【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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066 秘密の告白

「カズマから離れろ!! 上級者殺し!!!! 」

 

 俺はソードメイスを両手で保持し、一瞬のうちに、上級者殺しに肉薄すると、ソードメイスを横に振るった。100キロを超える鉄塊が風を切る音が鳴り響く。そして上級者殺しはと言うとそれを真っ向から前足で受け止めた。

 

「ちっ!! さすがに上級者殺しと言われるだけのことはあるな!! 」

 

「グォォォォ!!!!!!! 」

 

 上級者殺しが雄たけびを上げ、俺からいったん距離をとる。

 

 俺はその隙にカズマの状態を確認する。どうやら気絶しているようだ。

 

「リョウタさん、出てきちゃったんですか!? でも出てきてくれないと今回は危なそうですけど……」

 

「だろ!? アクア、カズマに回復魔法を!! 」

 

「え、ええ!! 分かったわ!! 」

 

 少しパニックに陥っていたアクアは気を取り直して俺の指示通りカズマに回復魔法をかける。

 

「いくよゆんゆん!! 」

 

「はい!! 無理しすぎないでくださいね!! 」

 

「承知!! 」

 

 まずはゆんゆんがグウェンで飛行し上級者殺しの上から強襲する。

 

「ライトニングストライク!! 」

 

 はじめは空飛ぶ人間に驚いたものの、すぐにスイッチを切り替えた様子の上級者殺しはゆんゆんが召喚した極太の落雷を難なく回避すると飛び上がってゆんゆんに爪の一撃を見舞おうとする。それをハルバードで受け止めるゆんゆんは上空で若干後退する。

 

 重力に従って落下してくる上級者殺し。それの真下に回り込むと。

 

「おらぁっ!! 」

 

 質量の塊たるソードメイスをまっすぐ突き立てた。それに当たるまいと体をくねらせる上級者殺し。

 

 今のはフェイントだ。本命は。

 

「ルーンオブセイバー!! 」

 

 一気にソードメイスのレンジが広がる。光の極太の剣となって顕現したそれにより胴体を焼かれる上級者殺し。

 

「グルルルル!!!! 」

 

 胴体を焼かれて着地した上級者殺しは、逃げるべきか戦うべきか悩んでいる。

 

 正直ルーンオブセイバーを喰らって爆散していないことに驚いているのだが。

 

「一気に畳み掛けます!! ブレードオブウインド、発射!! 」

 

 ゆんゆんがブレードオブウインドの風の刃をハルバードの戦斧部分にまとわせた後、それを何度も発射する。

 

 上空から飛来してきた大量の風の刃にステップを踏みまくり回避する上級者殺し。

 

「死ね、上級者殺し!! 」

 

 俺はルーンオブセイバーの光の斬撃波を発射。上級者殺しを消し飛ばそうとする。

 

 上級者殺しはそれを、両前足でガードするが、威力の高さから防ぎきれずに両前足が消し飛ぶ。

 

 バランスを崩す上級者殺し。前足を失ったことで、痛みにもがいている。

 

 ひと思いに殺してやろう。

 

 俺はライトオブセイバーを展開すると一気に上級者殺しに驀進。首を切り落とそうとした直前で。

 

「ごほっ!? 」

 

 俺は血を吐いた。同時に全身から力が抜けていく。それによりバランスを崩して上級者殺しのすぐ近くに転がってしまう。

 

 体が動かない。まずい。

 

 上級者殺しは一矢報いるチャンスができたと思い。俺に後ろ足の力だけで飛び上がり、俺の頭に喰らい付かんとして迫ってきた。

 

 それを。

 

「リョウタさんには触れさせない!! 」

 

 ゆんゆんが急降下してハルバードにブレードオブウインドを纏わせた状態で上級者殺しの首を刎ねた。そしてゆんゆんは上級者殺しの身体に体当たりを食らわせ俺の上に、首と両前足のなくなった死体が落ちてくるのを防いでくれた。

 

「大丈夫ですかリョウタさん!? 」

 

 ゆんゆんが、地面に這いつくばっている俺に駆け寄り介抱してくれる。

 

「大丈夫。ちょっと血を吐いて、体に力が入らないだけだから。あとついでに全身が普段より痛い」

 

「重症じゃないですか!! すぐに聖水を飲んでください!! 」

 

