「アンデッド」がすべて「アンデット」になっておりました。
俺とゆんゆんがはジャイアントアースウォームが大量発生している荒野に行くために、そこに続いている林道を歩いていた。もちろん手はつないでいる。だが、常にどんな事態にも対処できるように互いにサーチを発動させて周囲に敵性存在がいないか確認はしている。
「思えば2人でクエストに出るのは久しぶりですね」
「そう言えばそうだね」
いつぶりだろうか? 冬の間はクエストがほとんどなく、時々楽なクエストを半分息抜きでフルメンバーで受けることはあったが、2人でクエストを受けることは無かった。本当に久しぶりだ。
「久しぶりのゆんゆんとの2人っきりのクエストだ。なんだか楽しくなってきた」
「私もです」
ゆんゆんが微笑む。綺麗だ。
「綺麗だよゆんゆん」
「ええ!? いきなりどうしたんですか!? 」
「思ったことをそのまま言っただけ。……昨日の夜もこのセリフ言った気がするな」
「リョ、リョウタさん、クエスト中はそう言う話は無しでお願いします」
「了解。ごめん」
俺は素直に謝罪する。
しばらくの沈黙の後。
「あの、リョウタさん。紅魔の里でもしましたが、今度はアクセルの街でもデートしたいです」
ゆんゆんがそんなことを言ってきた。
「そうだね。アクセルの街でデートしようか」
「はい!! 」
ゆんゆんが満面の笑みを浮かべる。
「でもこれも、ある意味デートじゃないかな? ゆんゆん」
「そうでしょうか? 私はクエストはクエストだってしっかり割り切っているのでデートって感じはしないんですが。あ、でも手を繋げてるから幸せですよ? 」
「それはよかった。……俺も幸せだよ。ゆんゆんと恋人になれて。そして、こうして手を繋げてて」
「えへへ……。っ!! リョウタさん!! 」
ゆんゆんが突然叫んだ。理由はわかっている。
「おそらくゴブリンだな。サーチに反応が20ほどあるね」
ゴブリンであろう存在が俺たちを包囲するように迫ってきているのがサーチによって確認できた。俺とゆんゆんは立ち止まる。
「初心者殺しも……あ、やっぱりいました。遠巻きに様子を見てる反応が多分そうですね」
俺は考える。ここで、ゴブリンを殲滅するより先に初心者殺しを処理した方が経験値の足しになるのではないかと。しかし少し冷静になって考えるとライトオブセイバーや、ルーンオブセイバーを振り回せば即行で終わる話だ。なにせ射程が長いのだ。
「ゆんゆん。ここはゆんゆんが初心者殺しに向けてライトオブセイバーを、俺がゴブリンどもに向けてルーンオブセイバーを振るって一瞬で片を付けようか」
「そうですね。そうしましょう。じゃあ、やりましょう!! 」
俺とゆんゆんが互いの手をつなぐのをやめると同時にゴブリンたちが目視でも確認できるようになる。俺はソードメイスを右手に構える。ゆんゆんはマジックワンドを取り出し詠唱する。
そして。
「ルーンオブセイバー!! 」「ライトオブセイバー!! 」
俺とゆんゆんは同時に魔法を発動。俺は薙ぎ払う形で多くの木々もろともゴブリン20匹をまとめて葬り去り、ゆんゆんは長大に伸ばしたライトオブセイバーで初心者殺しを長距離から切り裂いた。
「これで終わりです!! 」
「瞬殺だ」
そう言いつつサーチの発動を解くことはしない。慢心は決してしない。
俺とゆんゆんは冒険者カードを引っ張り出すと討伐数を確認する。
しっかりとゆんゆんのカードには初心者殺しの名が、俺のカードにはゴブリン20匹の名が刻まれていた。
「やりましたね」
「このくらいの敵なら本当に余裕だな俺たち」
「そうですね。あ、手つなぎなおしましょう」
「そうだね」
俺とゆんゆんは手をつなぎなおすと、再び歩み始めた。
夜。カズマたちへの連絡を済ませた俺とゆんゆんはジャイアントアースウォームの目撃地点である荒野まであと少しのところ……野原で、テントを張ってキャンプをしていた。
「リョウタさんお肉どうぞ」
「ありがとうゆんゆん」
ゆんゆんが干し肉を俺に差し出す。俺はそれを受け取り食べる。干し肉は塩や胡椒が効きまくっていてうまい。何気に俺のお気に入りの食べ物だ。
「リョウタさんは本当においしそうに干し肉食べますね。味が濃いからですか? 」
「正解だよ。さすがゆんゆん。俺のこと良く分かってくれてる」
「えへへ」
ゆんゆんがはにかむ。かわいい。
「ゆんゆん。あーんってやつをやってほしい」
「え、あーんですか? 」
照れるゆんゆん。
「唐突すぎたかな。だけど2人きりじゃないとこういうことできないから」
