【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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076 憎悪

sideリョウタ

 

 紅魔族がいきなり魔法を使わなくなり逃げ惑い始めた。理由はすぐにわかった。あの紫色の巨大なドーム状のフィールドのせいだ。おそらく魔法を使えなくする結界なのだろう。

 

「あ、あれヤバくない? 」

 

「絶対ヤバいって!? 」

 

 側でふにふらとどどんこが抱き合って怯えている。

 

「第5陣以降の部隊は出撃取りやめだ!! 何か様子がおかしい!! 」

 

 紅魔族の1人がそう言って、追加で部隊を送るのを中止する。

 

 いい判断だと思う。

 

 紅魔族が戦えなくなったこの現状。それを打開できるのは、もはや俺しかいない。

 

 神殺しの剣を引き抜き、4枚の羽根を展開し、各ステータスを呪いで向上させる。

 

 だが。

 

「ごふっ!! 」

 

「だ、大丈夫かい。リョウタさん? 」

 

 俺は吐血し、ひざまずく。近くにいたあるえが介抱してくれた。

 

「大丈夫とは言いがたい。けどいかないと。あのフィールドの中でまともに戦えるのはもう空を飛べるゆんゆんしかいない。あの子を死なせるわけにはいかない。あの子は俺の愛している人だから!! 」

 

 俺は無理にでも立ち上がるが、再び血を吐きバランスを崩した。そんな俺にあるえが肩を貸してくれる。

 

「不調なんだね。だったら行ってはいけないし、そもそも行けないだろう。その体の状態じゃ」

 

「だとしても……」

 

 俺が前に進もうとすると、突如後ろから肩をつかまれた。

 

 振り向くとそこには。

 

「フハハハハハ我輩、参上である!! 」

 

「リョウタさん、お久しぶりです……」

 

 俺の肩をつかんだのはバニルだった。隣には青い顔をしたウィズさんも一緒にいる。そう言えば4日間悪夢に苛まれる呪いをかけられてたんだったなこの人……。

 

「あなたたちは誰だい? それにとてもセンスのいい仮面だね」

 

 あるえが怪訝な顔でバニルとウィズさんを見つつ仮面を褒める。やはりバニル仮面は普通の紅魔族にとっては琴線に触れるもののようだ。

 

「我輩の仮面の良さがわかるか娘よ。さすがは紅魔族である」

 

「リョウタさん。リョウタさんの呪いを解く方法が紅魔の里にあると聞いて急いでやってきました」

 

「うむ。本当であれば今日の朝に向かう気だったのだがこのポンコツ店主が汝らの事情を聞くと早く行こうと言って聞かなかったのだ。それでいざ来てみればこの状況である」

 

「何があったかは俺の過去を覗けよバニル」

 

 バニルとウィズさんの方を向いて俺は言った。

 

「うむ、そうさせてもらうぞ青年よ」

 

 バニルが仮面の目の部分を赤く輝かせながらしばらく沈黙するが、やがて哄笑しながら。

 

「そうかそうか、シルビアが来ているのかこの里に。それで魔術師殺しと一体化してあの状況なのだな」

 

「そうだ。それと俺の延命手段の件だが、俺たちの見つけられたた方法は紅魔族になるということだけだった。多分それ以外方法は無い。ただリスクがあって、記憶を手術した時点で失う」

 

「なるほど。そうであったか。……もう一度汝を見通すぞ青年よ」

 

 バニルが再度沈黙する。

 

「いったいどんな力なんだい? すぐに里の状況を把握したり」

 

「バニルさんは、見通す悪魔で、あらゆる過去も未来もすべてを見通せるんです」

 

 ウィズさんがあるえに説明する。

 

「なるほどそんな力が……。小説のネタにしよう」

 

 すごいなこの状況でも趣味や夢のことも忘れないって……。

 

「見える、見えたぞ汝の延命手段はやはり紅魔族改造装置以外に無いな。そして記憶を失わない方法が一つだけ存在しているのもわかった」

 

 な、記憶を失わずに済む方法? 

