【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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004 出会い

「狙い撃つぜ!! 」

 

 俺は新たな標的のジャイアントトードを見つけ矢を連射する。狙い撃つと言っておきながら連射しているため実質乱れ撃ちだが。

 

「その調子ですリョウタさん。カエルも弱ってきました!! 」

 

「よしじゃあ止めにスキル『両手剣』を使ってみるか」

 

 チンピラ冒険者、ダストから高い授業料で教わったスキルを発動。一端の剣士のごとく神殺しの剣を振り上げて、倒れ伏したジャイアントトードに肉薄。頭頂部を切り裂く

 

「これじゃあカエル殺しの剣だな本当に」

 

「その剣、里のみんなが見たら大喜びしそうなデザインですね」

 

 確かにかっこよくはあるが、神殺しの剣という名だけあって実に仰々しい。

 

「そうなのかい? ……そう言えば紅魔族は感性が特殊って聞いてたけどゆんゆんは普通そうだな」

 

「私が特殊なんですよ。だから里では変わり者扱いされてきました……」

 

「気の毒に」

 

 こんなかわいい子を変わり者扱いするとは!! いや、そこは着眼点がおかしいか。

 

「とにかくこれで報酬を貰えるまで必要なジャイアントトードの撃退数は残り3匹だ。俺のレベルも……上がって3だ」

 

「この調子で倒しちゃいましょう!! 」

 

「了解!! 」

 

 そして俺はジャイアントトードを新たに見つけ今度は最初から接近戦で仕留めてみたいのでゆんゆんにいざというときの援護射撃をお願いし、突撃する。そして、見事に俺はすれ違いざまの一斬でカエルの腹を一文字に割り裂き、絶命させた。

 

「残り2!! 」

 

 なんだよ……結構いけるじゃねぇか。近接戦も。

 

「リョウタさん!! いい感じですよ、頑張ってください!! 」

 

 俺はゆんゆんにおだてられながら残り2匹のジャイアントトードを探しだす。そしてどうやらつがいのようなジャイアントトードを発見した。

 

「夫婦みたいだが悪いな、経験値になってもらうぞ」

 

 矢による狙撃で2匹のカエルに気を引き、こちらに寄って来させる。そして、1匹に向けてバインドを使って即席ワイヤーを射出し締め付け転倒させて、その間に頭上に肉薄したもう1匹に神殺しの剣をあごから脳天を貫く形で一刺し抹殺する。

 

 最後に。ワイヤーをその巨体に似合ったパワーで引きちぎったジャイアントトードに残りの矢をすべて使い串刺し祭りにして撃破した。

 

 

 

 

「レベルも4に上がったし、昨日のリベンジもできて満足だ」

 

「リョウタさん、しっかり戦えてましたね」

 

「ゆんゆんがいて、もしやられても助けてくれるっていう安心感があってこそだよ。ありがとう」

 

「えへへ、そんな」

 

 平原に座り休憩しながらそんなことを言い合う俺たちはゆんゆんが早起きして作ったという弁当を食べることにした。

 

 弁当のふたを開けるとかわいらしくおかずの並べられたおいしそうなお弁当が現れた。

 

「おいしそう」

 

「どうぞ食べてください!! お弁当の味には少し自信があるんです」

 

「いただきます」

 

 ああ、美少女の手作り弁当を食べられるだなんて何という幸せか。転生してよかった。

 

 俺はそう感じながら弁当に手を伸ばす。

 

「おいしい」

 

「ほ、ほんとですか!! よかった!! 」

 

 花咲くような笑顔でそう言うゆんゆん。本当に女神のようだ。

 

 しかしおいしいなこれ。コンビニ弁当なんぞとはゆんゆん補正で比較にならないうまさだ。

 

「どこか料理人のもとで修業でもしたのか? 」

 

「あ、いえ……学生時代、私の一番大事なともだ……ライバルがおいしそうに食べてくれるのがうれしくて練習してたらたぶんおいしくなったんだと思います」

 