「それもそうですね。少なくともみんながいる前では恥ずかしくてできませんね。デート中でも……知らない人の前なら大丈夫かなぁ? 」
「それでどうかな? 」
「い、いいですよ。じゃあパンで。あーんしますね」
「うん」
深呼吸するゆんゆん。そして。
「じゃあリョウタさん。あーん」
「あーん」
ゆんゆんが俺の口にパンを運ぶ。俺はそれを食べる。ただのパンなのにすごくおいしく感じるのとなんだか気恥ずかしさが襲ってきた。
「だが悪くない」
「あのリョウタさん……」
「どうしたゆんゆん? 」
「あの、……私にもしてもらっていいですか? 」
上目遣いで俺を見つめてくるゆんゆん。かわいい。
「もちろん喜んで。じゃあゆんゆん。あーん」
俺もパンをつかんでゆんゆんの口に運ぶ。
「あーん……はむ」
ゆんゆんがパンを食べる。
「おいしい? 」
「……何倍もおいしく感じました。すごいですね……あ、愛の力って」
「面と向かって愛の力だなんて言われると照れるんだけど……」
「ご、ごめんなさい」
うつむくゆんゆん。
「いや、いいんだよ」
俺はゆんゆんの頭を優しく撫でた。
愛の力か。本当に2人でならなんだってできる。そう思わせてくれる力の根源は愛なんだろうな。
「ずっと一緒にいようね、ゆんゆん」
「はい……」
顔と目の紅いゆんゆんは微笑んだ。
翌朝。見張り当番を交代して行った俺とゆんゆんはジャイアントアースウォームの討伐のために荒野を歩いていた。
「本当に荒れた地ですね」
「荒野だからね」
草が所々に茂っているだけでほぼ土のそこは生き物が生きていくにはあまりにも過酷に感じる場所だった。
「サーチに反応は……ありませんね」
「もう少し奥の方なんだろうね」
「行きましょうか」
「うん」
俺とゆんゆんは荒野の中を進んでいく。ちなみに野原のすぐ抜けた場所が荒野になっているのは大量のジャイアントアースウォームが土から栄養を大量に吸って成長しているかららしい。ジャイアントアースウォームは存在するだけで植物を枯らす、いわば害虫なのだ。蝗害に近いかもしれない。
「あ、反応がありましたね。……警戒しましょう」
「そうだね。よいしょっと」
俺は右手に神殺しの剣、左手にソードメイスを構える。ゆんゆんはハルバードを背中から引き抜く。
「さぁ戦いだ」
俺がそう言った瞬間地面が盛り上がる。ジャイアントアースウォームは、嗅覚と、サーチや敵感知のような第6感で、獲物の位置を割り出すらしい。
ゆんゆんはグウェンを使って飛行。俺もバックステップを踏んでその場から退避すると、一気に3匹もの巨大なジャイアントアースウォームが口を広げた状態で姿を現す。
ちなみに言うまでもなくジャイアントアースウォームは雑食だ。捕食すると獲物の栄養を根こそぎ体内で吸い取り吐き出す。
「本当に嫌な生き物だな……」
俺が呟くと同時に、少し離れた位置からも地面が盛り上がりジャイアントアースウォームが現れた。合計40匹。野原を荒野に変えるには十分すぎる数だろう。
「一気に殲滅する!! いくぞゆんゆん!! 」
「はい!! 」
俺は両方の得物からルーンオブセイバーを発動し目の前の3匹に一気に襲い掛かる。そこそこの魔力消費を誇るルーンオブセイバーを2本同時に安定させて発動させられていることから魔力が相当に増大していることを実感する。
「ぶった切れろ!! 」
2本の得物を、両腕を横に大きく開く形で振るう。
ジャイアントアースウォームの3匹の内、右端の1匹が回避しきれず2つの斬撃によって3等分される。のたうち回る右端のジャイアントアースウォーム。それだけで土が巻き上がり、当たると痛いと感じるほどの速度でぶつかってくる。
残り2匹が一斉に襲い掛かってくる。ゆんゆんは目の前のこの2匹は俺に任せ、まず右方にいる奴らを始末に行ったようだ。
2匹のジャイアントアースウォームが大きな口を閉じた状態。すなわち硬い牙が密集した当たるととても痛そうな状態で体当たりを敢行してくる。
俺はその場にしゃがみ込み、体当たりが命中すると思われるそこに、トラップオブブラスト、爆発を発生させる魔方陣と、トラップオブプレッシャー、範囲内に入った存在に超重力を浴びせる魔方陣をセットしバックステップで回避する。その瞬間、勢いよく2つの魔方陣の中に飛び込んだ2匹のジャイアントアースウォームは超重力で先端を地面にたたきつけられた末、爆発で吹き飛んだ。1匹目のジャイアントアースウォームの如く先端を失ってのたうつ2匹。
「まとめて消し去ってやる!! インフェルノ!! 」
俺は最近習得したインフェルノを発動し、一気に前方の3匹を焼き払う。