 ゆんゆんが俺の鎧に括り付けている聖水が入った水筒をもぎ取ると俺に差し出す。

 

「ありがとう。ごめんよゆんゆん」

 

 俺はそれを一気に飲んだ。

 

 身体の痛みが引いていき徐々に体に力が戻っていくのを感じた。

 

 

 

 

「あー死ぬかと思った。なんだよ銃喰らっても死なないって、どんだけ強いんだよ」

 

「上級者殺しですからね。その名の通り上級の冒険者を殺せる戦闘能力を持っていますから。むしろ、ジュウが一応上級者殺しの肉体に食い込んだことの方がすごいですよ」

 

「走り鷹鳶とかは一撃で粉砕できるのに、魂の記憶を吸収するっていうレベルの概念のせいであんなにも身体強度とかに差が出るんだからある意味理不尽だな。この世界やっぱり嫌いだ」

 

 カズマとめぐみんがそんなやり取りをする。

 

 夜。モンスターが集まってくるのが怖いので焚火はせずに俺たちは身を寄せあっていた。ダクネスもカズマも意識を回復し、アクアにヒールで傷を治療してもらっている。

 

「それにしても冷えるな。火がたけないのがこんなに悲しいと思ったのは初めてだ」

 

「だねダクネス」

 

 俺は寒いのでダクネスの意見に同意した。

 

「神殺し、あんたは体がただでさえ弱ってるんだから温かくしてしっかり眠りなさいよ」

 

 アクアが俺に忠告する。

 

 今日は見張り番を敵感知の使えるカズマが徹夜で起きたまま行い、残りのメンバーで交代してカズマのサポートをするということになっているのだが、俺はその見張り番のローテーションから外されている。仕方ないとはいえ少々みんなに悪いなと感じてしまう。

 

「わかってるよアクア。心苦しいがぐっすり眠らせてもらうよ」

 

「しっかり休んでくださいね? 」

 

「了解だよゆんゆん」

 

 俺はそう言いながら横になりタオルケットを深くかぶった。

 

「じゃあお先に……お休み」

 

『お休み』

 

 俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 カズマがなぜ夜に強いのかと言う話が聞こえてきて俺は少し意識が覚醒する。カズマはランカーで砦攻めやボス狩りをしたと言っている。ゆんゆん、めぐみん、ダクネスがそれに驚き、普段の機転の良さはその経験からきているのかなど言われているが……それ全部ゲームの話だろ。と突っ込みたい。まぁ機転が利くのは事実で俺はそんなカズマを頼りにしているわけだが。

 

 そう思っていると、アクアが「それゲームの話でしょ」と突っ込んだ。ありがとう。俺の代わりに突っ込んでくれて。

 

 それから俺は見張り番以外のみんなが眠ったなかでも、うとうとしながらもあまり眠れない時間を過ごしていると。

 

 めぐみんとカズマの声が聞こえる。ついつい意識がそちらに向いてしまう。

 

「―――みんなで面白おかしくのんびり暮らそうぜ

 

「そうですか。……私も今の暮らしは気に入っているのでこのままがいいです。しょっちゅうピンチになるもみんなで一緒に何とか乗り越えていく、今の楽しい生活に満足しています」

 

 そう言っためぐみんが。カズマの手に自身の手を重ねギュッと握り。

 

「ずっと、このままみんなで一緒にいられるといいですね」

 

 …………。

 

 なんだこの会話は。まるで俺とゆんゆんがアルカンレティアの混浴でしてたような話。聞いていていいものなのか? 見ていていいものなのか?

 

 …………。

 

 いやダメな奴な気がするぞ。

 

 これってどう考えても甘酸っぱい展開だろう。カズマと前話していて、カズマはめぐみんにもダクネスにもそんなに興味がないみたいに言っていたが、……カズマの今の目に見えて焦ってる様から相当めぐみんのこと意識してるな。……がんばれめぐみん。おめでとうカズマ。女の子に手を握ってもらえて。

 

 とにかく盗み見るのはよくない。他人に知られると恥ずかしいタイプの物事だろうし……って!!

