【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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070 思いっきり泣いて、泣ききって

sideゆんゆん

 

 

 リョウタさんは誰にでもかわいいかわいい言いすぎだと思う。なので私はちょっと大胆にも程があったかもしれないが腕を組んで、ふにふらさんとどどんこさんの前から離れた。

 

「ゆんゆん、恋人でもないのにこれは大胆すぎないかな? いや、うれしいんだけどさ」

 

 少し恥ずかしそうなリョウタさん。ちょっとかわいいかも。

 

「私も恥ずかしいので我慢してください。リョウタさんが悪いんですから」

 

「あの2人をかわいいって言ったこと? 」

 

 わかってるじゃないですか。

 

「そうですよ。リョウタさんは見境が無さすぎます」

 

「だって本当にかわいかったし、あんな風に俺のことを見てくれた子たちは初めてだったから……」

 

 頭をかきながらそう言うリョウタさん。

 

「とにかく私、嫉妬しました。あんまりほかの子をかわいいって言いすぎないでくださいね」

 

「了解。ゆんゆんはかわいいな、本当に」

 

「も、もう……」

 

 リョウタさんは!! だけど嬉しい。

 

「……ありがとうございます」

 

 私は素直にお礼を言った。

 

 

 

 

 それから、リョウタさんと一緒に、今日はリョウタさんがうちに泊まることをめぐみんの家に行ってめぐみんたちに伝えた。めぐみんの家はなんだかとても騒がしいことになっていた。というのも、カズマさんがうっかり6億エリス手に入ることを話してしまったかららしい。ほかにも屋敷をもっていることも話してしまったそうだ。それを聞いためぐみんのおじさまとおばさまの目がすごかった。失礼ながらお金に目がくらんでいるとしか表現のしようが無いだろう。

 

 お金は人を大きく変えてしまうんだ。怖いなと思いながらリョウタさんと一緒に帰宅すると、お母さんが夕食を作っていた。普段よりも豪勢な料理である。私も作るのを手伝うことにした。リョウタさんは体の調子の問題もあるので、来客用の部屋で夕食ができるまでゆっくりしてもらうことにした。神殺しの剣を持っていれば体調がいいとはいえ、ハンスの呪いに侵されていることには変わりがないからだ。

 

「大好きなリョウタくんのためだからしっかり愛情を込めて作らないとね、ゆんゆん」

 

「も、もうお母さん!! 包丁を使ってる時にそんなこと言わないでよ!! 危ないから……」

 

「あら、ごめんね」

 

 言われなくたって愛情は込めている。ただリョウタさんの場合、私が作った物なら何でも基本的においしいと言う人だ。

 

 嬉しいのだが少し残念にも感じる。リョウタさんの味の好みと言うのがわからないからだ。一応濃いめの味付けが好きなことぐらいは知っているのだがそれだけだ。

 

「考えてみれば私リョウタさんのことで知らないこともそれなりにあるんだ」

 

 私はキャベツを千切りにしながらつぶやく。

 

「ん? どうしたのゆんゆん? 」

 

「なんでもない」

 

 もっと知りたいな。リョウタさんのこと。私の大好きな人のこと。もし明日の調査でリョウタさんの延命の手がかりが無かったら……。もし見つからなかったら。どうすればいいんだろう。リョウタさんの全部を知りたい。だけどそんな時間がもし私たちに残されてないとしたら?

 

 ……考えるのはやめよう。いったい今日でこんなことを考えたのは何度目だろう?

