【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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077 神を断つ剣

sideリョウタ

 

「これが紅魔族改造装置ですか……」

 

「ふむ、実によくできた機械である」

 

 ウィズさんとバニルが、装置を見て感嘆の声を上げる。

 

「早速始めてくれバニル。急がないとゆんゆんが……」

 

「分かっている。ウィズ。そのレバーを引いて青年を中に突っ込め。我輩は装置を操作する」

 

「は、はいバニルさん。……よいしょっと!! 」

 

 ウィズさんがポッドの側面についていたレバーを引くと。ポッドが展開した。

 

「さぁキリキリと入るがいい」

 

「わかってる!! 」

 

 俺は鎧を外し、ポッドの中で横になる。

 

「閉めますねリョウタさん」

 

「はい」

 

 ウィズさんがポッドを閉じた。俺は外の光景を顔面部分の小窓から眺める。

 

 バニルがタッチパネルを操作してポッドを始動させていく。内部の機器が動作確認を始めるとともに様々な色の光が灯っていく。

 

 ウィズさんはバニルに指示されてポッドに様々な部品を取り付けていく。どうやらエネルギー供給用のコンセント等のようだ。

 

「よし、こちらの準備は完了したぞ神殺しの青年よ!! さぁ、あとは汝の心の準備次第だ!! 」

 

「できてる!! いつでもやってくれ!! 」

 

 記憶の錬成というのは試せていないのでいまいち感覚がつかめないが、ぶっつけ本番でやるしかないだろう。少なくとも記憶というものは、自分にかかっている呪いよりは明確に意識できるものだしな。

 

 俺はゆんゆんくれたお守りを右手に握った。

 

「では始めるぞ!! 言っておくが、正規の方法では麻酔をしてから行うものだが意識を失ってしまうが故、それは無しで行うぞ。記憶の錬成ができないからな。したがって全身に激痛が走るはずだ。耐えて見せるがいい神殺しの青年よ!! 」

 

「リョウタさん頑張ってください!! 」

 

「分かった!! 」

 

「では始めるぞ!! 」

 

 バニルがタッチパネルに表示されている『開始』と描かれた部分に触れる。その瞬間俺の四肢や胴体が内部のアームでロックされる。そしてロックしたアームが俺の身体のサイズに合わせて動作し完全に固定される。続いて、内部の機械が変形を始めて俺の体勢を変えて、寝た姿勢から、マッサージチェアーに座ったような形に変化させる。

 

 それから。激痛が始まった。

 

「がぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 足先からプリンターのスキャナーような部品がどんどんせりあがっていく。その速度はかなりゆっくりで部品には大量のレーザー照射装置が取り付けられており俺の身体をどんどん焼くように作り替えていった。

 

 バニルが事前の説明で言っていた通り、服は着たままだがレーザーはそれらを透過するようだ。

 

 そんなことを思いながら激痛に耐えていると、どんどんスキャナーのような機械が上に登ってくる。

 

「ぐぅぅぅぅっ……」

 

 やがて首までスキャナーのような機械が来ると、それが停止し、続いて頭部にヘルメットのような機械がかぶせられる。

 

「今から汝の頭と脳が造り変えられていく!! 記憶を錬成するのだ神殺しの青年よ!! どうやらさっき見通してみたが今のシルビアは現状地上にいる状態の我輩よりも強くなっている。倒せるのは記憶を保ったまま汝以外いないだろう」

 

「そんな化け物になってるのかシルビア!? 」

 

「リョウタさん、頑張ってください!! 」

 

 ウィズさんの声を聴いた瞬間、頭全体に激痛が走るとともに、脳の作り替えが始まった。

 

 俺は錬成するために思い出を呼び起こしていこうとすると、さっそくそれが痛みとともに消されていく感覚が確かにあった。真っ白に塗りつぶされ、空白ができ始めるいくつかの思い出。

