【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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052 リボルビングライフル

 俺たちはいったん屋敷に戻り装備を整えるといよいよリザードランナーの群れと戦おうとしていた。

 

 雪がまだ各所に残る平原に生えている大きな一本の木の下で作戦会議をしていた。

 

「あの、ずっと気になっていたのですが、カズマのそれはなんなんですか? 」

 

 作戦会議の中、めぐみんが、カズマの背負っているある物について指摘する。そのある物とは長細い袋だった。

 

「おおこれかー。俺とリョウタの力作。披露する時が来たようだな……!! 」

 

「お2人の力作? 」

 

 ゆんゆんが首をかしげる」

 

「作るのに相当の時間をかけたんだ」

 

「ああ。正直ライターより大変だったよ。開発するのにな」

 

 俺とカズマは顔を見合わせて苦笑する。

 

「ちょっとちょっと、あんたたちいったい何を作ったのよ? 」

 

「それは……だな」

 

「もったいぶらなくていいので早く見せてください」

 

「ああ、気になるぞ……!! 」

 

 カズマに対し、めぐみんとダクネスが早くそれの正体を明かすようにせかす。

 

「これだ!! 」

 

 カズマが袋を開ける。そこに現れたのは1丁の狙撃銃だった。

 

「なんですか、この黒いもの? 」

 

「見たことが無いな。なんの道具なんだ?」

 

「なんだか服屋のちぇけらの物干しざおを思い出しますね」

 

「え、これってまさか……」

 

 物干しざおというめぐみんのわけのわからない発言は置いておいて、どうやらアクアは気づいたようだ。

 

「カズマさん、神殺し!! これって銃じゃない!! あんたたちこんな危険なものを作っちゃったの!? 」

 

「危険なものなのですか、物干しざおが? 」

 

「何でめぐみんはこれを物干しざおだと思ってるんだよ……これはアクアの言ったように銃って言って、金属の塊を爆発で発射して敵を攻撃する武器なんだよ。こいつの場合はスナイパーライフルだ。まぁ狙撃スキルと千里眼との兼ね合いからスコープとかは付けてないけどな」

 

 カズマが嬉しそうに語る。

 

「金属の塊を発射? これがですか? 」

 

 不思議そうな顔をしているアクアを除いた面々。ゆんゆんは俺の方を向いて、「本当なんですか? 」と言いたげな顔をしている。

 

「技術的問題と実用性。まぁ連射速度と命中精度の兼ね合いからライフルって言ってもオートマチックじゃなくて弾倉が回転式のリボルビングライフルになっちまったんだけどな。おかげで撃つときはやけど防止用に専用に作った皮手袋が必要だ。でも今オートマチック式のライフルも開発中だ。もうすぐ完成しそうだよ」

 

 俺は長い期間をかけて開発してきた銃の説明を専門用語たくさんでここぞとばかりに言う。

 

「そうなんだよ。いやぁ苦労したなぁ。アダマンタイトをわざわざ取り寄せてボディを加工したりと作るのに滅茶苦茶手間暇がかかった。でもおかげで俺も現代チートで俺ツエーできるようになりそうだよ。ああ、今日のこいつの活躍が楽しみだぜ」

 

 リボルビングライフルを構えるカズマ。

 

「……本当に使えるのかそれは? 」

 

「まずどんな風に攻撃するのかその辺がわからないので不安しかないのですが……。テストは済ませてあるのですか? 」

 

「ああ。テストは済ませてるぜめぐみん。開発過程の失敗作が暴発してよくリョウタが小さなやけどしてたよ」

 

「ルーンナイトじゃなければ指がなくなってたところだったろうけどな」

 

「も、もう、リョウタさん、そんな危ない物開発しないでください。心配になるじゃないですか」

 

「ごめん。でも銃には浪漫があるからさ」

 

「これで俺のレベルも上がる!! 」

 

 カズマは意気込んだ。

 

「でも一応緊急時に備えて弓矢は持ってきているのですね」

 

「そりゃな。あ、ちなみに小さいのも作ってある。拳銃だ」

 

 カズマが右腰に装着したホルスターからリボルバーを取り出す。

 

「俺も持ってる」

 

 俺もせっかく作ったので右腰にホルスターを取り付けリボルバーを装備してある。そこを指さした。

 

「ねぇカズマさん、神殺し。私、銃がめっちゃ怖いんですけど。できれば使ってほしくないんですけど」

 