 ゆんゆんがライバルのことを言及したあたりから照れながらそう言った。

 

「人の喜ぶ顔のためにここまでおいしくできるんだから大したもんだよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ほめすぎたせいか、ゆんゆんは赤い顔でうつむいた。

 

「なんてかわいいんだゆんゆん」

 

「え、リョ、リョウタさん……恥ずかしいよぉ……うう」

 

「すまない、本音がポロリと出てしまった」

 

 その後はゆんゆんが黙り込んでしまったため終始無言のままお弁当を食べることになった。

 

 

 

 

「さてと。ギルドに報告を完了して初めてクエストは終わる。報告しないとね」

 

「そうですね」

 

 極度の照れ状態から回復したゆんゆんが俺の言葉に返答する。

 

 夕方。大衆浴場に今日は寄ることなく、俺たちは現在、ギルドの受付にいた。

 

「ルナさん。クエスト二つ完了しました。報酬をお願いします」

 

「わかりました、確認しますので冒険者カードを提示してください」

 

「了解です」「はい」

 

 俺とゆんゆんは冒険者カードをルナさんに差し出した。

 

 冒険者カードには撃破したモンスターの名前が載るように出来ている。おかげで、冒険者が討伐系のクエストを達成したかどうかの真偽が一発でわかるようになっているのだ。

 

「確認しました。両名合わせて十匹しっかりとジャイアントトードを討伐されたみたいですね。それでは……こちらが報酬の22万5千エリスです。

 

 内訳はカエルども十匹の討伐で20万。カエル肉5匹分買取りで2万5千円だ。

 

「さて、酒場でなんか飲むかな。ゆんゆんもいくかい? 」

 

「はい、ご一緒します」

 

 俺はゆんゆんを伴って酒場へと向かう。

 

 何か飲むといっても別に酒を飲むわけではない。この世界では酒を飲んでいい年齢は特に決まっておらず何歳からでも自己責任で飲酒可能だが、俺は酒に興味があるわけではないので何らかの炭酸飲料を飲むつもりだ。

 

「ゆんゆんは何飲む? 俺はノンアルコールの炭酸飲料が飲みたいんだがなんかおすすめはあるかな? 」

 

「そうですねぇ……あっ!! 」

 

 突然。

 

 ゆんゆんが俺の横から駆け出した。その行先にはゆんゆんとよく似た、というか同じ髪色で同じ目の色をした美少女がいた。その横には青髪の美少女もいる。

 

「走るの早いな……これがレベル差か」

 

 そんなことを感じながらゆんゆんの後ろを歩いて付いて行くと。

 

「見つけたわよめぐみん!! 」

 

 普段(と言っても出会って丸一日もたっていないが)の大人しい雰囲気とは打って変わって、はつらつとしたゆんゆんがめぐみんと呼んだ同じ紅魔族であろうロリっ子を指さした。

 

 もしかしてあれが爆裂魔法しか使えないという頭のおかしい子で有名な少女か。……ゆんゆんと同じでかわいいな。昨日は文句を言ってやろうと思ってたがそれを言う気が失せた。

 

「どうしたのですかゆんゆん? あなたは確か旅に出たはずでは? もしかして寂しくなって帰ってきたんですか? 」

 

「ち、ちがうわよ、ただ単に忘れ物をしただけで……」

 

「ねぇめぐみん。この子は? 」

 

 青髪の子がめぐみんに質問する。それをめぐみんはなんでもないことのようにさらっと説明を始めた。

 

「私の自称ライバルのゆんゆんです。ほらゆんゆん、紅魔族流のあいさつをしなければ初対面の人に失礼というものです」

 

「うう、わかってるわよ。……我が名はゆんゆん!!  アークウィザードにして中級魔法を操るもの!! やがては紅魔族の長となるもの!! 」

 

 かわいいなゆんゆんは!! 公衆の面前でもはばからずやったせいで、周りの人々から奇特なものを見る目で見られてるけど。

 

「は、恥ずかしい……」

 

 ゆんゆんはその場で縮こまった。

 