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 それがどんどん進んでいく。不要無用な思い出からどんどん消え始め大切な思い出たちにもそれが侵攻しようとする。

 

 このままだと自己の連続性を保てず、精神崩壊した末に、記憶がすべてなくなり、俺は事実上死に、なにもかもが終わる。

 

「消されてたまるかぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺は消されそうになった思い出を確かに心でつかんでいく。そして造り変えられたと感じられる、空白となった脳の領域を感覚でつかみ、そこに片っ端から呼び起こせる思い出を全て焼き付けていく。

 

 今ある記憶を、新品になった脳細胞を錬成し複製しているのだ。

 

「うぉぉぉぉ!!!!!!!! 」

 

 楽しい思い出。悲しい思い出。怒った思い出。忘れたい思い出。大事な思い出。それらすべてがそろって初めて俺なのだ。1つだってこれ以上無くしたりはしない。過去の積み重ねで人間は形作られているのだから。

 

 カズマ。

 

 アクア。

 

 めぐみん。

 

 ダクネス。

 

 俺の大事な仲間、家族。

 

 そして。

 

 ゆんゆん。

 

 俺の愛する人、愛してくれた人。

 

「全部俺の宝物だ。忘れない、消させない、塗りつぶさせない。塗りつぶす!! 俺は俺だぁぁぁぁ!!!! 」

 

『まもなく作業が完了します』

 

 電子音声がポッドの外から響く。俺は、俺のまま、それを確かに耳にしながら叫んだ。

 

「俺は加賀美涼太だぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 自分の名を叫んだ瞬間、ポッドが展開する。俺を拘束していたアームが解除される。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 俺は体力をかなり消耗した状態で体を起こした。ほとんどの記憶に穴が無いことを数々の思い出を思い出して確認する。自分自身を明確に今まで通り意識できている。

 

 しかし俺の身体には変わったことが2つある。

 

「痛みと、不快感が消えた……」

 

 体を丸々作り替えられたことで呪いとは縁が切れたようだ。綺麗さっぱりと。

 

「リョウタさん? 」

 

 ウィズさんが俺の顔を覗き込んでくる。

 

「大丈夫ですウィズさん。ほとんど全部覚えてます。忘れてない。それに呪いも解けたみたいです」

 

「よかったぁ……」

 

 ウィズさんが涙目になる。よっぽど今回の件を気にしていたのだろう。俺の指示でやったことだというのに本当に申し訳ないことをしたな……。

 

 さてと。

 

 行くか。

 

「さぁ神殺しの青年よ。汝も紅い瞳をそなえた紅魔族に仲間入りをしたぞ。では同族となった愛する紅魔の娘を助けに行ってくるがいい!! 」

 

「ああ!! 」

 

 俺は自分の瞳が紅く輝いていることを感じながら、鎧も着けずに黒い冒険者服のまま急いで神殺しの剣とソードメイスを握った。

 

 そして……。

 

 

 

sideゆんゆん

 

 

 私たちは里のみんなが何もできずに歯噛みする中、シルビアに弄ばれていた。一方的な蹂躙だ。

 

 シルビアは現在、魔力分解フィールドに重ねる形でドームを。……六角形の透明の板がいくつも結合しあってできた半球状のドームを展開していた。

 

 半球状のドームは頑丈な壁のようになっているらしい。その外では紅魔の里のみんなが心配げに私たちを見たり、シルビアに何かを叫んだり、ドームを破壊しようと必死になって上級魔法を使っている人もいた。

 

「「ゆんゆん!!!!!!!! 」」

 

 お父さんとお母さんが手に血を流しながら必死でドームの壁を叩いている。

 

 カズマさんとアクアさんはシルビアの巨大なゴーレムの胸部が展開して照射された暗い赤色の光線の爆風を受けて瓦礫に埋もれ身動きが取れなくなっている。

 

「ちくしょうがぁぁぁぁ!!!! アクア、めぐみん、ダクネス、ゆんゆん!!!! 」

 