するとその作業中に後方から10匹のジャイアントアースウォームが迫ってきた。
俺は振り返りざまに両方の得物からバーニングスラッシャーを発射し牽制。そして足裏にフェイントオブインパクトを発動させて上空に飛びあがる。するとバーニングスラッシャーをものともせずに突っ込んできた10匹が口を開いて飛び上がった俺に追いすがる。
俺はルーンオブセイバーを発動した状態で両手首にフェイントオブインパクトを発動。フェイントオブインパクトの衝撃によってコマのように高速回転しながら落下しつつルーンオブセイバーでまとめて10匹を細切れにする。飛び散っていくその様はシュレッダーにかけられた麺のようだ。
「残り……22匹!! 」
ジャイアントアースウォームはゆんゆんが倒した数も入れてすでに18匹が死滅している。
楽勝じゃないか。
思ったより弱くて。いや、俺のレベルがいかに高くなっているのか思い知らされる。
「魔力も全然余裕がある。これなら!! 」
俺は左方に移動。迫ってくるジャイアントアースウォームに自ら驀進していく。
そして、まっすぐ突撃してきた1匹をソードメイスでぶん殴り、怯ませると。
「このまま表面を切り裂く!! 」
バーニングスラッシャーを発動させた神殺しの剣を突き立て疾走。側面を焼きながらぶった切る。それが致命傷になったのか死亡したジャイアントアースウォーム。
「さぁどんどんかかってこい!! 」
俺は両方向から強襲してきた2匹のジャイアントアースウォームにルーンオブセイバーを発射。その長い体のほとんどを消し飛ばし2匹を絶命させる。続いて、サーチによってあらかじめ把握していた下から襲い掛かってくるジャイアントアースウォームにわざと丸呑みさせる。俺が、ガーターを全方位に発動した状態で入り込んだため、俺を食いつぶせずに困っている様子のジャイアントアースウォームに内部からインフェルノを発射して燃やし尽くす。高熱で爆散した俺を丸のみにした個体。肉片の雨が止むころには、さらに4匹のジャイアントアースウォームが俺に全方位から食らいつこうと迫ってくる。
「エアハンマー!! バーニングスライサー!! 」
俺はエアハンマーと、エアスライサーを錬成して作り出した炎の追尾斬撃波を4方向に発射、そのうち2方向のジャイアントアースウォームが回避できずにエアハンマーを真正面から食らい、怯み、その隙にバーニングスライサーに細切れにされる。
「残りの2匹にはこれだ!! 喰らえバスターアンカー!! 」
俺は、全力のフェイントオブインパクトとフェイントオブバーナー、チェーンバインドを得物の後端にかけて射出する技を即興でネーミングして発動。俺からチェーンの付いた質量弾と化した神殺しの剣とソードメイスが放たれる。それが長い胴体の中間部分に命中し木っ端みじんになる2匹のジャイアントアースウォーム。
そして魔力の鎖を引っ張って2本の剣を回収する。残り反応が9匹となったジャイアントアースウォーム。反応はゆんゆんのいる方からしていた。
「ゆんゆん今行く!! 」
俺はフェイントオブバーナーを背面で発動してブースターにし、一気にゆんゆんのいる位置にまで到達する。
「リョウタさん!? すごい魔法の使い方しますね……」
「すごいかな? まぁまともじゃないのはわかるけどね。とにかく残りはこの9匹だ、一気に仕留めるよ!! 」
空にいるゆんゆんに声をかけると、ゆんゆんは笑顔で頷いた。
全方位から襲い掛かってくるジャイアントアースウォームに対して、俺とゆんゆんは背中合わせになり。
「「インフェルノ!!!! 」」
同時に炎の濁流を噴射した。
「うぉぉぉぉ!!!! 」「はぁぁぁぁ!!!! 」
俺とゆんゆんは全力でインフェルノを放ち続けると、ついにすべての敵性反応がサーチから消失した。
「殲滅完了」
「終わりましたね」
インフェルノの噴射を終了し、荒野を見渡す。
ジャイアントアースウォームの死体が一面に転がっていた。
「魔力は……まだまだ余裕があるな。これが紅魔族か」
「リョウタさんは元々の潜在魔力が高かったですからね。紅魔族になったことでそれがさらに強化された結果なんだと思います」
「ゆんゆんの潜在魔力を現状超えてるもんね俺の魔力。それがよく分かったよ」
「そうですね。お疲れ様です」
「ゆんゆんもお疲れ様」
二人で顔を見合わせた後、笑いあった。
今回は少し短めでした。理由としては戦闘回だったことと、私が戦闘シーンを書きたくてやったお話だからです。
ちなみにジャイアントアースウォームは「このファン」で私が名前を知ることになった、アニメ二期OPのでっかいミミズです。