【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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056 問題を引き寄せる才能

「……なんだあれ」

 

 窓際で外の景色を見ていたカズマがそうつぶやき御者のおっちゃんと話し始めた。なんでもすごい土煙が見えるらしい。俺には見えないのでカズマは千里眼でも使って遠視したのだろう。

 

「そりゃきっと砂クジラが砂でも吹いてるんじゃないですかね。それか走り鷹鳶か」

 

「走り鷹鳶? 」

 

 カズマが引きつった顔で御者のおっちゃんに聞き返す。

 

「おっとダジャレとかじゃないですよお客さん。走り鷹鳶はタカとトンビの異種交配の果てに生まれた鳥類界の王者でして空を飛べない代わりに地面を高速で走るんです。―――」

 

 カズマとおっちゃんの話に俺は耳を傾ける。

 

 おっちゃん曰く、走り鷹鳶は春になると繁殖期になるため、オスが度胸試しのチキンレースというものを行いメスに求愛するらしい。チキンレースは本能的に見つけ出した固い障害物に疾走して迫りギリギリのところで回避するというものだ。

 

 何と言うかリザードランナーと言い、この走り鷹鳶と言い、走るモンスターは変なのしかいないな。

 

「そこら辺の岩にでも突っ込んでいって勝手にチキンレースするんじゃないんですかね? 」

 

「なるほどそれなら安心だ」

 

 おっちゃんの言葉に安心したカズマが外の景色に再び目を向けた。すると、またおっちゃんに話しかけた。

 

「すいません、なんかこっちに土煙が向かってきてるみたいなんですけど」

 

「……ありゃ走り鷹鳶ですね。なんでこっちに向かってきてるのか? おかしな話ですよ。もしかしたらキャラバンの中にアンダマンタイトでも積んでる馬車がいたりするのかもしれませんね……。まぁ何かあれば護衛の冒険者の方々が護ってくれますし安心してください」

 

 どうやらおっちゃんも土煙が見えるようだ。俺も外の景色を確認してみると確かに土煙が迫ってきていた。キャラバンに。いや……。

 

「お客さん? 気のせいでしょうか? なんだかこの馬車に奴らが向かってきてる気がするんですが」

 

「おっちゃんもそう思うよ……な」

 

 そこまで言ってカズマは青い顔になった。

 

 どうしたのだろう。

 

 そう疑問に思っていると、おっちゃんが俺たちに焦りながら一声かけると馬車を止めた。どうやらキャラバンに所属しているどの馬車も停止しているようだ。

 

「お客さんはそこでじっとしていてください。護衛の冒険者方がこのキャラバンを護ってくれますから!! 」

 

「は、はい……」

 

 カズマは申し訳なさそうな顔でおっちゃんから目を逸らした。

 

「どうしましょうかリョウタさん。私たちも手伝いましょうか? 」

 

「そうだよね。手伝おうか」

 

 俺とゆんゆんが座席から立ち上がる。その間にカズマはというとダクネスに対して。

 

「おいダクネス、走り鷹鳶がこっちに来てる理由が分かったぞ!! 連中の狙い。それはお前の硬い筋肉だ!! 」

 

「……おいカズマ、私も奴らから熱視線を感じていたがそれは違うぞ。連中の狙いは私の鎧のはずだ。私の鎧はアダマンタイトも少々含んでいるからな。それかお前のジュウか、リョウタの剣類だろう。……なんだその顔は!? 私はそんなに硬くない!! 」

 

「いいや、お前だね。視線を感じてたんだろ。だったらお前だ。お前なんだよ。アダマンタイト並みに硬い腹筋を持つお前を奴らは目標にしてるんだ!! 」

 

「きっきさまぁぁ!? 」

 

「とにかく出てみればわかることだ。……おいみんな、今回は俺たちが招いたモンスターみたいだ。自分たちのしりぬぐいは自分たちでやるぞ!! 」

 

「わかりました。少し待っていてくださいね」

 

 めぐみんがレッドドラゴンの赤ちゃんに語り掛けながら篭を置き立ち上がる。アクアもカズマの声が届いているため戦う準備として杖を握った。

 

「よし、行くぞお前ら!! 」

 

「お客さん、ダメですよ、お客さんは金払って馬車に乗ってるんだから!! 戦わなくてもいいんですよ!? 」

 