 

「あるのか!? 」

 

「汝の錬金術だ。それを使って身体が造り変えらていく中で記憶が消えていく前に記憶を錬成して片っ端から書き換えられて空白になった脳内に焼き付けていくのが汝の取れる方法だ。ただしこれは我輩にも不確定すぎて先が読めない。それほどリスクの高い方法である」

 

 錬金術で思い出を錬成する。できるのか? 確かに、思い出は脳のニューロンで形作られたものだから……錬成しようと思えばできるかもしれないが……。

 

「汝に残された手段はどのみちそれしかないぞ。どうする? 」

 

「……バニルはあの装置を動かせるんだな」

 

「できるぞ。我輩の力をもってすれば可能だ」

 

「なら頼む!! 今から謎施設に行ってすぐにでも始めよう!! あるえ、ありがとう」

 

 俺は体を支えてくれていたあるえにお礼を言うと、神殺しの剣を鞘にしまい、バニルとウィズさんと一緒に謎施設へと駆け出した。

 

 

 

 

 

sideゆんゆん

 

 私はとにかくシルビアにまとわりつき、里のみんなを攻撃させないように妨害していた。

 

「しつこいのよ!! アタシの邪魔をするな!! 」

 

「邪魔するわよ!! 里の誰1人としてやらせはしないわ!! 」

 

 お父さんが先導してパニックになった里のみんなをまとめて避難していく。お父さんとお母さんが時折向けてくる視線がとても辛そうなものだった。娘である私に頼って逃げなければならないことが辛いのだろう。気にしなくていいのに。今取っている策こそが最善手なのだから。

 

「ゆんゆんの言う通りだ!! 私たちの目が黒いうちはお前の思い通りにはさせんぞシルビア!! 」

 

 ダクネスさんは一か所に集まり避難する里のみんなに飛んでくる光線を身を挺して庇っている。私もとにかく動き回って、かく乱し、シルビアの集中力を削ぐようにしている。

 

「そこ!! 」

 

「効かないわ!! 」

 

 シルビアの両腕の円筒から光線が私に放たれる。私はそれをグウェンで遮り、そのままシルビアに接近し、ハルバードによる一撃を見舞おうとするが。シルビアはそれを、左腕をブレードに変形させて受け止めた。

 

「それでも!! 」

 

 私はハルバードを今度は横なぎに振るう。シルビアは身を引きそれをかわすと。私に回避の難しい拡散する光線を右腕から発射してきた。

 

「そんなこと!! 」

 

 私はグウェンにくるまりそれを防ぐ。

 

 それにしてもグウェンの耐久力の高さには驚かされる。さすがは神器だ。

 

 するとシルビアは今度は魔術師殺しの各レンズから光線を発射。かつてリョウタさんの使っていた神殺しの剣の折れ曲がり追尾する光線……ホーミングレーザーを思わせるそれが私に全弾殺到した。

 

「だとしても!! 」

 

 私は拘束で上空に移動、そして着弾させられると同時にグウェンを開いて全弾の軌道を逸らし、自分の身を守り切る。

 

「あなたのマント、すごいわね!! 族長の娘さん!! 」

 

「まだまだ、これからよ!! 」

 

「いやこれまでにしてあげる!! 」

 

 シルビアがその長大さに似合わぬスピードで私に体を伸ばして迫ると私に普通の状態に戻した右手を伸ばす。

 

 私は何をしているのかわからないがとにかくその手を切り落としてしまおうとグウェンに念じてシルビアに驀進したのだが。

 

 その瞬間、シルビアの右の指先が一気に伸びて私に突き刺さった。

 

「あぐっ!? 」

 

 刺さり具合自体は浅い。しかし。

 

「あああああああああ!!!!!!!! 」

 

 私の身体が思いっきりしびれると同時に何かに切り裂かれるような激痛が走る。

 

「これはテーザーガンって言う電撃を流す装置らしいわ。どうかしらその身で味わってみて。感想は? 」

 

 痛い、痛い、痛い!!

 

 私は涙が流れてくるのを感じながらも、マジックワンドの反対側に装備してあったダガーを使って激痛の中、シルビアの指を切り裂こうとすると、シルビアは指をひっこめた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 私は空中で、肩で息をする。

 

「痛かったみたいね。それもかなり。あなたのせいで紅魔族たちが結界の範囲外に出ちゃったみたいだし、たっぷりといたぶってあげるわ!! 」

 

 よかった。お父さんとお母さんたちは逃げられたんだ。

 

 しかしみんなの安全が確保できたことを喜んでいる場合では無い。

 

 シルビアが私に向けて今度は両手からさっきの指を伸ばす電撃攻撃を行ってきた。

 

