【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

48 / 100
047 真面目な質問

 俺たちがとんでもない額の報酬を手に入れてから数時間後。

 

 屋敷にて、差し押さえされていた家具等が業者によって部屋に運ばれていた。俺たちは真っ先に配置された大きなソファにみんなで仲良く座りながら。

 

「3億4千万エリス何に使おうか? 」

 

 俺がほころんだ顔でみんなに問いかける。

 

「とりあえず今日はギルドの酒場でみんなの分もおごって飲みまくりの大騒ぎしましょ!!!! 」

 

 みんなとは、ギルド内の冒険者のことだろう。

 

「私はいくらか実家に仕送りしようと思います」

 

「めぐみんは堅実だな」

 

 ダクネスがめぐみんに感心する。

 

「うち、かなりの貧困家庭ですから」

 

「俺はそうだな……とりあえず遊びに使いまくる」

 

 カズマは目を輝かせながら言った。

 

「私は鎧収集が趣味でな、だから気に入った鎧でもいくつか買おうと思う」

 

 ダクネスがなんとなく納得できる趣味を述べた。

 

「あ、ダクネス、鎧集めるのが趣味なら今度俺に鎧の飾り方をレクチャーしてくれないか? ゆんゆんが前に選んでくれた方の鎧を飾っておきたい」

 

「ん? かまわないぞ」

 

 ダクネスが笑顔で応じてくれた。

 

「私はどうしようかな? ……観葉植物でも買いましょうか? 」

 

 小さく出たなゆんゆん。

 

「何にしたって俺たちは億万長者だ。少なくともひどい金使いをしなければ一生食っていける額だ」

 

 カズマがしみじみと語る。

 

「借金生活を脱することができただけで最高なのにそのうえこんなにお金があるんだもの。幸せ以外の何物でもないわ!! 」

 

「株でもやって増やすかみんな? 」

 

「その辺に詳しい奴がいないからやめとこうぜそれは」

 

 俺の意見にカズマが冷静に答える。

 

「まぁそうだな」

 

「お金を均等に分配しないとな」

 

 ダクネスが提案する。

 

「とりあえず、まず1億は屋敷の購入費用に回して残りを貯金して、もう1億は共同生活費に回す。そんで残った1億4千万を均等に分配する。こんな感じでどうだ? 」

 

 カズマのその発言に。

 

「いいと思うわ」「了解です」「構わないぞ」「わかりました」「それでいい」

 

 各々が同意する。

 

「一人、約2300万エリスですね」

 

「さすが紅魔族のエリートゆんゆん、計算が速いな。すごい」

 

 ゆんゆんが瞬時に計算して答えを出したことに俺は感心する。

 

「もぉ、そんなこれくらいのことでほめないでください……」

 

 と言いつつ嬉しそうな俺の隣に座っているゆんゆん。かわいい。

 

「私は必要最低限の額以外はカズマに預けるとします。いいですか? 」

 

「ん? 別に構わないぞ。でもいいのか? 」

 

「はい、月々の仕送りと少しのお小遣いがあればやっていけるので問題ありませんよ」

 

「「本当にめぐみんは堅実だなぁ」」

 

 俺とダクネスは声を重ねながらめぐみんの質素な生き方に感心する。いや、質素ではないか爆裂魔法は派手だし。

 

 そうしてしばらくお金について楽しげに語っているうちに差し押さえられていた全部家具が戻ってきたようなので各々分かれて元の位置に配置し直していく。

 

 全員冒険者である程度のレベルのため筋力は常人の物とは比にならないほどある。だから全員で分担して一気に作業を進めていった。

 

 やがて、完全に我が家が元の姿を取り戻す。

 

「アンナもびっくりしてただろうな」

 

 俺が作業を終えてお茶を飲みながらそう言うとアクアが。

 

「うん、かなり私たちのこと心配してくれてたわよ」

 

 ソファーで横になった状態で答えた。

 

「心配かけたね」

 

 俺は優しげな声でアンナの墓のある方に向けて語り掛けた。

 

「神殺し。遠い目をして言ってるけど、アンナは今アンタの目の前にいるわよ」

 

「マジかよ」

 

「アンナはこの屋敷の守護霊のようなものだな」

 