 アクアが怯えた顔をする。無理もないか。アクアはおそらく俺たち以上に銃の危険性について知る機会が天界にいたのだから地球を見ている際にあっただろう。

 

「私、銃を扱える人もたくさん送り込んできたけれどアンタたちみたいなヒキニートがそう言うの持ってると不安しかないわ」

 

「なんだよ。使っちゃダメとか言うなよ。せっかく作ったのに。……まさかあれか? いまさらになってこの世界の雰囲気を乱すとか言い出すのか? 」

 

 カズマが嫌そうな顔をする。

 

「そう言うわけじゃないけど、引き金一つ引けば簡単に大人も子供も人を殺せる武器をあんたたちが持つのが心配なだけよなにせ、2人はヒキニートなんだから」

 

「「ヒキニート言うな」」

 

 どうやらアクアはゲーム感覚で人殺しができてしまう武器を俺たちが持つことに拒否反応を示しているようだ。それを言い出したらスキルや魔法だって十分危険なのだが。俺たちより長く生きてるから戦争とか悲惨なことをたくさん見てきている分、銃という物体にはいい印象を抱けないのだろう。女神らしいところもあるじゃないかアクア。

 

 するとカズマが俺とアクアにだけ聞こえる声で。

 

「ちなみに、お前さっき銃扱える人も送ったって言ってたけどありゃどういうことだ? お前日本担当の女神様だったはずだろ? アメリカの若者とかも送ってたのか? 」

 

「バカねカズマ。昔から大量に日本の若者を送り込んでるんだからそこには当然戦死した軍人だったりとかもいたわよ。あんたたちとは違って気高いし使命感に燃えてたからそれはそれは強かったわよ。実際地球時間で約70年前の転生者たちなんて、無双しまくって、その代の魔王は千年単位で君臨してて滅茶苦茶強かったのに、そんなのを結束してだいたい1年で討伐しちゃったし」

 

「日本が戦闘民族だったころの若者だったらそりゃ強いわな。日常的な覚悟ですでに大きな差があるし」

 

「そんな立派なご先祖様と俺たちを比べるなよ。さすがに差があっても仕方ないだろう」

 

 カズマはアクアに抗議した。さらに。

 

「というかお前やっぱり年齢不詳のBBAじゃねえか……」

 

「なんですってこのクソニート!! 人が珍しくまっとうなこと言ってるっていうのに話を脱線させた末に私をBBA呼ばわりするだなんてあんまりじゃない!! 」

 

「珍しいって自覚はあるのな」

 

 俺がわめくアクアの中の引っかかるワードにツッコミを入れる。

 

「おい、何を喧嘩しているのか知らないが、そろそろリザードランナーがこのあたりを通るだろう。早く作戦を決めてしまおう」

 

「そうですよ3人とも」

 

「喧嘩はやめましょう? 」

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ決まった作戦を確認するぞ!! まずリボルビングライフルの射程に入り次第、俺の指示でゆんゆんが上空からインフェルノで強襲してトカゲたちを怯ませる。その隙に俺が王様と姫様を狙撃。それに失敗したらゆんゆんは退避してめぐみんが爆裂魔法を発動して一掃。爆裂魔法で姫様と王様を仕留めきれなかった場合はダクネスがデコイを発動してひきつけている間に俺が狙撃して姫様と王様を討ち取る。その際はダクネスの援護をリョウタが。めぐみんの回収をゆんゆんが行う。それで残ったリザードランナーのうち、こっちに攻撃してくる奴らは各個撃破。アクアは全体の支援をする。いいな? 」

 

「わかったわ!! 」

 

「了解です」

 

「ああ!! 」

 

「わかりました」

 

「OKだ」

 

 カズマが作戦を全員と確認する。失敗しても次の手を用意してある盤石な作戦だと言えるだろう。

 

「よし、各自ポジションに着け!! 」

 

 カズマは気に登り、アクアは木の下。めぐみんは木から前の方で、ダクネスはその後ろ。俺はダクネスの横で待機し、ゆんゆんは。

 

「じゃあいってきますね」

 

「頼むぜゆんゆん!! 」

 

「はい!! 」

 

 カズマに言われて、ゆんゆんはリザードランナーの群れがいるであろう方角にグウェンの力で飛んでいった。

 

「さてと、リボルビングライフルの初陣だなカズマ!! 」

 

「ああ!! こいつは自信作だしな。期待が持てるぜ」

 