 

 俺がタオルケットを深めにかぶろうとすると、なんと、めぐみんがカズマにもたれかかった光景が目に写った。

 

 おお!! いったぁぁぁぁ。これは大胆なアプローチだ。すげぇなめぐみん。

 

 俺は、めぐみんの行動力の高さに感心していると。

 

「すかー……」

 

 なんと、めぐみんはただ単に眠っただけだった。好きな人と手をつなげて安心でもして眠くなったのかな? かわいいなめぐみん。

 

 だけど。

 

「このロリガキー!! 甘酸っぱい展開で意識させやがって!! 許さねぇ!! 」

 

「ふぇ!? か、カズマ!? ちょっ何をするのですか、やめてください、んぁ!? 」

 

 それされたら男はキレるわな。

 

 俺はとんでもない起こし方をされためぐみんに同情しながらも、カズマの気持ちもわかるので静観した。やがて俺はやっと襲ってきた睡魔に身を委ね眠りについた。

 

 

 

 

 朝になるとアクアが昨日、めぐみんとカズマが騒がしかったせいで全然眠れなかったと文句を言うのだが、カズマ曰く、結局アクアは見張り番の時間になっても起きずに眠り続けていたそうだ。アクアの代わりにダクネスが長めに見張り番をしたらしいのだが、ダクネスはめぐみんのされたとんでもない起こされ方が気になって眠れなかっただけとのことだ。

 

「いったいめぐみんは何をされたの? 」

 

 ゆんゆんが不安げにめぐみんに聞くとめぐみんは。

 

「言いたくありません。とにかくとんでもない起こされ方をしました……」

 

 そう言ってカズマの方を恨めしそうに見た。

 

「お前が寝るからだよ。さて、朝飯食べてさっさと紅魔の里に行こうぜ」

 

 カズマに従い、朝食を食べる俺たち。朝ご飯はパンと干し肉だ。

 

「神殺し、聖水はちゃんと飲みなさいよ」

 

 俺がパンをほおばっているとアクアが心配げに俺に言った。

 

「わかってるよ。アクアは優しいな」

 

「当然だわ!! 私女神だもの」

 

 どや顔をするアクア。

 

「アクアは本当に女神なのですか? 」

 

 すると唐突にめぐみんがアクアに聞いた。

 

「そうだって前から言ってるじゃない。長い付き合いなんだしそろそろ信じてくれるようになった? 」

 

「まぁリザレクションをあんなにも成功させる様を見せられたり、ハンスで汚染されてしまった湖を完全浄化したり、果ては骨からヒールで人間を再生したりするところを見るとそうなんじゃないかと最近思ってきました」

 

「私もめぐみんと同じくだ。カズマ、リョウタ、ゆんゆんはどう考えているのだ? 」

 

「この際だから言うけど。俺はアクアによってこの世界に転生してきたんだよ」

 

 カズマがいい機会だと言わんばかりに語り始めた。

 

「俺は別世界の人間で、死んでしまったことで女神をやってたアクアにこの世界に転生させてやるから何でも一つ特典を選んで魔王を倒す使命を果たしてくれって言われたんだ」

 

「待って、今もしっかり水の女神様なんですけど」

 

 アクアがカズマの話に引っかかりを覚えたのか突っ込んだ。

 

「な、いきなりスケールが大きくなったな……」

 

「転生ですか……なんだかカッコいいですね」

 

 現地人2人が驚く中で1人、特に大きなリアクションを見せないゆんゆん。

 

「まぁ、それで俺は何というか、俺の死に方を煽ってきたアクアにむかついてアクアを転生の特典にしてこの世界にやってきたんだ」

 

「すまない、信じたいのだが、話の展開が唐突すぎるぞ……」

 

「俺以外にもたくさん転生者はいるよ、例えばすぐ横のリョウタとかな」

 

「俺も転生者だ。転生させてくれたのはアクアの後任の天使で、転生特典は神殺しの剣に錬金術だ。本来特典は1つだけなんだけど俺は転生してくれる人がアクアが担当で無くなって以降いなくなったことから2つもらえた」

 

「そ、そうなのか!? し、しかし………うーむ」

 

 信じたくても信じるための材料が少なすぎて困っているダクネス。そんな彼女とは対照的にめぐみんは。

 

「いえ、でもダクネス。カズマにリョウタのような変わっていますけどカッコいい名前の人たちは確かにたくさんいるではないですか。しかもかなり強力な装備や能力を持っていて名をはせている冒険者が多いです。魔王をかつて討伐した勇者の中にはカズマと同じ苗字を持つサトウと言う人がいますし、カズマにリョウタは私たちの見たこともない道具を作っています。そう言うことを踏まえて考えれば……」