「いやぁ!!!! 重い重い!! カズマさん!! ここから出してぇぇぇぇ!!!! カズマさん!!!! 」

 

 ダクネスさんはゴーレムの腕で締め上げらた末に骨を折られその辺に転がされていた。

 

「がぁ!? ああああ!!!! い、痛い……」

 

 私とめぐみんは紅魔族ということでシルビアから壮絶な拷問を受けていた。

 

「紅魔族はたとえどんな痛みを与えられても屈しはしな、いぃぃぃぃ!!!? 」

 

「屈しはしない? 本当に? じゃあもっと電撃の出力を上げていいわねよねぇ。おちびさん!! 」

 

「っぁぁぁああ!!!? 」

 

「姉ちゃん!? 」

 

「「めぐみん!? 」」

 

 めぐみんの家族が悲鳴を上げる。

 

 めぐみんは現在、シルビア曰くプラズマフィールドという私を痛めつけた電撃と似たものを左下の巨腕から浴びせられ苦しんでいた。もはや爆裂魔法も撃った後でまともに体が動かず体力を消耗しためぐみんでは、あんなもの長く喰らっていては死んでしまうだろう。証拠にめぐみんは体にもう全く力が入らないのか失禁してしまっている。

 

「私にだけにしなさいよシルビア!! めぐみんにはもう酷いことしないで!! 」

 

 シルビアは私をゴーレムの巨大な右下の巨腕でつかみ上げていた。

 

 私の訴えを聞いてか、めぐみんへのプラズマフィールド攻撃を中止するシルビア。

 

「じゃあ、あんたが今からアタシに締め上げられて悲鳴を一切出さなかったらおちびさんにはプラズマフィールドはもう浴びせないわ。だけどあんたが悲鳴を出せば出すたびに、おちびさんにプラズマフィールドの出力を増加して痛めつけてあげる。……じゃあゲームスタートよ!! 」

 

「っ!!!!!!!! 」

 

 どんどんゴーレムの巨腕の出力が上がっていく。悲鳴が口から漏れそうになる。

 

 だけど我慢する。めぐみんにこれ以上辛い思いをさせるわけにはいかない。

 

 だが。

 

「っああああ!!!! 」

 

 ついに私の右腕の骨が折れた。そのせいで悲鳴を上げてしまい。結果。

 

「はいプラズマフィールド」

 

「あああああああああ!!!!!!!! カズマ……カズマぁ!!!!」

 

「めぐみん!! ちくしょう、ちくしょう!! 止めろシルビアァァァァ!!!! 」

 

「めぐみん!!!? 」

 

 めぐみんに電撃を浴びせるシルビア。その顔はとても嬉しそうだった。

 

 やがてめぐみんが何も言わなくなる。一応息はしているようなので死んではいない。気絶しているだけなのだろう。それを受けてシルビアはめぐみんへの電撃の照射をやめた。

 

「ゆ、ゆるさ、ない、絶対に!! 」

 

 私は締め上げられながらシルビアを睨みつける。

 

「大した胆力ね。だ・け・ど・も!! 」

 

 シルビアが私を投げ飛ばす。私は何度か地面をバウンドしてダクネスさんの様に転がった。

 

 今の衝撃で私の左足が折れた。曲がってはいけない方向に曲がってしまっている。私はそれでも上体を起こし、地面に座った状態でシルビアの方を向く。

 

「じっくり見ておけ紅魔族!! これからアタシがこの族長の娘にとどめを刺すわ!! それが未来のアンタたちの姿よ、いたぶっていたぶって激痛の果て、生まれてきたことを後悔しながら死なせてあげる!!!! 」

 

 ゴーレムの翼の内部からピンバイスのような溝のある触手が計8本展開され、私の周囲を取り囲み、一気に襲い掛かってきた。

 

「あぐっ!? がはっ!? うごっ!? あ゛っ!? 」

 

「あはは!!!! 女が出しちゃいけないような声出してるわよ、あなた」

 

 私を叩きまくる触手。そのたびに皮膚は裂け、肉がえぐられ、血が噴き出す。手足が折れているのでまともに受け身も取れずに一方的に傷つけられていく。

 

 リョウタさん……リョウタさん!!