 

 私は努めて料理をおいしくすることに集中した。

 

 

 

 

 

 

 リョウタさんは晩御飯ををおいしいと言いながら食べてくれた。私とお母さんはそれを聞いて喜んだ。食べている最中はお父さんとお母さんに冒険話を聞きたがられ、いろんな話をした。

 

 久しぶりの家族団らんに、好きな人までいる。すごく幸せな時間だった。

 

 そして、各々がお風呂に入った後、2階の自室で休むことになった。私は久しぶりの実家の自室のベッドでごろごろしながら今日のことを振り返る。

 

「今日は楽しかったなぁ。午前中はいろいろ大変だってけど……グリフォンに襲われ、カズマさんが雌オークに犯されかけ、めぐみんと言い合いしてたら魔王軍と遭遇し、ぶっころりーさんたちと再会して……」

 

 どんどん意識が遠のいていく。

 

 疲れてるからかなぁ?

 

 ああ、眠たい。

 

「午後はみんなとこのお家に来て、お父さんと話をして、魔王軍が撃退されるのを見物して、お母さんとも久しぶりに再会して、今度はお父さんとお母さんがリョウタさんに感謝して泣き始めて、あるえに文句を言いに行って、それから……」

 

 そこまで言って私の意識は掻き消えようとした。

 

 その時。

 

 私の意識は無理やり覚醒させられる。なぜかと言うとこんな時間に家の呼び鈴が鳴ったからだ。

 

 誰だろう?

 

 私は気になったので、相手が誰なのか確かめに行くことにした。

 

 ベッドから這い出し、立ち上がり、部屋のドアを開けると、意外にもリョウタさんと鉢合わせになった。

 

「ああ、ゆんゆん。ゆんゆんも訪問者が気になったのかい? 」

 

「はい、リョウタさんもですか? 」

 

「うん。というか、訪問者は多分めぐみんだよ」

 

「え、めぐみん? 」

 

 どういうことだろう? と言うかなんでわかったのかな?

 

「窓の外をぼーっと覗いてたらめぐみんらしき女の子がこの家に近づいてくるのが見えたんだ」

 

「あ、そうだったんですね」

 

 だとしたら、なんでこんな時間に来たんだろう?

 

「行ってみましょうか、玄関に」

 

「そうしよう」

 

 私とリョウタさんは玄関のほうに歩いていく。階段を降りて1階の玄関まで行くと。

 

「あ、ゆんゆんとリョウタではないですか」

 

 めぐみんが玄関先に招き入れられていた。なぜか裸足だ。

 

「ゆんゆん、めぐみんちゃんが来たわよ」

 

 突然やってきためぐみんに対応していたお母さんが私の方を振り向いてそう言う。

 

「めぐみんあなた、何でこんな時間に? それとなんで寝間着に裸足なの? 」

 

 私は思った疑問を全てぶつける。

 

 するとめぐみんは困った顔で。

 

「現在我が家は私にとって危険地帯と化してしまってるのです。魔境です。なので今日は泊めていただけませんか? 」

 

 私とお母さんを見ながらそう言った。

 

 お母さんは。

 

「あらあら、泊めてあげるのは別に構わないんだけど困ったわね。リョウタくんが来客用の部屋を使っているし、布団も予備が無いわ」

 

「ならゆんゆんの部屋でめぐみんが一緒のベッドで寝れば解決じゃないですか? 2人は親友ですし」

 

「「ライバルです」」

 

「「あ」」

 

 めぐみんとハモっちゃった。

 

「リョウタくんの案に賛成だわ。そうなさいゆんゆん、めぐみんちゃん」

 

 え、えええええ!?

 

「そ、そりゃめぐみんと一緒の布団で寝れるのはうれしいけれど、いくら何でもいきなりはそんな……」

 

 恥ずかしい。でも、一緒に寝られるなら寝たい。

 

 ライバルだなんて意地を張って言ってるけどめぐみんは私の1番の友達なんだから。友達と同じ布団で眠れるだなんて、そうそうない。一緒に寝たい。

 

「めぐみんがいいのならいっしょに寝てあげるけど? 」

 

 私はついついそんな言い方をしてしまう。めぐみん怒るかなぁ?