「私はアクアよ。よろしくねゆんゆん」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 ゆんゆんの名乗りを見て馬鹿にするでもなく平然と自己紹介した青髪の少女アクア。

 

「それで何用ですか? 今私は定食を食べるのに忙しいので勝負ならあとにしてください」

 

「ち、ちがうわよ、聞いて驚きなさい私にパーティーメンバーができたのよ!! 」

 

 その一言の瞬間、めぐみんの雰囲気が一変した。

 

「な、ゆんゆんにパーティーメンバーが? いったい何の冗談ですか……」

 

「本当なんだから!! 見たところあなたもアクアさんとパーティーを組んでるようね!! 」

 

「ええそうよ、あともう1人ヒキニートがこのパーティーにはいるわ」

 

「ひ、ヒキニート」

 

 アクアの回答にゆんゆんが引いた表情をする。

 

 あの顔をされたくないから元ヒキニートだとは言わないでおこう。しかしこの世界にも同類がいるのか、うれしいな。

 

 そんなことを感じながら俺はゆんゆんの横に並び立ち。

 

「はじめまして、ゆんゆんのパーティーメンバーの加賀美涼太です」

 

 めぐみんとアクアにできる限り真人間らしく自己紹介した。

 

「うひゃぁ!! 」

 

「そんな馬鹿な」

 

 俺の自己紹介を聞いてか、アクアが飛び上がりめぐみんがフォークを落とす。

 

「そんな反応をされるとメンタルダメージがでかいんだが……」

 

「大丈夫ですか? リョウタさん。あとさっきは急に駆けだしてすいません……」

 

 ゆんゆんが心配してくれる。

 

 コミュ障なだけあって結構勇気が必要だったんだぞ今の自己紹介!!

 

「あ、すいません」

 

 めぐみんが謝罪する。そして席から立ち上がると、背中に装備したマントをひるがえしながら。

 

「我が名はめぐみん!! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!! 」

 

 そう名乗った。

 

「ゆんゆんと同じでかわいいな」

 

 そんな言葉が自然と口から飛び出た。

 

「な、かっこいいと言われるならまだしも、かわいいと言われるのは予想外ですね……」

 

 そう言って悔しがるめぐみん。いや、そこは照れてくれよ。

 

「何はともあれ、これで冗談でないことがわかったでしょめぐみん!! 私にもパーティーメンバーができたんだから!! 」

 

 そう得意げに宣言するゆんゆん。

 

 すると。

 

「リョウタ、あなたはこのチョロい子を騙したりなどはしていませんか? 」

 

 ゆんゆんのそんな宣言を無視し、赤い目を輝かせながら俺にめぐみんが質問した。

 

 紅魔族は感情が高ぶると目が輝くと昨日ゆんゆんから教わった。現在、めぐみんは感情が高ぶった状態なのだろう。しかしなぜだ? それに。

 

「質問の意図がわからないんだが……」

 

「ゆんゆんはチョロい子です、あなたはこの子を利用しようという意図で近づいたわけではないのですよね? 」

 

「ちょっと!! さっきからチョロいとは何よめぐみん!! 私チョロくなんてないから!! 」

 

「いいえチョロいですね。それでどうなのですか? もしこの子の友達欲しさに付け入っているようであれば爆裂魔法で吹き飛ばしますが……」

 

「ちょっと、リョウタさんに失礼でしょ。謝りなさいめぐみん」

 

「いいんだゆんゆん」

 

「リョウタさん? 」

 

 このめぐみんという子。よっぽどゆんゆんを大事に思っているのだろう。

 

 俺は真剣なまなざしでめぐみんに向き直ると。

 

「そんなことは無いと宣言するよ。俺はゆんゆんの正真正銘の仲間で友達だ」

 

 そう言い切った。そうでありたいと思うからだ。いや、友達以上の関係になれるものならなりたいから少し違うか?