 

 心の中で大好きな人のことを思って、必死に痛みに耐える。

 

「シルビア!! 私が族長だ、やるなら私にしろ!!!! 娘にそれ以上手を出すなぁぁぁ!!!! 」

 

「そうよ!! 私たちが代わりになるわ!! だから娘には!! 」

 

「あはははは!!!! 聞く耳持たないわ。あんたたちだって散々私の部下を一方的にいたぶって来たでしょうに!! 」

 

 ああ、私こんなに愛されてるんだ。

 

 私は痛みの中でそんなことをふと思った。本当にお父さんとお母さんに愛してもらっていることを再認識した。

 

「さて終わりにしてあげるわ!! もう生きているのもつらいでしょう!! 楽にしてあげる、ただし滅茶苦茶痛い方法でね!! 」

 

 シルビアが一度触手を下がらせる。

 

 私はお父さんとお母さんに笑いかけてその後、パーティーメンバーの顔を1人1人見る。

 

『ゆんゆん!!!! 』

 

 みんなの私を想う声が声が重なって聞こえる。

 

 ああ、できることなら最後にリョウタさんの顔も見たかったなぁ……。でも今の私を見たらリョウタさんはきっと泣いちゃうわよね。

 

 ふと最後に空を見上げる。すると謎施設の方から金色に輝く流れ星が一瞬見えた気がした。

 

 私は流れ星に願う。どうかリョウタさんが残された人生の中で少しでも幸せでいられますようにと。

 

「リョウタさん、大好き……」

 

 私は微笑みながら初めて言葉に出した。愛する人への想いを。

 

「さぁ死ね!! 族長の娘ぇぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

 触手がまっすぐ私を貫かんと迫ってくる。

 

 私は走馬灯を見る。お父さんとお母さんとの思い出、みんなとの思い出、リョウタさんとの思い出。

 

 そして、触手が私に触れる直前で。

 

 消し飛んだ。

 

 上空から降り注いだ、どす黒い太い柱によって。

 

「え? 」

 

「なにっ!? 」

 

 私は死が訪れなかったことに驚愕し、次いで、それをさせなかった黒い柱の正体を察して驚愕した。

 

 今のってディナイアルブラスター……? 

 

 黒い柱の正体は、呪いの光線だった。光線の柱が崩れ、周囲に黒い光の残滓がまき散らされる中で、上空から4枚の金の羽を備えた人型が先ほど光線によって形成されたクレーターへと高速で舞い降り着地する。

 

 それは。すぐに誰なのか分かった。私の大好きな人。愛している人。いつだって側にいさせてほしい人。

 

「リョウタさん……!! 」

 

 だけどどうして? リョウタさんのあの状態じゃとても戦えないはずなのに。

 

 リョウタさんの背部に備わった4枚のX字状に展開された羽が動作し周囲に漂っていた黒い光の粒子を吹き飛ばす。

 

 そしてリョウタさんはゆっくり首だけ動かして私の方を見る。

 

 その瞳は真紅に輝いていた。

 

 ……嘘でしょ? だって、あの方法は、あの手段は、記憶を失っちゃうからやらないって言ってたのに!! なのに……。

 

「リョウタさん? その紅い目。まさか……記憶を……」

 

 リョウタさんが私のことを忘れてしまった。それが私の中で何よりも深い絶望になって押し寄せてきた。

 

 涙が目にあふれてくる。

 

 だが。

 

「大丈夫だよゆんゆん」

 

 確かにリョウタさんは、私の名前を呼んだ。そして優しく私を見て微笑んだ。

 

 それだけで分かった。目の前にいるのは他の誰でもないカガミリョウタさんなのだと。

 