「ひっ!? 」

 

 私はさっきの痛みが完全にトラウマになってしまったみたいで、怯えた声を上げながらグウェンに念じてぎりぎりで回避する。

 

「あははは、かなりのトラウマになったみたいね。いいわ。いいわよ。さっきと同じ痛みを必ず味合わせてあげるからぁぁぁぁ!!!! 」

 

 シルビアは魔術師殺しのすべてのレンズからホーミングレーザーを発射し私に全方位から襲い掛かる。

 

「くっ!! 」

 

 私はひたすらグウェンで高速機動を行い回避をつづけ、避けきれないものはグウェンにぶつけて相殺し逃げ続ける。

 

「ゆんゆんはやらせん!! 」

 

「邪魔なのよ、攻撃の当たらないクルセイダー!! 」

 

 ダクネスさんがシルビアに突撃するが、シルビアはそれを回避しダクネスさんを魔術師殺しで締め上げた。

 

「ぐう、うぁぁぁぁ!!!! 」

 

「ダクネスさん!! 」

 

「ほらそこ!! 」

 

 シルビアの5本の指が再び私の身体に突き刺さる。

 

 リョウタさん!!

 

 私は痛みへの恐怖で大好きな人の名を心の中で叫ぶ。そして、それと同時に電撃が再び流された。

 

「っ!!!!!!!! 」

 

 痛い、痛いよぉ……。

 

「あははは」

 

「ファイヤーボール!! 」

 

「なに!? ファイヤーボールですって!? 」

 

 私が電撃でいたぶられているとシルビアの背後にファイヤーボールが命中し爆発した。

 

 思わず電撃を流すのをやめて指をひっこめるシルビア。

 

「どういうこと? この魔術師殺しの魔力分解フィールドの中で魔法を行使できるですって? 」

 

「ゆんゆんはやらせません!! 」

 

「もう大丈夫よ!! セイクリッドハイネスヒール!! 」

 

 めぐみんとアクアさんは魔力分解の中でも魔法を行使できるほど潜在魔力が高いようだ。

 

 アクアさんの使ったセイクリッドハイネスヒールによって体の痛みが消える。

 

「驚きね。でたらめな魔力量で魔力を分解しきらせないだなんて」

 

「ゆんゆん、離れてください、シルビアから!! 」

 

「わ、わかったわ!! 」

 

 めぐみんたちが来てくれた!!

 

 私は仲間が助けてくれたことに安心感を抱きながらシルビアから距離をとる。ダクネスさんも締め付け攻撃からファイヤーボールの時にどうやら解放されたようで2人のところに合流している。

 

「シルビア!! よくもダクネスを、そして我がライバルを……いえ、親友を痛めつけてくれましたね!! 」

 

「覚悟なさい!! シルビア!! 」

 

「それはこっちのセリフよ!! 所詮数が増えたところでたかが4人で今のアタシを倒せると思ってるの? 」

 

「ふっ!! 私たちを甘く見ないことですね。ゆんゆんこっちに来てください!! 」

 

 私はめぐみんに言われた通り3人のところに合流する。

 

「そう。だったら見せてみなさいな、あなたたちの力ってやつをね!! 」

 

「「見せつけてやりますよ(やるわ)!! 」」

 

「我が名はめぐみん!! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操る者!! 」

 

「我が名はアクア!! 崇められしものにして、その正体は水の女神!! 」

 

 めぐみんとアクアさんが呪文を唱え始める。それは爆裂魔法とセイクリッドハイネスエクソシズムの物だった。二人の周囲を大量の魔力が渦巻き、静電気がほとばしり、周囲を建物の燃える赤以外で照らし出す。

 

「な、なんですって!! これだけの魔法をこのフィールド内で行使できるだなんてとんでもない化け物ね……あなたたちは」

 

「あんたにだけは言われたくないわよ!! 」

 

「さぁ受け取ってください!! 」

 

「受け取るわけがないでしょう!! 」

 

 シルビアが私たちに迫る。するとダクネスさんが再び前に出てシルビアの胴体に体当たりを加える。私も、シルビアに再接近。あの電撃を喰らわされるのは怖かったが、それでもシルビアの周りを飛び回ってかく乱した。

 

「さぁカズマ!! 」

 

「我々の力を糧にしてください!! 」

 

「任せとけぇぇぇぇ!!!! 」

 