 

 めぐみんは値踏みするような視線を俺を向けた後。

 

「まぁ信じるとしましょう。チョロい子ですからよろしくお願いしますね」

 

 そういって俺に微笑みかけた。それに次いで。

 

「ところでその剣、なかなかいい感じのデザインですね。紅魔族の琴線に激しく揺さぶりをかけてきます。少し拝見してもいいですか? 」

 

 目を輝かせながら子どものような顔で(実際子どもだが)にじり寄ってくるめぐみん。

 

 かわいい。

 

「いいよ、カエルぶった切った後だから少し生臭いかもしれないけど」

 

 そう言って神殺しの剣を鞘ごとめぐみんに渡した。

 

「おおーー!! いいですねこのまがまがしいデザイン!! 」

 

「ああ、俺の自慢の一品だ」

 

 カエルをすぱすぱぶった切ってくれる相棒だ。

 

「刀身を見ても? 」

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます……ふぉぉぉぉ!! 」

 

 めぐみんは黒光りする刀身を見て興奮の叫びをあげた。

 

 すると。

 

「いやぁぁぁぁ!! ねえめぐみん!! それを早くしまって頂戴!! そんでもって、このカズマの同類のにおいがする日本人に返して追い払って頂戴な!! 」

 

「カズマの同類? ニホンジン? 」

 

 怯えた様子で騒ぎ立てるアクアにめぐみんが困惑する。

 

 俺もまた困惑していた。いきなり俺を見て悲鳴を上げたと思ったら追い払えだなとなかなか失礼な子だ。そして普通に傷つく。

 

「それは神殺しの剣よ!! 私にとっては天敵そのものなのよ!! 」

 

「アクアはこの剣のことを知っているのですか? 」

 

「そうよ、それは神殺しの剣……なんだけど。神殺しとは名ばかりで実際は神や悪魔、アンデッドに反応して持ち主に超パワーを与えると同時になんかすごいビームが出せるようになるとんでもない呪いのかかりまくった神器よ!! その呪いは神だろうと悪魔だろうとアンデッドだろうと簡単に傷つけることができるわ!! ねぇ……どうしてそんなもの持ってるのよアンタ!! というかほかにもチートを1つ持ってるじゃない!! どういうことよ!? 」

 

「呪いが積層した剣だったのか。というか待ってくれ、もしかして君は俺の事情を知ってるのか? 」

 

「どうせ転生してきた日本人でしょ、私は元日本担当の偉い女神様、アクア様だからわかるわよ!! 」

 

 そう言えば天使様がアクア様がどうのとか転生前に言ってたな。しかし女神だというのに知性のかけらも感じないなこの子。

 

「いったい何を言っているのですかアクア? 大丈夫ですか? 自分を女神だとか何とか言って……」

 

「ねぇめぐみんあなたのパーティーメンバーこそ大丈夫なの? 」

 

 ゆんゆんがめぐみんを心配そうに見つめる。

 

「そんな恐ろしいものを私に見せないでくれる!? ほらそれ仕舞って早くあっち行って!! 」

 

 アクアは涙目でそう子供が駄々をこねるように叫んだ。

 

「わ、わかった、わかったよ。めぐみんさん返してくれ、なんか嫌がってるから」

 

「わかりました。それと、めぐみんでいいですよ」

 

「了解。めぐみん」

 

 そんなやり取りをしながら神殺しの剣を受け取ると鞘にしまった。

 

「金輪際私の前でその剣を抜かないでね? もし抜いたら神聖な神の拳でぶん殴ってやるんだから!! 」

 

「わ、わかりました」

 

 俺はアクアに気圧されて引いていると。

 

「こらぁぁぁ!! なに人様に迷惑かけてんだこのバカ女!! 」

 

 緑のジャージを着た少年。おそらく日本人であろうその少年が叫びながらこっちに駆けてきた。

 

「バカ女とは何よ!! それより聞いて頂戴カズマ、この男は……ヘブッ!! 」

 

 カズマと呼ばれた少年はアクアの頭をつかみ深々と俺に礼をさせた後自分も礼をして謝り始めた。

 

「ほんとすんません!! うちの馬鹿が本当にすいません!! 」

 