 

「な、なるほど、信じてやれるな。今の話も」

 

 話に合点が行き、胸をなでおろし、すがすがしい顔をするダクネス。

 

「そう言うことです。信じますよカズマの話」

 

 微笑んだめぐみんは。

 

「ところでゆんゆんはリョウタからこの話でも聞いていたのですか? 反応が薄かったのですが」

 

「え、あ、うん。そうなの。私リョウタさんからお話をバニルさんを倒した直後に聞いてたんだ。アクアさんが女神なこともカズマさんがリザードランナー戦で死んでしまった時に教えてもらってて……」

 

「まぁそう言うことなんだめぐみん、ダクネス。俺とカズマはこの世界の人間じゃない。黙ってて悪かったね」

 

「構いませんよ。しかしカズマやリョウタが常識をあまり知らないところをたまに見せていたのは……」

 

「うむ、そう言うことだったのだな」

 

「「そういうこと」」

 

 俺とカズマはハモらせて言った。

 

「ねぇめぐみん、ダクネス、ゆんゆん。私が女神だってわかったんだしもっと敬って、甘やかしてくれてもいいのよ? 」

 

「「「それはちょっと……」」」

 

「なんでよぉぉぉぉ!! 」

 

 抗議するアクア。

 

 いやアクア。冷静に考えてみろ。敬われるようになるということは今までの関係が崩壊するってことだろうに。それに耐えられるのか君は?

 

 俺がアクアに思ったことを伝えようとするとカズマが辛辣な一言を。

 

「エリス様ならともかくあのアクシズ教徒の元締めの女神なんだぞお前は。敬ったり、まして甘やかしてくれる奴がどこにいるんだよ。あ、一応いるな。お前の信者にでも頼め」

 

「むぅぅぅぅ!!!! なんでエリスのことばっかり持ち上げるわけ? あんた2度もこの世界で私に生き返らせてもらっておいてひどいと思うんですけど。敬って!! ほらもっと敬って!! 」

 

 そりゃエリス様は気品もあるしこの世界の人類の平穏を誰よりも望んでいるお方だし敬われるだろうけど。アクアの人格では可愛がられることはあっても、尊敬されることは無いだろう。一部の変わり者(アクシズ教徒)を除いて。

 

「何と傲慢なのだろう。自分が敬われるほどの人間性をしているとでも思っているのだろうか……? 」

 

「神殺し!! あんた罰当てるわよ!! 」

 

「あ、アクアさん、今のリョウタさんに追い打ちするのはやめてあげてください……」

 

 ゆんゆんが懇願する。優しい。

 

「ふん!! まったく。ゆんゆんに免じて罰は当てないで上げるけどもう気遣ってあげないんだから!! 」

 

「悪かったよ。まぁ傲慢ではないよなアクアは。ごめんよ」

 

「……。汝、女神アクアの許しが欲しければお酒を献上しなさい。さすれば寛大な女神アクアはあなたを再び気遣ってくれるでしょう」

 

「はいはい、帰ったらコレクションの1本を上げるから機嫌直してくれよアクア様」

 

「あははは!!!! やったわ!!!! 」

 

 無邪気に喜ぶアクア様。

 

「さてと、そろそろ出発しようぜ。あと信じてくれてありがとな3人とも」

 

 カズマがゆんゆん、めぐみん、ダクネスに笑いかけた。

 

 

 

 

 

 それから俺たちは街道の終わりまでくるとその先に広がるだだっ広い平原の前で立ちどまっていた。

 

「どうしたもんかな。これだと遮蔽物なんかないから潜伏スキルが役に立たない。敵感知も無意味になるよな、肉眼で見えるから……。ここは千里眼で遠視しながら進むしかないか」

 

 モンスターを警戒するうえで役に立ちそうなのはカズマの言うように現状、遠視ができる千里眼だろう。

 

「俺が先行して歩くからみんなは離れてついてきてくれ。敵がいたらジェスチャーで伝えるから逃げてくれ。リョウタも不調だから戦わせるわけにはいかないしな」

 

「カズマはどうするんだ? この辺のモンスターは私やリョウタくらいの防御力が無いと、昨日聞いたように上級者殺しのようなモンスターに一撃でお前はやられてしまうぞ」

 

 ダクネスが不安げにカズマに尋ねる。

 