 私は涙を流しながらリョウタさんに微笑み返した。

 

 リョウタさんはその後正面を向いた。

 

 シルビアの方を見つめているようだ。

 

「どういうこと!? なぜお前は魔術師殺しの結界を打ち破れたの!? 意味がわからないわ……。お前はいったい何なのよ、そもそも紅魔族だったというの!? 」

 

 シルビアは驚愕の表情を浮かべていた。

 

 リョウタさんはその問いかけに怒気をはらんだ声で答えた。

 

「我が名は、リョウタ!! カガミリョウタ!!!! 新たなる紅魔族にして、神を断つ剣なり!!!!!!!! 」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 リョウタさんは右手の神殺しの剣と左手のソードメイスを強く握り、羽を強くはためかせ、シルビアへ突撃した。

 

 

 

 

sideリョウタ

 

「魔王軍幹部シルビア!! お前を、倒す!!!! 」

 

「やれるものならやってみなさい!! 」

 

 俺は目の前のシルビアを見据えながらまっすぐ突撃していく。シルビアの姿は巨大な鋼の胴体に四本の腕を備え、1対の大きな翼を備えたラミア型のロボットのようだった。本来頭部が付いていそうな場所にはシルビアの上半身がくっついている。

 

 何にしたって、まずはこいつをゆんゆんたちのもとから遠ざける!!

 

「うおぉぉぉぉ!!!! 」

 

 俺はシルビアに2本の剣を交差させた状態で体当たりを敢行。シルビアにぶつかる。そしてそのままウイングの出力を最大にしてシルビアを200メートル程度はゆんゆんやカズマたちから遠ざけた。するとシルビアが任意発動と思われる空間を湾曲させて形成しているように思えるバリアを突如展開し俺を後方に弾き飛ばす。

 

「これでも喰らいなさい!! アームキャノン発射ぁぁぁぁ!!!! 」

 

 4本腕から大出力のビームが発射される。それを俺は瞬間的にウイングの力で回避する。ビームは紅魔の里の霊峰にぶち当たり、形が何だかさっきまで見ていた時よりも変わってしまっていたそこの形を爆散させる形でさらに変えた。

 

 俺は体勢を整えシルビアに空中で向き直ると。

 

「ディナイアルセイバー!!!! 」

 

 俺は一気に直径10メートルほどのディナイアルセイバーをシルビアに振り下ろした。

 

 ロボの部分のボディが焼ける中、シルビア本体はバリアに守られ無傷だった。

 

 そして、焼けた表面の装甲がどんどん回復して新品同然に戻る。どうやら再生能力があるようだ。

 

「なら、片っ端からぶっ壊していくだけだぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺はまず右上の巨腕に接近。ソードメイスを思いっきり叩きつけた。破壊神の4割の存在によって最大稼働をしている神殺しの剣によって引き上げられたステータスは。

 

「なに!? 」

 

 展開されたバリアの空間湾曲させている力場ごとぶち壊し、巨腕に大きなへこみを作るのに十分なパワーがあった。

 

 俺はそのまま巨腕のへこんだ部分に神殺しの剣を突き立て、ディナイアルブラスターを発射。内部へと高出力を流し込まれた巨腕は爆発。崩壊した。

 

「おのれ!! 」

 

 シルビアが激昂し。ロボの蛇状の下半身の各節に取り付けられているレンズから大量のホーミングレーザーを放ってきた。俺は超高速で飛行し、ホーミングレーザーを引き付けると。

 

「ホーミングレーザー!! 」

 

 黒いエネルギーが神殺しの剣にまとわりつき、そのシルエットを七支刀のように変化させる。そして7本のエネルギー状の刃から枝分かれし無数のどす黒いホーミングレーザーが放たれた。シルビアの赤黒いホーミングレーザーとぶつかり合い相殺される。

 

「ビット展開!! 」

 