 カズマは俺とゆんゆんに何度も頭を下げる。

 

「どうして私が悪いことになってるのよ!! 」

 

 アクアが抗議をするが聞く耳持たずな感じでカズマは「うるせぇ駄女神!! 」と言ってアクアの頭をしばいた。

 

 おそらく女神であろう者をしばくとは、なかなかパワフルな少年だ、すげぇ……!! まぁ誰だってこんなに馬鹿みたいに騒ぐ奴がいたら。まして身内とあればしばきたくもなるだろうけど。

 

「気にしないでくれ、カズマ君。えーと君も俺と同じ日本人だよな」

 

「え……」

 

 カズマ君は俺の方を見て固まった。

 

 

 

 

「それでジャージ一丁で駄女神と一緒に転生ですわー!! もう本当に参ったのなんの。おまけに、パーティメンバーは言うことを聞かないアークプリーストに魔法を一発撃ったら使えなくなるアークウィザードだしさ!! そのうえ今日は中身も性能もだめそうな美人のクルセイダーがパーティー募集の紙を見てやってくるしさ!! 」

 

「苦労してきたんだなカズマ。というかアクア、マジで女神なのに女神とは思えないな、なんだあれ? 」

 

「もうアクアとしか言いようがないよ」

 

 俺とカズマは同じ元ヒキニートだからなのかすっかり打ち解け酒場で2人っきりで話をしていた。

 

 さっきカズマがアクアに謝らせに駆けつけてきたのは、アクアが「神聖な神の拳でぶん殴ってやるんだから!! 」というフレーズが遠くに聞こえてきて厄介ごとを起こしていると思ったかららしい。どうやら話によるとアクアは問題行動が多いそうだ。

 

「リョウタの方はどうだった? 転生してきて」

 

「俺はまだ2日目なんだが、昨日、初クエストを受けたら途中でジャイアントトードに食われた」

 

「マジか」

 

「うん。危うく餌になるところをゆんゆん。あのめぐみんと同じ紅魔族の女の子に救われたわけだ」

 

「……カエルに食われたときどんな感じだった? 」

 

 やつらの舌に巻かれて口に入った瞬間か……。

 

「ぬめぬめしてて生臭くて……生きた心地がしなかった。軽くトラウマだ」

 

「お気の毒に」

 

 同情の視線を送ってくるカズマ。

 

「まぁ今日5匹をゆんゆんに見守られながら自力で抹殺して報復したけどな」

 

「実質1人であのカエルどもを!? いったいどんなチート持って転生してきたんだよお前」

 

「錬金術。あとはこの神殺しの剣だ」

 

「2つもあんのかよ!! ずるくね? 」

 

 たしかに、駄女神なんぞを特典として受け取ったカズマからすれば羨ましいだろうが。

 

「いや、確かに便利ではあるんだがまだ使いこなせてないし、神殺しの剣に至ってはまだ試せてないからな」

 

「そうかでもずるい。神殺しの剣もなんか強そうで魔王とか簡単に倒せそうだしー」

 

「うん。なんかごめん。それと俺は真剣に使命を果たす気はさらさらない」

 

 カズマには同類だから話しやすいからだろうか、ついつい本音を言ってしまう。

 

「それでいいのかよ……。まぁ俺も魔王討伐だなんて夢のまた夢だと思ってるけどな」

 

 カズマが肩をすくめながらそう言った。

 

「……元ヒキニートの俺たちには酷な話だよな」

 

「そうそう。ってなんで俺がヒキニートだったこと知ってるんだ!? というかヒキニート言うな、言わせるな」

 

「アクアがさっき言ってたぞ」

 

「あのアマ!! 」

 

 カズマがいきり立った。

 

 そんなカズマを眺めながら、俺は勇気を出して手を差し出し。

 

「お互い頑張ろうなカズマ」

 

 シンパシーを感じるこの少年に笑いかけると。

 

「ん? おう、よろしくなリョウタ」

 

 カズマは俺の手を握った。

 

 この日、異世界で友達が1人増えた。

 


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