 俺と同じく茶を飲むダクネス。

 

「供え物しとかないとなー」

 

 俺とゆんゆんが王都で買った茶菓子を口に運びながらそう言うカズマ。

 

「お供え物は高級シュワシュワがいいんですって。みんなお金持ちになったからそれくらい余裕でしょ。って言ってるわ」

 

「分かったよアンナ」

 

 カズマは苦笑しながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 翌日。ギルドでどんちゃん騒ぎしたため、みんな朝をおきるのが遅かった。お酒は久しぶりに飲んだがやっぱりうまかった。お金にかなり……いや、とんでもなく余裕があるのでお酒をコレクションするのもいいかもしれないな。アクアと趣味が被るが。

 

 現在時刻はお昼過ぎ。俺は庭で贈呈されたソードメイスを振って加減を確かめていた。リビングからはゆんゆんがめぐみんにキレる声がするので今日も勝負で卑劣な手を使われたのだろう。

 

「ソードメイスは神殺しの剣より重いけど普段使いだとこっちの方がいいな。神殺しの剣より威力が出せるし」

 

 しかし王室から献上された品だと言うのにまともに装飾などなく実に無骨なものだ。まぁこういうのも好きなので別に文句はないのだが。

 

「王室にはいいイメージが無いな。あんまり」

 

 アヤメリス様の件のせいで、俺は王室に対してよいイメージを抱いていない。無論国家をまとめる存在なのだから非情な選択とかもしないといけないのはわかるのだが、それを納得できるほど俺はまだ成長しきれていなかった。いやそもそも非情な選択を認めることができるようになることは成長と呼ぶのだろうか?

 

「分かんないな。まぁ、嘘つきをやめてアイデンティティも崩壊したようなものだし、0から頑張るか」

 

 ダクネスに鎧の飾り方教えてもらうときに聞いてみよう。彼女はこのパーティーでなんだかんだ一番精神的に成熟しているし。……本来ならアクア様が一番成熟していないといけないはずなのだが。まぁ本人曰く天界と地上では時間の流れが違うそうだからアクアの精神年齢が俺たちより低くても仕方ないのかもしれない。それでもいろんな人を転生させる過程で見てきて少しは成長しそうなものだがそれが無いからこそアクアなのだろう。

 

「はっ!! せやっ!! 」

 

 俺はいろんなことを考えながらソードメイスを振り回し続けていた。

 

 すると。

 

「ああ、お帰りカズマ、ダクネス。ウィズさんへのバニル討伐の報告は終わったか? 」

 

 カズマとダクネスが屋敷の庭に足を踏み入れたのでお帰りの言葉を贈ったのだが。

 

「「…………」」

 

 二人は何故か俺の顔を見て黙ったままだ。

 

「なぁ、カズマ、ダクネス? どうした? 」

 

「……なぁリョウタに言うべきだろうか? 」

 

「言わなきゃダメだろ。本人のためにも。ただ今ここでいうのはやめよう。しっかりと対策してからだ」

 

「……それがいいだろうな」

 

 二人が何やら俺のことについて協議している。どういうことだろう。その理由を聞こうとするとカズマが。

 

「重要な報告があるからリビングに入ってくれるかリョウタ」

 

「ん? 了解」

 

 俺は心配そうな顔をした二人に続いて室内に戻った。

 

 

 

 

 

「悪いなめぐみん、ゆんゆん二人のボードゲーム中断させて」

 

 カズマがめぐみんとゆんゆんに謝罪する。

 

「い、いえ、大丈夫ですよめぐみんに卑怯な手を使われて喧嘩してたところでしたし」

 

「お前本当にゆんゆん相手だと容赦がないな」

 

 カズマがあきれ顔でめぐみんを見つめると、めぐみんは目を逸らした。かわいい。

 

「その何か重大なことなんですよね。報告があるって。でも……」

 

 ゆんゆんは顔を赤くして戸惑っていた。なぜなら。

 

「……ゆんゆんにリョウタの手を握っておくように指示するとは一体どういうことですかカズマ? 」

 

 めぐみんの言ったようにゆんゆんにカズマが俺の右手を握らせた。

 

 俺は気分が高揚していた。ゆんゆんと手をつなげたからだ。

 

