【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

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006 スティールの引き寄せし奇跡

「うまいなキャベツの野菜炒め」

 

 俺は本日討伐した経験値の詰まった新鮮なキャベツでできた野菜炒めを食べていた。

 

 めぐみんが爆裂魔法を使った後、目に見えて弱ったキャベツたちに一気に冒険者たちが大攻勢をかけた結果、キャベツを追ってきたモンスターと戦うという展開はあったものの無事キャベツ狩りは終了し各所でキャベツ料理がふるまわれている。

 

「これ喰ってるとレベルが上がるんだよな……」

 

 この世のあらゆるものは魂を体の内に秘めているらしく、対象を食べたり、殺したり、なにせほかの存在の生命活動にとどめを刺すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収できるらしい。これがレベルアップの原理だ。

 

「この法則が元の世界でも適応されてればもう少しましな人生を送ってたんだろうな」

 

 まぁこの世界でやり直してるからいいか。真人間になるんだ。或いは真人間っぽく振舞うんだ。ゆんゆんのために。

 

 そんなことを考えながら野菜炒めをむしゃむしゃレベルアップのために食べていると、ゆんゆんがとぼとぼと席に帰ってきた。

 

「……どうだったゆんゆん? その様子だと勝敗の結果は……」

 

「うう、残念ながら私の負けでした」

 

 めぐみんとの勝負にゆんゆんは、歩いてくる姿から想像できた通り敗北したようだ。

 

「まぁ仕方ない、あんなとんでもない火力なんだから。相手が一発屋だとしても勝てなくても無理ないさ。そんなに落ち込まないで」

 

「リョウタさん……」

 

「ほらゆんゆんもキャベツ食べなよ」

 

「はい」

 

 ゆんゆんもキャベツの野菜炒めを食べ始める。どうやら予想外だったおいしさに目を輝かせた彼女は、上品さを損なわない程度にがっついた。

 

「そういやめぐみんとの勝負、何で討伐数にしたんだ? 収穫数にすればゆんゆんの圧勝だったろ」

 

「だってそんなことしたらフェアに戦えないじゃないですか。絶対に私の勝ちになっちゃうから……」

 

「俺なら収穫数勝負にして絶対に負けない土俵で戦うけどな……」

 

「……なんだかリョウタさんめぐみんみたいです」

 

「え、そうかい? 」

 

 言ってる意味がよくわからないのだが、どこかめぐみんが俺に似ているところが、ゆんゆんから見ればあったのだろうか?

 

「めぐみんも体術勝負になった時は、おなかにペットの黒猫のちょむすけを仕舞って私が反撃できないようにしたうえで戦いを挑んできましたし」

 

「なかなかド外道な戦法使うなめぐみん」

 

 まさかそんなしたたかさを持った子だったとは意外だ。

 

「はい。そんなちょっと卑怯な手ばっかり使われるから……だから私はいっつも勝負に負けてお弁当を巻き上げられてました」

 

「お気の毒に……」

 

 俺は悔しそうに、しかし同時に楽しそうなゆんゆんの昔話を笑いながら聞いた。

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は今単独行動をしていた。ゆんゆんがめぐみんに絡みに行っているからだ。やることもないので俺は昨日カズマがやっていた『窃盗(スティール)』を覚えたいのでカズマを探す。

 

 『窃盗』はカズマが昨日キャベツ相手にやっていたのだが、相手から物を奪うスキルで、様々な局面で使えそうな便利スキルだ。奪える物はランダムだとしても取っておいて損はないだろう。ちなみに転生当初にクリスに教えてもらえそうだったのだがスキルポイントが足らず断念したスキルでもある。

 

「見つけた。おいカズマー」

 

「ん、どうしたリョウタ」

 

「スキルを教えてほしいんだが」

 

 ギルドの席に座って他の冒険者と駄弁っていたカズマに声をかける。

 

 ああ、人との会話の間に入るのは少し緊張するなやっぱり。

 

「ん、いいぞー」

 

 カズマは嫌な顔をすることなく軽い調子で返事をしてくれた。

 

「金はしっかり払うぞ」

 

「あ、金をとらないぜ。友人同士だしな」

 

 俺が財布から金を出そうとするとそれを止めるカズマ。

 

「その代わり俺にも昨日使ってたアーチャー系のスキルを教えてくれよ。あ。あと……『ヒール』も持ってたら教えてくれ」

 

「わかった。じゃあそれで」

 

 俺とカズマはギルド裏の広場に移動する。

 

 そして。

 

「これが『弓』と『狙撃』と『千里眼』だ」

 

 俺は適当な木に狙いを定めて矢を射った。

 

「なるほどなるほど、お、カードにもしっかり表示されたよ」

 

 スキルはただ見ただけではどうやら伝授できない。お互いに教える気、教わる気があって初めて成立するもののようだ。ただしスキルによっては覚える気が無くてもそのスキルを見ただけで、スキル習得可能欄に追加されるものもあるらしい。

 

「じゃあやってみるかカズマ、弓と矢、貸すから」

 

「おお、サンキュー」

 

 カズマに弓と矢を手渡すと、彼は弓を構えて矢をつがえ。

 

「ソゲキッ」

 

 矢を放った。

 

 射出された矢は俺が適当に的にした木に命中する。

 

「いいなこのスキル。使いこなせたら便利だろうな」

 

「だよな。カエル狩りでお世話になるぞこのスキルは」

 

「カエル狩りか……あいつらが嫌がるせいで受けられないんだよな……」

 

 カズマは微妙そうな顔をした後、俺に弓を返却する。カエル狩りで何かあったのだろうか……仲間たちに。

 