 

「ええ私は構いませんとも。泊めていただけるだけでもありがたいのですから」

 

 あれ怒らなかった? それどころかさらっとOKしてくれた……。

 

 嘘でしょ? 私の友達とやりたいことリストの1つが、それも最難題の1つがあっさり達成できそうになっている。

 

「い、いいのめぐみん? 私たちライバルなのにいいの? 」

 

「私たちはライバルであり親友です。何を気にする必要があるというのですか? 」

 

 何でもないことのように言ってのけるめぐみん。この子ずるい。

 

ずるいわよめぐみん。じゃ、じゃあ一緒に寝てあげるわ!! 」

 

「ありがとうございますゆんゆん」

 

 めぐみんはわざとらしい綺麗な笑顔を向けてきた。

 

 あ、この子。お母さんの前だからって少し猫をかぶってるわね……。

 

 

 

 

 

「今回は助かりましたよゆんゆん。ありがとうございます」

 

「い、いいわよ別に」

 

 足を洗っためぐみんは私の部屋に来ていた。

 

「では早速布団の中に入らせてください」

 

「う、うん。ど、どうぞ」

 

 私は布団をめくってあげる。

 

 めぐみんはベッドの上で横になった。

 

「ふー。寒い中走ってここまで来たので疲れました。やはりベッドは体が休まりますね」

 

「そ、そう? よかったわ」

 

 ……………。

 

「あの、ゆんゆん? 寒いでしょう? あなたは布団に入らないのですか? 」

 

「う、ううん。入る。入るわよ」

 

 私に緊張の瞬間が訪れた。

 

 友達が寝転がっているベッドにこれから入るのだ。恥ずかしい。けど、すごく嬉しい!!

 

「お、お邪魔します」

 

「あなたのベッドですよ? 遠慮してどうするのですか」

 

「だ、だってー……」

 

 私はそう言いながらも、自分のベッドに入った。めぐみんと体が密着する。

 

「……少し近すぎやしませんかゆんゆん? 」

 

「ご、ごめん」

 

 私はめぐみんからできる限りベッドの上で距離をとった。

 

「まぁ、ゆんゆんならば構いませんが」

 

「え、私ならいいの? 」

 

 すごく嬉しい。

 

 私は顔が赤くなるのを感じた。

 

「ええ、あなたなら安心できますよ。なんだかんだ言って本当に私の大事な親友ですからね」

 

 私は布団の中でがばっと体を勢いよく動かし、めぐみんの上に位置すると彼女の肩をつかみ。

 

「……もう一回言って? 」

 

 すごく嬉しい一言をもう一度言うように懇願する。

 

「こ、怖いですゆんゆん。私、さっき襲われかけたのでそう言った勢いのある動きはやめてほしいんですが……」

 

「ご、ごめんめぐみん」

 

 少し怯えた様子のめぐみんにものすごい罪悪感を抱いた私は謝ると、元の位置に戻る。

 

 え、待って。今めぐみんは、襲われかけたって言わなかった?

 

「ちょっと待ってめぐみん。自分の家が魔境だって言ったり、襲われかけたってことと言いいったい何があったの? 」

 

「……実は私の母ゆいゆいのお金を持った娘婿が欲しいという策略でカズマと私の部屋で2人っきりにされたのですよ。それでなんだかんだあってカズマが性欲を抑えきれず私を襲おうとしました」

 

「か、カズマさん、信じられない!! めぐみん大丈夫? 」

 

 私は普段ニート気質でありながらも仲間思いな印象のカズマさんへの認識を改めないといけないのかもしれない。

 

「大丈夫です。今はゆんゆんが近くにいてくれるので」

 

 なにこのめぐみん。すごくかわいいんだけど。

 

「そ、そう? 」

 

 ああ、頭を撫でてあげたくなる衝動に駆られるけど、我慢しないと。

 

「まぁカズマが嫌と言うわけではないんですがね。男性のぎらついた欲望と言うのをいざぶつけられそうになると腰が引けてしまったというか……」

 