「いやめぐみん、これはリョウタのためなんだ」

 

 真剣な顔のダクネス。

 

「まぁゆんゆんに手を握られることはリョウタにとって幸せでしょうけど」

 

「神殺しのため? どういうことよ? 」

 

 アクアが、ゆんゆんにこんな指示をしたカズマとダクネスに問いかける。

 

「まぁそれは今から説明すればわかることだ。なんで全員にリビングに集まってもらったかだがな。それは……」

 

 カズマが一呼吸置く。

 

『それは? 』

 

「っとその前にだ、リョウタいいか、まずは冷静さを失わないと約束できるか? 」

 

「むしろゆんゆんと手をつないでるから気分が高揚しているが、冷静には振舞おう」

 

「リョ、リョウタさんストレートすぎますよ」

 

 照れて体をくねらせるゆんゆん。

 

「お前ら見てると心配することがバカに思えてくるよ」

 

 カズマがそんな光景を見て一言、苦言と言うか嫌味を言った後、深呼吸して。

 

「俺とダクネスがウィズに、ウィズの友人であると思われるバニルを討伐したことを伝えに行ったのは全員知っての通りだが」

 

「なによ? 」

 

「ウィズ魔道具店にて問題が発生したんだ」

 

 ダクネスが深刻そうに告げる。

 

 そして。

 

「「バニルが生きていた」」

 

 は?

 

「いや、正確に言うなら蘇ったかな。残機が1つ減って二代目バニルーとか抜かしながらピンピンしてたよ」

 

 カズマが訂正する。

 

「あのクソ悪魔、蘇ったの!? だったら、今すぐ討伐してお金に換金してしまいましょ!! 」

 

「いや、今バニルは魔王軍幹部ではないんだ。本人もやめたがっていたらしいし、ギルドにも問い合わせてみたが存在が存在なので悪さをしない限りは放置と言う方針になっているらしい。だから懸賞金もかかっていない」

 

 ダクネスが俺の方をちらちら見ながら言う。

 

「そんなー……せっかくお金になると思ったのに」

 

「リョウタさん? 大丈夫? 」

 

「ああ、リョウタ大丈夫か? 」

 

 ゆんゆんとカズマが俺のことを気にする。

 

 俺の手を握るゆんゆんの手に力がこもったことがわかる。

 

 大丈夫か? と聞かれると答えようがないとしか言いようがなかった。

 

 なぜかと言うと俺はバニルに対して。

 

「今は俺はバニルに……いろいろ複雑な負の感情もあるけど感謝もしてるんだ」

 

「か、感謝ですか? 」

 

 めぐみんが驚く。

 

「何言ってるの神殺し!! あんなものに感謝してちゃダメよ。もっと憎悪の炎を燃やしなさいな。自分の嫌なこと色々暴露されたでしょ? 」

 

「確かにそうなんだが、同時にあれがきっかけで楽になったんだ。ゆんゆんがどんな俺でも受け入れるっていう、俺が欲しくてたまらなかった答えを聞くきっかけになったからさ」

 

「リョ、リョウタさん」

 

 ふにゃふにゃな声質のゆんゆん。

 

「だから大丈夫だカズマ、ダクネス、みんな」

 

 そう俺は大丈夫。

 

「まぁ、もう一回あおられたらちょっとわかんないけど」

 

「おい、せっかく一安心したのにそんなこと言うなよ!! 」

 

「ごめん」

 

 だって、心が痛いんだぞ。精神攻撃は。あれをまた喰らって正気でいられるかどうかはわからない。……あれ? でも今は精神的な弱点という弱点が無いはずだから正直、本当に大丈夫かもしれない。

 

「それと、あいつが商談を持ちかけてきたんだが……リョウタ手伝ってくれないか? 」

 

「商談? 」

 

 どういうことだ。

 

「簡単に言うと俺たちの故郷の品を開発して売るって話だ。量産体制と販売ルートはバニルが確保してくれるらしいからさ。お前の錬金術があれば作業効率がはかどると思うんだ。もちろんお前がバニルと一緒に何かをするのが嫌っていうなら別に構わないが」

 

「なるほど。俺たちが前に考えてたことを大々的に実行するってことだな」

 