 続いて神殺しの剣から無数の胞子ビットを展開。一気にシルビアに射出し。俺もシルビアに向けて急降下する。

 

「撃ち落す!! 」

 

 シルビアが3つの巨腕の手のひらから赤黒い拡散ビームを撃ちまくり、ビットや俺を迎撃しようとする。ビットはその大多数が消失するがいくつかは生き残りロボ部分に命中、装甲を破砕する。もちろんそれは瞬時に再生されるがそんなものは関係ない。

 

 俺は呪いのバリアで拡散ビームをしのぎ切り、シルビアの生身部分にソードメイスを振り下ろした。しかし生身部分を護っているバリアが発生しシルビアの脳天を粉砕する寸前のところで受け止められてしまう。

 

「だとしてもぉぉぉぉ!!!! 」

 

 俺はウイングの出力を全開にしてソードメイスをバリアに押し込み……粉砕した。

 

「どれだけ馬鹿力なのよ!! ぐわっ!? 」

 

 シルビアはとっさに身をひねりソードメイスから致命傷を受けるのを回避するがその右腕を質量と速度によって発生したパワーで叩き斬られる。

 

「このぉぉぉぉ!!!! 」

 

 シルビアが怒りの叫びとともに右腕を高速再生。さらに電撃を纏った指を高速で伸ばしてくるが呪いのバリアでそれを防ぐ。

 

「ならば!! 」

 

「つかまれてたまるか!!!! 」

 

 シルビアが3つの巨腕を動作させ俺につかみかかろうとするが、それを全てウイングを動作させて複雑な軌道を描き回避。

 

「死ね!! 」

 

 しかしシルビアが再生途中の巨腕で俺をぶん殴ってきた。俺はソードメイスの腹で受け止め。

 

「ディナイアルセイバー!!!! 」

 

 再生途中の巨腕の肘関節部分を狙って、範囲を絞り破壊力を増大させたディナイアルセイバーで斬り落とす。

 

「これならどうだ!! 」

 

 するとシルビアが3つの巨腕からプラズマフィールドと思わしき技を発動。俺を電撃で包んだ。しかし俺もバリアを球形状に展開してそれを防いでいると。

 

「馬鹿め、本命はこれよ!! 」

 

 ドリル触手が翼から展開されてバリアを貫き内部に侵入してきた。

 

「そんなものでぇぇぇぇ!!!! 」

 

 俺はバリアをつき破ってきた触手を全て斬って、叩いて、落とす。

 

「ならばこっちもダメージを承知で撃たせてもらうわ!! ドグマブラスター発射!!!! 」

 

 ロボの胸部が展開し、砲身が現れ、そこから赤黒いにもほどがある光線が発射される。

 

「当たってたまるかぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺は超高速で後方に移動。プラズマフィールドから無理やり抜け出すと、真正面からドグマブラスターを相殺すべくディナイアルブラスターを発射する。

 

 黒と赤の光線がぶつかり合い激しい爆発が起きる。

 

 ビームとビームがそこら中に弾き飛んだ。周囲の建物が消し飛びまくり地面にはいくつものクレーターができる。

 

 ゆんゆんをはじめ、いろんな人を一瞥し、誰もそれに巻き込まれていないことに安堵した俺は直後に、爆風の中でも態勢を4枚羽で無理やり整えシルビアへと驀進した。

 

「さっきまでは受け身だったけれど避けることだってできるのよ!! 」

 

 翼をはためかせ高速で俺の突撃から回避したシルビアは尻尾のブレードで俺を強襲する。

 

 ブレードをソードメイスで弾き、再度俺はシルビアに方向転換して突撃していく。鋭い円錐形のバリアを神殺しの剣に纏わせた状態だ。

 

「ふん!! 」

 

 シルビアが俺を巨腕の内、左上の1本でぶん殴ってくる。だが俺もそれに対応して突き出した神殺しの剣と鋭いバリアが巨腕の手のひらを粉砕し埋まる。俺はバリアの内側からビットを発射。巨腕を爆砕する。