 御者のおっちゃんが俺たちに驚きを見せる中。

 

「あの私もお手伝いします」

 

「ウィズはおっちゃんを護ってあげてくれ。それにバニルのせいでまだ本調子じゃないだろう? 」

 

「は、はい。わかりました!! 」

 

 カズマがウィズさんにそうお願いすると俺たちに向き直って。

 

「リョウタ、ゆんゆんの2人は上級魔法で走り鷹鳶を迎撃する準備を。めぐみんも同じく爆裂魔法の準備だ。アクアは全体の支援を。間違ってもフォルスファイアは使うなよ。俺は銃でとにかく狙撃する。それとダクネス。お前は走り鷹鳶に突撃しろ。奴らの狙いはお前だからな!! 」

 

 俺たちが各々頷く中でダクネスは一人。

 

「くっ、このぞんざいな扱い。いいだろう。私は突撃するぞ!! 」

 

 そう言って紅潮しながら走り鷹鳶へと向かっていった。

 

 そんなダクネスに正規の護衛の冒険者の一人が「そこのクルセイダー、あんたは護衛じゃないだろ!! 」と静止するよう呼びかけるが、ダクネスは止まらない。

 

「あのクルセイダーの人カッコいい。あんな大量の走り鷹鳶に対して一歩も引かない気よ!! なんて勇敢なの!! 」

 

 名も知らぬ正規の護衛冒険者がそう言う。その他の護衛冒険者も同じようにダクネスをほめたたえている。

 

 それを聞いて顔を青くしているのはリボルビングライフルを取り出しているカズマだった。

 

 俺も正直胃が痛い感覚がある。だってこの状況ダクネスが招いてるんだもの。

 

 しかしダクネス。俺の神殺しの剣やソードメイスを超える硬さをしてんのか……。なんて子なんだ。

 

「あのクルセイダーデコイを使っているのか!? 自分にすべての走り鷹鳶を引き寄せてるぞ!! 」

 

 ダクネスめがけて突っ込んでくる走り鷹鳶を見て。彼女がデコイを使ってるように考えているいる様子の護衛冒険者たち。

 

「すいません。あいつそんなスキル使ってません……」

 

 カズマがぼそぼそとつぶやく。

 

 俺はゆんゆんと顔を見合わせて苦笑しながら上級魔法の詠唱をする。やることと言えば高火力による殲滅だ。ここは俺がライトオブセイバーで、ゆんゆんは最近覚えたらライトニングストライクというライトニングの上位版の魔法を照射するようだ。

 

「援護は任せろ!! バインド!! 」

 

 護衛冒険者のうちの一人である盗賊職の男がダクネスの援護のために、突っ込んでくる走り鷹鳶の数を少しでも減らさんとしてバインドを発動する。が。

 

「なに、バインドだと!? はっ!! 」

 

 ダクネスが、後方から延びてくるバインドに自ら喰らいに行き、芋虫のようにロープでぐるぐる巻きになった。

 

「何やってるんだダクネス!? 」

 

 意味不明すぎて声を上げる俺。そんな俺にカズマは。

 

「あいつ動けなくなった腕で走り鷹鳶に蹂躙されたいんだよ。多分」

 

 あきらめたような顔で銃を構えながら一言。

 

「まさか俺がバインドを使ったことで走り鷹鳶の標的になることを心配して代わりにバインドを受けたのか!? すまねぇ!! 援護のつもりが帰って邪魔しちまった!! 許してくれぇぇ!! 」

 

 バインドを放った盗賊職の男はそのように解釈し泣きながら謝った。

 

「カズマさん、私とリョウタさんも前に出ましょうか!? ダクネスさんを助けるために」

 

「頼む!! 」

 

 俺とゆんゆんは駆け出した。

 

「ああ、いよいよ発情した雄たちが私を蹂躙しに来るのだな!! さぁ来るなら来い、やって見せろぉぉぉ!! うぅん!! 」

 

「そんなこと人様がいる前で叫ぶな変態!! 」

 

 カズマがそう言いながら、ダクネスに迫っていた走り鷹鳶を発砲して抹殺していく。

 

 俺とゆんゆんは転がっているダクネスの隣に位置すると。

 

「一気に消し去る。ライトオブセイバー!!!! 」

 

「ライトニングストライク!!!! 」

 