「そう言うことになる。どうだ? 」

 

「構わないぞ。お金はいくらあっても困る物じゃないし、バニルのこともさっき考えたんだが今の俺にとってはそこまで嫌な奴じゃなさそうだしさ」

 

「おお!! ありがとなリョウタ!! これがうまく行けば危険な冒険者稼業を続けなくても済むようになるしな。まぁ今の時点でも贅沢しすぎなければ何とかなるだろうけど」

 

 確かにその通りだ。俺はゆんゆんの方をちらっと見た。俺と手をつないでいるからか、顔の赤いこの子が戦わなくても済むようになるならば、それに越したことは無いなと思った。まぁ、ゆんゆんが戦いたいというなら話は別だが。

 

「そ、それは困ります。クエストに行かないと爆裂魔法が撃てないではないですか!! 」

 

「クエスト無い日でも、適当なもの選んで毎日撃ってるだろ。それで我慢できないか? 」

 

 カズマが言い聞かせるようにめぐみんに提案するが。

 

「無理です」

 

 即答だった。

 

「クエストに行かなければ、私の欲望を満たすことができなくなるだろう」

 

 欲望と言えば聞こえはまだいいが実際は性欲だろ?

 

「そうよ!! クエストを全く受け無くなったら魔王軍と戦う機会が無くなるってことだから私が天界に帰る日が遠のくってことじゃない!! 」

 

「わ、私はみんなで平和に暮らしていけるなら何でも構いませんよ? でも紅魔族族長を目指しているからある程度強くないといけませんし、めぐみんが爆裂道を極めるのなら私は―――」

 

 めぐみん以外の女性陣もクエストに行かないのは反対と言っている。ゆんゆんも長々と言っているが要するに強くなるためにクエストにはいきたいということだ。

 

「俺もゆんゆんが受けたそうにしてるからクエストいかないのは反対だ」

 

「別に退屈しのぎや、時々刺激を求めて冒険をするのは良いと思ってるし俺もクエストを全く受ける気が無いわけじゃないからいいだろ? それからリョウタ、お前には自分の意思はないのか? 」

 

 カズマの言葉を受けて、みんなが俺の方を見て「コクリ」と頷いた。

 

 俺はそれを受けてみんなを見据えると。

 

「現状はゆんゆんの意思を尊重していくだけのスタイルで生きていこうと思ってる。俺にとっての明確な本当と言えるものがゆんゆんへの思いくらいしか今は無いからさ。あとはみんなを大事に思ってることぐらいか」

 

 何食わぬ顔で理由を伝えた。

 

『……』

 

 全員が静まり返る。何食わぬ顔で言ったが結構重い話だったかな?

 

 やがてカズマが俺の作ってしまった静寂を破り。

 

「そ、そっかー……なんか悪かったなリョウタ」

 

「全然気にしないでくれ」

 

 俺がそう言うとカズマは笑うと。

 

「まぁ報告は以上だ」

 

 その言葉を受けて俺はゆんゆんに。

 

「もう手離しても大丈夫だよ」

 

 と伝えると。ゆんゆんは。

 

「は、はい」

 

 これ以上ないくらい真っ赤な顔で呟き、手を離した。

 

「ど、どうしたゆんゆん、そんなになる要素あったかな? 」

 

「あ、ありましたよ、リョウタさんは朴念仁ですか? もう……」

 

 ああ、「ゆんゆんへの思いくらい―――」のあたりがゆんゆんを照れさせたのだろう。

 

「いや、何でゆんゆんが照れてるか分かったよ。……ごめん」

 

 俺も少し恥ずかしくなりながらゆんゆんに謝罪すると、ゆんゆんは小声で「そ、そうですか」と答えた。

 

「ゆんゆん。恋愛脳なのはさぞ幸せなのでしょうね」

 

「も、もうめぐみん!! 」

 

 めぐみんにからかわれ始めるゆんゆん。かわいいなと思い、眺めているとカズマが。

 

「リョウタ、さっそくなんだが暇だったら商品開発手伝ってくれないか? まずはライターとか作ってみようと思う」

 

「了解」

 

 俺はカズマと一緒にライターの製造にとりかかった。

 

 

 

 

 