 爆裂魔法のエネルギー塊と、太いセイクリッドハイネスエクソシズムの光線が、シルビアの両脇を過ぎ去っていく。

 

「は? 外したの? この土壇場であなたたちは? 」

 

 シルビアが困惑したいた。私も困惑するが、すぐにその理由が分かった。

 

 それはシルビアの後方。おそらく潜伏スキルで身を隠してそこに位置どったカズマさんが物干しざお大の長いジュウ。多分レールガンを掲げていた。

 

 そして、レールガンに爆裂魔法とセイクリッドハイネスエクソシズムが命中し……吸収される。その瞬間、キンという音とともにレールガンの側面に「FULL」という私の知らない文字が表示された。

 

「やっぱりな、最初は壊れてるんじゃないかと思ってたけど、エネルギーが足りなかっただけだったか」

 

「何を言っているのボウヤ。というかあなたが持っているそれは何? 」

 

 シルビアがカズマさんの方を振り向く。

 

「これが世界を滅ぼしかねない兵器、レールガンだ!! くたばりやがれシルビア!! あの世に行ったらほかの幹部たちによろしくな!! 俺の名はサトウカズマ、お前を殺した男の名前だ!! 」

 

 カズマさんが「狙撃!!!! 」という叫びとともにレールガンの引き金を引く。それと同時に強烈なエネルギーを秘めていることが易々と想像できる光弾がレールガンから発射された。

 

 光弾は、シルビアがとっさにガードのために突き出した魔術師殺しのブレードを貫き、まっすぐ魔術師殺しの大きめの節をまるで何もないかのように貫く。光弾はそのまま後方の遥か彼方へと飛び去って行き、霊峰ドラゴンズピークの一角に命中すると、そこを轟音と共に丸ごと消し飛ばした。

 

 これが世界を滅ぼしかねない兵器の……威力!? 

 

 私はレールガンの破壊力にただただ戦慄した。

 

「嘘でしょ、これで私は……終わり? 」

 

 シルビアが崩れ落ちる。這いつくばって虫の息になっていた。貫かれた部分からは血と油のようなものが流れ出ていた。

 

 だが。

 

「そんなこと、認められるかぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 シルビアは怒声とともに、まっすぐとどこかへ巨体を動かして高速で向かっていく。その方向は地下格納庫だった。

 

「あいつまだ動けて……。クソ、完全破壊のために節を狙ったけどシルビアの部分を消し去った方が良かったのか!? 」

 

 カズマさんが壊れたレールガンを投げ捨てながら叫ぶ。

 

「か、カズマさん。私嫌な予感がするんですけど。とっても嫌な予感がするんですけど!! 」

 

 アクアさんがめぐみんを背負いながらそう言う。

 

「地下格納庫には確か他にも兵器があったとカズマたちは言っていたな……まさか……」

 

 ダクネスさんが顔を青ざめさせながらカズマさんを見る。

 

「みんな、逃げましょう。今すぐ逃げましょう!! 」

 

 めぐみんがアクアさんの背中でみんなに呼びかける。

 

 すると。月の光を背景にして、銀色で、血のように赤く輝くラインの走ったボディをしている、翼を生やしたラミアのような4本腕の巨人が地下格納庫から現れた。

 

「さぁ、第2ラウンドの始まりよ!! 」

 

 シルビアの吠える声がする。

 

「あいつ!! 格納庫内部の人型ロボまで取り込みやがったのか!? しかも融合してなんか洗練された形になってるし!! 」

 

「か、カズマさん、人型ろぼって何ですか? 」

 

 私がシルビアの新たな威容に圧倒されながら訪ねる。

 

「リョウタが以前イラストで描いた勇者王みたいなやつのことだ!! レールガンも使えないしここは逃げるぞ!! 」

 

「は、はい!! 」

 

 私は返事をするとみんなと一緒にシルビアに背を向けて逃げだした。

 

 しかし。

 

「逃がすと思うの!? あなたたちを!! 」

 

 シルビアは空を飛んだ。

 

 爆音とともに高速飛行し、私たちの前に回り込むと着地した。巨大なゴーレムの如き姿。本来頭部がありそうな場所にはシルビアの上半身がくっついている。

 

「これだけ無理な融合と変形はアタシの寿命を削りかねないから本当はやるつもりなんてなかったんだけどね……止む得ないわ!! 強力と思われるいくつもの兵器を取り込んだ私の力を見せてあげる!! 」