 俺が長大な光の剣で横一線に。ゆんゆんが極太の電撃をまっすぐに放ち走り鷹鳶の数を減らす。

 

「俺たちも負けてられねぇ!! ファイヤーボール!! 」

 

「ライトニング!! 」

 

「エアハンマー!! 」

 

「突撃だぁぁ!! 」

 

『おぉぉぉぉ!!!! 』

 

 護衛冒険者たちも、俺たちの大火力魔法による殲滅劇に当てられたのか魔法を放ちながらフォーメーションを組んで走り鷹鳶に突撃していく。

 

 次々と撃退されてゆく走り鷹鳶たち。それを見てダクネスは。

 

「ああ、これでは私が襲われないまま終わってしまう!! みんなどうかお構いなく!!!? 」

 

「構いますよダクネスさん!! 」

 

 ゆんゆんにすら突っ込まれるダクネス。

 

 走り鷹鳶たちはどんどん数を減らしていくのだが問題点が一つ。それは高速で走っているため撃退されて死亡または意識を失っても慣性の法則にのっとってそのまま馬車や、近接職の冒険者に激突してしまっているのだ(もちろんうまく避けている冒険者もいる)。

 

 そんな惨状をどうにかするため、俺はゆんゆんに殲滅を任せて後方に下がり、質量の塊であるソードメイスを振るってとにかく馬車や冒険者に激突するコースの走り鷹鳶を駆けまわって打ち払っていく。

 

「ちっ!! 厄介な鳥どもめ!! 」

 

 面倒な奴らだ。

 

 俺一人では対応しきれずに馬車にどんどん被害が広がっていっている。人命を優先して冒険者の保護をできる限り優先して打ち払っているからだ。

 

「クソ、数が多すぎてこのままじゃ埒が明かないか。だったら!! 」

 

 カズマが何か策を考えている声が聞こえる。

 

「リョウタ、ゆんゆんはその場にとどまって走り鷹鳶を殲滅したり、みんなを護ってくれ!! 」

 

「どうするんだカズマ!? 」

 

「任せとけリョウタ!! 」

 

 カズマがダクネスのところに行くと、アクアに支援魔法をかけてもらい、ダクネスを持ち上げた。……そんなに重いのかダクネス。

 

 そしてしばらく俺が走り鷹鳶たちを打ち払っていると、あろうことか俺たちを乗せていた馬車がカズマ、アクア、めぐみん、ウィズさんを乗せて出発した。

 

 ……ダクネスをロープでつないで引きずりながら。

 

「ええぇぇぇぇ!!!? 」

 

 ゆんゆんが悲鳴に近い驚き声を出しながらライトニングストライクを放ち続ける。

 

「そりゃ確かに、ダクネスを引っ張ってけば走り鷹鳶もついてくるけどあれはあんまりだろカズマ!!!? 」

 

 俺もその光景を見てカズマの外道すぎる作戦に舌を巻いた。ダクネスは地面を何度もバウンドしながら馬車に引きずられている。

 

 やがてすべての走り鷹鳶がダクネスに吸い寄せられてやることがなくなった5分後。遠くに見える、雨宿り用の人口のドーム型洞窟が爆裂魔法で消し飛んだ。

 

 

 

 

 ダクネスを馬車で引っ張る形になったのは、拘束系スキルが時間経過以外では解除するのにロープを1本1本切るしかなかったため、ダクネスを自由にするには時間がかかってしまうからという理由でダクネス本人からの申告もありああなったそうだ。

 

 結局大量の走り鷹鳶を撃退した方法は、ダクネスをおとりに雨宿り用の洞窟にまで誘導し、走り鷹鳶が全部洞窟に入ったところで爆裂魔法で撃滅という流れだったとのことだ。

 

 現在時刻は夜。キャラバンの馬車を円形の陣にして停車させ風避けと、モンスターの襲撃に遭った際のバリケードとして機能するようにした中で、キャンプファイヤーが行われていた。

 

 俺たち(ウィズさんを含めて)はキャラバンのリーダーであるおじさんから称賛され礼金を渡されようとしていた。

 

 が。

 

 当然受け取れるものではない。

 

 今回の件は俺たちが。もっと言えばダクネスの硬さが引き起こしたものであり、気絶したり死亡した走り鷹鳶の激突による積み荷への被害から考えて、むしろ俺たちが賠償しなければならない立場なのだ。