「女神の直観なんだけど今日は悪いことが起きる気がするわ……」

 

「やめろよアクア」

 

 アクアの不穏な発言に嫌そうな声で対応するカズマ。以前も女神の予感が的中してカズマがバニルに騙されたので無いとは言い切れない。

 

 気を引き締めておこう。まぁ常にクエスト中は気を引き締めてはいるが。

 

 やがて。

 

「よし射程に入った!! 」

 

 カズマの声がした。

 

「ジュウ。どんなものなのか気にはなるな……」

 

「弓矢よりも高威力のとんでも飛び道具だ。ただむしろ弓矢より絵面は地味かもしれないな」

 

 音はすごいけどね。

 

「そうなのか? 」

 

 ダクネスとそんな会話をしていると。

 

「ん? どれが姫様なのかは……赤くて大きいからわかるとして王様がわからないぞ。アクアー!! どいつが王様か分かるか? 」

 

「んー? 一番偉そうなのが王様じゃないの? 」

 

「お前に聞いた俺がバカだった……」

 

「あっ、そうだわ!! 王様は一番早いのよね。だったらここに呼び寄せて一番早かった奴が王様よ!! 」

 

「は、お前何言って? 」

 

「フォルスファイア!! 」

 

 アクアが嬉々とした声でモンスター寄せの魔法。敵意を増大させるフォルスファイアーを打ち上げた。それは花火のように木の横で打ちあがり爆発した。

 

 今まで進路が木の張るか横を通過する風に動いていたトカゲどもが足を止めると襟を逆立ててこちらをむいて一斉に。

 

『キシャァァァァァァァ!!!!!!!! 』

 

 そう叫びながら進路をまっすぐ木の方に向けて。正確にはアクアめがけて走ってきた。

 

「ぎぃやぁぁぁ!! 」

 

「「ぬわっ!? 」」

 

「おいおいおい!! 」

 

 カズマが悲鳴を上げ、めぐみんとダクネスがうろたえ、俺はまずい状況になったことに思わず声を上げる。ゆんゆんはトカゲの上空を飛びながら状況が変わったことにおろおろしている。

 

「このクソバカ!! 姫様と王様をこっそり討ち取れれば済むのにどうして呼び寄せた!! 毎度毎度やらかさないと気が済まないのか!? 芸人根性もたいがいにしとけよ!! 駄女神!!!! 」

 

「はっ!? 言われてみればそうだわ……って言うかいきなり怒らないでよ!! 私だって役に立とうとしてやってるんだから!! あと駄女神はやめなさいよこのクソニート!! どうせこの後の展開なんてわかってるわよ!! 私があいつらにひどい目にあわされて泣かされるのよ!! いつものことよ!! さぁ殺すなら殺せぇぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

「悪い予感を自分から引っ張ってきやがって!! おいアクア!! そんなところで寝っ転がって泣きわめいてたら本当に死ぬぞ!! 」

 

 カズマがアクアにそう言葉を投げかけた後、魔導メガホンを通じてゆんゆんに指示を出す。

 

「ゆんゆん!! インフェルノでトカゲどもを怯ませてくれ!!!! 」

 

「わ、わかりましたー!!!! インフェルノ!! 」

 

 ゆんゆんが上空からインフェルノをトカゲたちに浴びせるが、トカゲが敵意全開でアクアに向けて全力疾走しているせいでほとんどの個体が、焼き尽くされる前に放射されたインフェルノのレンジから逃れてしまった。ゆんゆんは逃がすまいとグウェンの力でスライドしながらインフェルノを放ち続けるが放射しながらでは機動力に限界があるようでやはり仕留められない!!

 

「一番早いの、一番早いの!! あいつか!! 狙撃!!!! 」

 

 カズマが王様ランナーと思われるトカゲを狙撃した。周囲に重火器特有の爆音が鳴り響き弾丸がまっすぐ王様ランナーらしき個体の眉間に吸い寄せられやがて命中する(ステータスが高いおかげで弾丸が俺には見えている)。

 

 その瞬間、俺とカズマお手製の大火力リボルビングライフルの直撃を受けて王様ランナーの頭が吹き飛んだ。

 

「す、すごいのです!! 」

 

「これがジュウの威力か!? 」

 

 めぐみんとダクネスが感嘆の声を上げる。こんなにも弾丸の威力が強力なのはこの世界の爆発する鉱石を薬莢に込めているからだ。

 