 

 私は相変わらず魔法が使えないことを確認すると、ハルバードを構えた。

 

「そんなちゃちな武器で何ができる!! 捻り潰してくれるわ!! 」

 

 シルビアが右の下側の巨腕を私に伸ばしてくる。サイズに似合わずとてつもなく動きは速い。

 

 私はとっさに飛行して回避した。

 

 だが。

 

「腕は4本あるのよ!! 族長の娘!! 」

 

 シルビアの右の上側の巨腕につかまれた。

 

『ゆんゆん!! 』

 

「このまま握りつぶしてやるのも一興だけど……。あんたにはこれが効くわよね? 族長の娘」

 

 にやりとシルビアが笑う。

 

 その笑みはとても嗜虐的なもので。私に恐怖を抱かせるのには十分だった。

 

 いやだ。またあれが来ちゃう!!

 

「や、やめ!! 」

 

「電撃!! 」

 

「ああああああああ!!!!!!!! 」

 

 体に激痛が走る。

 

 痛くて痛くて痛くてたまらない。怖い。辛い。苦しい。

 

「ゆんゆんを放しなさい!! ゴッドスロー!! 」

 

「そういうことは私にだけにしろ!! シルビアァァァァ!!!! 」

 

 アクアさんが杖を投げ、ダクネスさんがシルビアに体当たりする。しかし傷一つつかないシルビアのボディ。

 

「効かないわ!! 効くはずがないわ!! アダマンタイトクラスの頑丈さを備えたこのボディにあんたたちの攻撃なんてねぇ!! 」

 

 シルビアがそう言った後、哄笑する。

 

「さて、族長の娘がこのままだとくたばっちゃうわね。たっぷり報復したいしここは」

 

 私を解放するシルビア。私は電撃で身体がしびれてうまく動けず、痛みでグウェンに念じることも忘れていたせいでそのまま地面に落ちる。

 

 体に落下による鈍痛が走るが、さっきの電撃による拷問ほどではない。

 

「くっ、爆裂魔法を撃った後のせいで動けない……」

 

 めぐみんが嘆く。私をまっすぐ見据えていることから、気持ちの中では私に駆け寄ろうとしたいのだろうか? 

 

 その気持ちだけで十分よめぐみん。ありがとう。

 

 私は心の中でめぐみんにお礼を言った。しびれてろれつが回らないからだ。

 

「狙撃!! 」

 

 カズマさんがシルビアの生身の部分を狙ってリボルビングライフルで狙撃する。

 

 しかしシルビアは弾丸の命中寸前で生身の腕をブレードを展開してそれを切り落とす。

 

「生身の部分を狙ったって無駄よ!! たとえさっきのが当たっていたとしても今の私の強度はこのボディとほとんど変わらないのだからねぇ。それにバリアだってあるのよ!! サトウカズマ!! 」

 

 シルビアは自慢げに言うと、左の下の巨腕の手の平から赤黒い太い光線をカズマさんに発射した。カズマさんはダクネスさんに庇われて無事だったがダクネスさんが吹き飛ばされる。

 

「き、気をつけろカズマ……。この火力、私以外の者が喰らうと死ねるぞ」

 

 ダクネスさんが全身大やけどの状態でカズマさんに注意を飛ばす。

 

「今のを喰らって生きてるだなんて、攻撃の当たらないのはともかく本当に頑丈なのねあなた」

 

 シルビアが面白そうに笑う。

 

「さてと、どうやら紅魔族は私がわざとフィールドを縮小したのを魔術師殺しの機能が低下したからだと踏んで近づいてきているし、徹底的な絶望を与えるためにもあんたたちをいたぶるところのギャラリーになってもらおうかしらね!! 」

 

 シルビアは再び嗜虐的な笑みを浮かべた。そして、シルビアのその視線は私、そしてめぐみんに向けられていた。




 シルビアは映画「紅伝説」とは別方向で進化しました。

 地下格納庫の様々なものを取り込んだシルビアのビジュアルですが、デストロイモードのユニコーンガンダムの様に装甲の継ぎ目の各所で赤いラインが輝いていて、翼の生えており、頭部に当たる部分がシルビアの上半身になっている、スパロボOGのジュデッカだと思ってください(腕はジュデッカと違って全部4本とも同デザイン)。

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