 

 シルビアは攻撃の手を緩めない。続いて左下の巨腕で俺をアッパーの要領でぶん殴ってきた。俺はソードメイスを叩きつけそれを迎撃、俺から遠ざける。すると今度は右側の完全に再生した巨腕からビームを発射してきた。それを俺はぎりぎりで回避する。

 

「ちょこまかとぉぉぉぉ!!!! 」

 

 シルビアが苛立ちから叫び声を上げる。そして右下巨腕にビームクローを展開して俺に斬りかかってきた。

 

「あたるか!! 」

 

 それをウイングで急制動をかけて回避。

 

「ならば!! 」

 

 尻尾のブレードで俺を突き刺そうと伸ばしてくるシルビア。

 

 それはソードメイスで弾いて撃退。

 

 続いて現在生き残っている3本の巨腕からすべてビームクローを展開して連続で斬りかかってくるシルビア。それらすべてを回避し、バリアで受け流し、ソードメイスと神殺しの剣で切り払う。

 

 そして一瞬の隙を見つけた俺は巨腕を全てソードメイスで打ち払い、へこませた装甲板に神殺しの剣を突き立てディナイアルブラスターを発射するという動作を3連続で行い巨腕を全て完全破壊する。

 

「おのれ、おのれ!! 紅魔族ぅぅぅぅ!! 」

 

 シルビアが生身の両腕をキャノン砲に変形させて連射してくる。さらにドグマブラスターを拡散発射し俺を突き放そうとするが、俺はそれらすべてを強化された思考速度と反射神経を以てして両腕の得物を使いこなし斬り落とした。

 

「何でこの高速の光線を斬り落とせるのよ!? 」

 

「駆逐する!!!! 」

 

 俺は高速でシルビアの後ろに回り込み、ソードメイスを振り下ろしてロボの翼を片方脱落させる。続いてもう片方を足にバリアを重ねた状態でウイングによる急速動作で蹴り飛ばし根元からへし折る。

 

 そして翼を失ったロボの背面に蹴りを入れて体勢を崩させる。

 

「ぐわっ!? 」

 

 続いて。

 

 ロボの左肩口をディナイアルセイバーで切断。再生しようとしていた腕2本をまとめて脱落させる。

 

 さらに今度はロボの腰関節に急速接近。高速回転してソードメイスを叩きつけて思いっきり装甲をへこませた後ディナイアルセイバーで焼き斬った。これにより紅魔族と俺のパーティーメンバーを阻んでいた六角形の結界が消失する。

 

 ロボの上半身と共に地面に落下するシルビア。

 

「こ、このぉぉぉ!! 」

 

 どうにかして瞬間再生させた右下巨腕で俺を握りつぶそうとしてくるが。

 

「ぶっ壊す!! 」

 

 俺はそれにソードメイスを前方に突き出した状態で突撃。真正面から粉砕する。さっきまでより手ごたえが無かったことから頑丈さを削ってまで急速再生させたものだったのだろう。

 

「そんなその場しのぎで!! 今の俺を倒せると思うなぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 俺は勢いそのままにソードメイスをロボの胸部に突き立てようとするが小癪にも必死の抵抗なのかこれまでよりも強力なバリアで阻んできた。俺はソードメイスを思いっきり押し出してバリアに切っ先を貫通させて埋め込んだ後、ソードメイスの柄を連続蹴りしてバリアを完全に突き破り、胸部装甲板をぶち破る。シルビアはその状態でドグマブラスターを発射して俺を消し去ろうとするが、俺はソードメイスをさらにぶん殴って押し込んで、発射される前にドグマブラスターを破壊する。

 

「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

 俺は、狂乱し生身の両腕から拡散ビームを発射してくるシルビアの攻撃をバリアで防ぎながら、ビットを放出、さらにホーミングレーザーを発射して全方位からシルビアを攻撃する。どんどん形が崩壊していくロボ部分。それにとどめを刺すかのように俺は。