 

 しかしそんな話をしても信じてくれないキャラバンのリーダーのおじさんは、礼金をパーティーリーダーであるカズマに押し付けてくる。

 

「どうか受け取って下さい」

 

「い、いえ。何度も言うように俺たちが招いたことですから受け取れません!! 」

 

 カズマは必死に抵抗し、何度も何度もおじさんに説明し、結局誤解は解けないままだったがどうにか礼金の受け取りを拒否できた。

 

「お疲れ様カズマ」

 

「ああ、本当に疲れた」

 

 俺とカズマは並んで座り、お茶を飲んでいた。

 

「俺たちが賠償したいところなぐらいなのにな」

 

「全くだよリョウタ。ったく、ダクネスのやつどんだけ硬いんだよ」

 

「アダマンタイトやそれに匹敵しそうな武器を持ってる俺やカズマが標的にされなかったあたり相当だな。爆裂魔法に耐えただけのことはあるな」

 

「そう言えばそうだったな。あれに耐えられるんだよなダクネスは」

 

 アクアが宴会芸をして乗客や御者冒険者から注目を集めているのが見える。俺とカズマも自然とそれに目を向けながら会話を続ける。

 

「頑丈な子だな。とても貴族のお嬢様とは思えない」

 

 そう。普通貴族のお嬢様と言ったらアヤメリス様のような軟そうな感じなのが普通だろう。

 

「本当だよ。おまけに変態だしな」

 

「そこは考えようによってはプラスな点になる気もするが……」

 

「いや、あそこまでイってると引くだろ」

 

「まぁそうだな。ドSにとっては相性がいいんだろうけどな」

 

「リョウタ、俺さ、思うんだが。ダクネスはドMなんかじゃなくてファッションドMな気がするんだ」

 

「ファッションドMだって? 」

 

「よく考えてみてくれ。羞恥心の基準がまず曖昧だろ。サキュバスの件の時だって辱めを受けたのに喜ぶどころか『ぶっ殺してやる!! 』だし。……あいつの場合、本当の意味で貞操の危機とかに陥ったらあの秘められたゴリラパワーで相手を絞め殺しそうじゃないか? 」

 

「……言われてみれば確かに」

 

 カズマの言っている光景を想像すると、実にうまい具合にしっくりくる。

 

「面倒な子だなララティーナお嬢様」

 

「うん、本当に面倒な子だ」

 

 俺の言葉にしみじみ同意すると言った風なカズマ。

 

「おい貴様ら!! ゴリラパワーな女だのララティーナだの面倒な子だのと口走っているのが聞こえているぞ!! 今からその身でお前たちの言うゴリラパワーを味合わせてやろうか!? というか私はその……しょ、正真正銘のドMだ……」

 

 後ろからやってきたダクネスが俺たちに最初は怒り心頭な語気で語り掛けてくるが後半になると、面倒くさい面をさっそく発揮した。

 

「やっぱり羞恥心の基準がおかしんだよお前は!! 」

 

「カズマに完全に同意だよダクネス」

 

「くっ!! うぅぅぅ……」

 

 涙目になるダクネス。かわいい。

 

「リョウタさん、カズマさんその辺で。ダクネスさんが涙目になってるじゃないですか」

 

 ダクネスの味方をするゆんゆん。優しい。

 

「まぁダクネスの話題はこの辺にしとくよゆんゆん」

 

「ああ、そうするよ。散々言って悪かったなダクネス」

 

 俺はゆんゆんの言う通りダクネスを話題にするのはやめて、カズマはダクネスに軽い調子で謝る。

 

「そう言えばめぐみんは? ウィズさんはなぜかあそこでやってるアクアの宴会芸に付き合わアれてるとして、あの子はどこに? 」

 

 そう、めぐみんの姿が見当たらないのだが。

 

「あ、それはですね。爆裂魔法を使えるほどの高名な魔導士の方にぜひレッドドラゴンの赤ちゃんに名前を付けてほしいという飼い主さんから依頼が来て今、名前を馬車の中で考え中です」

 

「……ドラゴンは一度つけられた名前以外の名前で呼ばれても反応しなくなると聞いたのだが」

 

 ゆんゆんが「そう言えばそんな話聞いたことがありますね」と言って苦笑した。

 