「俺は逃走スキルがあるから高速で逃げられるから問題ない。それとアクアに保険として速度増加の支援魔法をかけてもらうからな」

 

「なるほどそれなら安心だな」

 

 カズマの作戦を聞いてほっとするダクネス。

 

「あ、私は空から偵察しますね。この辺りは空飛ぶ危険なモンスターもいますから」

 

「そうだな、空中の守りはゆんゆんに任せるよ」

 

「はい!! 任せてください」

 

 頼まれて張り切るゆんゆん。

 

「じゃあ平原に入るか」

 

 俺たちは街道から、平原に足を踏み入れた。

 

 アクアから速度増加の支援魔法をかけてもらったカズマが走って俺たちよりも前の方に位置すると、歩き始めた。

 

 叫んでも声がまともに届かないくらいの距離感だ。

 

 ゆんゆんは「いってきます」と言い残し空中に飛び立った。

 

 俺はアクア、めぐみん、ダクネスとともにしばらく歩いていた。

 

「この辺の平原にもいっぱい危険なモンスターはいるんだな。一見平和そうなのに」

 

 俺は地図に載っているモンスター情報の項目を見ながらつぶやく。

 

 すると、日本のゲームとかではメジャーなモンスターオークの名前もそこにあった。

 

「オーク? 危険なのか? なんだか場違いな気が」

 

「オークか……フフフ、私たち女騎士の天敵のようなものだな!! 」

 

「なぜ危険なのかは、オークの項目を見ればわかると思いますよ」

 

 俺はオークの項目を見る。日本のエロゲとかでよく見られる精力絶倫で性欲旺盛なモンスターとまずあった。続いて、オークには優秀な遺伝子を取り込む特性があり純粋なオークと呼べる存在はもうすでにこの世にはいないともある。そして、オークにオスはおらずメスしかいない。なぜなら成人する前にメスオークに弄ばれて乾涸び、死亡するからだと書いてあった。

 

 え。

 

「メスしかいないのかい? 」

 

「そうよ。オークのオスは絶滅してしまっているようなものなの」

 

「な、なに!? それは本当なのか!? アクア、嘘だと言ってくれ!! 」

 

「いいえ嘘じゃないわ。だからダクネスが望んでいるような目に合わせてくれる存在はいないの」

 

「そんなぁ……」

 

 ダクネスが肩を落として落ち込み「オーク、オーク」とぼそぼそ言い始めた。

 

「オークの雌は強いオスを常に欲しています。そして捕まればそれはもう性的な地獄を味わうことになりますよ」

 

「いやなモンスターだなオーク。まぁ君たちが危険にさらされるようなオスがいないっていうのは嬉しい限りだが」

 

「う、嬉しいわけあるか!! ああああああ………」

 

 ダクネスが抗議した。

 

「ダクネス、変態すぎです」

 

「もう少し自重しなさいな」

 

 自重と言う言葉を知らなさそうなアクシズ教徒の元締めからすら自重をするように言われるダクネス。

 

「しかしリョウタとカズマが危険にさらされているのには変わりません。気を付けていきましょう。ここはオークの縄張りがありますからね。まぁ、カズマの千里眼とゆんゆんの偵察に頼るしかない私たちは気を引き締めることぐらいしかできることがありませんが」

 

「そうだね。あ、肝心な強さはどれくらいなんだ? 」

 

「わかりませんね。なにせ異種交配の果ての生物ですから。強さや特徴が地域によっても異なりますし」

 

「だとすると俺でも勝てるか分からないのか」

 

「多分神殺しのレベルの戦闘力まで達してるオークはそうそういないんじゃない? 」

 

「だと良いけどな」

 

 これ以上オークの話を続けるのはフラグが立ちそうなのでやめようと思った。

 

 が。

 

「か、カズマがオークを攻撃しようとしています!! 」

 

「な、なに!? 」

 

 すでにフラグは立っていたようだ。

 

 まずいぞカズマ、そいつに手を出したら犯られてしまうぞ!?

 

「ジエスチャーを送ろう!! 」

 

 俺たちは必死なってカズマに『逃げろ』とジェスチャーした。




 カズマさん、めぐみんに一体どんな起こし方をしたんでしょうかね?
 さて、原作よりもかなり早い段階で転生者であることが仲間たち(というかめぐみんとダクネス)に知られることになりました。だからと言って別に何かあるわけではありませんが。

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