!! フハハハハハ!!!! 」

 

「嘘つきのひねくれ者? リョウタさんのどこが? 」

 

「紅魔の娘よこの青年は汝に気に入られたいがために過去を封殺してきたのだ。そのくせ内心では己の過去を汝に受け入れてほしい難儀な者なのである」

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ、黙れぇぇぇぇぇ!!!! 」

 

 俺は無茶苦茶な動きでウイングによって加速された体当たりを敢行した。バニルinダクネスもさすがに読み切れなかったのか、あるいは読んでいても避けられなかったのかそれを喰らい後方へと弾き飛ばされる。

 

「リョウタさん……リョウタさんは」

 

 ゆんゆんが俺に失望したかのような声を向ける。それは失望などではなかったのかもしれないし、もしかしたら哀れみや同情だったのかもしれない。あるいは全部違っていてゆんゆんの優しさだったのかもしれない。そんなことを一瞬のうちに考えてそれをやめた俺は目の前の殺すべき相手に集中する。

 

 バニルinダクネスが体勢を立て直そうとしている。

 

 今が好機だ!!

 

「ディナイアルエクスプロード!! 」

 

 俺は呪いのビームでできた斬撃を発射する。それは見事にバニルinダクネスに命中し爆発した。

 

 このまま殺してやる!!

 

「エクスプロード!! エクスプロード!! エクスプロード!! エクスプロード!!!! 死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

 斬撃波を連射する。爆風による土煙で何も見えない中、俺は何度もディナイアルエクスプロードを放ち続ける。すべては、俺の想いを勝手に明かし、知られるべきでない過去を明かし、嘘をつき続けていたことを明かしたバニルを滅ぼすために!!

 

「か、神殺しストップ!! ダクネスが、ダクネスが蘇生できなくなっちゃう!! 」

 

「落ち着いてくださいリョウタ!!!! 」

 

「リョウタ、バカ野郎!! 敵のペースに乗せられんな!! ダクネスを殺す気か!? 」

 

「リョウタさん、落ち着いて!! やめて……やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

 なにも聞こえない、何も聞こえない。何も聞こえてなど……!!

 

「いいや汝には聞こえているぞ。また嘘をつくのであるな紅魔の娘に」

 

 呪いの光が霧散する爆炎の中から鎧の一部こそ砕けているがほぼ無傷のバニルinダクネスが現れる。

 

「……何で生きてる!! 死ねよ!! 」

 

「あのような適当に放たれた連続攻撃など、いくら一つ一つに必殺の火力があろうとも我輩クラスになれば避けられるし防ぐこともできる」

 

 どうやらガーターのようなものを使ったらしい。バニルinダクネスの周囲にはディナイアルエクスプロードの呪いの黒い光の残滓以外にも黒い魔力の輝きが渦巻いていた。

 

「さて汝からは羞恥と憎悪、そして憤怒の悪感情を大変満足にいただいた。まことに美味であったぞ。ただ我輩の見通す力がこれ以上貴様と遊んでいると身を滅ぼすとの結果を見せてきたのでな」

 

「手加減してたっていうのか……お前は、どれだけ俺をみじめにさせたら……気が済むんだ!! 」

 

「もう眠るがよい神殺しの青年よ!! せいぜい騙し続けてきた紅魔の娘の夢を見るのだな!! 」

 

 バニルinダクネスが俺に一気に肉薄してきた。まだ殺せていなかったことへの多少の動揺と精神的な疲労感から反応が遅れた俺は一気に首を締めあげられる。

 

 まずいこのままじゃ殺せない。

 

 ちくしょうが、ちくしょうが、ちくしょうが!!!!

 

 そう考えているうちに俺の意識は高速で途切れていった。

 

 ごめん、ごめんよゆんゆん。

 

 そうやって心の中で何度も謝りながら。




 リョウタがついに嘘をついていることがゆんゆんに知られることになりました。このバニルに嘘を暴かれる展開はずっと書きたかったものなので、とにかく力を入れて書きました。

 なんとなく予想していた人もいるかもしれませんが、リョウタは見事にバニルに出会って発狂しました。

 ちなみに、今回の追い詰められたリョウタのセリフの中に、ガンダムUCのグレた状態のリディ少尉のセリフを使っている箇所があります。別にリョウタの声のイメージが浪川大輔氏というわけではありませんが追い詰められた状況のリョウタのセリフとしてぴったりだったので使わせてもらいました。
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