「ん、なんだ!? なんかトカゲどもが目に見えて張り切りだしたぞ!! どうなってんだ!?」

 

「そりゃそうよ。王様がいなくなったから新しい王様になれるチャンスができたってことだものトカゲたちは張り切りだすわよ」

 

「拗ねて寝転がってないでダクネスかリョウタのところに行って護ってもらえアクア!! 」

 

 カズマがそう言っているうちにリザードランナーの群れはまっすぐアクアへと突っ込んでくる。

 

「めぐみん!!!! 」

 

 カズマがめぐみんを指名する。

 

「はい!! わっはっはっ!! 我が究極の一撃喰らうがいい!! エクスプロージョン!! 」

 

 しかし、何も起こらなかった。

 

「カズマ!!!! 魔力が!!、爆裂魔法発動に必要な魔力が足りません!! どうしましょう、どうしましょう!? 」

 

 逆境に弱いめぐみんが涙目でカズマに訴える。

 

「え、何でって……朝俺がドレインタッチで魔力吸ったからかー!!!! 道理で体がいつもより元気だと思った」

 

「どうしたらいいですかカズマー!? 」

 

「ダクネスとリョウタのところに行け!! 」

 

「は、はい!! 」

 

 めぐみんが、リザードランナーの群れを背後にしながら俺とダクネスの後ろにやってきて隠れる。

 

「ゆんゆん!! リョウタ!! 姫様に攻撃を集中してくれ!! 」

 

「わかった!! 」「わかりました!! 」

 

「ダクネスはデコイで少しでもアクアへの敵意をそいでくれ!! 」

 

「了解だ!! 」

 

 ゆんゆんはライトオブセイバーを発動しトカゲどもを上空から薙ぎ払っていく。俺もトカゲに真正面から突撃するとルーンオブセイバーを発動し横なぎに一閃する。しかしトカゲどもは上空からの攻撃にはともかく真正面からの攻撃には俊敏に反応しルーンオブセイバーを回避した。

 

 やがてトカゲどもの濁流が俺を飲み込んだ。

 

 立っているのが精いっぱいの状態だ。

 

「くっそ!! 」

 

「リョウタさん引っ張り上げますね!! 手を!! 」

 

 ゆんゆんが俺に手を差し出すが俺はそれを握らない。

 

「ゆんゆんはめぐみんを引っ張り上げてやってくれ、あの子のステータスじゃ踏まれたら確実に死ぬ!! 」

 

「そ、そうですね、わかりました!! 」

 

 首を後ろに向けるとダクネスもトカゲの濁流にのまれる寸前だった。やがてその後ろにいるめぐみんもダクネスともども飲み込まれてしまう寸前で。

 

「な、なんです、なんですかゆんゆん!? 」

 

「リョウタさんの指示よ!! 」

 

 ゆんゆんがめぐみんを引っ張り上げた。おかげで濁流に飲み込まれたのはダクネスだけで済んだ。

 

 そして。

 

「カズマさん!! カズマさ」

 

 アクアがトカゲどもに踏みつぶされていった。それと同時に俺はやっとトカゲの行列から解放される。

 

 カズマはというとUターンし、もう一度。おそらくアクアを踏みつぶさんと動いているリザードランナーの集団の先頭にいる姫様ランナーに狙いを定めていた。

 

 すると、姫様ランナーがとんでもない脚力で飛び上がり空高くから木の下で泣いているアクアめがけてとび蹴りを放つ。

 

 それがアクアに命中する前に。

 

「ソゲキ!!!! 」

 

 カズマがリボルビングライフルを姫様ランナーに発砲した。

 

 姫様ランナーの頭が粉みじんに吹き飛び、残った体が空中でバランスを崩す。

 

「紙一重だったな……」

 

 カズマがそう言った瞬間。姫様ランナーの残骸が木の上に落下した。

 

「うおっ!? 」

 

 衝撃でバランスを崩したカズマは。木から滑り落ち。変な体勢。正確に言うと首から真っ逆さまに地面へと落下し。

 

 周囲に鈍い音を響かせた。

 

 それは首の骨が折れる音だったのだろう。

 

「かっ、カズマ!? 」

 

 めぐみんがゆんゆんに吊り下げられた状態でカズマの名を叫んだ。




 アクア様の女神らしさが出た回でした。あと、銃に関しては完全に調べた知識で書いているので、完璧かどうかわかりません。ご了承ください。



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