 弱弱しい声で語るめぐみん。

 

「めぐみんカズマさんのこと好きだもんね」

 

「……はい。まぁ好きですよ本当に。いろいろ問題がある人ですが大好きです。別に今回の件で嫌いになったりはしません。まぁでも怒ってはいるので明日仕返しはしますが」

 

 そう言って不敵に笑っためぐみん。

 

「親主導の下で初体験するだなんて冗談ではありませんからね」

 

 そしてそんなことを恥ずかしげもなくさらっと言った。

 

「は、初体験って」

 

 私はめぐみんのストレートすぎる表現に照れる。

 

「何を引き気味になっているのですか? というかゆんゆんはリョウタとそう言うことしたくないんですか? 」

 

「え、わ、私!? 私は……」

 

 したくない。わけではない。

 

「し、したいかな? 」

 

「そうですか、やはりそのエロい体つきに違わずエロいんですねあなたは」

 

「ちょっとめぐみん恥ずかしいからやめて!! というか変なこと言ってると布団から、いや家から追い出すわよ? 」

 

「それは勘弁してください」

 

「全くめぐみんはもう」

 

 それからしばらくの間、私とめぐみんの間に沈黙が流れる。

 

 するとおもむろにめぐみんが切り出した。

 

「ゆんゆん、リョウタの件、大丈夫ですか? 」

 

 いつになく優しげで真剣な声だ。

 

「な、なにが? 」

 

 いきなりのそんな態度に私は困惑する。

 

「不安じゃないんですか? リョウタの寿命が短いことが。そしてせっかく見つけた希望も、もし、万が一にも見つけることができなかったりして、リョウタが延命できないかもしれないことが」

 

 ああ、めぐみん。私のこと心配してくれてるんだ。

 

 そう思うと、いきなり言葉があふれてきた。

 

「……不安よ、すごく不安。不安でどうにかなりそうよ。今日お母さんと一緒にご飯作ってる時だって、リョウタさんと里の外であるえや、ふにふらさん、どどんこさんと再会した時だって、それより前からだって、ずっと不安よ。怖くて、怖くてたまらない」

 

「ゆんゆん……」

 

「バニルさんが見通してくれるまで希望もなくて怖かった、辛かった。今は希望がある分マシだけど、それでも怖い。だって、もし、めぐみんが言ったように万が一手段が見つからなかったら? リョウタさんは長くは生きられずに死んじゃうんだもの……そんなの嫌だよぉ!! ううっ……!! 」

 

 私は気づくと泣きじゃくっていた。涙があふれてあふれて止まらない。

 

「ちゃんと、まだ誰かの前で1度も泣いていなかったのですね」

 

「うん……」

 

「よく我慢しましたね。今日は今まで我慢してきた分、しっかり泣いてください」

 

 めぐみんが私の頭をなでると、そっと抱きしめてくれた。自分以外のぬくもりに触れた私は、ついに耐えられなくなり。

 

「うわぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 大きな声で思いっきり泣いた。

 

 大切な親友の胸の中で。

 

 それから泣き疲れた私は親友の腕の中で気づくと眠ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 翌朝。家の玄関にて。

 

「めぐみんまたあとでね。それと昨日はありがとう」

 

 朝早くからめぐみんは自宅に帰ろうとしていた。理由は至極単純。めぐみんが寝間着だからだ。冒険者服に着替えに帰り、それから謎施設に集合と言うことになっている。

 

「気にしないでください。……必ず見つけましょう。リョウタの延命手段を……!! 」

 

「うん!! 」

 

「ではまたあとでですゆんゆん」

 

 そう言って私の大切な親友は家へと一旦帰っていった。

 

 




 今回はちょっと短めでした。

 ゆんゆんは今回の話で分かるようにけっこう追い詰められています。そんなゆんゆんにめぐみんという親友の気遣いが染みるのです。優しいめぐみんは天使。あと、ゆんゆんも天使。

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