 

「ディナイアルエクスプロード!!!!!!!! 」

 

 爆発する呪いのビーム斬撃波を最大出力で発射。シルビアのロボ部分を機能停止させた。

 

「いきなり出てきて!! なんなのよお前はぁぁぁぁ!!!! 」

 

 スクラップと化したロボの上でシルビアが吼える。

 

「言っただろ!! 我が名は加賀美涼太!! 神を断つ剣だとなぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺はシルビアに全力で叫び返すと、ソードメイスをシルビアにぶん投げる。おそらく生身の部分を覆っていたバリアすらも展開できなくなった様子のシルビアはソードメイスにぶち当たり、ロボの部分から上半身が引き千切れる。

 

「バカな、バカな、バカな!! そんなバカな!! あれだけの兵器を取り込んだのに、あれほどまでに進化したというのに!! 負けるというの、このアタシが!? 」

 

 俺は千切れて宙を舞うシルビアに向けて両腕で振りかざした神殺しの剣からディナイアルセイバーを発動。

 

「消え失せろぉぉぉぉ!!!! 」

 

 躊躇なくシルビアに呪いの剣を振り下ろした。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 シルビアは断末魔を上げる。

 

 それと同時に、そのシルエットを崩し、粉々になり、散り散りと化し、文字通りこの世から消滅した。

 

「俺の、勝ちだ……!! 」

 

 俺は着地して後ろを振り返り、神殺しの剣を腰に納めウイングを消失させる。その直後に背後でロボ部分が大爆発を起こした。

 

 そこから発される熱量を感じながらパーティーメンバーの現状を確認する。

 

 カズマとアクアは紅魔族たちに瓦礫から救出され始めていた。ダクネスは介抱され、めぐみんは両親と妹に抱きしめられている。

 

 よかった……。

 

 俺は安堵すると、愛する人に駆け寄った。

 

「リョウタさん!! 」

 

 ゆんゆんの俺を呼ぶ声がする。ゆんゆんはお義父さんとお義母さんに肩を貸され、立ち上がっていた。

 

「ゆんゆん!! 」

 

 お義父さんとお義母さんが、微笑みながらゆんゆんを俺に受け渡す。

 

 俺はゆんゆんを思いっきり、しかし彼女ができるだけ痛くないように優しく抱きしめた。

 

「リョウタさん、リョウタさん、リョウタさん!! 」

 

 涙を流しながら俺の名前を何度も呼ぶゆんゆん。

 

「ゆんゆん、よく頑張ったね」

 

「はい、頑張りました」

 

「お疲れ様」

 

「リョウタさんも、お疲れ様です」

 

 にっこりと傷だらけの顔で笑うゆんゆん。

 

 どんなに傷つこうとも、血を流そうとも、涙を流していようともその笑顔はどこまでも美しかった。

 

 紅魔族たちがシルビアが倒れたことに歓声を上げている。

 

 その歓声の中で、俺とゆんゆんはただひたすら抱き合った。

 




 改めてお礼を言わせてください。挿絵を作ってくれたseato様。ありがとうございました。

 ゆんゆんやめぐみんがひどい目にあうシーンを書くのは精神的にかなり疲れました。ですがその甲斐あって、シルビアをリョウタがぶっ飛ばすシーンは感情移入できて過去最高にド派手に書けたと思います。

 プロローグのリョウタ乱入のシーンはリョウタ視点でしたが、今回のお話ではゆんゆん視点となりました。ゆんゆん視点を本章で解禁したのはこのシーンを別視点で描きたかったからというのが大きいです。

 さて、思い出を錬成するというのはシンフォギアから着想を得ました。というか随所にこの作品はシンフォギアからの影響を受けてますね。神殺しの剣なんかは過去のあとがきに書いたように、シンフォギアの神殺しの拳が元ネタですし。
 
 

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