 この世界はいまだに火を起こすときは火打ち石だ(魔法の使える人は除く)。なのでライターを売ればヒットすると思ったのだが、ライターの製造は困難を極めた。フリント式ライターを作ろうとしたのだがなかなかうまく行かない。その結果、ライターは時間をかけて綿密に作ろうということにして、まずは主婦の味方になりそうな台所の家事道具を作ってみた。ピーラーやおろし金、リンゴカッターなどだ。

 

 俺の錬金術とカズマの覚えたての物づくり系スキル全般を駆使して見事試作品を完成させたので、本日の夕飯の調理当番だっためぐみんに使ってもらってみたところなかなか評判がよかった。

 

 そして、トラバサミを大量に作った経験と、今回の物作りをしていてわかったのだが、俺の錬金術は複雑なパーツや素材が分かれた物を一気に作るにはかなりの魔力を喰うことが発覚した。なので複数の素材を使っていたり、複雑なものは、1パーツずつ作らないと体力が持たない。正直この力曖昧過ぎるので、バニルにでも頼んで詳細なスペックを見通してもらおうかと考えている。おそらく、悪魔なのでそれなりの対価(奴の場合はお金ではないかとカズマが言っていた)を支払わされることになるだろうが今後のことを考えて知っておいて損はないだろう。

 

 そのような本日やったことを振り返りながら、俺は自室でダクネスにレクチャーされた通りに鎧を飾っていた。

 

「いい感じだと思うぞ。しかし錬金術で補って使ってきていたからか、本当に歴戦の鎧だな」

 

 各所に補修の跡が残る俺の鎧を見てダクネスが言った。

 

「だよね。こんなになるまでよく頑張ってくれたと思うよ」

 

「相棒だな」

 

「ああ、神殺しの剣にも勝るとも劣らないね」

 

 俺は飾った鎧を軽く叩いた。

 

「そう言えばダクネス。聞きたいことがあったんだ」

 

「ん? なんだリョウタ? 」

 

「非情な選択を認めることができるようになることは成長と呼ぶと思うかな? 」

 

 俺は真剣な表情でダクネスに問いかけた。

 

「……いきなり難しいことを言って来たな。そうだな、清濁併せ持つことの重要さはここ最近カズマを見ていて感じさせられているが、非情な選択を認められるようになることは成長だとは言わないと思う」

 

 あごに手を当てて考えながら答えていくダクネス。

 

「その理由は? 」

 

「認められるようになるとしたらそれは成長では無く変化だと思う。……私はそれを認められる人間と言うのはそれを他者に強要してはならないことを胸に留めておかなければならないと思っている。……つまりは自己にのみ非情な決断を下せる人間であるべきだと私は考えるし、それができねばただの外道だ。ただ、世の中そうも言ってられんことが多すぎるのは痛感したよ。だから、せめて他者に対してそれを強いるのであればそれに応じた責任を背負うことを忘れてはならないと感じている。…………お前の求めている答えはこういうものであっていただろうか? 少しずれていたか?」

 

 毅然とした態度で答えた後、少し恥ずかしがるダクネス。

 

 俺が欲しかった答えのその先にあるものだった。ダクネスの言ってくれたことは。

 

「いや、ありがとう。求めていた答えそのものだったと思う。実はゆんゆんの件とかは全く関係無しに、こういうことを考えさせられる機会があったんだ。それで精神的に俺たちの中では一番成熟してると思ったダクネスに聞いてみたかったんだが。聞いて正解だったよ。ダクネスの今の言葉、しっかりと俺の言葉になるようにしてみせるよ」

 

「そうか」

 

 嬉しそうにはにかむダクネス。

 

「ところでダクネス」

 

「どうした? 」

 

「カズマの名前がダクネスの口から出てきてふと思い出したんだが」

 

「うん? 」

 

「多分両想いでよかったね。カズマと」

 

 しばらく沈黙するダクネスは、やがて顔を真っ赤にすると。

 

「しょ、しょれをいうにゃー!! 」

 

 ものすごく取り乱しながら俺を揺さぶった。

 

 素直に喜べばいいのに。大概、君もかわいいな。ララティーナ。




 ゆんゆんだけでなくみんなに受け入れてもらったリョウタはこれから大きく変化をしていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。