 それからカズマはダクネスの鎧に鍛冶スキルを動員して修復していった。俺はというと今日はなんだか酒を飲んで騒いでいる護衛の冒険者たちに混じってお酒を飲むような気分ではない(今回の騒動は俺たちが巻き起こしたため)。なのでさっさと横になって寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 俺は周囲がざわついているのがきっかけで目を覚ました。横には当たり前のようにゆんゆんが寝ている。ものすごくうれしいのだが今はそれどころではなさそうだ。なにせ、騒いでいる理由がモンスターの到来だかららしいのだ。

 

 俺はゆんゆんの身体をゆすって起こす。

 

「リョウタさん? あれ朝じゃない、いったいどうして……ま、まさか。待ってくださいまだ告白もしあってないのにそいうのは早いと思います……よ? 」

 

 暗い中でも周囲のぽつろぽつりと輝いている松明のおかげでわかるゆんゆんの火照った顔。

 

 その表情はとてもエロかった。

 

 だが。

 

「ゆんゆん。そう言うのじゃない。モンスターの襲撃だ」

 

「え、モンスター!? 」

 

 ゆんゆんが自分のエロい勘違いに一気に顔を真っ赤にする。

 

「まぁ誰にだって変な勘違いはあるさ」

 

「っ、はい……」

 

「それより行くよゆんゆん。昼間は俺たちのせいだったか今回モンスターを討伐して秘かに罪滅ぼしよう」

 

「は、はい!! 」

 

 やけくそ気味に立ち上がるゆんゆん。かわいい。

 

 俺は神殺しの剣と、ソードメイスを装備する。鎧はさっきまで寝ていたので身にまとっていない。

 

「神殺しの剣に反応があるな……アンデッドか何かか? 」

 

「ゾンビだー!! ゾンビが出たぞ!! 」

 

 すると俺の疑問に大声を上げる護衛の冒険者が答えをくれた。

 

「ゾンビか!! だったら、神殺しの剣でひたすら切り倒す!! 」

 

 ソードメイスをその場に置き、神殺しの剣を構え、投げ込まれたたいまつに照らし出されたゾンビの群れに突撃しようとする俺。ディナイアルブラスターは撃てそうにないので全部近接戦闘になりそうだ。

 

 久しぶりに神殺しの剣が活躍するな!!

 

 相棒を振るえる喜びを感じていると。聞き覚えのある悲鳴がした。

 

「いやぁぁぁ!!!! 」

 

 どうやらその悲鳴は、馬車の円陣の外側で馬車を背にして寝ていた様子のアクアの発したものだったようだ。なんでそんなところで寝てるんだアクア様!!

 

「私の寝込みを襲うだなんていい度胸ねアンデッドども!! まとめて昇天させてあげるわ!! セイクリッドターンアンデッドォォォォ!!!!!!!! 」

 

 アクアにたかろうとしていたゾンビたちが一斉に浄化されて消え去っていく。

 

 あれ? あのゾンビたちアクアしか狙ってなかったな。

 

 今もなお自分に押し寄せてくるゾンビの大群を浄化しまくるアクア。

 

 そんなアクアの姿に「まるで女神のようだ」と評する冒険者もいれば、「あのクルセイダーの連れの方だよあの人は」と興奮する人もいる。

 

「リョウタ……」

 

 肩を落としたカズマが意気消沈した声を俺にかけてくる。

 

「わかってるよ。今回も俺たちのせいだな」

 

「うん」

 

「そ、そうみたいですね」

 

 ゆんゆんも俺の横で微妙そうな表情で突っ立っている。

 

 ゾンビたちはアクアの放つ神聖なオーラに引き寄せられているんだろう。

 

「いやぁ、今回も助けられましたよ!! ささ、礼金の方を受け取ってくださいね!! 」

 

 やがてゾンビが全滅したころに、嬉々とした顔で近づいてくるリーダーのおじさんから。

 

「「「絶対に受け取れません!! 」」」

 

 俺たちは逃げだした。




 このすば世界の生き物は本当におかしなのしかいませんね。これを考え付く原作者の暁なつめ先生は本当にすごいと思います。

 あとカズマさんはクズマ、ゲスマとたあに言われますがマッチポンプになってしまったりすればしっかりと報酬を受け取らなかったりしているのでなんだかんだ一線は越えない誠実な人だなと思います。

 さて次回、いよいよアルカンレティアに到着です。

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