「じゃあ次はヒールだけど……」

 

「そういやケガしてないからやりようがないな」

 

「いやあるんだ」

 

 俺は神殺しの剣を引き抜くと、少し手の甲を、血が出ない程度に浅く切った。

 

「げ、そんなことしてまで教えなくてもいいんだぞリョウタ……」

 

「いいんだどうせ治るし。俺がプリーストに教えてもらった時もこんな感じだったしな。『ヒール』」

 

 俺の手の甲の傷が癒えていく。

 

「よしヒールも覚えられた。これで駄女神がいなかったり、言うこと聞かなくてもいざとなったらなんとかできるよ。ありがとう」

 

 カズマは冒険者カードのタッチパネルを触りながらそう言った。そして冒険者カードを仕舞うと。

 

「じゃあ次は俺だな、スティール以外にも『初級魔法』を俺はさっき習得したんだが、覚えとくか? 」

 

「ぜひ」

 

 せっかくの器用貧乏職、『冒険者』なのだ。たくさんスキルを覚えるのに損はない。

 

「じゃあさっそく……ティンダーからの……クリエイト・ウォーター。そんでクリエイト・アースにウインドブレス。最後にフリーズ……」

 

 火がカズマの手の上で点いたと思ったら、今度は水が噴き出し、次に土が雪崩でて、風がそれらを運んでいくと最後に冷気が放出された。

 

 すると、俺の冒険者カードに『初級魔法』が追加されたので、さっそく習得する。

 

「じゃあ次はスティールだ。いくぞ!! 」

 

「どんとこい!! 」

 

「スティール!! 」

 

 カズマの突き出した右手が輝き、それが収まると俺の財布が彼の手に握られていた。

 

「ほい」

 

「ああ」

 

 俺はカズマから財布を手渡されながら、カードをタッチし『窃盗』を覚えた。

 

「これで俺もスティールできる」

 

「お前間違っても女のパンツをスティールするなよ。目の敵にされるぞ」

 

「しないしない。ってかカズマは確かクリスのパンツを……」

 

「ああ、スティールした。あとめぐみんのもな」

 

「……ランダムなんだよな」

 

「俺の幸運値が高いからだと思うよ」

 

「つまり無意識化でカズマはそれを望んでいた? 」

 

「んなわけあるか!! 」

 

 カズマが大声で突っ込む。

 

「まぁそうだよな普通。同調圧力の強い女ども相手にわざとやらないわな」

 

「そうだぜ。……怖いよな同調圧力。まぁ俺は真の男女平等主義者だから報復とかの必要に迫まれればまたやるが」

 

「それはちと外道だな……」

 

 そんなやり取りをしていると。

 

「あ、リョウタさーん!! 」

 

 ゆんゆんがやってきた。最初はこちらに駆けてきていたのだが、途中で俺がカズマと話しているのを見て萎縮した。

 

 そして申し訳なさそうにこそこそとこちらにやってきたゆんゆんは。

 

「あ、すみません……お二人とも。友達同士でお話してるところの邪魔しちゃいましたか……? 」

 

 恐る恐る俺たちに聞いてきた。

 

「そんなことないよゆんゆん。なぁリョウタ」

 

「ああ、カズマの言う通りだ全然気にしないで」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 この子は人を気にしすぎる。いいところでもあるんだが、行き過ぎて欠点になってるな。

 

「あの、お2人は何をされてたんですか? 」

 

「スキルを教えあってたんだ。カズマから俺はスティールと『初級魔法』を」

 

「俺はリョウタからアーチャー系スキルとヒールを。あ、ゆんゆん、俺がヒールを覚えたのは俺のパーティーメンバーには内緒にしといてくれ」

 

「わかりました。……それにしてもスティールですか。あのめぐみんのパンツをとったっていう……」

 

「あれは事故です」

 

 カズマが真顔で即答した。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばカズマから教わったスキルをまだ試してなかったな」

 

 ゆんゆんと一緒に宿への帰路についていると、ふと自分がせっかく教わったスキルをカズマのように試し撃ちをしていないことに気づく。

 

「中級魔法までなら街中でも放っても問題ありませんし、ここで試しても大丈夫ですよ。この通りは人気もないですから失敗して誤射することもないでしょうし」

 

「やってみるか。……じゃあまずはスティールで。ゆんゆんちょっと実験台になってくれないかな? 」

 

「え、ええ……ま、まぁパーティーメンバーの他ならぬリョウタさんのお願いだからいいですけど。そ、そのパンツとか取らないでくださいよ……? 」

 

「大丈夫だ。ランダムだし」

 

 ……大丈夫だよな。

 

「いくぞゆんゆん」

 

「はい!! 」

 

「スティール!! 」

 

 俺が突き出した左手が光がまぶしい放つと、その手にはピンクの重い布が握られていた。

 

「なんだこ、れ……」

 

 広げてみるとそれはスカートだった。……ということは。

 

「……リョウタさん」

 

 目の前には涙目で、上着を必死に引っ張りパンツを隠そうとするゆんゆんが。

 

 かわいい、後エロい!! それにパンツの色は薄ピンクか……ってそうじゃない!!

 

「ご、ごめん!! 」

 

「す、スカート返してぇぇぇぇ!! 」

 

 ゆんゆんが俺にとびかかってきた。

 

 ……それから丸一日、ゆんゆんは俺と目を合わせてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 とても悲しくて心が折れそうだった。




スキルの伝授に関する設定は本作独自の設定です。公式設定ではありません。
あと、ゆんゆんのパンツの色はOVAを参考にしています。ちなみに、ねんどろいどでは白でした。ゆんゆんのfigma出ないかなー?
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